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揺れる12月:アフガン、ウクライナ問題、英総選挙

2019-12-11 22:36:09 | アジア情勢複雑怪奇

世界中がなんだか、ホントに混乱しておるなぁといった趣の12月。

そんな中、アメリカでは弾劾騒ぎは収まらず、まだなんかやってる。これは結局ウクライナ問題と言ってもいいところが巨大にある。

昨日はノルマンディー4というフォーマットの会合がパリで行われ、メルケル、マクロン、そしてプーチンとゼレンスキー大統領(ウクライナ)が会った。後者の2人は初会合。ゼレンスキーが大物に取り囲まれてギクシャクしていたのが非常に印象的だった。そりゃそうなるでしょう。この話は別途エントリーしたい。

他方、アメリカではワシントンポストが、アフガニスタンの戦争についてオフィシャルは嘘ばっかり言っていたのだ、といった趣旨の大きな記事を出した。

"Undeniable Evidence": Explosive Classified Docs Reveal Afghan War Mass Deception

https://www.zerohedge.com/political/unearthed-pentagon-docs-reveal-afghan-war-deception-new-pentagon-papers-moment

上手く行ってる、みたいなことを次から次から出すけど全然違うだろう、と。そして軍のエライさんたちもみんな何がなんだかわからないままにやっているという説明。

いやしかし、だってこれって別に軍が単独で企画した侵攻作戦じゃないのに、今さら何を寝ぼけたおとを書いているんだろうかといったところではある。だがしかし、ワシントンポストというCIAの声といわれている紙面がこういう記事を書いたのは、上手く行ってないんですからね、と周知したい事情があるんでしょう。

 

NATOの迷走&アフガニスタン

 

 

さてさて、イギリス。

いやぁ、イギリスの総選挙が面白くなってまいりました。

当初、保守党(トーリー)が単独過半数を取るのではないのか、みたいな予測が出回っていたわけだが、徐々に労働党(レイバー)が押していて、さらに、自由民主党(リブデモ)でもなんでもとにかく戦略投票を呼び掛けるグループが出てきた。

つまり、キャンペーンが次第に、トーリー打倒になってきている。

もちろん、Brexitが大問題ではあるわけだけど、これを長々とやっている間に政治が停滞し、しかし、逆に裏取引の政治が富裕層の中で行われてる、と少なくとも庶民からは見える恰好になってる。

とりわけ、NHSという国民保険制度の資金不足は深刻で(今に始まったわけではないが)、これを立て直すべきだという声が大きくなってきている模様。

そして、アメリカの製薬会社が高い薬を押し付ける算段をしておるだろう、という話がでまわってきて、NHSを守れという考えを持つ人たちに危機感を持たせている。

これ、事情はまったく日本と一緒だね。

 

ということで、まぁ実際イギリスの保守党は富裕層の党なので、こうなってくるといい加減あいつらに任せておくのは間違いだという線で労働党に、あるいは少なくとも戦略的投票に理解を示す人は以前より増えたんじゃなかろうか。

でもって、現在の労働党は、ブレアのリベラル・タカ派路線の労働党ではなくて、まったくの左派で、かつ、反戦のコービンの党なので、ここが強くなることが示唆することは現在の国際情勢にとっては結構大きいね。

これがつい1.5日ぐらい前のコービン。13分ぐらいから。

Campaign Live: Labour leader Jeremy Corbyn addresses rally in Bristol | ITV News

 

普通のじいーちゃんみたいに見える人ではあるんだけど、コービンは議会で演説している時じゃなくて、民衆の中に入ってる時のスピーチは、なにかこう、パンク・ロッカーを感じさせるものがある。しゃがれた声で畳みかけるようなことを言う。

「jeremy corbyn bristol」の画像検索結果"

 

こういうのを見てると、富裕層の意向はともかく、前にも書いたけど、基本的にブリッツはコービンみたいな感じの人に一定の好感を持つに決まってるんだよ、と思うわけですよ。

