ちょっと小忙しくしている間にも国際情勢はギクシャクが続いている。まぁずっとそうだと思うけど。北朝鮮にまたまた波風の予感みたいな感じになっているのは、中東、南シナ海 etc.とのかね合わせとして理解しているけど、どうなることでしょう。
欧州方面は、イラン核合意を反故にすると言い出したトランプに対する批判が高まっている。高まっているけど、でも欧州のリーダーは威勢のいいことをいっても最後にはぐだぐだになる確率が高いので、冷たい目で見ていようと思う。
そんな中、先週からドイツが外相、経済相、メルケルがロシアを訪問。
昨日はソチでプーチンに会った。プーチンはソチの公邸で迎えるにあたって、ブーケを持ってメルケルばーちゃんを迎えた。
微笑むべきなのかどうかわからないけど、でも、ロシアの習慣からすると実は大したことはないとも言えると思う。勲章を渡したりするシーンでも、女性にだけブーケが贈られるのがデフォだから。見てて、むしろ男子がかわいそうじゃないかと思う私は、日本の女子なんだろうなと思う。
日本は圧倒的にスタイルとして男子を上に置く文化、根深く(本当にそう思ってるか否かはどもかく)。男の人が手ぶらで、後ろからお母さんが荷物持つ、みたいなところから、各種の式でおとーさんが一言申し上げるの役で、そこまでの舞台回しは妻が担当というのは今でも普通によくみられる光景。多分、だから、トロフィーワイフ的な美人の奥さんが好まれないのではないのかなどとも思う(悪目立ちするほどの美人は下仕事をしたがらない確率が高いと考えているのだろう)。
と、メルケルに戻って、なんとなくロシアが歓迎している様子を見ると、西側の新聞とかだったら、孤立した状況を打開しようとロシアが欧州のリーダーであるメルケルを懐柔しようとしている、みたいなことを書きそうだけど
ノルドストリーム2とイラン投資の2つがかかっているドイツ(産業界)としては、ロシアと喧嘩してる場合ではない。
ノルドストリーム2を作らせたくない米が、いろいろ脅しをかけているので(今に始まったことではないが)、ドイツ側に不愉快が募ってるような状況。
US threatens to punish Russia & Germany if they continue playing with gas
https://www.rt.com/business/427096-us-threat-sanctions-russia-germany-nord-stream/
基本状況として、安価なパイプラインで、信頼できるガス屋さんであるロシアと商売を止めたら、産業界はエネルギー供給に振り回されると理解しているから、こぞってなんとかしてパイプラインは守るという姿勢を崩さない。
その上で今度は、イランと商売するなと言われている。
ドイツ経済相、「ドイツ企業120社はイランで活動を継続する」
http://parstoday.com/ja/news/iran-i43998
ドイツのアルトマイヤー経済エネルギー大臣が、イランのアルダカーニヤーン・エネルギー大臣との会談で、「ドイツ企業120社はイランで活動を続ける」と語りました。
このへんは2014年にウクライナ問題に端を発した制裁で、ドイツ企業6000社がロシアで商売をしていて、それでもロシアに残るという選択をしていた企業がかなり多かったことを思い出す。やる気があれば方法はあるってところもある。
というわけで、
先週はドイツのDer Spiegel誌がこんな表紙を出したというので大騒ぎになっていて、中身もこの調子で、要するにアメリカ・ファーストのトランプの予測できない動きに危機感を持つぞ、という話を書いているのだが、実のところ、ドイツをユーラシア側から引っ張ろうという大西洋主義者の動きは、トランプが始めたことではない。
で、前にも書いたけど今回の米財務省の制裁はとても厳しいので、ドイツ他の、米には屈しないとかいう騒ぎは、もう少し具体的に何をするのかが見えてこないと、すぐにしぼんでしまう可能性もなくはない。
