DonkeyMの部屋

Donkeyはロバ。格好良くなく、足も遅い。「のろま」とか「馬鹿」といった意味。日々の感動、怒り、愚痴等を記事にしたい。

小説「私は、名前を付けてもらえない猫だった!」(2)

2018-08-08 14:36:53 | 雑感

2 冬が近づき、少し肌寒く感じられるようになってきた。この時期になると、三男坊は夜私が行くのを待っているようだ。なぜか?それは、私を湯たんぽ代わりにして、少しでも暖まろうという腹らしい。まあ、私も、それで暖かい寝場所が確保できるので、良いのだが・・・・。ただ、布団を掛けられると、途中で、息苦しくなってきて、布団の外に出たくなってくる。三男坊は、よりによって、できるだけ足元の方へ私を押しやる。足を暖かくしたいらしい。ここは少しの我慢だ。三男坊は結構寝付きは良い方で、ちょっとすると寝息を立て始めることだろう。そうしたら、外に出るのも、再び布団に入るのも、自由だし、寒い思いをしなくて済む。ここで気を付けないといけないことがある。三男坊が寝返りを打ったり、急に足を動かしたりするので、あまりのんびり寝ていると、ひどい目にあうことがある。少し注意が必要だ。

 昼間庭でのんびりしていると、鶏が近づいてきた。初めに出会ったときには、鶏が自由に庭を行き来しているのにびっくりしたもんだが、今は、いつもの風景の一つになってきた。この鶏の話では、何でも、この家では数年前まで、何羽も居たらしい。しかし、どんどん数が減って、今はこの鶏一羽になったしまったと言っていた。ちょっと興味が湧いてきたので、話を突っ込んで聞くと、この家で鶏を飼い始めた時、100羽近くの数を買入て、鶏小屋も作られていた。何でも、この家のオヤジは鶏を飼って、卵を売るつもりだったらしい。この家の近所でも何件か同じように鶏を飼い始めていた。オヤジはそれに刺激され、鶏を買って収入を得ようとしたようだ。見よう見まねで鶏を飼うようになったが、でも、この家のオヤジは、三男坊と同じで、飽きっぽくて、あまり仕事熱心ではない。(順序が逆だね。三男坊がオヤジに似て飽きっぽくて、仕事熱心じゃないのだが)。そのため、さして収益も上げられず、どんどん鶏の数が減っていったらしい。いつの間にか、鶏小屋も壊れて、鶏は庭を散策するようになった。初めはオヤジも鶏小屋に戻そうと考え、小屋を修理したりしていたようだが、そんなこと続くはずもなく、結局、鶏は自由に庭を散策、餌を物色するようになったと言う。

 ある時、三男坊が鶏の後を付けているのに私は気づいた。何をやっているのだろう?鶏は尾行がついているとは気づかずに、巣に戻っていった。三男坊は鶏の巣の在りかをしると、その場を離れた。そして、少し経って、鶏が巣を離れている隙を狙って巣の中を物色し、卵を手に3個入れた。そして、家の中に入っていくと、おばさんに、「卵を見つけたよ!」と言う。おばさんは、「全部取ってしまったら、また、巣を変えてしまうから、一つ戻しておいで・・・」と言う。三男坊は再び巣に行って卵を一つ戻したようだ。三男坊は、古い卵と新しい卵の区別がつくのだろうか?もし、間違っていたら、いつの卵か分からない卵を食べることになって、腹を壊したりするのではないかと私は少し心配になった。<次に続く>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小説「私は、名前を付けてもらえない猫だった!」(1)

2018-08-08 10:57:01 | 雑感

1 私がこの家に来たのは大分前の話、子供の頃だったろう。色は白と黒のトラ模様。これでも一応メスなのだ。名前は付けてもらえていない。それほど強い関心を持たれていないのかも知れない。ごはんに味噌汁をぶっかけたものや、たまに魚の残りが入っている程度の粗末な食事だったが、でも、ご飯はちゃんと三食食べさせてもらえるし、寝るところも確保できる。野良猫をやっているよりはずっと良いと思っている。三男坊を除いて私にちょっかいを出してくる人はいないので、とても自由だ。

 小さい頃は、この家の三男坊が良くちょっかいを出してきた。紐のようなものを目の前に出したり、それを右手で捕えようとすると、三男坊はそれを手の届かないように引っ張る。追いかけていくと、また、引っ張る。これの繰り返しだ。三男坊は、こんな些細なことでも面白がって何度も繰り返す。ただし、あまり三男坊に近づきすぎると、捕まってしまうので、後ずさりして距離を取る。そうすると、三男坊はまた紐を近くに投げてよこす。三男坊の喜ぶ顔が面白かったので、少しの時間付き合ってやったが、三男坊はあまり飽きる様子がないので、私はばかばかしくなって、その場を離れることにした。良いことに、三男坊は飽きっぽい。だから、私のことを忘れて、別に興味を持ったのだろう、他のことをし始めた。私は、これでしばらくは自由を満喫できる。座敷の涼しそうなところに横になってしばらく休憩することにしましょう!

 日中は、三男坊が小学校へ行っているので、私は、全くの自由だ。だれの干渉もなく、ただ、のんびりと家の周辺を散歩したり、ネズミがのさばらないように、見まわったりしている。人間どもは、私に、ネズミ捕りを期待している節があるが、ネズミ捕りはそんなに面白い仕事ではない。でも、あまりネズミをのさばらしておくと、「この猫ネズミを捕らない、だめな猫だ!」と評判が広まってしまうと、冷遇されかねないので、時々は、ネズミ捕りをすることがある。また、私はこう見えても、肉食動物だ。ごはんと味噌汁だけじゃ、体がもたない。そう体が感じた時には、ネズミ捕りに精を出すこともある。

 この家は、村はずれに一軒ぽつんとあり、前の家と言っても、相当離れているし、後ろの家はもっと離れている。西側にも家があるが、それも前の家よりももう少し離れている。東側に至っては家らしい家は全く見えない。そんなところだったから、周りに猫はいない。猫の私にとっては相当の遠出となる。それでも、一日一回は外に出て、近所の猫にあいさつにいくことにしている。往復すると、30分近くかかってしまう。まあ、そうは言っても、暇だ。餌は食べさせてもらえるし、他にやることはない。だから、のんびりと散歩がてらに出かけるようにしていた。<次へ続く>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする