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昭和ヒトケタ生まれの陛下

2018-12-23 23:36:41 | 参考資料-昭和(後期)

今日は今上陛下のお誕生日。天皇として最後のお誕生日ということで比較的長い動画を公開されている。

テレビでは朝からこの話をしていた模様で、沖縄への思いは変わらない、というところや、平成の時代が戦争のない時代だったことに安堵しているという言葉が取り上げられていた。戦争のない時代だったことに安堵しているというのは本当に心からの本心だろうなと思った。

「旅終えようとしている今 国民に感謝」陛下85歳 最後の天皇誕生日

 

私が、おお、と思ったのは、平成の時代状況を語る下り。東西冷戦も終わり、

これからは国際社会は平和な時代を迎えるのではないかと希望を持ちました。

しかしその後の世界の動きは必ずしも望んだ方向には進みませんでした。

 

望んだ方向には進まなかった、つまり、私はそれを望んでなかった、ということ。

これはとても強いおっしゃりようだと思う。ただの事実文じゃない。

私流に解釈すれば、つまり、冷戦終結を語り人々に幸福を約束したかのようなふりをしながら、その多幸感を己の欲のために利用した奴らがいたことはまったく残念な話だったぞ、という話ではないかと思うわけです。

NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた

2017-12-15 18:07:35 | 欧州情勢複雑怪奇
 

冷戦終結の多幸感を利用したツケを払うアメリカ

 

そのような認識を示されたことを、同時代を生きた者としてうれしく思った。

 

■ 昭和ヒトケタ生まれ

そして、この姿勢の天皇がイヤであるばっかりに、日本の「右派」の一部は天皇を輩出するご家族に対して、ほとんど人権侵害もいいとこといった大攻勢をかけて、自分の好みの奴を作ろうと画策していていたのだろうと思う。こういう人たちにとって天皇は「玉」でしかないから。

そういう中で、いわゆる「先の大戦」で犠牲になった人々が多々あり、その果てに今日を築いていることを忘れないように伝えていくことが重要だ、とのお考えからいろんなところに行かれたんでしょう。

どうしてそう考えるに至ったかといえば、それはやっぱり敗戦に至る惨めな戦時中から戦後の記憶がしっかりある世代の方だからではなかろうかと思う。伴侶となった人も、上流階級によくあるような10も15も年下といった人ではなく同世代の人だったため、記憶や想像の及ぶ範囲を広げられる環境にあったともいえるかもしれない。

終戦の時日光に疎開してらしたというのは有名な話だが、その場所は最近行ったらなにかとっても立派な感じになっていたが、昔小学生か中学生かの頃に行った時には広いけど質素な木造建築だなと思った記憶がある。ああいうところで敗戦を迎えた皇太子さまという印象を私は持っていたし、そういう時代でもあったのだな、などと思っていたのだが、最近のきれいでいかにも伝統文化財です的な感じではそれはわからないのではなかろうかと思ったりもした。

 

それはともかく、昭和ヒトケタの人と、二ケタの人では「先の大戦」に対する受け取り方がかなり違うことが多い思うと私はしばしば思って来た。一ケタか二ケタかよりも個人の生活史の方が重要なこともあるが、雑駁にいって、一ケタの人は敗戦時に最低でも10歳を超え、人によっては日中戦争からの記憶がある人などもいて、社会がおかしくなっていったことの果てに、多くの人が、親戚や友達、その友達の親戚という近しい人たちが死んでいったことを知っている。

一ケタより前の、大正8年生まれの加藤周一になるともっと大人だから、自分は戦争で傷ついてはいないが(医師だったためおそらく徴兵が猶予されていたのだろうと本人がいう)、あの戦争は私の友人を殺した、だから彼が生きていたなら言わなかっただろう、しなかっただろうことを私はしてはいけないのだ、みたいな強い自我を示したり、人によっては具体的に抵抗を試みた人たちの動向も知る。一ケタはそこまで行かない。行かないが、個人ではどうしようもないほどにどうしようもなかった時代に生きた者としての何かが捨てがたく刻印されている(と遥か後の私にはそう見える)。

それに対してそれ以下の人たちは、敗戦後の混乱からしか記憶がない。そこから、敗戦は悔しいもの、米軍は怖いもの、みたいなところから入ってくる。ここから抜けているのは、社会がおかしくなっていくざわつきや、次第次第に本当のことを言えなくなる、ものを考えるのが恐ろしくなる等々の変化に対する認識であり、そしてもう一つ重要なのは大陸の様子でしょう。大陸にかかわってかかわって、その果てに真珠湾が来るという大事な経緯が若い世代の記憶の中にない。

そこから、「先の戦争」に対する受け止め方が異なるのではないのか、と私は思う。

これは、個人的な体験の中で、本当に徴兵されて戦争に行った世代は私の祖父や大叔父の世代なのだが、この人たちが語るものとその子たちである両親の世代はしばしば異なっていると気が付いたことから、どのへんで分かれるんだろうかとかいろいろと考えて来たことによる。

 

といったことから昭和8年生まれの今上陛下を思うに、「先の戦争」に対する感じ方は圧倒的で、そして長い世代だろうと拝察してきた。そしてお立場から来るのであろうある種の慚愧の念をそのままにせず、それを責任感に繋げているという点では優れた資質を持った勇気のある人だとも思ってる。

 

■ 大日本帝国を終わらせる

総じて思うに、今上陛下のお仕事は、大日本帝国を終わらせることだったのではあるまいかなどとも思う。本当はこれは、1945年か、あるいは1947年から開始されるべきだったことだが、いわゆる冷戦によってそれができなかった。

