先週から今週にかけてアメリカ南部を襲った寒波の余波はまだ続いている。
気温自体はあがったけど、電気が来ないというだけでなく各地で水道管が破裂しているので建物の居住性に問題のあるところも多々あるのではなかろうかと思う。
そして建物が無事で人も無事であっても、次に目にするのは恐ろしいまでに跳ね上がった電気代。
だいたい20倍ぐらいじゃないかと言われている模様。
通常4万円弱の電気代を払ってた人が、80万円もの請求書に度肝を抜かれました、とかいう話がNewsweekに載ってた。Newsweekだから嘘だ!とは多分ならないのは、仕組み上ホントに高騰してるから。
テキサスの人は全米一政府の介入を嫌う人たちなので、当然皆さん全額支払うんでしょう。
また、仕組み上、セントラルヒーティングを万遍なく供給しているところじゃないから、基本は各家庭が負担する(日本と同じ)、とも言える。
請求書が高額になった背景には、電気価格の急激な高騰がある。米国では日本と同じくセントラルヒーティングの仕組みが無く、エアコンで暖を取る家庭が一般的となっている。電気需要の拡大により、テキサス州では電気代の卸売り価格が50ドルから9000ドル(5200円から95万円)まで跳ね上がったという。
州内に暮らす男性はひと月当たりの請求が1000ドル(約10万5600円)に達したという。男性は65平方メートルのマンションに暮らしており、室温は16度に保っていたとのこと (後略)
で、そのテキサスを代表する上院議員のテッド・クルーズは、テキサスの人たちが電気もなく、水もなく寒さを耐え忍んでいる中、メキシコの保養地カンクンに行こうとしてるところを空港で写真が撮られ、大騒ぎとなって戻ったものの、非難はおさまらない。
でも、これもまた自由なテキサスならではではなかろうか。
テッド一家は、寒いな、暗いな、こんなの嫌だ。だが俺は金もある、飛行機も飛んでる、よし、リゾートだ!と判断して家族そろってカンクンの豪華ホテル行きを実行した、と。自由な個人の自由な判断なんでしょう。
そういえば、外国に行くわけだから、コロナのチェックが必要じゃないかと思うんだけど、メキシコ側で観光客をどう受け入れているのかそこは不明。テッドはアメリカ側の空港で戻ったからそこまで行かなかったわけだけど。
丸一日、テッドを非難する声があふれかえっていたけど、その中でこのコラージュはナイスじゃん、と思った。
例のバーニーの写真と、空港で腹だしてのこのこ歩いてるテッドとの対比はいろんな意味で上手い。
Bernie saw you Ted. pic.twitter.com/U8ork8Yf9A
— Jerry Saltz (@jerrysaltz) February 18, 2021
バーニーは別に聖人じゃないけど、だけど、、バーニー・サンダースが人々が途方にくれる中、よし、寒いからカンクンの豪華ホテルで気持ちよく過ごそうぜ、と判断しないことは確実でしょう。せいぜいやっても、用事があるからとワシントンの議員オフィスに避難しちゃう、ぐらいでは? テッド・クルーズにはそのぐらいの判断さえなかった。
自由には責任を伴う、とかいうのはカッコいいけど、責任取れないほどの事態があったら困るから集団で生きて助け合う仕組みを生み出したのが人類の歴史だ、などという話は多分ユーラシアでしか通じないのかもしれない。
■ 多分寒波はまた来る
twitterを見ると、アメリカの南部に寒波が来るなんて、と多くの日本人が書いていたけど、北アメリカはしばしば寒波に襲われるところ。
緯度が問題なのではなくて、大地が一続きで、北辺は北極エリアに面しているというのが問題でしょう。大洋とか大山脈があるとそこで寒気が切れたり、迂回したりすることがあるけど、北アメリカは東西にまたがって広がる障害物がない。また、カナダの領土がやけにでかいから北米の2つとも東西南北でかいと錯覚するけど、アメリカ合衆国というのは東西は広いが南北は結構短い。したがって、南部といってもシカゴの寒さが及ばない保証は全然ない。
その上にこの頃の気候は、米の南部にとってはアゲインストかもしれない傾向になってる。
最近、北極上空がとても暖かいということが問題だと言われているわけで、これが続くと、寒気が南下しやすくなるのではなかろうかと思われる。
この話。
北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ......2018年の大寒波と同じ
この説はイギリスの気象台の読みをベースに書かれてるんだけど、その予測は半分正しくなかったということじゃなかろうかと思われる。
この手法により、成層圏突然昇温が成層圏から地表にもたらす影響を追跡した結果、成層圏突然昇温で成層圏の極渦が2つに分裂すると、北西ヨーロッパからシベリアにかけて厳しい寒波が起こりやすいことがわかった。一連の研究成果は、2020年12月25日に学術雑誌「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」で発表されている。
つまり、成層圏突然昇温に伴い中・高度地帯に寒気が下りるメカニズムの指摘は正しいが、極渦が2つに分裂すると、の部分は起こらず、結果的に、寒波はかなりイーブンに、したがってアメリカ大陸側にも下りてきた、ということではなかろうか。
(16日の気温分布)
地上2メートルの気温で-20度近傍がアメリカの南部まで下りてる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/a0/832585c83a5d64e453ffebb7f6a18abb.png)
