ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

日高本線の鵡川駅〜様似駅は廃止で決着か

2019年09月30日 00時00分00秒 | 社会・経済

 このブログではJR北海道の問題を何度も取り上げてきました。直近では2019年6月9日11時58分30秒付の「JR北海道の路線で残るのは……」です。その記事において記した10路線13区間を再掲しておきます。

 

 1.札沼線の北海道医療大学〜新十津川(79人/4億円)⇐2020年5月7日に廃止予定。

 2.石勝線の新夕張〜夕張(夕張支線)(118人/2億円)⇐当時、既に廃止で合意済み。2019年4月1日に廃止。

 3.根室本線の富良野〜新得(152人/10億円)

 4.留萌本線の深川〜留萌(183人/7億円)⇐同線の留萌〜増毛は2016年12月5日に廃止。

 5.日高本線の苫小牧〜鵡川(298人/4億円)

 6.日高本線の鵡川〜様似(298人/11億円)⇐長期運休中

 7.宗谷本線の名寄〜稚内(403人/25億円)

 8.根室本線の釧路〜根室(通称「花咲線」)(449人/11億円)

 9.根室本線の滝川〜富良野(488人/12億円)

 10.室蘭本線の沼ノ端〜岩見沢(500人/11億円)

 11.釧網本線の東釧路〜網走(全線)(513人/16億円)

 12.石北本線の新旭川〜網走(全線)(1141人/36億円)

 13.富良野線の富良野〜旭川(全線)(1477人/10億円)

 

 このうち、JR北海道がバス路線への転換を方針として示しているのは、上の4、6および9です。4と9については、JR北海道と沿線自治体との協議がまだ続いているようですが、6については10月にも決着しそうです。今月25日に朝日新聞社が「岐路の線路)鵡川ー様似、バス転換容認」(https://www.asahi.com/articles/CMTW1909250100004.html)として報じていましたので、ここでも取り上げておくこととします。

 日高本線は、室蘭本線との乗換駅である苫小牧駅から様似駅までの路線で、140キロメートルを超えます。このうち、鵡川駅〜様似駅の116.0キロメートルは、2015年1月の高波被害から現在に至るまで不通となっています。時々、写真で被害の状況が紹介されていますが、線路が大きく曲げられた上に地面から浮き上がっていたりするような状況で、路盤が掘り崩されたようになっていることから、復旧にはかなりの時間と費用が必要となることが明白でした。仮に復旧するとしても、所々で海のそばを通る路線であるだけに、再び罹災する可能性も低くないでしょう。人口も少なく、他の鉄道路線と接続する駅が起点の苫小牧駅しかないという路線ですので、投資効果を望むことができないとも言えます。

 2016年12月、JR北海道は鵡川駅〜様似駅についてバス路線への転換を沿線自治体の7町に提案します。7町とは、苫小牧→様似の方向順に、日高町、平取町、新冠町、新ひだか町、浦河町、様似町およびえりも町の7町です。厳密に言えば、平取町およびえりも町には日高本線が通っていないのですが、平取町はむかわ町や日高町に隣接しており、かつては沙流鉄道との接続駅であった富川駅および日高門別駅(いずれも日高町に所在)に近いこと、えりも町は様似町に隣接しており、様似駅に発着するジェイ・アール北海道バス日勝線が通っていることなどから、沿線自治体に含まれているものと考えられます。一方、むかわ町は入っていません。汐見駅がむかわ町に所在するとはいえ、苫小牧〜鵡川については現在のところバス路線の転換が提案されていないためでしょう。

 これまで7町の長による協議が繰り返されてきました。今月24日にも臨時で町長会議が開かれましたが、各町の立場が異なり、多数決でJR北海道の提案を受け入れる方針を決定したようです。

 日高本線の廃止を受け入れるとしたのは、平取町長、新冠町町、新ひだか町長、様似町長およびえりも町長です。これに対し、浦河町長は全区間の復旧を、日高町長は鵡川駅〜日高門別駅のみの復旧を、それぞれ主張しました。

 町の事情はそれぞれでしょうから、見解が分かれるのも当然です。しかし、休止から4年以上が経過しており、復旧の見込みが立っていない、というよりは復旧の可能性が著しく低くなった状況では、鵡川駅〜様似駅の全区間の運行再開は現実的でないとも言えます。また、鵡川駅〜日高門別駅の区間のみの復旧についても、費用対効果の観点からは疑問が寄せられるかもしれません。

 ともあれ、今後、各町の議会で協議されることとなるでしょう。最終決定は10月中旬に行われる町長会議において行われるとのことです。廃止ということになれば、今年の4月に廃止された石勝線夕張支線(新夕張駅〜夕張駅)、2020年5月に廃止される札沼線の北海道医療大学駅〜新十津川駅に続き、3番目となります。

 さて、鵡川駅〜様似駅の区間が廃止されると、日高本線は苫小牧駅〜鵡川駅の区間のみとなります。30キロメートルほどしかなく、既に1980年代の特定地方交通線廃止によって富内線という支線を失っている日高本線は、その本線という名にますます値しない路線となります(もっとも、国鉄時代と異なり、JRグループには本線という名称に値しない路線は多く、そのためもあるのかどうか、JR四国は●●本線という呼称をやめています)。苫小牧駅〜鵡川駅も10路線13区間に入っていますし、輸送密度も低いので、とりあえずは存続するとしても、早晩、協議の対象になるものと思われます。

 もう一つ、鵡川駅〜様似駅の区間が廃止されると、国鉄バス時代からの歴史を有するジェイ・アール北海道バス日勝線の存在意義が問われるような気がします。

 ジェイ・アール北海道バスのサイトによると、日勝線は、大まかに記せば上野深〜様似駅〜様似営業所および様似営業所〜様似駅〜えりも〜広尾という路線です(高速バスもありますが、ここでは除外しておきます)。元々は鉄道敷設法別表133号にあげられていた(鉄道建設)予定線の一部でした。第133号のうち、苫小牧駅〜様似駅が日高本線で、広尾駅〜帯広駅が広尾線ですが、広尾線は第二次特定地方交通線として廃止されています。

 鉄道路線の鵡川駅〜様似駅が廃止されると、このままではJRグループとして孤立したバス路線になりかねません。

 鵡川駅〜様似駅のバス転換ということからすれば、日勝線を鉄道路線の代わりとすることも考えられます。ジェイ・アール北海道バス深名線のような役割を担わせる訳です。ただ、鵡川駅から様似駅までは100キロメートルを超えますし、高速バスであればともあれ、路線バスとしてこれだけの距離を走らせる意味があるかどうかは疑わしいでしょう。

 そこで、より現実的な方法としては、日勝線の範囲はそのままにした上で、現在の代行バスを正式のバス路線にすることがあげられます。運行形態も、現在の代行バスが基本となるでしょう。鵡川駅〜静内駅、静内駅〜様似駅と系統が分かれますが、距離などから考えれば妥当でしょう。日勝線に組み入れてもよし、日高線などとして別路線にしてもよし、ということで、ジェイ・アール北海道バスの路線として位置づけるのがよいと思われます(正式な路線として受け入れられるかどうかはわかりませんが)。


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