だからこそ、冷戦という特異な時代が終わった今、自分の仕事は近隣諸国との過去を清算し、大日本帝国ではなく日本にすることだとお考えになったのではなかろうかと拝察する。

だからこそ、即位式にあたって、日本国憲法の堅持を誓われた。

そして、それが故に、上で書いたように、右派の一部は抵抗を試みた、と。そして残念な時代背景も強く、この試みは道半ばとなった。

結果的に、それら右派、私にいわせりゃウクライナのバンデラ主義者の兄弟分のような右派は破れるものの、バンデラ主義者の通った後には憎悪と妄想しか残らないのと同様に、後にはゆく宛てのない憎悪と妄想が残る。

これをどうやって回収していくかが今後の大きな大きな課題となるでしょう。マジでもう大変って感じ。

ウクライナにはどんなことがあろうとも最終的には強い兄弟であるロシアがいるが(今だって、結局多くのウクライナ人はロシアに逃げる)、日本にはそういう関係にある人たちはいない。私たちは感情にまかせてバカになれるほど恵まれたポジションにはいないことをそろそろ理解した方がいいと思う。金持ってるから大丈夫、というのはオールマイティーではない。

 

■ 中露の反応

中国Global Times(環球時報)は、他の西側の媒体も同様だが、宮内庁の英文を使って、

http://www.kunaicho.go.jp/page/kaiken/showEn/25

第二次世界大戦で多数の人々が命を落とし、戦後の平和と繁栄はその上に多くの日本人の犠牲と努力の上に成り立ったことを戦後生まれの人に正しく歴史を伝えるべき、そして、平成の時代が戦争がなく終わることに安堵している、というところを引用していた。

"I have believed it is important not to forget that countless lives were lost in World War II and that the peace and prosperity of post-war Japan was built upon the numerous sacrifices and tireless efforts made by the Japanese people, and to pass on this history accurately to those born after the war," he said.

"It gives me deep comfort that the Heisei Era [his reign] is coming to an end, free of war in Japan," he said.

http://www.globaltimes.cn/content/1133296.shtml

 

さらに、二度、彼の父とは違って、と対比させているところもポイントでしょう。

また、

そして、明仁天皇は歴史を忘れないようにと主張しているが、これは日本の戦時中の事績を賛美しようとする保守層のイデオローグとは鋭い対比をなしている。

His insistence on remembering history is in sharp contrast with conservative ideologues who have attempted to gloss over Japan's wartime record.

と、現在の政権周辺とも異なることを見ている。まさしくホントなので、なんの反論もない。

 

ロシアは、プーチンが天皇陛下にお誕生日おめでとうございますのメッセージを送ったという簡単な記事がTASSに出た。その後クレムリンのサイトにメッセージ内容が出て来たが、簡単なおめでとうメッセージ。だがしかし、

私は、ロシアと日本の関係が、両国の国民のために、そしてアジア太平洋の安全と安定のためになるよう発展していくだろうと確信していることを表明したいと思います。

I would like to express confidence that Russia-Japan relations will continue to develop, both for the good of our peoples and in the interests of security and stability in the Asia Pacific region.

http://en.kremlin.ru/events/president/news/59475

 

と本文にあるのが、今日非常に喜ばしい言葉であると私は感じる。

これはつまり、自分の国の政府周辺が信用がおけないので、周辺各国の皆々様にはくれぐれもよろしく、馬鹿が暴れたら適度にいなしつつ、安定に持っていってくださるようお願いしたいという、そういう心境ですね。マジで。なんの掛値もレトリックもなしで。実際問題、中露が強く賢いことが日本の暴発を防ぐ最大の装置ですから。こんなことを考えなければならないことは、まったくもって嘆かわしく、慚愧に堪えないのだとしても。

 


 


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4 コメント

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手負いの暴れ馬を宥めて乗り切る。 (ローレライ)
2018-12-24 05:55:32
トラウマ憑きの手負いの暴れ馬である日本を乗った、脚を折る事故があっても仕方ない話で、実際にメルトダウンしている。
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公海で韓国駆逐艦にアオリ飛行する海自へメッセージ (ローレライ)
2018-12-24 07:51:03
公海で韓国駆逐艦へアオリ飛行する海自の戦争アオリ行為へ早速、天皇のメッセージと言う内容。
返信する
手負いの暴れ馬 (ブログ主)
2018-12-24 13:37:53
ローレライさん、

「トラウマ憑きの手負いの暴れ馬」っていいですね。実際そんな感じの存在でした。しかし現在は馬も年を取り、暴れられないんじゃないかと思ったらまた出た! それが「憑き」である所以でしょうか。

歴史を正しく伝えることが大事ですという陛下のおっしゃりようは、要するに、憑き物落とせよ、って話ですね。求む、陰陽師!
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旧民法における家父長制の残滓 (私は黙らない)
2018-12-27 07:07:20
毎回思うのだけど、今上天皇は、父親の戦争責任を自覚し、その贖罪の一生だったのではないかと思った。美智子さんに言及し、声を詰まらせる場面では、つい私も眼がしらが熱くなったが、次に続いた言葉でガックリきた。当然次に発せられる言葉は「ありがとう」のはずが、何と「労い」だった。ありがとう≒労い。国民に対して、感謝と言えるなら、妻に対してなぜ感謝と言えない。戦後民主主義の象徴であるなら、家父長制を否定した、男女平等の価値観を皇室自ら体現したらどうか。両性の合意に基づく、新しい家族のあり方を皇室自ら実践することが象徴なのではないか。
些細なことにこだわるようだが、折に触れ、皇室にのこる前時代敵な残滓が、いまだに日本の社会を束縛しているような気がしてならず、残念。
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