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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

事業仕分け2日目 社会保障カードを「見送り」

2009年11月13日 10時16分09秒 | 予算・事業仕分け
昨日に続いて、厚生労働省の事業仕分けが行われた。
注目していた「社会保障カード(7億4800万円)」は、「来年度の予算計上見送り」が決まった。仕分け人とのやりとりが全国民に公開されたのだから、モデル事業のモチベーション低下は避けられない。今からでも遅くないので、使っていない分を返納して、取りやめてはどうだろうか。また、選挙前に「駆け込み」で契約して「執行停止できません」としたことへの批判に対して、あまりにもみっともない説明しかできなかったのだから、厚生労働省にも、それなりのけじめが必要だろう。

結果は、「来年度の予算計上見送り」だが、民主党のマニフェストどおりに年金記録問題に集中して取り組み、「年金通帳」を導入する。後期高齢者医療制度を足がかりに医療保険制度の見直しを進める。税・社会保障の共通番号を検討するとすれば、よほどのことがないかぎり復活することはないだろう。
「2011年度からの導入開始が無くなった」にも関わらず、今さら20億円も投じて何を明らかにするつもりなのだろうか。これだけ環境=前提条件が変わっても事業を続行する意味を改めて説明すべきである。モデル事業に採択された地方自治体においても地域住民に対する説明責任がある。事業仕分けを取り上げてから、このブログですら、アクセス数が急増している(500PVを超えている)。関連省庁・地方自治体の長、議員などは、今回の「情報公開」の成果を軽視すべきでない。

説明資料(PDF)のURLは、以下のとおり(事業番号2-11)。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov12-pm-shiryo/07.pdf

仕分け結果の詳報は、昨日に続き、以下のURLを参照していただきたい。

仕分け結果の詳細(11月12日分)
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111201000702.html

このブログで取り上げてきたことに関連する事業は、しばらく無さそうである。そこで、次は、経済産業省の事業仕分けに注目したい。なかでも、「安心ジャパン・プロジェクト(32億円)」である。

これは、「医療保険や介護保険でカバーできないところ」、つまり「厚生労働省の周辺領域」をターゲットとしたもので、モデル事業のイメージをみると、厚生労働省が担当すべき(している)ことばかり。すみわけができていると主張するかもしれないが、コアになる部分を厚生労働省に押さえられている以上、経済産業省だけでできることは限定的。単独でモデル事業を展開する必然性は低い。「地域医療再生」などのキーワードをみると厚生労働省との重複感は避けられないし、何かするたびに厚生労働省に「お伺い」を立てなければならないようでは、経済産業省の予算を使って厚生労働省がモデル事業を展開しているようなものである。
そもそも、地域社会や住民にこのような需要があるならば、モデル事業を展開しなくても、民間事業者が創意工夫を凝らしてビジネスを展開しているはずである。このような状況下でモデル事業を展開すれば、どうなるか。熱心な民間事業者やNPOが、地域住民の声をきき、需要を掘り起こして創意工夫を凝らし、新たなビジネスを考え、草の根的に展開しようとする動きを「邪魔」するだけである。

鳩山首相の所信表明演説であったように、政治がすべきことは「市民やNPOの活動を側面から支援していくこと」であり、「邪魔するような余分な規制、役所の仕事と予算を増やすためだけの規制を取り払うこと」である。経済産業省がすべきことは、厚生労働省の「庭」でぱっとしないモデル事業を展開することではない。経済産業省の考える「健康長寿社会」を実現するために必要なサービスを民間事業者やNPOが展開するにあたって、「邪魔するような余分な規制」を先頭に立って取り払うことである。
経済産業省は、民間事業者の立場から、厚生労働省に対して「きちんと言うべきことを言う」べきである。なお、「言うべきこと」とは、厚生労働省の「規制」が、民間事業者が創意工夫する余地を無くし、閉塞感を生み、その結果として取り残された領域になっている。(厚生労働省には、そのほうが都合がよいのかもしれないが)新たな産業を創出するために「規制」を取り払うべき、ということである。
それが言えないのならば、経済産業省が関与する意味はない。

平成22年度 経済産業政策の重点
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90820a04j.pdf