英軍が射撃の的にしようとも(野党党首を射撃の的にする英軍、ユダヤ系がイギリスの労働党は反ユダヤ主義だとかいってあっちでもこっちでも噛みつこうとも(労働党はパレスチナにシンパシーを持つから反ユダヤといわれる(笑))、屈しない男。これはやっぱり、stiff upper lip(耐えろ)を国民道徳のボトムに置くブリッツがどこかで認める男ではあるでしょう。

 

ロンドン火災:本物とお人形

で、これってまさしく、stiff upper lipの趣なんだろうと思う。stiff upper lipは、唇を固く引き締めた状態を保て→気を落とさず、油断せず、耐えろ、ってことで、困難の時にブリッツに奨励される態度と考えられているわけですね。

まぁ、コービンも別に風貌が悪いわけでないし、下品じゃない。あと、比較相対的に現在の保守党政権の面々が怪しすぎるってのもわかる。ブリッツ(特にむしろEnglish)が望む政治家は、現在の保守党首脳部のような、軽い感じの奴らではないだろう、などとも思う。困難の時に、ロシアが~だの、左翼が~だのと叫んでメディアを使ってインチキしようとするボリス・ジョンソンはブリッツのお手本ではないわけです。

 

個人的にはボリスはボリスで面白いんだが、しかし、ブリッツにとって、という視点で見た時、ボリス・ジョンソンはブリッツ色が薄い。コスモポリタン・ブリッツって感じ。事実、自分で言ってる通りボリスは「一人メルティング・ポット」だし(先祖が様々な国の人)、イギリスが中東に大きなプレゼンスを持たなかったら決して生まれなような出自。

 

■ どうなるのか・英

で、英の選挙はどうなるんだろうか。まだ数値的には保守党優位なんだろうとは思うんだが、なにせここは小選挙区発祥の地なので、人々はこの仕組みを使いこなせる可能性が他のどこよりも大きい。

すなわち、戦略的投票が効果を上げる可能性はあるのじゃなかろうか。

つまり、保守党と労働党だったら保守党が一般的にリードしてますと世論調査が言おうとも、個々の選挙区で、保守党を打倒するために、労働党+リブデモ+その他で勝てそうな候補に投票するという人々が多ければ、かなりのことができる。

現在の労働党はオールド労働党(≒左派・反戦)なので、NHLなどの社会福祉を潰していく保守党を打倒することがまずテーマ。

そこに、Brexitは辞めさせるべきだという、いわゆるニュー労働党路線(≒ネオリベ、リベラルタカ派)の人も、文句を言わずにコービン率いる労働党と一緒に戦ってる始末。

さらに、俳優のヒュー・グラントなどがそうだが、Brexitを合意なしでもやるとかいってる現在の保守党政権はおかしい、これは国家的危機だと叫ぶ人たちが登場して、精力的に各地を飛び回ってたりする。Love Actuallyが現実になったといって話題をさらった。

"Anywhere in the country where a Tory can be beaten, they have to be beaten. The country faces an emergency"

https://twitter.com/Doozy_45/status/1204352520786784258

 

対して、保守党は手薄。Brexitを達成しても、国民医療制度が崩壊したらイギリスは建て直せなくね?となると、イギリスのネトウヨも考えないとなんない。そして、イギリスのネトウヨには、日本のような「中韓憎し」というおいしいネタが現在ない。

イギリスのヘイトは、もっぱらロシアに向けさせていたのだが、現在Brexitを支持している人たちは必ずしも反ロシアではなく、むしろウクライナの一件で反EUを騒ぎで団結していった経緯さえある。

したがって、現在イギリスのマスコミが総力をあげてやっている反ロシアキャンペーンは、現実には保守党のためになってないと思う。むしろ、ウチの内閣と主流メディア=エリート層・富裕層はいよいよおかしい、これはチェンジだ、と向けさせただけだったと思う。

保守党政権を続けさせたかったら、ロシアとの関係を(疑似でも)正常化して、頼れる保守党を演出し、同時に、リベラル・タカ派路線の労働党の責任を難詰する、というのが最も賢かったんじゃなかろうか。(日本の自民党の作戦はこれだね。民主党時代が不安定だった、と)

これができないのは、MI6などの諜報関係、軍産関係が、アメリカを取り込んでウクライナ紛争の長期化を望み、したがって、疑似冷戦を作ろうとしているから。つまり、必ずしも政権は一枚岩ではない。

結果的に、総選挙後、ハング・パーリアメント(単独過半数が取れない政権)、または労働党首班の政権ができたら、これら背後の秘密クラブみたいな有象無象の衆はどうなるんだろうか?

