京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2022年2月 京都童心の会 通信句会結果 後半

2022-03-14 07:50:11 | 俳句
2022年2月 京都童心の会 通信句会結果 後半
【選評】

○青島巡紅選
特選
57 室の杜氏シャツ一枚の寒造  中野硯池
 冬場の寒い時期は、雑菌が繁殖しにくく、お酒をつくる微生物が良い働きをしてくれる。日本酒が好きな人には堪らない作品。「シャツ一枚」と「寒造」の時期的ギャップが、リアル。酒職人で蔵人を仕切るのが杜氏。酒造りのリーダー。杜氏の力量によって酒の出来が変わってくる。温湿度計や顕微鏡のある現在でもそれは変わりない。
並選
5 ふっくらひらがなひとたびぴえろ 野谷真治
 平仮名が生きているメルヘン。習字を習い始めた子供がたっぷり墨を筆に含ませ半紙に大きな一文字を書くと筆は痩せぽっちになっている。その筆の様を「ぴえろ」と言っているのか、書けた文字を誉めたれてニッコリ笑った子供を言っているのか。後者だと僕は思う。
9 仏壇に手を合わせたら共に飲む茶
 夫婦でも、家族でも良い。仏壇に手を合わせた後、お茶をほっこり飲んで気持ちを共有出来る相手が居る。それだけで有り難いことです。相手に先立たれ、或いは家族に取り残されて一人で仏壇と対話するのは味気ない。
13 夏みかん空家の庭のさびしさかがやく 金澤ひろあき
 誰もいない家の庭に夏みかんがどんと姿を現す。手入れされなくてもしっかり実をつけている。尾崎放哉の「咳をしてもひとり」とは異なる輝きを庭全体に浴びせている。自己満足でない充足と横溢。
19 長き髪とく指先や春きざす  金澤ひろあき
 乙女の姿が目に浮かびます。木漏れ日を浴びた指先に春を見るような気持ちになった、そんな一瞬の心の動きが感じられます。髪の毛も軽やかに微風に揺れて、光と影の揺らぎまで感じられます。
24 醤油の香 私の中にある日本   金澤ひろあき
 誰もが納得するだろう。ちなみに、物語で異世界に召喚された日本人が口を揃えて醤油が恋しいと言う。
37 水仙花友想いして眺めきし    野原加代子
 水仙花を活けているのだろうか。その花のイメージに通じる友を想起、どうしているのだろうかと考えながら、花の具合を見ている。若い時よりも、深く思ってしまいますね。
41 出目金や片目落として泣きもせず 三村須美子
 金魚を飼っていたことがあるので、死期を感じるとじっと動かず底にいるのを思い出しました。多分、この句の金魚は片目を失くしても知らん顔で泳いでいるのでしょう。あるがままに生きているのでしょう。そうすることしか出来ないのでしょうが、人間もある意味、自分達を見直すべき、というのは蛇足でしょうか。
42 菜の花や山の頂雪かぶり     三村須美子
 春を呼ぶような花が咲いているのに、山の上は雪で真っ白。春が待ち切れない作者の気持ちにピッタリと嵌まった風景だったのでしょう。
46 立春の光増す増す増すや芽の騒ぐ 三村須美子
 「増す」三回が生きています。三寒四温と言う言葉があるように、スピーディーに春が来ることはありませんが、作者の春が早く来てほしいという気持ちの強さが窺えます。
50 半額を待って買うなり冬コート  三村須美子
 「半額」で「買う」が若い世代でないことを物語っています。共感します。若い世代は冬の前に買ってしまいます。
51 白銀の腹太らせて寒の鰤    中野硯池
 丸々一匹の鰤を見て作者は荒々しい冬の海を泳ぐ鰤の様を想像したのでしょう。越冬と産卵の為に荒喰いして南下する生の権化のような様を。
60 唇の切れそな水菜サラダかな  中野硯池
「唇の切れそうな」という言葉が生きてます。瑞々しい水菜が目に浮かびます。
63 春はいつ柳の新芽色増して   蔭山辰子
 作者の春待ち侘びる気持ちが伝わってきます。日に日に「柳の新芽」の色が濃くなっていくのに、カレンダーの日付はワープしない。飛んでくれない。
77 悪霊も屁っ放り腰を温めて神社の焚火 白松いちろう
 日本的な展開に心が和む。御霊信仰的な遊び心がある。この作品、このまま英語にすると、日本人が感じるユーモアやペーソスは、西洋人は理解されません。悪魔は教会には入れない。悪魔は人間と神の敵である。そんなガチガチな石頭では、この作品は楽しめない。だから面白いのです。
78 誰かが歪めている崇高なスピリットの翳  白松いちろう
 オリンピック期間中の故意の嫌がらせような出来事、色々ありました。様々な人々の様々な思いが絡み合った結果のこと、仕方がないだけでは済まされません。
○中野硯池特選
16 焚き火囲む苦労話の後黙る 金澤ひろあき
 いつの年だったか大原野神社へ初詣に出かけた際、神社の広場に焚き火がしてあり、お参りの後先、暖をとっている人が増えたり減ったりしているとき、シベリア抑留された経験を持つ人がいて、その時の苦しかった苦労の話をしていた人がいた。
 私は舞鶴にある引揚記念館を頭に浮かべながら聞いていた。重苦しい話に口出す人もなく、後だまりこんでいたことを思い出させてくれた一句である。

【お便り】
○暉峻康瑞様より
短歌
老いるとは童心に帰ること去年今年風に吹かれてゆうらりゆらり
去年今年どうにかしたいと思えどもどうにもならぬ煩悩の闇

【お知らせ】
受賞 野谷真治さん おめでとうございます。
第五回 尾崎放哉賞 優秀賞
旅の空何も決めず酔っている

3月句会
3月20日(日)午後二時から 
阪急長岡天神駅東口 喫茶アーバンにて
京都府に緊急事態宣言が出ている場合は中止です。

句会作品 3月15日あたりまでにお送りいただけるとありがたいです。

年刊発行について
本年度も、年刊合同集を予定しております。坪谷智恵子様追悼集としたいと思って
おります。
作品20句もしくは40句単位でお送り下さい。
参加料 20句ごとで1000円。

坪谷様の思い出もございましたらお寄せ下さい。


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