検索にまつわる技術的、ビジネス的な展開を辿る点では面白い本である。Googleも今では"Information Company"と言っていたりするが、当初は"Technology Business"だとエリック・シュミットが言っていたという話は、Googleもそのあまりに急速な発展に合わせてビジョンを変えていっていることを感じさせる。
2002年の段階で、グーグルはメディアかそれともテクノロジー企業かと尋ねると、会社側はつねにテクノロジー企業と答えていたが、この四年間に姿勢は揺らぎ、今では尋ねる相手によって答えは違う。(p352)
飛ぶ鳥を落とす勢いのGoogleであるが、ビジネスと企業理念の葛藤や、組織の意思決定の難しさなど、株価だけからでは伺い知れない内情なども興味深い。例えばこんな話が紹介されている。
ブリンとペイジは広告と検索を組み合わせることには、きわめて懐疑的だった(p135)
収益向上につながる具体的な経営戦略は2001年初めまでまとまらなかった(p137)
また、検索が我々の生活の一部に組み込まれることによって、我々の生活がどのように変わるか、リアルに活写している部分も興味深い。
一方、本書は、「完全なる検索」へ至る道筋として、検索インデックスの拡大、パーソナライゼーション、シマンテック・ウェブなどの概念の現状を紹介して終わる。
テーマが「検索」だから已むを得ないかもしれないが、検索があたかも全ての答えを与えてくれるかのような印象を与えるところは逆に面白みがないと感じた。 検索がいかに「完全」になったところで、その検索結果に基づいた知的活動こそが本来の付加価値創造に結びつく点を忘れるべきではないだろう。