DonkeyMの部屋

Donkeyはロバ。格好良くなく、足も遅い。「のろま」とか「馬鹿」といった意味。日々の感動、怒り、愚痴等を記事にしたい。

小説「私は、名前を付けてもらえない猫だった!」(4)

2018-08-11 11:07:16 | 雑感

4 昼飯を食べたら、少し眠気が差してきたので、日当たりの良い縁側に移って、そこでうつらうつらとしていた。空は青く、当分は雨も降りそうもない。三男坊は小学校へ行っていて、しばらくは帰って来ない。誰にも邪魔されることない解放感を満喫していた。作業小屋からは、母ちゃんが縄を綯う音が聞こえている。平和そのものだ!

 「ただいま!」という声で、私は眠りから覚めた。三男坊が小学校から帰ってきたのだろう。少しすると、三男坊が目の前に現れ、背中を撫でてきた。一瞬、身構え、そして、三男坊を見た。どうも、それ以上ちょっかいを出してくる様子はない。安心して、また、うつらうつら、横になっていた。三男坊が部屋を行き来する音がしていたが、そのうち、それも聞こえなくなった。どこかへ遊びに行ったのだろう。これでこの家の再び静寂に。いつの間にか眠り込んでいた。

 眠りから覚め、周りを見渡しても、何も変化はない。ただ、日差しが少し変わって、庭に移る影が長くなっているように見えた、夕方になったのだろう。立ち上がり、背中を高く上げ、背伸びしたら、あくびが出た。これですっきり、夕方の散歩に出かけることにして、家を出た。

 取り敢えず、南の方角へ足を向けた。100メートルくらい先に、一軒、それからまた100先に何軒かの家があった。田んぼの畦道をとぼとぼと進んで、裏から屋敷の中へ。この家にも、猫が一匹いた。少しめかし込んでいる猫で、小ぎれいにしている。私が入って行っても、その家の猫は出てこなかった。どこかへ遊びに出かけているのだろう。玄関に差し掛かると、聞きなれた声が聞こえてきた。見ると、うちのオヤジだった。この家のおばさんと話し込んでいるようだった。私は、こんなところで油を売っているのか、ちょっと時間があると、すぐ出かけていき、あちこちで、お茶を出してもらって、一服二服といった具合で、家にはあまりいないオヤジだった。こんなところで、油を売っていると、また、母ちゃんに叱られるだろうに、全く平和なオヤジだ。私は、そっとその家を出て、さらに南へと歩いていくことにした。<次に続く>

コメント
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