DonkeyMの部屋

Donkeyはロバ。格好良くなく、足も遅い。「のろま」とか「馬鹿」といった意味。日々の感動、怒り、愚痴等を記事にしたい。

小説「私は、名前を付けてもらえない猫だった!」 (6)スズメ捕り

2018-08-16 17:04:20 | 雑感

6 (スズメ捕り)

 近所を散歩して家に戻ってみると、三男坊が遠くの笊を息を凝らしてじっと見ている。その様子が真剣そのものに見えた。私は、これは何か面白そうだと思い、笊の方をよく見てみると、笊は棒で支えられ、棒には紐が括り付けられ、その紐がずっと伸びて三男坊の手に握られていた。笊の下には、米が巻かれていた。三男坊の方に近づいていくと、三男坊は口に人差し指を立て、「シー」と言う。私は、静かにしろと言っているのだろうと察して、三男坊の近くで座って、三男坊を見ていた。「これはきっとスズメ捕りをしようとしているんだ。」と気が付いた。しばらく待っていたが、三男坊はただ籠を見て、じっとしているだけ、何も起こらない。私が、半ば馬鹿馬鹿しくなってその場を立ち去ろうとした時、笊の近くにスズメが一羽降りて来た。三男坊に緊張が走ったように感じ、私も息を凝らして見ていた。スズメは笊の下の餌を食べに移動したと見えた時、三男坊は紐を引いた。「あっ、遅いよ!」と私は思った。私ならばこんな仕掛け使わずに、飛びついて捕まえるのに・・・。私が思った通りに、笊はパタンと落ちたが、スズメは寸でのところで飛び立ってしまった。まあ、発想は悪くはないが、何分にも三男坊は運動神経が抜群に悪い。だから、スズメは罠にかからずに逃げてしまったのだった。三男坊は、笊のところまで行って、また、棒で笊を持ち上げる仕掛けをし直して、戻ってきた。そして、また、ずっと笊を見ている。三男坊はいつまで続けるつもりなのだろうか?私は、馬鹿馬鹿しくなって三男坊をその場に置いたまま、家の中に入った。

 家の中でしばらくうとうととうたた寝した後に、庭を覗いてみると、まだ、三男坊は、籠を見ている。集中力があるというか、諦めが悪いというか、三男坊には普通の人と違った側面を持っている。でも、まあ、元来飽きっぽいところがあるので、そのうち、他のことに興味が移って、「スズメ捕り」は続かないだろうと思った。その時、「待ちぼうけ」の歌が聞こえてきた。三男坊が口ずさんでいるようだ。ほうほう分かっているじゃないか!野兎は切り株に躓いて倒れて捕まえられたが、そんなことはそうそう起こるわけではないことを・・・。そんな歌を歌いながらも続ける三男坊の気が知れない。

コメント
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