気仙沼に単身赴任している次男から秋刀魚が送られてきた。季節柄、また今年は秋刀魚が高いので、嬉しい贈り物なのだが、私にとって、大騒動になってしまった。
何が追う騒動かって?送られてきた秋刀魚は6匹なのだが、果たしてどうやって食べよう?妻に、「刺身にしようか?」と尋ねると、妻は、「刺身といったって、刺身作れるの?」との返事。まあ、三枚におろして刺身を作るくらいできないことではないのだが、妻は「まただめにしてしまうんじゃない?」、「骨をとったりできるの?」と追い討ちを掛けてくる。特に、小さな骨が残っていても、大騒ぎする妻には、ほとほと閉口している私、取り敢えず、スーパーマーケットの魚屋に行って、「秋刀魚を持ち込みで刺身にしてもらえないか?」と聞いたところ、「うちはそういうことはやっていない。保健所からも厳しく言われているので、できない。」ときっぱり断られた。まあ、それはそうだろう。食中毒でも起こしてしまったら、店の存亡にも関わることだから、断るのも無理はないと納得して帰ってきた。
新鮮な秋刀魚の刺身はことのほか美味しいのだが、痛むのが早い秋刀魚はなかなか刺身にできるような品物が手に入らないため、東京では秋刀魚の刺身を食べる機会がほとんどない。仕方なく、自分でおろして刺身を作ることにした。小さな魚なので、出刃包丁までは必要なく、小刀で捌くことにしたのだが、しばらく研いでいなくて、思うように切れるかと不安になったが、三枚にするまではなんとかできた。しかし、小骨まで完全に取り除くとなったら、なかなか手間の掛かる仕事だ。捌いている途中で、毛抜きを用意するのを忘れていたことに気が付いたが、後の祭り。指で一本一本抜いていった。三枚におろすと、血合いの辺りに横に出ている骨を切ってしまうことになり、それを指で一本一本抜いていくと、血合いの部分の肉までが取れてしまうことに気付いた。毛抜きならば、少しは綺麗にできたのであろうが、仕方ない。
他に2匹、塩焼きにして嘱託に出した。塩焼きのさんまは、妻の分は綺麗に骨を取ってやらないと、これまたうるさい。普通の人ならば、気にしないで食べてしまうような小骨でも、一本入っていると、「骨があるじゃないのよ!」、「食べられない!」と、すぐに機嫌を損ねてしまう。骨のなさそうなところを選んで食べればいいところ、わざわざ骨が残っているようなところを食べるのだから手の打ちようがないというのが正直な気持ちだ。
二日目はフライにすることにした。骨を嫌って、三枚におろし、骨を取って、フライにすることにした。が、とっても骨が多少残っているだろうから、少し強めに火を通そうとしたため、出来上がりは、ぱさぱさになって、我ながら、美味しくないと思った。「小さい魚なんだから、こんなに強く揚げてしまったら、だめでしょう!!!せっかく送ってくれたのに、残念だわ!」と一言二言。「悪くなるといけないから、残っているのを煮てしまったら良いんじゃないか?」と、また、余計なことを言われた。「圧力鍋は時間を充分にして、途中で開けたりしないんだよ!」と、y余計なことまでのたまう。私は、内心、「誰の圧力鍋だと思っているんだ、これは俺が使っていたものだぞ!」と思ったが、口には出さなかった。以前、鰯を煮たときがあって、私的には充分骨まで火が通って、食べられたのに、「これ骨が固くて食べられない!」と言い出したことがあったので、今回は、水を多めにして充分な時間火に掛けておくことにした。酒や味醂、醤油、佐藤など調味料を入れ、一旦、沸騰させ、味を見たが、どうもしっくりこない。まあ、秋刀魚を入れて煮ると、味が変わるだろうから、一旦、そこで味を見ることにして、蒸気が出始めてから、10分加熱、10分休ませて、蓋を開け、味を見た。まあまあの味だったので、水の量を見たら、少し少なめだったので、水を足し、加熱し、蒸気が出てから7分煮た。そして、そのまま放置し、寝るときに冷蔵庫に移した。
そして、今日、秋刀魚の煮つけを食べた。骨まで柔らかく、まあまあの味だった。一安心したところへ、また、妻が「言ったとおりにすれば、骨まで食べられたでしょう!」とのたまう。全く口の減らないやつだ。
今日で、秋刀魚はなくなったので、秋刀魚騒動はこれで終わりです。