DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

ブッシュ父の死と3回のイレギュラー

2018-12-02 16:47:10 | アジア情勢複雑怪奇

父親の方のブッシュ元大統領が亡くなった。

水曜日はアメリカでは国家をあげての喪に服する日となり、従って(慣例により)市場はお休みとなる模様。

ブッシュ父は今年の春ぐらいだったかにだいぶ弱くなっているようなことを読んだし、お年もお年なので驚きではないが、混乱含みの G20の最中に重ねてみるにアメリカのこの28年ぐらいがまさに終わったかのようだな、などと思った。

1年近く前に、

とりあえず過去25年の恐怖時代は終わりつつあるんだと思う

2017-01-05 18:17:55 
 
というエントリーを書いたが、そこで書いた通り、冷戦が終わったと言ってみんながある種の多幸感に包まれた時代があった。しかしそれは、ソ連がいないんだな、ようし、一極支配を軍事と金融でやろうという実に荒っぽい時代の始まりだった。
 

冷戦終結の多幸感を利用したツケを払うアメリカ

2018-02-18 03:14:14 | 
 
 

今考えてみれば、ソ連解体というのは、ソ連とその衛星国と呼ばれたいわゆるワルシャワ条約機構下にあった人々を難民化させ、その間に西側のマスターに従う、いってみりゃミニ薩長みたいなのを入れて、それぞれ新しい国を作っちゃおうという寸法だったのだなといったところ。

あんな解体の仕方をしなければならない理由はない。そしてあんな解体の仕方をさせたのは、結局ブッシュ父とベイカーであり、それを受けた西ドイツのコール、ゲンシャーあたりだったということなんでしょう。日本も、そのための金を出し、その代りに北方領土を多少いじってもいいということだった、という感じに見える(しかし、ソ連/ロシアの軍が頑強に抵抗してエリチンは売国できなかった)。

その意味で、父ブッシュは、というよりブッシュ家は代々資本家の代表でございましたということなのだろうと思う。

トランプが、立派な弔辞のような文章を発表していたが、アメリカにとっては現時点では、41代目のブッシュ大統領は冷戦を勝利に導いた立派な大統領という立ち位置なのだなと改めて思い出させられる。

 

■ 現実にはソ連/ロシアは騙された

現実には、しかしながら、東西冷戦構造の崩壊とはソ連潰しにほかならず、そこからいくばくかの後に、NATOは東方拡大し今ではソ連に比べりゃまったく小さくなったロシアの国境付近にNATO軍がぶいぶい言わせて兵を並べ、核戦争の危機は冷戦時代よりもはるかに高くなった。

で、この流れのうちに、東ドイツ解体工作をして、ハンガリー・オーストリア国境を開けて人を歩かせて、秩序を解体して、それを「東西ドイツの統合だわ」という印象に持って行くのもメディアが乗らなければできない。ブッシュ父とベイカーあたりが肝のプロジェクトだからといって共和党だと考えるのがまったくの間違い。両方が異なることを言いながら結果的に同じことをしているのが米というもの。

そしてそこでソ連が怒ったり、拒否しなかったのは、もうすでに雰囲気的にできなかったというのもあるが(国境を破る者に腹を立てたら、ソ連の強権が~の大騒ぎになったでしょう)、もう一つ、ゴルバチョフは、このようにして東西ブロックが解体されても、その後大戦争体制が組まれることはない、なぜならNATOを東方へは1インチも拡大しないからだ、などと約束されていたことがとても大きかった。

NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた

2017-12-15 18:07:35 | 欧州情勢複雑怪奇

 

■ クリントン夫時代はほじくられるべきだ

さはさりながら、ブッシュ父は、NATOを本当に東方に拡大させるつもりがなかったのか、それともそんなものただの口先三寸だったのか、どちらだったのかは現時点ではわからない。

