アメリカは、あの意味不明で筋の悪いスクリパル事件を原因として、ロシアに経済制裁をかけると息巻いている。
最後まで言った通りできるのかどうかは現時点では不明だが、やるのかもしれない。余波は、今回はなくはないかもな、という規模だと思う。ただ、それを持って、森永卓郎が念願したように、2019年ロシアは財政破綻する、という話になりそうにはない(笑)。
Russia Condemns New "Draconian" Sanctions, Weighs Banning Rocket Engines To US
むしろ、ロシアの高官たちはアメリカは自分で金融システムを破壊するかもしれんわな、といった感じで、アメリカを批判している。こうなるのは、ロシアはもうだいぶ前から、要するにナチがホントに攻めてきたらどうするのかの対策を立てている、みたいなところがあるから。場合によっては、今度こそロシアからの制裁が行く可能性もある。
Further anti-Russian sanctions may ruin America's own financial system, expert warns
Business & Economy
August 10, 21:34 UTC+3
http://tass.com/economy/1016881
さてしかし、最近の話題はそこではなくて、イランとトルコ。イランはまた別途。
トルコは、リラがだだ下がりになっているということで、話題というか心配を呼んでいる。心配はしかし、一方方向ではない。トルコにとっても問題だが、トルコに貸し込んでいる銀行にとってもこれは大問題。
こんな記事を読んだけど、これって変だよね。だってトルコ通貨の下落は別にトランプ政権の関税の話以前から、既に始まってるし、規模としてももっとずっとデカい。
トルコリラ20%急落し最安値 米の追加関税圧迫、大統領ら発言も歯止めかからず
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/08/20-54.php
2018年8月11日(土)10時42分 ニューズウィーク
こういう状況にもかかわらず、しかし、トルコは米に対していろんなところで強硬なまま。
ドル体制が揺らぐ中、米国は打つ手が裏目に出てトルコの米国離れは止まらない
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201808110000/
2016年に起きたトルコのクーデター未遂事件に、米空軍基地にいる米将校が関与しているという主張を取りやめず、起訴するとか言ってる。
トルコでは、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に近い弁護士がアメリカ空軍のインシルリク基地にいる同空軍の将校何人かを起訴する準備を進めていると伝えられている。2016年7月15日にトルコでは武装蜂起があったのだが、エルドアン政権はその黒幕をフェトフッラー・ギュレンの一派だとしている。
アメリカのイラン制裁にも、トルコは加わらないという姿勢堅持のまま。
トルコ外相、「アメリカの対イラン制裁に従わない」
http://parstoday.com/ja/news/middle_east-i47061
で、この通貨危機を見ていて思うところを書いておきたい。これはきっと、2014年12月のロシアの通貨危機と同じ効用をトルコにもたらすのではないのか、と思ってみてる。
あの時のロシアの対応で顕著だったのは、基本的にルーブルを下がるままにさせたこと。つまり、ある程度の通貨のガイドラインもって(ペッグして)、それを下回ると大慌てで手持ち外貨を売って自国通貨を強める、といった行動を取らなかった。この行動こそ金貸しIMFの債務付け作りの一環だからね。
しかしそうすると極度のルーブル価値の減価によって、外貨(特にドル、ユーロ)で持ってる手持ち資金は目減りするし、外貨で借りてる債務は膨大になるしで、ふっとぶ企業も出る。出た。
そこで、国家が助ける企業と助けない企業を分けて、助ける企業はルーブル建てで助けた。
これによって、2つのことが達成されたと思う。一つは国民向け。お前の通貨はルーブルだかんな、外貨持つなら自分のリスクで、という方針が国内で浸透した。日本の場合、こんなこと言われるまでもないのだが、ロシアは過去の成り行きから、なんとなくユーロ、米ドル持ってると安心みたいな感じはかなり濃厚だったと思う。どこまで本当に考えていたのかは、今となっては実は不明な人も含めて。この事件によって自国通貨のメリットにあらためて気がついた人は多かったんじゃなかろうか。
もう一つは、自国通貨の防衛をするみたいなハンドリングを主張していた、要するに限りなくワシントンの僕(しもべ)的なメンタリティーの人たちが、この独自解決によって面目を失ったこと。
多分、トルコもこれ式で行くんではなかろうか。
ロシアとの違いは、トルコ企業に貸し込んでいる欧州の銀行に被害が及ぶ可能性がこちらの方が高そうだ、というあたりではなかろうか。結構大変だったりするのかなぁとちょっと楽しみにしてる(笑)。
ロシアの場合はいろんな意味で特殊な国で、西側から狙われた国だってのはある種公知なわけだから、貸し手も慎重だったはず。
それに対してトルコは、NATO諸国の一員だから、予定調和的に推移するはずだ、とみんな思ってただろうし、今でもそういう気配はある。しかしそうではないかもしれないですね。
その意味で、トルコ国外のリラ保有者は要注意でしょう。あなたの知らないチャートに入ってます、みたいな感じ。
流動性の担保については、ロシアは、チャイナが寄与してくれたことが知られているが、おそらく、トルコの場合もチャイナが出て来る。そして、現在のトルコは、ロシア、チャイナ、イラン&インドが深いお友だちになってるので、いろいろ一緒に考えてくれるんじゃなかろうか。
こういうのをモラル・サポートというでしょう。
イラン外相、「トルコを経済難に追い込んでの米大統領の有頂天ぶりは恥ずべきもの」
http://parstoday.com/ja/news/iran-i47078
イランのザリーフ外務大臣が、トルコに対するアメリカの新たな制裁に反応し、「トルコを経済問題に直面させたことに酔いしれているアメリカのトランプ大統領の行為は、恥ずべきものである」と語りました。
で、櫻井さんは上の記事で「米国離れ」という語を使ってらっしゃるけど、私が思うに、トルコは別に米国離れをしようとしているのではないと思う。
そうじゃなくて、意味不明な制裁という名のリンチとか、勝手に起こされる通貨危機みたいなのから防御できる体制を作ろうってことじゃなかろうか。
まぁそれが結果的に「米国離れ」になることもあるかもしれないが。
■ 関連記事
BRICSサミット・エルドアンもいた
■ 参考
Russia warns of economic war
http://www.globaltimes.cn/content/1114846.shtml