このブログで美祢線を取り上げたのは、2023年7月1日23時59分40秒付の「JR西日本の美祢線が気になる」でした。それから1年弱が経過しています。
JR西日本は、美祢線について単独での復旧などが困難であると表明しています。今年の5月に、JR西日本広島支社長が美祢線利用促進協議会総会で発言しており、少なくともJR西日本単独での復旧が難しいとのことです。これに対し、山口県知事がJR西日本の姿勢に反発を示したようです。美祢線が山口県内で完結する鉄道路線であるためでしょう。朝日新聞社が、2024年6月12日10時30分付で「『被災地が割を食うのは本来でない』山口県知事、美祢線の復旧主張」(https://www.asahi.com/articles/ASS6C455CS6CTZNB004M.html)として報じています。
6月11日に開かれた記者会見で、山口県知事は、あくまでも美祢線の復旧を求める姿勢を示しました。復旧は鉄道事業者が速やかに行うのが原則であるとした上で、上記朝日新聞社記事の表現を借りるならば「たまたま被災したところが割を食うというか、非常に不利な状況の中で、JRの見直しの中に引きずり込まれていくのは本来の在り方ではない」と述べたようです。また、JR西日本が美祢線利用促進協議会総会において「美祢線の持続可能性を議論する部会を協議会に設置し、おおむね1年以内に方針を決めるよう要請した」ことについても、JR西日本がそもそも復旧費用などを全く示していないと語っています。たしかに、これでは山口県知事が反発するのも理解できます。JR西日本が、表現はともあれ内心では美祢線の廃線を望んでいることが透けて見えるからです。
しかし、現実的にはJR西日本単独による復旧は難しいと思われます。その理由は「JR西日本の美祢線が気になる」において記しましたが、この路線が幹線と位置づけられたのは石灰石輸送などの貨物運輸が活発であったためでして、旅客輸送のみを取り出せば地方交通線のレヴェルです。1987年度の平均通過人員は1741でしたので、貨物輸送がなければ第2次特定地方交通線に指定されたほどの水準です。このブログで何度か登場している「2022 年度区間別平均通過人員(輸送密度)について」(JR西日本)によると、美祢線の2021年度の平均通過人員は366、2022年度のそれは377でした。同じ山口県内の路線である小野田線より僅かに高い程度です。莫大な費用をかけて復旧するだけの価値があるのかどうか、答えは明らかであると言えるのではないでしょうか。
仮に鉄道路線として復旧するということであれば、美祢線の終点で接続する山陰本線と合わせて、山口県が上下分離方式の「下」の部分を担うくらいの覚悟が必要になる可能性は高いでしょう。今後、大都市を含めて、長期的に鉄道の利用客が増加することを想定し難いことを念頭に置くと、鉄道会社の内部補助の構造を維持することの困難性が高くなるのは自明です。また、都道府県は、これまで鉄道よりも高速道路あるいは自動車専用道路の建設を優先してきたことを、決して忘れてはなりません。仮に忘れているのであれば、鉄道を語る資格はないと厳しく指摘しておく必要があります。
それにしても、国土強靱化とは一体どういう政策なのでしょうか。
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