興味深い。実にまったく興味深い。

 

■ どうなるのか・西側全体

英の総選挙の結果が、仮にすれすれで保守党が買っても、富裕層以外の国民を無視してきた保守党じゃダメだといった線は消えないのではなかろうか?

この間コービンが、アメリカの大手製薬関係者は、マーケット、マーケットというけど、イギリスの保険サービス(医療サービス)は、1948年国民保険サービス(National Health Service)を設立して以来「マーケット」ではない、と言い切っていた。

国民保健サービス

このセンスは、国管掌の保険制度を持った国においては、大なり小なり当て嵌まる。この市場に任せりゃいいんだ、という発想との戦いの中で、貧乏人でも医療を得られるようにすべきなのだの考えが優位に立ち以降こうした制度が確立された。

日本とかドイツはある種総力戦国家体制にしていったので、その補完機能として、国家に任せろといった発想から年金、医療制度が組み込まれて行った。

イギリスは、戦後(厳密にはまだ戦争中だったが)始めて開かれた議会で労働党が勝って、アトリー政権が福祉国家路線を取り、その中で国民医療制度も確立していった。

ゆりかごから墓場まで

というのがスローガンだったとはそういえば教科書にも書いてあった。今もあるの?

 

理念の問題もあるだろうけど、現実的にいえば戦後直後イギリスは金はないし、一部は戦場だったからそこも復興させないとならないし、復員してきた兵の面倒もみないとならないし、といった事情から、戦争魔チャーチルが長いこと根城にしていた保守党が偉そうなことを言っていたらもっと大きな政変さえあった可能性がある。したがってこのへんの政策は誰にとってもよかったんだろう、と言っていいんだろうと思うが、いずれにしても、長い間、労働党や独立的な人々、自由党の一部などが掲げていたものがマジで実現したのはホント。

 

でまぁ、そこから40年。80年代、サッチャー・ロン・中曽根時代になって、福祉を充実させようという考えが達成したことの意味をみんな忘れたわけですよね。中間層が育って、もうそんなに貧乏な人はいないだろう、みたいな迂闊な感じが支配的だった。

そして、そこからさらに40年近く経って、気がついたら先進国というのは千代に八千代に豊かでもなければ、貧乏な人は日々増え続けるというのが明白になった。そのうえ、教育機会の問題からこのままいくと「国力」を落とすという懸念も現実のものとなった(つまり、いわゆる右派、国権派にとっても見過ごせない事態)。

ということで、いろいろと修正したり、考え直していく季節になるんじゃないだろうか。

イギリスの選挙は、その突破口として注目していきたい。

 

■ オマケ

日本の「リベラル」と自己規定している人たちは、自分たちの側にも間違いがあったとは露ほども思ってない感じがする。安倍こそ諸悪の根源みたいな。いやしかし、それだけではないわけですよ。

自分で蒔いた種「ネオリベ」を超えられるのか

自分で蒔いた種「ネオリベ」を超えられるのか (2)

 


 

 

 

 

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1 コメント

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ジェレミーへ (セコイアの娘)
2019-12-13 07:55:19
ジェレミーコービンさん、あなたがEU離脱を問う国民投票で、EU残留を訴えた時、私は信じられなかった。とてもガッカリした。イギリスの労働者のために、当然EU離脱を訴えると思ったからだ。
二度目の国民投票はありえない。国民投票の結果に不服だからといって、再度国民投票をしていたら、国民投票の自己否定になる。国民投票をする意味がなくなる。
あなたのNHSに対する発言は正しい。国民が貧しくとも医療を受けられるというのは、基本的人権だ。経済活動の自由に勝る。
惜しむらくは、あなたがEU残留に組したことだ。致命的な戦略ミス。私はあなたに政権をとってほしかった。とても悔しい。
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