習近平が人民解放軍に戦争準備を強化しろと命じたそうだ。
Xi orders PLA to step up war-preparation efforts
Source:Global Times Published: 2019/1/4 23:28:40
http://www.globaltimes.cn/content/1134637.shtml
Chinese President Xi Jinping on Friday demands the People's Liberation Army (PLA) to strengthen its crisis awareness and enhance battle-related activity as the country faces increasing challenges.
アラート状態が継続しているロシアやイランとは異なりバトルモードの体制は比較的緩やかだったところを、危機に敏感に対応できるよう強化しろということらしい。
そういえばイラン海軍が大西洋に行くぞと何度か表明しているらしい記事を見る。
ということで、大陸側のロシア、イラン、中国が揃って戦闘態勢に対する意識レベルを上げる、ということですね。
環球時報のこの記事のすぐ下に、ロシアの宇宙開発機構ロスコスモスのロゴジンが、月の裏側に行った中国チームにおめでとうのメッセージを寄せた、とあるのも、さりげなく書いてあるけど今日を象徴する大状況なのではあるまいか、でもある(ちなみに、ロスコスモスとNASAの関係はおりからの米の政治状況で良くない風なので、これがどう動くのかも非常に問題)。
で、ふと、ロシアのTu-160がベネズエラを訪れた時に、The Sakerという軍事に強い強力ブロガーが書いていたことを思い出す。
Tu-160がベネズエラに行ったことを米はあんまり騒ぎたくもないし、見たくもないだろう。
事細かに話せば、ロシアは別に数機の爆撃機を1万キロ移動させなくても北極海側の基地からアメリカを爆撃できる能力は持ってることを問題にしなくてはならなくなる。
しかしそういうことはやりたくない。そもそもアメリカは全然守られてもなければセーフでもない。そもそもそういう態勢だ。
なぜそうなるのか。それはロシアも中国もアメリカを攻撃してくるなどとはアメリカの支配者層は想定していないからだ、と。
歴史を見ても逆ばかりだろう、と。
Plan Totality (1945)、Operation Unthinkable (1945)、Operation Dropshot (1949)など、いずれもソ連の都市を爆撃して、何千万人かを殺して「勝つ」という作戦をプランニングしているのが「素晴らしい西側の価値観」というものだ、と。
そして、ロシア(イランも)の周りにびっちり基地を作って、圧力をかけて、なんてことだ、ロシアは戦争を望んでいる~と騒いでいるのがNATOとかいうフシダラな集団。
まぁそういう話です。この倒錯をなんと呼んだらいいんだろうってこと。
いやそう呼べばいいんだな。米(英)覇権時代とは倒錯の時代である、と。
で、中国は冷戦時代の後半はアメリカ側だから、なんとなくアメに脅かされていないような印象を持つ人もいるかもしれないが、建国以来の50年代、60年代には中国のまわり中でCIA主導のオペレーションが行われていた。ダライラマはその残滓。台湾問題もこの残滓だし、インドネシアが異常な反中なのも人工的だし、その間の地域の混乱もこの残滓。
で、冷戦を終わらせたはいいけど現在の惨状がある。
結局、周辺側は、米英のみならず欧州も日本近海側も、結局のところ平和裏の共存体制を確立する努力をしたくないらしいというのがある意味冷戦終結の結果というべきでしょう。
であるならば、大陸側はアラートかけて、来るなら来い体制にすることで周辺側とあやういバランスを取ることしか道は残されていない、というのが帰結じゃないですかね。
去年3月のプーチンの総括もそこですね。強制MAD(相互確証破壊)とは、バランスするからな、との宣言。
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
結局、西側は軍事覇権だったので、軍事的に敗北しないと止まれないのかもしれないという暗い予想も成り立つ。関東軍のことを考えてみればわかる。あの人たちは自分では収拾できなかったんですよ。
