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広島、原爆、朝鮮戦争

2018-08-07 22:36:05 | アジア情勢複雑怪奇

昨日核兵器について書いて、ちょっと思いついて調べたいことがあって検索していたら、非常に興味深いページに出会った。

広島在住のジャーナリスト哲野イサク氏のサイトにあった、元広島市長の平岡敬氏に対するロングインタビュー。

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/hiraoka/1/1.html

2010年8月の記事なので、私が情弱なだけだったかもしれない。

ネットのいいところだなぁと思いました。なにしろ長い。ネット以前だったら本にならないと読めないような分量。

で、本にすると編集者の手が入りすぎて、刈り込まれてしまうリスクがあるがネットだとジャーナリスト氏の裁量以上のものはないわけで、これがいい、と思った次第。

お話の内容は、1945年に終わる戦争、というより原爆をくらった後からのいろんなお話。広島での現地の話でもあり、そして日本の全体的な方針についてのこともある。

平岡さんは、実際にそこに生きていた人であり、次に中国新聞で書いていた人で、その上で広島市長になった人なので、1つの証言集としても貴重だ。

 

興味はつきないし、また折にふれ言及したいと思うことも多々あるだろうと思うが、今日の私の興味としては、朝鮮戦争に至るまでの悶着。

広島では1946年に、平和というより復興を誓う祭り(式典というより集まりみたいな感じだったらしいのでそう表現する)みたいにして1周年の日に催しをして、その後毎年やっていた。それが、1950年には、中止に追い込まれる。

その理由が、朝鮮戦争であるらしい、というところ。

やや複雑なのだが、ともあれ、

朝鮮戦争がはじまったのは1950年6月。その年の8月には、平和式典が中止に追い込まれる。

その理由が、下に引用するように、原水爆禁止の呼びかけなどが世界的にあった、その状況を鑑みて、広島の式典は、「反占領軍的または非日的と認められる集会、集団行進、あるいは集団示威運動」と広島県警により認定されたため。

前掲桐谷論文は次のように述べている。『(東西対立や49年4月のパリ及びプラハでの第1回平和擁護世界大会、1950年3月の原水爆禁止を呼びかけたストックホルム・アピールなどの)こうした世界情勢を受けて、6月には広島市は第4回平和祭の計画案を作成し、その当時、県や市を含めて平和擁護大会が開かれる予定であった。しかし、8月2日、式典の4日前に広島平和協会常任委員会が突然平和祭の中止を決定した。これは「(中国地方)民事部ならびに国警本部県管区本部長、市警本部長との交渉」の結果なされた決定であり、これにより広島市が平和式典への協力を辞退し、8月6日の行事すべてが禁止された。

広島市警察本部は、「反占領軍的または非日的と認められる集会、集団行進、あるいは集団示威運動を禁止する方針を決定」し、8月5日全市に「平和祭に名を借りる不穏行動に乗るな―知らずして犯罪に問われるな」というビラを配った。

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/hiraoka/1/1.html

 

ストックホルム・アピールという名前は知っていたが、そのアピールが現実に適用されるとこんな形になっていたとは想像してませんでした。なかなか感慨深い。

ストックホルム・アピールとは、wikiはこんな感じ

こうした中、1950年3月16-19日にスウェーデンのストックホルムで開かれた平和擁護世界大会(World Congress of Partisans of Peace)第3回常任委員会は、

(1)原子兵器の無条件使用禁止、

(2)原子兵器禁止のための厳格な国際管理の実現、

(3)最初に原子兵器を使用した政府(アメリカ)を人類に対する犯罪者とみなす

――とのアピールを採択、発表して、世界の人々に署名を呼びかけた。これに対し、全世界から5億の署名が寄せられた。 

 

で、日本のwikiにもないし、英語のwikiにもないんだが、ロシア語版にあった数字によれば、(google翻訳したのを整理すると)

署名は273,470,566人(時には5億人までとも言われる)

ソ連は1億1500万以上を集め、これはソ連の成人人口に匹敵

署名者には、フランス人1400万人、イタリア人1700万人、英国人100万人、アメリカ人200万人、日本人300万人がいた

 

だそうだ。

(日本の数字は、600万だという説もあるらしい。wiki日本語版)

ああ、これかぁと思いましたね、私は。何がこれかというと、朝鮮戦争でアメリカが原爆を使わなかった、思いとどまった理由として、欧州情勢を懸念して、みたいなことがあげられる時、その欧州は一般的にユーゴあたりの東側に取られたくない部分、みたいな感じに書かれているのだが、しかし何かそれって弱い理由に見えた。

が、フランス、イタリアというアメにとって当然ゲットしておくべきところが問題だったなら話は別だわな、と思ったわけ。

フランス、イタリアというのはこの当時かなり共産党が強い国だった。でもそれはみんながマルキストになったというより、反ファシズムが強かったからという理由がとても大きい。ナチスを倒したのはアメリカじゃなくてソ連だというのは、この当時意識のある人なら誰でも知ってたから、いきおい親ソが残ってるとも言える。同盟してたということは自分の味方をどこかで救った人たちなわけだから、絆ができるものです。どうしたって。

さらに、フランスは敗戦国じゃないから、アメリカがドイツを牛耳るような真似もできない。イタリアも最後は敗戦国じゃない。

実はイギリスもその例に漏れてない。イギリスは、上流階級はソ連など基地外といった態度だったが、労働者階級は連合軍として参戦してくれたソ連を頼もしく思っていた(それまで2年近くイギリスはほぼ単独でドイツに向かってて困ってたというリアルな要因がある)。そして、兵士の大部分は労働者階級。したがって、支配者階級とて戦時中はソ連を悪し様に言うわけにもいかなかった。UK政府は最初は連合軍諸国の国歌をラジオで流すところでソ連を抜かしていたが、兵士の士気にかかわるってんで、ついに折れてソ連の国歌を流すようになったという興味深いエピソードを最近読んだばかり。