こんな図解が流行ってる。
Meteorologists saw the extreme pattern coming weeks ahead. How? A Sudden Stratospheric Warming miles above the North Pole (a natural event) with a warmed Arctic due to climate change piggy backing on that pattern = unstable PV & wavy extreme jet stream, with extreme cold & warm. pic.twitter.com/yRmapIFi2c
— Jeff Berardelli (@WeatherProf) February 19, 2021
■ 自由と寒気
で、北極上空でどうして温度が上がったり下がったりするのかは現状誰もわかっていない。
中緯度帯で環境に配慮したぐらいで収まるとは誰も信じてないのが現状でしょう。
ということは、オッズとしては、大陸内の中緯度帯は寒気の唐突な南下に備えるにしくはなし、ってところではあるまいか。
気温が数度上がろうが下がろうがいずれにしても寒いロシアは、公共インフラは政府が主体となることに異論のない土壌なので、ソ連時代からの続きで、引き続き国民の住宅のヒーティングには国の関与がある、で全然問題ないでしょう。ボイラーで一カ所で焚いてパイプを回して屋内を温める、つまりセントラルヒーティング路線をアップグレードしていくんでしょう。
中国も北部を中心にここらへんは公共政策重視路線で行ってるんでしょう。今度詳しく見てみよう。
ヨーロッパも足元は概ねこっち路線だが、先行きは不透明。ソ連から天然ガスパイプラインを敷いたことによって、寒い北ヨーロッパがどれだけ安価に暖かくなったことか、考えてみない人たちが、ノードストリームを廃止せよだの、ロシアから資源買うなだのと馬鹿なことを言ってるわけですが、やるならやれば、というところ。
それに対してアメリカの南部、とりわけテキサスは自由万歳主義を貫きたいと思ってる人が現状多数。私はこれを悪いとは言わない。それも生き方。好きにして。
日本は、全体としてみれば、大陸ほどにはならないけど、でも、北東北以北はそれに準じた備えが必要な場所だと思う。
とか書きつつtwitterを見たら、妙なものを発見。寒気より自由派が日本の世の中を仕切ってるらしい。
外務省は電力の専門家じゃないのに、適当なこと書くな。「発電に合わせて需要を調整」ってどうやってやるんだ。再エネの変動を蓄電池だけでカバーできると思っているのか。 https://t.co/1oizKVBYig
— 池田信夫 (@ikedanob) February 20, 2021
「需要に合わせた発電」から、「発電に合わせて需要を調整」するのが デマンドサイドレスポンス、って、文字面だけ見てたら、ああそうですかと思う人もいるかもしれない。
そしてこれが、通信回線の量ぐらいならなら、まぁそれでもいいかという局面もあるかもしれない。
しかし、人が温まる、電気をつける、水を飲むといった行為の総体を需要とした場合、発電が間に合わなかったら需要を調整するとは、つまり、最低限のインフラを使えない人がいるということ。
わかって言ってるんだろうか?
というか、そもそも、日本ってヤマトが主体だから、北に対する配慮、寒さに対する理解が乏しい国ではあるんですよ。だから、ここらへんがいい加減になる素地はもともとある。そうであれば、もう北関東以北は自治共和国化して人民を守ろうとかいう話になるしかないよ。そうなると、建武の新政後の混乱みたいになるのかもしれない。
福井県や京都府あたりを境に南北分断をねらっているのか?
第二の朝鮮半島化か?
「・・・(検針票)を紙でのお届けから、Webでのご確認に変更いたします。・・・2021年3月より、紙の検針票のお届を終了し、電気料金・電気使用量などのご確認はWebにてお願いすることにいたしました。これにより・・・、ペパーレス化を進め、環境への負荷低減に貢献してまいります。 云々」
政府はデジタル庁などを設け、ペーパーレス化を進めるとしているがこのような身近なところで進められるとは驚きである。東電は電力の供給者優位の立場で勝手に「Webでのご確認に変更」し、「紙の検針票のお届を終了」するのだ。
このことについてメディアの報道はないようだ。電気使用料は生活者・事業者にとって大きな関心事であり、いちいちWebでの確認などたまったものではない。大半の家庭・事業者は口座引き落としにしていると思うが。通知のないまま勝手にペーパーレスの名のもとに口座から電気料金が引き落とされることになる。東電に苦情を言えばしれーと「Webに載せてます」と言うだろう。我々電気使用者は料金支払いを集金に切り替えることもできるのだ。
ある国家がその構成員たる人々を助ける気はない、というのなら、その構成員が独立を求めるのは当然ではないでしょうか?人は石でもデジタル信号でもありません。
日本の歴史もそういう混乱の繰り返しです。
デジタル化の浸透についても、その利便性を理解しつつもアナログの長所も捨てがたい部分があると感じています。
ついつい「どちらか!」というような100対0の考え方にとらわれがちですが、できることなら「どっちもありだね、」みたいな心もちになりたいと思っています。
何のための政府?外国の内政干渉には熱心なくせに。
自由とニグレクトは違う。