相模原市の障害者施設で、19人死亡の大きな事件が起きてしまった。最近の事件は、どうも事前に警察が把握し、対処している最中に起きる事件が多いように思う。今回の事件は、障害者施設の元職員、障害児に対する偏った考えに基づく、犯行で、事前に障害児を抹殺するという予告し、犯行に及んでいること、施設も警察も事前に犯人の情報を得ていて、注意していたこと、それなのに防ぎきれなかったのは残念なことだ。
危険を感じ、措置入院させたが、わずか12日で措置が解除されてしまっている。措置入院にするためには指定医2名の診察を経て、自傷他害のおそれが高いと診断されなければならない。それだけの重大な診断を経て措置を決定したものが、わずか12日で、自傷他害のおそれがないと診断され、社会に出てしまった。いったいこれは何なのだろうか?病気であるという診断は比較的簡単だと思う。症状が現れていればすなわち病気なのだから。しかし、病気でないという診断は、あらゆる病気を否定していかないと病気でないとは言えないものだろう。その点、如何なる根拠をもとに自傷他害のおそれなしと診断したのか、担当医に聞いてみたいところだ。
病気に対する認識、自覚がある場合は、自ら進んで通院して治療を受けるので、措置入院の手続きを踏まれることはあまりない。ところが、措置入院の場合は、そういった病識はなく、したがって、退院後治療を継続することが困難なことが多いと言われている。それをいかにして治療の舞台に上げていくかが、精神科医の腕の見せどころであり、そこに難しさがあるのだろう。
今回の事件で、まじめに治療を続けている精神障害者に対する対応まで変わってしまうことが危惧される。社会の安全は大事だが、精神障害者への行動規制にまで及ぶのは甚だ問題だと思う。今回の事件は、危険の有無をきちんと見分ける目を、精神科医がきちんと持てるようになるのだろうか?という課題が浮き彫りになった事件だと私は思うのだが、いかがなものだろうか?