 

こういう状況で、アメリカが朝鮮半島で、日本に投下しただけでは足らなくてまた投下したりなんかした日には、アメリカはなんて野蛮な奴、悪い奴なのだ、となって反射的に、ソ連がんばれ、になる可能性がここにあった、と言っていいんじゃないかと思う。

一般に、朝鮮戦争当時は、ハンガリーあたりとユーゴをソ連から離そうとアメリカ(or 英米?)あたりはいろいろ画策していたり、ギリシャ工作もやってたし、トルコをNATOに入れるという算段もしてた頃なので、朝鮮側であまりにも無謀なことをすると、ソ連が怒りだして直接対決的な緊張に向かうことをアメリカは嫌がったみたいなことが言われているけど、それだけではなく、西欧の状況も、一つ間違えば親ソにもっていかれる可能性があったといっていいんでしょう。そんなに簡単にいくかよ、とも思うけど十分に懸念すべき事態だったと少なくともトルーマン政権は考えた、といえそう。

 

日本において核兵器禁止を言うと左翼扱いされてきたというのは、実にこのへんを嚆矢としているんでしょう。占領軍行政だけではなくて。

上で引用した「平和祭に名を借りる不穏行動に乗るな―知らずして犯罪に問われるな」って、もうなんか、蘇る特高の趣。どうしたらいいかわからん。

 

で、実際問題1950年初頭には、日本で「新日本軍」を作ろうとしていた人たちの計画がとん挫していたことが知られているから、当時の影のというか大日本帝国をひきずっていた人たちの頭の中では、親ソになるものはすべてご法度というアイデアでしょう。

幻の「新日本軍」計画 旧軍幹部、首相に提案 [共同通信]

【ワシントン20日共同】旧日本軍幹部が太平洋戦争後の1950年前後、「新日本軍」に相当する軍組織の設立を独自に計画していたことが20日、機密指定を解除された米公文書で判明した。構想は連合国軍総司令部(GHQ)の了解の下で進み、河辺虎四郎元陸軍中将(故人、以下同)らが立案。最高司令官には宇垣一成元大将(元陸相)を想定しており、当時の吉田茂首相にも提案していた。

記事は、米の公開文書を基に2006年に出たもの(下のオマケに貼っておきます)。

 

■ つらつら思うに

いやしかし、つらつら思うに、ソ連とフランス共産党が音頭取ってわーわー騒がなかったら、朝鮮半島にも原爆が落ちていた可能性は高いわなという感じは否定できない。

それに対して、アメリカの一部(マッカーサーなど)は、落としたい、落としてやるぞ系で、トルーマン政権は総合的に考えると、欧州側の懸念が大きすぎてマッカーサーを解任して原爆問題を回収した、といったところが概ね妥当な見方か。

で、日本は、

  1. 一部は「蘇れ大日本帝国」的に「新日本軍」作りに奔走していたので、敵はソ連&新生中国に決まったも同然(敵がないなら軍備を急ぐ必要もない)
  2. しかし、かなり多数の日本人はそんな軍の構想も知らないし、それとの特別な脈絡もなく、どこで使われようとも原爆に対して強い拒否反応を持っていたようではある、
    といったところか。

 

しかし、1. の人たちって何考えてたんでしょうね。当時まだシベリヤ送りの人たちは帰ってきてないんですよ? それでも軍備作りで、朝鮮戦争にも前向き(実際、将兵を出して死者も出てる)。

また、煎じ詰めれば、核兵器使用反対を言うと反日だとのたまったも同然の広島県警は現在は原爆についてどんな考えなんでしょうか? 

ふと考えれば、現在の安倍政権も、核兵器使用禁止と言えない人たちなので、このへんは底流が一貫しているのかもしれない。

 

■ オマケ

幻の「新日本軍」計画 旧軍幹部、首相に提案 [共同通信]
 【ワシントン20日共同】旧日本軍幹部が太平洋戦争後の1950年前後、「新日本軍」に相当する軍組織の設立を独自に計画していたことが20日、機密指定を解除された米公文書で判明した。構想は連合国軍総司令部(GHQ)の了解の下で進み、河辺虎四郎元陸軍中将(故人、以下同)らが立案。最高司令官には宇垣一成元大将(元陸相)を想定しており、当時の吉田茂首相にも提案していた。
 戦後史に詳しい複数の専門家によると、服部卓四郎元陸軍大佐ら佐官クラスの再軍備構想は知られているが、河辺氏ら将官級による新軍構想は分かっていなかった。毒ガス隊など3部隊の編成を目指した河辺氏らの構想は最終的に却下され「幻の計画」に終わった。
 文書は、GHQや中央情報局(CIA)の記録を保管する米国立公文書館で見つかった。

 

検索すると、阿修羅他で、当該文章をコピペして貼っている記事が見られる。

http://www.asyura2.com/0601/senkyo25/msg/557.html

 


 


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2 コメント

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マジもんの抑止 (ブログ主)
2018-08-08 13:42:29
ローレライさん、

いやほんとに。これはおそらく故意に忘却させられているんでしょうと思いました。でもとても大事。
返信する
核兵器使用抑止したストックホルムアピール (ローレライ)
2018-08-08 09:00:50
核兵器使用抑止したストックホルムアピール、と言うマイルストーン!の存在は再生すべき歴史的偉業である。
返信する

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