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事業仕分け4日目 生活保護の不正請求対策「見直し」

2009年11月17日 10時11分20秒 | 予算・事業仕分け
事業仕分けも4日目に入ると、さすがに関連の報道が減ってくる。関西空港への補給金などは報じられるが、生活保護費等負担金(医療扶助と住宅扶助の不正請求対策)の結果と詳細はなかなか報じられない。

しかし、医療扶助の不正請求について、厚生労働省が把握している数値が広く公開されたことだけでも意味がある。資料によると、生活保護費は2兆1823億円、そのうち医療扶助は約半分の1兆702億円となっている(概算要求額)。今回、仕分けの対象となったのは、医療扶助費のレセプトの点検に必要な経費で、福祉事務所等のワーカーによる点検を推進するよりも「外部委託を進めるべきだ」と10人全員一致で「見直し」となった。

行政刷新会議ワーキンググループ・配布資料(11月16日)
[PDF]生活保護費等負担金(医療扶助の不正請求対策)
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov16-pm-shiryo/2-29.pdf


医療扶助と住宅扶助の不正請求は、生活保護の「闇」の部分にあたる。悪質な「貧困ビジネス」が時々報じられるが、まさしく「氷山の一角」であり、全国的にみれば、程度の差はあれども不正請求は多くある。しかし、「闇」の部分であり、報道でもされないかぎり、社会から「見えない」ようになっている。
生活保護の受給者になると、医療保険の被保険者資格を失う。その代わりに医療券が出され、全額公費で必要な医療を受けられるようになる。時々報じられる「貧困ビジネス」は、ホームレスに生活保護を受給させ、何度も検査したり、不要な手術をしたりするというもの。ホームレスの多くは、かなりの疾患を抱えており、必要な医療が受けられない期間が長く続くために重症化している。そのため、何度も同じ検査をしたり、手術をしたりしても説明できる。かつ、自己負担がないために、本人も、病院に居られるのだから(断ると、生活保護を打ち切られ、病院から追い出されてしまう)と考える。ほんの一部の悪質な医療機関でなされていることだが、国として「不正請求対策」を講じなければならない構造にあることに違いはない。

このような「不正請求」は、レセプトをデータベース化して縦覧点検(過去に遡って、同じ医療行為が繰り返されていないか点検する)すれば発見できるし、検査の要否もある程度は判断できる。しかし、全国の福祉事務所等がばらばらにやっていては非効率だし、ワーカーは医師ではないので、要否の判断はできない。それならば、レセプトが提出される支払基金で縦覧点検をしたり、レセプトの点検をビジネスにしている業者に委託したりするような工夫をしてはどうか、630億円の使い道・取り組み方を考え直すべきというのが「見直し」の趣旨である。
レセプトなどの仕様を標準化して、全国の福祉事務所等がこの仕組みを使えるようにする。医師が不正請求ではないかとチェックしたレセプトを持って、福祉事務所等のワーカーが医療機関に行き、実際を確認する(生活保護受給者のベッドがずらっと並んでいるようなら怪しいとわかる)。このようなITシステムを活用した仕組み(自動化・共同化・集中化)を構築することで、悪質な「貧困ビジネス」を止めさせることができる。不正請求をできないようにして浮かせた財源は、母子加算など必要としている人たちにまわせるようになる。このように効率的かつ効果的な仕組み=ITシステムの構築に振り分け、不正請求対策を急ぐべきである。

一方で、そのような医療機関が行き場のないホームレスの「受け皿」になっていることも事実である。不正請求対策は「対症療法」的であり、重症化する前に医療サービスを提供する仕組み、病院のベッドに頼らなくても暮らしていけるような仕組みも合わせて整備していく必要があるだろう。


なお、4日目の仕分け結果の詳報は、以下のURLを参照していただきたい。

仕分け結果の詳細(11月16日分)
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111601000783.html