黒い瞳のジプシー生活

生来のさすらい者と思われた私もまさかの定住。。。

神輿と矢と

2012-04-01 23:57:18 | 思索系
大河ドラマ「平清盛」。このたびの話題は、
1147年に起きた「祇園闘乱事件」。
年齢はそれぞれ、清盛30歳、
源義朝25歳のままということになる。

「祇園闘乱事件」とは、祇園社の神人と
平清盛の郎党との間で起こった小競り合いで、
祇園社の本寺である延暦寺がこれを理由に
忠盛・清盛父子の流罪を朝廷に求めたものの
結局は鳥羽院の庇護により実現せず、
清盛に罰金刑が課されるのみに終わった――
というもの。ドラマでは清盛がわざと
神輿を射ていたが、本当は誰が射たのか、
またその人は意図的に神輿に当てたのか
それともたまたま当たってしまっただけ
なのか、この点について明示しているものは
私には見当たらなかった。
なおウィキペディアの祇園闘乱事件の項では、
忠盛・清盛父子が「鳥羽法皇の庇護により
配流を免れたことで、その信任ぶりを周囲に
誇示することになった。鳥羽法皇にとっても、
白河法皇が手を焼いた延暦寺の強訴を事実上
斥けたことは大きな自信となり、強訴に
対抗する武力の有効性・重要性を再認識したと
思われる。」――としている。
またウィキペディアの平家盛の項では、
この事件以降、「兄清盛に代わり、家盛が
朝廷で重んじられるようになって」いった
ともある。
いずれにしても、武士たちが人殺しという
その職能によって時代の趨勢を決めていくと
いった時代(いわゆる「武者の世」)を
むかえたとはまだ言いがたいと思われる。
こちらのヤフーニュースによると
このドラマは低視聴率にあえいでいる
そうだが、ドラマの舞台がまだ「武者の世」
をむかえていないという点も、
低視聴率の一因ではないかと私は考える。
しかし、私自身は今のところ(何となくでは
あるが)去年の大河ドラマよりは面白いと
思えるし、できれば視聴率など気にせず、
格調高く骨のあるドラマをつくって
もらいたいと思っている。

ところで、このたびは武蔵坊弁慶が
登場した。あわててウィキペディアで
彼の生年を調べてみたが、あいにくそれは
いつなのか分からず、また弁慶が鬼若時代に
「比叡山に入れられた」という話はあっても、
清盛たちの流罪を求める強訴に参加した
という話は同項には見られない。
治承4年以降の源平争乱を因縁づける
存在として、このたび弁慶を登場させたの
だろうか。


ウィキペディアでは、白河法皇が手を焼いた
延暦寺の強訴を事実上斥けたことで
自分に自信を持つようになったとされている
鳥羽院。そうなる前のドラマの鳥羽院には、
白河院という神輿に対する恐れを克服し
自分を信じておのれの道を貫く勇気が
必要だったらしい。そしてそんな鳥羽院は、
神輿を恐れることなく射て
しかもこのことを堂々と白状するドラマの
清盛の姿に自分に足りないものを見出し、
清盛に自分の胸を射るしぐさをしてもらう
ことで、自分に足りなかった勇気を
清盛からもらった気分になり、
白河院の亡霊から開放されるに至ったのだろう。

このドラマの「神輿」とは
理不尽だけど恐くて逆らえない存在の
象徴であり、そうしたものが存在するゆえに
世が乱れていると言える。
そして、そうして乱れた世を改善するには
「ダメなものはダメ」と恐れず意思表示
できる勇気という名の矢が必要になってくる。
清盛がこうした新しい時代を切り開くのに
欠かせない「矢」となることを、
ドラマの忠盛も望んでいたと言えよう。


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