DonkeyMの部屋

Donkeyはロバ。格好良くなく、足も遅い。「のろま」とか「馬鹿」といった意味。日々の感動、怒り、愚痴等を記事にしたい。

小説「私は、名前を付けてもらえない猫だった。」(3)

2018-08-10 18:17:42 | 雑感

3 今日は、朝からポカポカ陽気で、過ごしやすそう、しばらくぶりに外に散歩に出ることにした。北に向かって歩いていく、何しろ、村はずれの一軒家、隣の家に行くのも相当歩かなくてはいけない。別に、急ぐ必要もなく、借り終わった水田の畦道をとぼとぼと進んだ。途中、カエルが顔を出した。私を見て、一瞬、ドキッとしたのか、表情が固まったようで、無言でうつむき加減に、やり過ごそうとする様子が見られたので、私は、いたずら心に火がついて、ちょっとからかってやろうかと、手を伸ばすと、カエルはピョンピョン跳ねて逃げ出した。その様子が可笑しかったので、追いかけて、右手でカエルを押さえつけて、顔を近づけた。カエルは食べられてしまうのかと思ったのか、もう必死の様子で足をバタバタとさせ始めた。そして、ちょっと手を緩めると、カエルは一目散に逃げて行った。特に腹が減っているわけでもないので、そのままにして、私は、散歩を続けることにした。

 しばらく歩いていくと、鶏をたくさん飼っている家に着いた。この家には、猫がたくさんいる。鶏を飼っているために、ネズミの餌になるものが、豊富にある。そのせいもあって、ネズミもたくさん出て来るらしく、この家の猫はネズミ捕りの仕事が忙しいらしい。私が、屋敷に近づいていくと、一匹の猫が出てきた。久しぶりなので話に花が咲き、色々なことが話題に上った。

 その猫は、「最近、仲間が一匹増えたんだけど、その猫がネズミ捕りが下手で、逃げられてばかりで、困っている。元居た家は、ペットとして可愛がられ、ネズミ捕りなんて仕事していなかった。食べ物は十分あったし、肉類も足りていた。ネズミ捕りなどしたら、汚いと言われそうで、ネズミと関わらないようにしていたらしい。」と話し出した。確かに、親もネズミを捕らなかったら、ネズミ捕りの仕方は覚えられないよね!私も、子供の頃は、良く親がネズミを捕まえて、おもちゃ代わりに前に置かれ、そのネズミを追いかけては放し、追いかけては放し、そうやってネズミ捕りのコツを覚えたんだ。だから、教えられていないものはできないのも無理はないと思った。人に能なしと思われ、食事を与えられなくなったら、大変だ。せいぜい子供にはきちんとネズミ捕りの仕方を教えておこうと改めて思った。

 そんなこんなで、しばらく話し込んだ後、家路に着いた。家に着いた頃には、もう夕方になっていて、竈にはご飯が炊きあがっていたようで、美味しそうな臭いがしてきた。それを嗅ぐと、私の腹も「グー」と鳴ったので、私は、調理するこの家のかあちゃんの足にすり寄り、ニャーニャーと言ったら、母ちゃんが「お腹空いているのかい?ちょっと待って、もうじき味噌汁が出来上がるからね!」と言うので、私の茶碗の前まで行ってしばらくおとなしく待っていた。すると、母ちゃんがごはんに味噌汁をかけて茶碗に入れてくれ、その上に、魚の骨を加えてくれた。これはきっと昨日の夕飯の残りなんだろうと思う。昨日魚を煮ているような臭いがしていたからね。<次に続く>

コメント
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