昨日は、森羅万象担当の安倍ちゃんという新しいキャラが登場したらしいのだが、それで面白がっている場合ではないのは、北方領土は日本固有の領土ですといえなくなったらしいというのが密かに大騒ぎ。
相変わらず、外務省からは筋の通った反論もなければ、路線変更についての弁明もない。スゴイね、これは。
で、当然誰でも、先月のロシアのラブロフ外相の怒涛の寄りともいうべき、いくつかの発言を思い出す。固有の領土と言っていたら話は進まないんですよ、とも言われたし、北方領土という語が日本の各種法制の中に入っていることも問題視されていた。
安倍ぽんが何が何でも固有の領土と言わないところをみると、その路線を貫くならもう交渉してもはじまらないとロシアから言われているということではなかろうかと思う。
■ 国連機構改革
で、なんでこんなことまでして平和条約に拘るんだと多くの人は思うわけで、その一つとして安倍ぽんは日ロ外交の成果を作りたいからだといったことを言う人が多いようだけど、私はそういうことじゃなくて、問題は国連機構改革を見据えたら、ロシアとの関係を整理しないとならないという話ではないのかと思っている。
国連憲章の中には今でも敵国条項があるわけです。それをなくそう、国連憲章を改革するぞという動きが前からある。また、常任理事国拡大の問題もある。
最近すっかり鳴りを潜めているけど、日本としてはそこで名誉ある地位を占めたいとの希望を持っていた。
拡大常任理事国の候補に名乗り出ているのは、ドイツ、日本、ブラジル、インドで、通称G4と呼ばれる。で、現実問題として、どの国も問題を抱えているんだが、日本の場合は、中国、南北朝鮮が日本の名乗りにものすごい反対した。2000年代のこと。中国はインドについては、日本に賛成しないことを条件に賛成する、といった態度だったらしい。
逆に、日本の名乗りを支援しているのは、アメリカとイギリス。
これだけでも、周辺国が不安に思うわな、といったところだし、国際的にも今の状況では、アメリカの2票目になる以外意味ねーだろと思われるに決まってる状況と言えるでしょう。
だもんで、他の国で積極的に日本を支持している国はないのでは? まぁアメリカが属国群を説得してくれるかもしれないが。
そこで、よーしロシアだ、となったのではないかと想像してみたりもする。つまり、ロシアの支援を取り付ければ、少なくとも、中国、朝鮮(南北)をかわせる、ぐらい思ったとか?
さらに、地政学的にも、中国が巨大化するのであれば、日本はロシアとの関係を改善すべきだと考えている人たちはいるはず。アメリカのリアリスト系統でさえそう(中国を見据えて、ロシアを取り込め、という議論)。
ところがどっこい、ロシアは中国以上に外交的な権威もあれば経験もある、要するにパワーのある国だった、と。
そして、中国との間で40年もかけて、国境問題を解決して、今では、ユーラシアの統合に余念のないロシアさんの姿が現れている。
ということで、ここで日本の作戦ってか、腹積もりってかは、二重にダメになってる。
結果として、日露間の平和条約の成り行きを順番に思い起こさせられるような状況になって、ついには日本は国連に加盟したわけだから、その時国連憲章を批准しているんですよ、であればその時点であなたが呑んだその条件を思い起こして、整合性を求めるのがスジです、と来られてしまった。
これが先月あった、ラブロフが日本は第二次世界大戦の結果を認められない唯一の国との発言であり、さらには、現状ではパートナーとして認められないといった発言の本旨でしょう。
ガラパゴスランドの知的敗戦
ラブロフ、日露に本質的に意見相違&中露の友好
第2次大戦の結果を認められない唯一の国
そらまぁ、外務省はぐーの音も出ないといったところで、何も言わないのとかと言われても、正直に国民に向けて説明するなどということを考えたこともない政府の一部局としては(笑)、本筋外して何か別のことを言うぐらいしかできないのではなかろかと想像する。
■ ガラパゴスランドの空中遊泳
で、その前、2017年には、中国の王外相が、日本は歴史に関して病気だ、というスゴイ発言もあった。
そんな中、中国の王外相が、日本は「悩み」を解消した方がいいよ、と言っていた。
盧溝橋80年、歴史直視迫る=「日本は心の病気」と中国外相
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030800687&g=pol
で、日本ではこういうタイトルで、いかにも反中感情を呼ぶようなことを書いているが、中身としてはこんな感じだった。
王さんは、盧溝橋事件から80年となることを踏まえて、
日本では、いまだに戦争か平和かの2つの道の間で行きつ戻りつして、昔の道に戻ろうとしている人々がいる。私たちは、日本の中の平和を愛好する人々がこの重要な年に国の針路を前に進められることを願っている。
