おとといシリア北西部のイドリブ県で起きた爆撃でアルカイダ系テロ組織のリーダー2人が死んだという話が出回った。
誰がこの爆撃をしたのかは最初わからず、おそらくトルコかアメリカであろうと考えられていた。
今日になってアメリカが自分だと言い出した模様。
米軍、シリア北西部でイスラム過激派を攻撃 指導者40人死亡か
2019年9月1日
https://www.afpbb.com/articles/-/3242403
【9月1日 AFP】米国防総省は、同国軍が8月31日にシリア北西部イドリブ(Idlib)県でイスラム過激派の指導者らを攻撃したと発表した。在英の非政府組織(NGO)シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によると、この攻撃はミサイルによるもので、少なくとも40人が死亡したという。
リーダー40人というより、大物リーダーとその下のリーダーらを含めて40人というのが正しい言い方だろうと思う。ただ、私が見た名前と違う気もする。このへんの中身はしたがってよくわからない。
同監視団のラミ・アブドルラフマン(Rami Abdel Rahman)代表によると、米軍による攻撃は、軍事訓練キャンプで開催されたフッラース・ディーン(Hurras al-Deen)やアンサール・タウヒード(Ansar al-Tawhid)といったアルカイダ系組織の指導者らによる会議を標的にしたもので、少なくとも40人が死亡した。
米中央軍のスポークスマンによると、AQ-Sのリーダーたちは米国市民、我々のパートナー、無辜の市民を脅す攻撃をしていたので爆撃したと言ってる模様。
"This operation targeted AQ-S leaders responsible for attacks threatening US citizens, our partners, and innocent civilians," Lieutenant Colonel Earl Brown, a US Central Command (CENTCOM) spokesman, told TASS.
https://tass.com/world/1075892
そんなのずっとそうじゃんという話なんだが(笑)、ともあれどうしてこうなったかというと、トルコがついに諦めたということだろうというのがもっぱらの読み筋に見える。
イドリブに集まってるのはトルコが支援してきたトルコ系が主体のテロリストで、トルコが武器、食料等々を支援してきた。それに対してシリア軍・ロシア軍はシリア領土奪還を諦めてないので、トルコが適当なことを言ってなんとかしのいできたが、構わず、1つずつ町を解放して詰めていった。 Khan Sheikounを(トルコから見て)固められなかったあたりが山だったような気もする。
で、しばらく前にシリアに入ってたトルコの将軍が集団で辞任していたことは、なんらかのサインだろうといったところに、ここ数日の出来事が重なる。
5 Turkish generals stationed in northern Syria resign
https://www.turkishminute.com/2019/08/26/5-turkish-generals-stationed-in-northern-syria-resign/
他方、トルコのエルドアン大統領は、8月27日、モスクワで開かれたMAKS国際航空ショーに出席して、既に購入したS-400の先のお買い物リスト、Su-35、Su-57、ヘリなどを見学。スピーチまでしてた。
Want to Take It For a Spin? Putin Offers Erdogan a Brand New Russian Jet
というより、プーチンに連れまわされたといった方がいいのではなかろうかといった趣が垣間見える。購入のみならず、共同生産しましょうというプーチンの提案にエルドアンはノーを言ってないわけだから、本当に共同プロジェクトが立ち上がるじゃなかろうか・・・。
プーチンに、戦闘機買うと今ならボーナスで車(プーチンのオーラス)も付くよ、とか言われてみたり、アイスを買ってもらったり、エンジョイなのか、ぐったりなのかわらかないエルドアンだった。
エルドアンが何を一生懸命見ているのかというと、
ロシアの宇宙飛行士。国際ステーションから登場。
ああ、トルコの若者だって宇宙行きたいよなとふと思った。金持ちクラブの特権とせず、そう、黒海チームになればいいんじゃない? などとも思った。
ということで、いろんなもの見せられたエルドアンではありますが、トルコはイドリブをいい加減にホールドしておこうといういい加減でフシダラな作戦がロシアには通じず、自ら断念させられ、将来を考えろと諭されたみたいなものではなかろうか。
もちろん、イドリブをジハード主義者のたまり場にしておく気はないというシリアの意思が勝ったとみていいでしょう。
そして、冒頭の米軍の爆撃の意味はなんだろうと考えるに、それなりにここを畳もうという意思が中央軍にあるということだろうか? まだシリアの油田地帯の問題は完全解決ではないけど、こっちも極端な行動に出ているとは聞かない。
アメリカはまぁどうでもいいとして、トルコは結局、ロシア、中国という一帯一路勢との関係を心配する方が重要だという判断をしたって感じでしょうね。実際その方がいいし。
丁度1年前、エルドアンはNYタイムスに寄稿してて、その中で、2016年のトルコで起きたクーデター未遂事件についてアメリカがしっかりギュランとかを難詰するよう期待したがそうはならなかった、がっかりしてるぜ、このままいくとトルコは別の友だちをみつけるしかないんだからね、といった趣旨を述べている。
渤海湾・黒海:朝鮮サミットとエルドアンのお手紙
事態は結局その通りになったようなものと言っていいんだろうと思う。
もちろんまだ事態は流動する可能性を秘めてはいるけど、基本的にはシリアにISをぶちこんでシリアをゲットして、次はイランだ、みたいなアホな計画は、これを持ちましてほぼ終わりでございます、だと思う。
こんなことなら、ロシアがアレッポ陥落を導いた時に、いやぁよかったよかったとロシアとアメリカで手を繋いで喜んでればよかっただけですね。そうすれば、アルカイダ作ったアメリカ、ISをぶちこんだオバマといった話がここまで広がることもなく、アメリカの体面は今よりはちょびっとだけよかっただろうに、と思う。
ホワイトヘルメットみたいな馬鹿な作戦を導入したのは主に「ナチ・リベラル」なわけだけど、この人たちはどうしてるわけ?
今は香港で忙しい?
■ オマケ
主流ジャーナリズムは何と書いているものやらと思ってちらっと検索してみるに、プーチンとエルドアンがシリア情勢緊迫の中軍事的な結びつきを強める(FT)、エルドアンはトランプへの当てつけでロシア製戦闘機購入を検討(Bloomberg)とか。
主に米中央軍にとって、この記事に記された深刻な事態が痛恨の一撃だったのではないかな?と思いました。
Syria - Army Cuts Off Khan Shaykhun - Russia Bombs Turkish Reinforcement
https://www.moonofalabama.org/2019/08/syria-army-cuts-off-khan-shaykhun-russia-bombs-turkish-reinforcement.html
私としては、シリアとロシア軍による数々の見事な功績を大絶賛しています! 今後も率直で読み手側の私たちがワクワクするような記事を期待しています(*^^)v
コメントありがとうございます。
ご案内のmoon of alabamaさんの記事のあたりが、私も「終わりだぜ by ロシア」だったんじゃないかなと思いました。
トルコ側ももはや全くの侵略行為をどこまで続けられるのかかなり怪しいですからね。ここらが潮時となる可能性は大きいかと。
とはいえ、いいえ油断はなりませぬ、というのがこの地だと思います。またよろしく!