ブッシュ父はレーガン大統領の副大統領を2期16年務めた後、大統領となり1期を務めたが、2期目を勝ち取ることができなかった。1992年の2期目の選挙ではロス・ペローが台風の目となり、共和党寄りの票が割れて、漁夫の利のクリントンが勝った。

外交を得意としてきたブッシュ父に対して、クリントンは、「It's economy, stupid」(経済だよ、バカだね)と言うある種のスローガンをかまし、クリントンが若かったこともあり新しい時代の到来を告げたような雰囲気になった。

そして、事実としてNATO東方拡大をし出したのはクリントン時代だ。

 

2014年のウクライナ危機の頃、ブッシュ時代に駐ソ連大使だった米のマトロック氏が、冷戦終結以降アメリカはソ連を敗者のように扱った、これがそもそも間違っているという発言をし、ウクライナでクーデターなんかしかけて第三次世界大戦でも起こす気なのかといった体制になっている米の、特に欧州派遣軍司令官を糞みそにこき下ろしていた。

同じく、当時のイギリスの大使も、ウクライナ危機の根本的な問題はNATOの東方拡大だと言ってはばからなかった。

さらには、そもそもソ連封じ込めというアイデアを世に広めたジョージ・ケナンが、クリントン政権時代のNATO東方拡大政策に大反対だったことも知られるようになった。

ケナンは、この法案が通る頃、1997年にニューヨークタイムズに寄稿して反対を表明しており、それによれば、

NATOの拡大は、アメリカの冷戦以降の外交方針の「致命的な誤り」となるだろう、なぜなら、それによって「ロシア世論において、ナショナリスティックで、反西欧的、軍事主義的な傾向に火をつけることになる。ロシアの民主主義の発展にとって逆効果となり、・・・結果としてロシアの外交政策を私たちが望まないような方向へと追いやることになる

ウクライナ動乱:NATO東方拡大問題(1)

 

まさしくそうなったなぁって感じですよ、ほんと。民主主義云々は後付けで、肝はロシアは屈しないだろう、って話ですよね。

別の言葉でいえば、ロシアはおとなしく奴隷化されないだろう、ってな読み。

ということは反発されるから、かえってやっかいなことになる、そんなことする意味がないと考える派と、いいやこれを契機に世界制覇だと考える派がいたという分岐がここにあり、世界制覇を志していたのは古い共和党系のじーちゃんたちではなかった、と。

 

■ ロシアの反応

プーチン大統領もゴルバチョフ元大統領も共に、ブッシュ父の死を悼み、「最も困難な状況においても常にバランスの取れた決定を求めました」とブッシュ父の冷静でバランスの取れたやり方を評価している。

Condolences to George W. Bush
December 1, 2018

http://en.kremlin.ru/events/president/news/59284

 

このころには外交というものがアメリカにもあったのだなぁとまざまざと思い出させられる。

 

ゴルバチョフの通訳だった人が、ブッシュ父はよく情報を知らされていたし、分析的で事情を理解してより政治的だった、ゴルバチョフが置かれた立場をわかった上でものをいい、決定していた云々と言っているというのを昨日読んだが、そうだろうなと思う。そもそもCIA長官もしたし、中国公使もやってたわけだから、好き嫌い、強気弱気のスローガンで政治をやってないことはそれでわかる。

Former Soviet Leader Gorbachev Lauds George HW Bush for Political Abilities, Character

https://www.voanews.com/a/former-soviet-leader-gorbachev-lauds-george-hw-bush-for-political-abilities-character/4682566.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

 

対極にあるのはオバマでしょう。オバマは対話する姿勢がまるでなかった。上から説教をする神父とか牧師の役割を果たしていた。

この姿勢がオバマたちの姿勢。

一国スーパーパワーになってからのアメリカの政府、政策決定者たち、つまりワシントンにいる人たちは、自分たちはbenign hegemon(善意の、または良性の、覇権国)だと頭っから信じ切っており、自分たちが他国に言うことは、彼らが従うに決まってると思ってる。世界には問題がある、それは彼らが従わないこと、みたいな調子だと。