私たちは、もちろんに両国の人々の利益となるべく日本との関係を向上させたいと思ってます。しかし、日本側は、自分の「anxiety」を治し、中国は発展し続けており、再生しつつあるのだという点を合理的に見て、それが現実だと受け止める必要があります。
空っぽの国体明徴運動と日本の「悩み」
王さんの観察は適切だと思う。日本の中には、一体それがどういう帰結をもたらすのかまったく考えずに、やたらに威勢のいいことを言い出す人が多すぎる。やっちまえーみたいな感情を出すなというのではないが、それはそれとして外交的に解決できるよう支援するという態度がないままにそういうことをしていくのはとても危険。
しかも、誤った歴史認識に基づいてペラペラ騒ぐというのだから、周辺からみたらとても座視できない。
さらに悪いのは、日本の社会には重さを持った知識人集団が存在しない。感情はわかるが、事態はこれこれしかじかで、といった議論の先鞭をつけてくれる人たちがいない。それどころか、御用学者が捏造史に力を注ぐ始末。
それは何も、作る会系統のたわいもない人たちのことだけではなくて、第一次世界大戦からシベリア出兵という介入戦争、三一・五四運動を横目に、日本が獰猛になっていった経緯をちゃんと追えない日本史の現代史学会にも重大な罪がある。
何度も出してますが、こうやって事の顛末が一般人にも読めるようになったのは実に事件後99年後ですよ! しかも、日本史業界ではないところから出て来た。
シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書) | |
麻田 雅文 | |
中央公論新社 |
要するに、戦後は戦前と違ってちゃんとやってるはずだ、と多くの日本人は思ってるらしいんだけど、実はそうではない。かなり足りてない、いやそれどころか、戦後は戦後でまた別の大本営的捏造史を作ってきたというべきかもしれない。
ということで、中国、ロシア、朝鮮が考えていることは皆同じで、日本はガラパゴスランドの空中遊泳を国内でやるならやるでいいから、スジの通った集団を作って話ができるようにしてくれないかなあ、ではあるまいか。
そういえば、何年か前、アメリカの近現代史の専門家たちが、日本の専門家たちに、頑張れとエールを送ってたような記事を読んだこともある。確か、慰安婦問題のあたりか?
■ 憲法との絡み
で、なんで今頃こんなことになるのかというと、日本が、憲法を改正して武装集団が戦争する国になろうとしているからでしょう。
これまでは、9条があるから、そこが足らない知識人の代わりになって、一定の歯止めになっていた。故に、米軍はあいかわらず日本を基地として使うのだとしても、極東にはよほどのことがない限り戦争はないと想定できた。
ところが、日本には、過去の日本には過ちなどない、東京裁判は見直すべきだ、といった主張を持った集団が過去から連綿と存在し、そこが主体となって、解釈改憲などという法的クーデターみたいなことをかましてまで、武装集団を合法化しようとしている。
まるっきりネオコンの金城湯池かよといった国になってる(それを国内で受けるのが国内の宗教右派)。
この意図は何なのかと懸念しない周辺国はないでしょう。
まして、首相は、2015年の戦後70周年を記念した談話でも今年の所信表明演説でも、日露戦争を賛美してる。
■ とりあえず楽しみに見よう
どうなるのかわかりませんが、真面目に考えれば、日本の側としては、他国がどう言っているかよりも、自分んちの側がどうなっているのかを整理する必要があるでしょう。
しかし、それができないのがこういうクーデーターっぽい政権の常ではあるんですよね。
で、この種は、1945年以前の戦争を悪くない、正しさは歴史が証明するとか言った岸を首相にした時点から今に続いているとも言えるでしょう。
その後の選挙で、青嵐会に連なる議員が増え、要するに、1960年代からずっと、俺らは悪くない派が命脈を保ち、それが清話会に一本化され、最後に安倍がいるという流れだと思う。
とか書いてきて、ダメだ、このエントリー上手くまとめられないと思って捨てようとしたが、ともあれたたき台としてアップしておく。
でもって、まったく唐突だが、なんかこの集団はバンデラ主義者の勃興と同期なんだろうかななどと思える(キーワードは強い反共、ナチスへのシンパシー)。そして、その線をずっと辿っていくと、多分、関東軍とはアングロ・シオニストの強い影響下にあった軍であった説の傍証が一杯出て来るんじゃないかという気がして、ちょっと楽しみな私だったりはする。
多分、安倍とネタニヤフが仲良しなのは偶然ではない。
そうそう、枢軸国は正しかったと思ってる人たちが日本の中には相当いる。
昭和の時代は、犠牲になった国民がだまっちゃいないから抑えられてたがその重石がなくなると、ジャンクな言論が出てきた。
大岡がいなくなると大変です by 埴谷 は実に慧眼だった。