しかしながら1945年と違うのは兵器のスケール。もしロシア、中国、イランが揃ってUK、US、JPと対立してみんなして世界大戦などというものに突っ込んだら、それってシンプルに地球の破壊にしかならない。
ではどうするか。そうならないメカニズムを作りましょう、そういう道はあるはずですよ、と大陸側は言っているという話でしょう。
これ実にくだらない話だと思うんですよね。これを90年代にできていたらどんなに違った今があったことか。
そうならなかったのは、いろんなところの欲の調整ができなかったという話ではあるけど、軍事的には、要するに、ネオコンが振りまいた「核戦争は勝てる」という妄想が根幹にある。といってネオコンだけが悪いんじゃなくて、上で書いたドロップショット作戦でソ連人6000万人殺すと勝てる、みたいな発想をしていた米参謀本部の一部は確実にいたわけだから、当時からおかしい人はいる。
また、JFK問題の解明の中から出て来た、1963年に画策されていたノーズウッズ作戦もこの並びでしょう。キューバ侵攻を正当化させるために、アメリカ国内でアメリカ市民を巻き込んで事件を起こそうというもの。これは911と発想が似てると指摘する人も多い。
■ まったく有害だったネオコン妄想
今後の展開として、アメリカも新型を開発して軍拡になるのかといえば、まぁなることはなるんだろうけど、根本的に、相手(ロシア)のミサイルのラインナップを見れば、完全に相手の報復能力を無化することは不可能なんだから、行き着くところバランスさせる以外にありえない。つまり、核戦争を勝てると想定したネオコンの妄想は最初から無理でしたが、もっと無理になりましたという話。
別の言い方をすれば、子ブッシュ以降、この妄想に付き合わされ殺された各国民はまったくの犠牲者だということ。
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
■ ネオナチ、アルカイダ、IS・・・
で、そうであらばこそ、じゃあ、ネオナチ投入、アルカイダ投入、IS投入で相手を混乱させるのだ、という話になるんだろうけど、それでどこに勝ちがあるんだよ、と。
おととい書いた通り、1980年のアフガニスタンとソ連の話まで多くの人が成り行きを知ってしまった今、これをもう一回やるって大変よ?
嘘に飽きてる&アフガンまで通説に逆らうトランプ
最近、ロシアとアメリカ or イギリスの間でスパイ摘発ものやら、プロパガンダ製造ユニットの摘発など、いろんなことが起きてるんだけど、これはつまり、UKあたりは、再度ロシア国内の情報関係者を篭絡しようと頑張ってるという話なんだろうと思う。
ロシア式(トルコ、中国なども似てると思うが)は仕掛けないで、長いこと泳がせて、必要があればネットワークを切るとか潰すとかいうやり方が特徴だと考えられている中、4日、一人の元米海兵隊員をスパイ容疑で拘束した件が今までとちょっと違うというので話題になっている。
Whelan detained in Russia may hold not only US and British passports, says source
http://tass.com/politics/1038974
この元米海兵隊員は、米人かと思えば、UK、カナダ、アイルランドの4つのパスポートを持っていていたことから、4カ国の駐ロシアの大使館が動いている。どうなるかまた書く。
ということで、まぁその今年も大変ですね。
■ オマケ:ガラパゴスショック
宗純さんが「スプートニクショック」というエントリーを起こしてらした。特にお若い方、読みましょう。
2回目のスプートニクショック (^_^;)
- イランはロシアに行かない、ロシアは金がないから (岡崎久彦 2014年)
- 科学技術においてアメリカの優位性は変わらないです (加瀬英明 2014年)
- ロシアは2019年財政破綻します (森永卓郎 2015年)
いやそう言われるとちょっと私としては、とか思ったりもしますが、でもまぁ事実問題として渤海湾が焦点なわけですからアラートかけるのは当然でしょう。
しかも、日本がまた大日本帝国並に不誠実になってる(と私は見ます)。
日本はイージスアショア入れたところから詰んでますねというのが私の考えですね。だって従来の立場を手放したんですから、相手だって対応を変えますよ。