米中間選挙は、上院を共和党ががっちり固め、下院はかなり民主党が頑張って勝った。まぁ予想通りといったところ。
日本のメディアでは「ねじれ」になってトランプは苦戦する~とか言ってるけど、捻じれになるということはバカな法案が出て来た時に慎重に審議する機会が必然的に訪れるわけだから、議会制民主主義にとっては喜ばしいことと言うべきでしょう。
であるからこそ、米とかカナダのような、連邦(全国)と地方が異なるレベルで選挙する国では、どっちかに偏らないようにすることは望ましいという考えがずっとある。例えば、上院も下院も州知事も全員民主党または共和党といった事態では誰も調査できなくなるかもしれないじゃないかということで、健全な疑念から普段と別の党に入れたりするわけ。
現在のアメリカは不健康そのものの議会なのでこういう発想ももう廃れてるかもしれないが、でもこの制度がある限り、重要な考え方だと思う。
あと、トランプは、いろいろと問題点はてんこ盛りだとしても今のアメリカの置かれた状況をいろんなところで変えてるんだな、というのはわかるが、この人を支える、上のような健全な懐疑を持たずに一心についてきてくれる人たち(コアの支持層)というのが、基本的に福音派とイスラエル万歳派なので、これはこれでリスク。だから、多少抑えがあった方がいいと私は思う。
■ イラン、SWIFTから外される
さてそんな中、SWIFTがイランの銀行をネットワークから外した。
対イラン、国際送金網遮断 米の制裁受け決定
https://mainichi.jp/articles/20181106/dde/007/030/045000c
【テヘラン共同】銀行間の国際決済ネットワークを運営する「国際銀行間通信協会」(SWIFT・本部ベルギー)は5日、複数のイランの銀行をSWIFTの国際送金網から遮断すると発表した。トランプ米政権がイラン核合意で解除された制裁を全面復活したことを受けた措置で、イラン経済に一層の打撃となりそうだ。
■ まだ例外があった
一方、TASSに、イランのブーシェル原発のプロジェクトはそのままだとアメリカの国務長官が言ったという記事があった。
US grants Bushehr NPP waivers from anti-Iranian sanctions, says Secretary of State
November 05, 18:35 updated at: November 05, 19:02 UTC+3
"It's a pretty complicated area, the non-proliferation issue", he said
http://tass.com/economy/1029321
ポンペオ国務長官によれば、今回の制裁の対象にならないプロジェクトは3つあるんだそうで、その一つはTASSの記者の質問で確定したブーシェル原発、あと2つはおそらくArak、Fordowの施設だろうというのはTASSの推測。
ブーシェルはロシアが原発の燃料を供給している。でもって、イランの核合意ではロシアが関与していることが非常に大きなある種の抑えみたいになってるし、濃縮したものなんかの運び出しもロシアがやってたと思う。
で、ここを動かさない、と。
この件をポンペオは、「これは結構複雑な分野、核不拡散」とTASSの記者に答えてる。
まぁそうだろう、と笑ってしまうわけだが、要するに、じゃあ一体なんなんだといったところ。実際問題トランプもポンペオも、イランの原油収入をゼロにしてやる、などと言っていたりするわけで、じゃあ核合意関係なくね?だし、実際上の成り行きを見てても問題が核にはみえない。
■ 妄想:ターゲットはSWIFTなんじゃなかろうか
で、思うに、大胆だが、今回のイラン核合意破棄の本当の目的はSWIFTという国際銀行決済システムなのではなかろうか。もちろんこれは私の妄想です。しかし、妄想したくなる。
まず第一に、SWIFTというのはそんなに大昔からある仕組みじゃない。1973年に出来た全くの民間組織。日本が加盟したのは1981年。
第二に、国連が決めたような公開で公式の仕組みでもない。
にもかかわらず、事実上、このネットワークを通さないと国際決済ができない事態がでる。
なぜなら、世界の多数の銀行が加盟しちゃったから。
そして、SWIFTはベルギーに本社を置くEU法人なのだが、取締役会にアメリカの銀行を入れて、アメリカの要求を第一に通しちゃう組織になってる(または、なっちゃった?)から。