EUもトゥスクはじめ、みんなして米を批判してイランとの核合意を維持できる仕組みを作ると言ってはいるが、欧州企業が、米の制裁なんかかんけーねーよ、と通常通りイラン事業を行っていたとして(正統ではあるが)、米財務省に、お前は制裁破りだ、テロ支援だといった容疑をかけられ、罰金 or 米資産没収 etc. というターゲットになったらどうするのか、の部分を詰めてないと、現実的な解決策にはならんでしょう。
イラン・欧州外相会合、核合意維持に向け現実的な解決策探る
https://jp.reuters.com/article/iran-nuclear-europe-idJPKCN1IH027
上手く行く方向に見えないのは、制裁の内容もさることながら、これがドイツ単独で行動しているんだったら、中国、ロシア、インドとの関係を重視した方がドイツの将来にとって良いに決まってるだろ、で話はつくんだが、欧州内のイラン合意反対にイギリスも加わってる、これではこの結束の有効性に疑問がつく。
ついでにいえば、一方で、イラン核合意の重要なプレーヤーの一人であるロシアに、下りないでね、イランを支えてね、枠組み堅持してね、と言いつつ、対ロシアの制裁は続行。EUは今回も米に従ってる。もう、あんたらに脳みそや balls があるようには見えないと誰もが思ってるところ。
Russia reserves right to respond to EU’s expansion of anti-Russian sanctions — diplomat
http://tass.com/politics/1004242
このラウンドの制裁は、まだロシアが米にもEUにも報復制裁をしていないが、権利を留保しているとロシア当局者は再三言っている。
というわけでメルケルとプーチンは一体何を話したのだろうかというのは興味深い。今後の動きによって知るしかないわけだが。
メルケルは来週は中国を訪問。日本の安倍ちゃんはロシアを訪問。
何が出て来るんでしょうか。
その後は、日程的に上海協力機構の総会。
こっちに目を転ずると、中国とインドが対話関係になってきたのがわけても大きかった。
イランがらみでもインドの役割は大きい。イランの石油をたくさん買ってるし、今後も伸びしろがある。トルコもそうだが。
現在のトレンドとしてもインドはイランから史上最高レベルで石油を買ってる模様。ここらへんもアメリカからしたら「はがしたい」んだと思うんだな。
India raises Iran oil imports in April to highest since October 2016 as US sanctions loom
プーチン大統領はアサド大統領、メルケル首相と立て続けに首脳会談ですね。やはり感情論は抜きに、少なからぬ首脳が彼を恃まなければならないのだと改めて痛感します。
イギリスのメイ首相辺りは面白くなさそうですが…「ロシアに狙われた」とされる元スパイ・スクリパリ氏も無事に退院しましたしね。
(ご本人のご回復は何よりです。彼が無事だったことは逆にロシアの関与の根拠、殺害の意図を疑わしいものとしますね。ところでロシア政府とソールズベリーの病院長は彼の回復に安堵するコメントを発表しましたが、肝心のイギリス政府からはスクリパリ氏を気遣うコメントは出たのでしょうか。出されていないとすれば非常に心が痛みます)
独ロ首脳会談といえば、こちらの記事
ロシア大統領が独首相と会談、パイプライン計画で米けん制
5/19(土) 4:30配信
ttps://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180519-00000005-reut-m_est
で、
「ロシアによるクリミア併合以後、両国関係は冷え込んでいるが、天然ガスをロシアから欧州北部に送る「ノルドストリーム2」計画に関しては利害が一致している。」
とありますが、今となっては何のためにロシアのクリミア併合に反対したのか分からなくなりそうです。
私が不勉強なだけでしたら申し訳ありませんが、正直なところ、今のドイツにとってウクライナのクリミアがどれほどの価値を持つのでしょうね。
大変世知辛い話になりますが、どこの国も自国の権益さえ確保できれば、(人道的な介入は別として)必要以上に他国のことに踏み込みたがらないものだと思うのですが。