昨日7月31日、中国は習近平主席を迎えて北斗衛星システムの完成を祝った。
Xi announces completion and commissioning of BeiDou-3 Navigation Satellite System
北斗システムは6月に最後の衛星の打ち上げの成功が知らされた時にこれでもう完成といったところだったので昨日記事が出なくてもまぁいいのかなとは思うが、なんかあんまり記事がなかった。
6月の記事はこれ。
中国版GPS「北斗」完成 衛星投入成功、米依存脱却へ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60686020T20C20A6910M00/
全編これ、米国のGPSからの脱却ということがテーマみたいな書かれ方で、そのトーンはインチキくさいけど、でも、成り行き的には概ね詳しい記事にあたるんじゃないかとは思う。
こんな感じ。
習指導部は15年に発表したハイテク産業育成策「中国製造2025」で宇宙分野を重要領域に位置づけた。宇宙開発を軍事力強化と進め、今年夏に火星探査機を打ち上げる。22年ごろに独自の宇宙ステーションを完成させ、30年に宇宙強国をめざす。測位衛星はハイテクと絡んで国防と密接につながっているため、米国は中国の宇宙開発に警戒を強めるのは確実だ。
だがしかし、読んでいてふと、GPSに依存しないシステムを作って、宇宙ステーションに始終行ってる国があるじゃないか、なぜそれは心配しないの?と面白く思った。
もちろんそれはロシア。
地球全体を対象としたいわゆる全地球航法衛星システムというのは、アメリカの他にはソ連が始めていて、当初の予定では1991年に完成するはずだった。
だがソ連崩壊で計画が続行できずにいたところ、折からのすべての話と同様プーチン登場以来に計画が続行され、2001年からシステムを修正、いろいろあって2011年には既に完成、実用化されている。
つまり、中国が登場する今年までの結構な時間、GPSは唯一の体制でもなかったということですね。
ロシアでもアメリカでも、GPSとGLONASSの二重システム搭載の民生用のデバイスもある。互いの不利をカバーしてて結構便利だという話だ。ただ、2014年以降アメリカがGLONASS用の地上施設を置かせないと言い出し、ロシアもそれに対応するといったことが起こったりはしてる。
また、もう1つ、ヨーロッパが共同で作ってるガリレオというシステムもある。部分的にはロシアのソユーズで衛星を打ち上げていたりしてて、敵か味方かわからない関係やな、などと言われていたものだった。
ガリレオはとっくに完全実用化なのかと思っていたら、そうでもなくて2020年末に完全実用化予定であるらしい。
つまり、現時点では、全球を対象とした航法衛星システムは4つ。完成の順番でいくと
GPS(米)
GLONASS(ソ連/ロシア)
北斗(中国)
ガリレオ(ヨーロッパ)
日本は、GPSに依拠しつつ独自部分を持った準天頂衛星システムを開発してる。
■ ガリレオの混迷
で、どこからどう考えてもこれらのシステムはドライバーの安全のみならず、安全保障上の重要事項なわけですが、そうであるが故に結構な揺れがあって、今後もどうなのだろう・・・といったところにあるのがガリレオさんではなかろうかと思ってみたりもする。
英語版のwikiを基に簡単に整理してみると、
ガリレオには、当初中国が参加してた。2003年から数年参加していた。
その後イスラエル、ウクライナ、モロッコが参加に合意
2006年11月 中国、自分んちの北斗をアップグレードする方を選択
2007年11月 EUのプロジェクトとすることに決定
その後ノルウェー(EUではない)が参加したりするものの
2018年3月 UKのBrexitを受けて、UKを追い出すしかないなとなって、AirbusはUK内のセンターを閉鎖。UKはもう資金を出さないと言い出し、それどころかこれまでの資金を回収できないか模索し出す
2018年11月 資金回収は断念することに決定
その後、現在はUKがガリレオのライバルとなる独自の衛星システムを打ち上げるつもりだという報道がしばしばなされているが、詳細は不明。
どうなのか知らないけど、結局GPS側に入るって話なんじゃないのか? つまり、5-eyes国家群を作ろうとしているからEUから抜けたわけでしょ、だって。でも体裁が悪いので、しばらくごじゃごじゃ言ってる、みたいな感じ。
いずれにしても、問題なくはっきりわかるのは、GPS(米)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)を持つ国は強い国だなってことでしょう。