つまり、今般の対イランの制裁のような、まったく一方的で、まったく公平性も糞もないようなものでも、もしアメリカがここに、「お前銀行Aを仲間に入れるな」とすると、その銀行Aはネットワークから外されて国際的な決済ができなくなる。
これを民間の組織が実行してる。ある意味で、いじめられっ子を加盟組織全体がなんら抵抗のすべなくいじめているような話。非上場の民間組織なので公的なステートメントを出す義務もないといえばない。
■ 焦点は欧州
そういうものに対して、前にも書いた通り、中国は基本が自前の決済システムだし、ロシアも作った。ロシア中銀もガスプロムもロスネフチもなんだりかんだりもこのシステムに乗ってる。つまり、ここからガスやら石油やらを買うなら、こっちのシステム上の口座でやり取りできますよ、という恰好になっている。
ここで書いた通り。
イラン制裁とロシア版SWIFT、トルコストリーム、南北回廊
そして、欧州も自前のを作ろうという動きがあるらしい。8月の記事では、ドイツが欧州はアメリカから独立したシステムが必要だと言っていた。
Swift turn: German FM says Europe needs bank transactions system independent from US
Published time: 21 Aug, 2018 16:41 Edited time: 28 Aug, 2018 10:53
https://www.rt.com/business/436505-germany-eu-swift-us-iran/
しかし、現在のところヨーロッパは、EU外交部が特別目的のためのメカニズムを作って、イラン取引は違法ではない、という恰好にしようとしてる。これはソ連があった時に第三者事業体を作ってそことソ連が取引するのは違法じゃない、とかいう曖昧というか、急場しのぎみたいなことをやっていたらしいんだが、その援用って感じ。
これはつまり、独自システムに待ったがかかっているのではなかろうか?
そしてSWIFTも自分からイランを外したかったようには見えない。むしろトランプ政権に圧力かけまくられている感じが強い。
今後欧州がどう出るかが楽しみだ。
■ オマケ:も一つ適用除外
上のイランの原発プロジェクトが適用除外になっているだけでなく、シャーバハールというイランの大きな港湾開発のプロジェクトもアメ様の今般のご措置の適用除外だそうだ。これはインドが推進してる。南北回廊にも、アフガン経済にとって大きいプロジェクト。
US exempts Iranian port from sanctions, citing Afghan economy
イランの中国、インド、日本、韓国向けの原油取引もだいたい適用除外になってるわけだから、ポンペオがいくら目的はイランの石油収入ゼロです、とか言ったって最初から無理。そして、欧州がここに入ってない。
アメリカの意図が本当はどこにあるのかははっきりしないにせよ、イランは各銀行が混乱して経済に支障をきたしてるとは思うが、それだけでなく、欧州とSWIFTこそトランプ政権のターゲットだったりするのではないのかと妄想したくなる。ちょっと大胆かしら、とかも一応思うけど、でもだって変よ。
70年代からという時代を見ても、これが結局一極支配に向けてやんわりとした、多くの人が知らない間にかけられた国際間の「しばり」の1つだったことは間違いないと思う。
米国大統領一期目の中間選挙で、政権党が議席を失うのは、クリントン以来のもはや伝統。分断が深刻な現状において「ねじれ」は賢い選択だったと思う。
余談だが、オバマが応援にかけつけた候補はほとんど落選した(笑)。
欧州軍と発想することで、米国も場合によっては敵になる、つまり自主性の回復というテーマが見える。
ただ欧州の場合、東部が英仏の完全な支配下にはいりたくない→米を頼る、という構造が顕著。ドイツに信用がないとも言えますね。バルバロッサなんかやるから余計にこうなった。
米議会がバカすぎて、仕方なしに士官学校出の元CIA長官が国務長官になって仕切ってるという、ポンペオ独裁でまわしてるのがトランプ政権。
民主集中制を笑ってる場合ではないのが現在のアメ。
次は何が来るのでしょうか?意図的に壊している以上、当然次のアイディアは固まっているとは思いますが、支配階層の人々らそれまでは我々大衆に教えてくれないでしょうね。
少しワクワクします。管理通貨は空手形じゃないかとずっと思っていたクチですので。
別に壊す必要はないでしょう。分散化すればいい。