世界をアメリカが見る通りに見るのが当然だという幻想が本当に広がっているんですよ、とミアシャイマー氏が真顔で語り思わず笑いを誘う。

ミアシャイマー氏、コーエン氏、ロシア・トゥデイに出演

 

思い起こせばブッシュ父のところまでのアメリカは、ソ連があったからということもあるんだろうが、ナチュラルに他国が存在していた。ナチュラルにというか、それが普通なわけだが(笑)、で、そうであらばこそ対話する、外交するという発想にもなる。

価値観で区別をして、価値観が異なれば相手を破壊する、みたいなアホで危険なことは想定されていなかった。

オバマは教会で信徒に使徒信条を言わせるように、属国グループの発言も制していた。実にまったく恐ろしい時代だった。あれが切れただけでも、トランプには価値があると思ってる。

 

■ ちょっと妄想

で、ふと思うに、クリントンの当選というのは3回目の「奪取」だったと考えてみることも可能なのではないか。

何が3回目かというと、ウィルソン、トルーマン、クリントンで3回。

ウィルソンは、現職の共和党大統領タフト優位のところに、セオドア・ルーズベルトが突如党派を作って立候補して共和党の票が割れて、民主党の当時別に実績もなかったウィルソンが当選する。

トルーマンは、まったく無名のおっさんでルーズベルトというよくも悪くもアメリカのエスタブリッシュメントの大統領を引き継ぐ人とは到底思われない人だが、1944年の民主党党大会で怪しい動きがあって、下馬評が高かった、ルーズベルトの考えを引き継いでいたヘンリー・A・ウォレスを破って当選し、翌年ルールベルトが亡くなったことから副大統領が大統領に昇格して、1945年4月から大統領となった。

クリントンは、ブッシュ父は実績を引っさげていたが、ロス・ペローが新しい時代っぽいことを言って人気を集め、ブッシュ父は旧態依然的なおじさんと描かれていたような記憶がある。当時のトーンとして、民主、共和という2大政党制がそもそもダメなんだという論調があった。最終的に民主クリントン、共和ブッシュ、無所属ロス・ペローで投票が行われたので、ブッシュがその分割りを食って、クリントンが当選した。

 

ということで、妙な選挙があると、次に世界制覇的な動きがある、というのは偶然なの? あははは。

といって別に私はブッシュ家をかばいたい気はさらさらないんだが、しかし、ネオコン/トロキスト≒リベラル介入主義者よりは、少なくとも父は全くマシなリーダーだったと言える。

そういえば、日本の宮沢元総理という自分以外みんなバカと思ってるふしのあるあのおじいさんが、私はブッシュさんは割合好きでした、と率直なことを言っていたのも思い出す。ブッシュさんは宮中晩さん会で倒れて宮沢さんの膝にゲロを吐いたことで日本人に記憶されている。

それはともかく、並べて考えてみりゃ、ここらへんにアメリカの内戦的敵対があるんだろうな、という線が垣間見える。話がわかりにくいのは息子ブッシュがネオコンの頭みたいになったからだが、あれは要するにバカだから担がれたって話だと考えればいいんじゃないの。

 

■ 妄想2

上のようなことを書きながら、私なりに仮説を組み立てて考えているわけだが、そうなると、アメリカのことはアメリカ人が悩めばいいので放置するとして、日本人のことが気になる。多分、日本の右派は、ず~っとルールベルトを恨むことによって、現実と接合した、それなりに理解が可能な物語を構成できなくなっているんだろうな、など思う。

 


 


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゴーンの帰趨とレバノン、シ... | トップ | 差別主義的な実に差別主義的... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ゴルバチョフを騙したブッシュが先に死ぬ (ローレライ)
2018-12-02 19:20:41
ゴルバチョフを騙したブッシュが先に死ぬ因果、中国の天安門事件乗り切りに学べなかったゴルバチョフ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アジア情勢複雑怪奇」カテゴリの最新記事