大河ドラマ「おんな城主 直虎」。このたびの話題は、
井伊直親が死に、直平が死に、そして中野直由と新野
左馬助が死に、それでもずっと嘆いてはいられず、
いよいよ直虎が出てこざるを得なくなった――といった
話。以前に私は浜松を訪れ、中野直由と新野左馬助が
命を落とす戦いの舞台となった引馬城を当ブログで
紹介した。ドラマでも少しはこの城の戦いのシーンが
出てくるかなと期待していたのだが、ナレーションで
戦いがあったことを語られるだけで終わってしまった。
時代は、彼らが討ち死にした時点で1564年9月、家康
22歳、今川氏真27歳である。ドラマでは、井伊家を
愛し守ってきた男たちと入れ替わるようにして漆黒の
小野但馬守たちが舞い戻ってきたわけだが、そうして
「いいひと」路線を捨てた小野但馬守はいざしらず、
彼が新たに引き連れてきた三人は、井伊家にとって
必ずしも悪い連中であったとは言い切れないのでは
ないだろうか。彼らの来歴についても分からないこと
だらけであるが(私に限らず専門家たちにとっても)、
『この一冊でよくわかる! 女城主・井伊直虎』では
彼らのうち、菅沼忠久と鈴木重時という家臣は直親の
家臣だったという。また、『歴史REAL おんな城主
井伊直虎の生涯』では、彼らのことを「必ずしも
井伊家への忠誠心が強かったわけではないようだが」
と評してはいるものの、なにより、三人とも井伊家の
菩提寺・龍潭寺で今も眠ることができているくらい
だから、少なくとも最終的には井伊家にとってそれ
ほど悪い家臣ともならなかったのだろうと想像できる。
彼らは「井伊谷三人衆」と呼ばれ、少なくとも史実
としては悪役のようにして終わる小野但馬守とは
違う動きを見せる人たちのようなので、個人的には
彼らの今後の動向にも注目したいところである。
ところで、このたび命を落とした直親の一粒種・
虎松はどのようにして保護されていたのだろうか。
ドラマの終盤では誰がその子の後見になるかで
さっそく火花が散っていたが、肝心のその子の姿は
その場にない。その子の命は、やはり今川家から守る
必要があった。どこで保護されていたのかという
点もはっきりしないらしいが、虎松は主に生母と
ともに新野左馬助の保護下に置かれたとされる場合が
ほとんどという。しかしながら、その新野左馬助も
近いうちに亡くなるので、それからは新野左馬助の
伯父が住職をしていた浄土寺にかくまわれていた
という。
私はいつか、姓名判断の一種『姓名の暗号』という
本を読んだことがある。残念ながら、ある程度、
姓名判断を勉強した人でないと呑み込めない内容に
なっているが、それでも人の世の栄枯盛衰について
色々と考えさせられるキッカケにはなるものだった。
人一人の人生に良いことと悪いことが半分あり、
一見、いま自分より良い思いをしているように
見える人でも、その裏側や過去あるいは未来に辛い
こともあったりするものだが、これはもっと長い
スパンの、一族の興亡についても当てはまるという。
一つの家だけがいつまでも栄えていくことを自然界は
許さず、例えばだいたい三代くらいで本家の栄光が
終わると、代わって分家が栄え始めたりするのだ
という。このたび、井伊直平や中野直由と新野
左馬助までが短期間のうちに死なねばならなかった
のは、謀反を起こそうとした井伊家が今川家から
誠意を示すことを求められ、そのため、年を取ろうが
自前の兵が少人数になろうが、戦場の最前線にたって
戦わねばならなくなったせいだろうと推察する。
おんなの大河ドラマであるせいかあまり詳細には
描かれないが、それでも、直親を失った直平たちの
明るさには、まさに中小豪族の悲哀を感じさせられる。
――ただ、このように女が出てこざるを得ないような、
御家滅亡の一歩手前の時代と引き換えのようにして、
直政の大出世がもたらされたような気がしてならない。
むろんその幸運は直政の努力なくしては無かった
だろうし、現時点での井伊家では誰も予想だにしない
事のはずであるが。
――ともあれ、このドラマの男たちの常套手段だった
「死ぬ」という方法論では、その場限りでしか家を
守ることができない。戦って死ぬ以外の方法論を
用いた女性ならではの闘いが、これから始まる
ということだろう。
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井伊直親が死に、直平が死に、そして中野直由と新野
左馬助が死に、それでもずっと嘆いてはいられず、
いよいよ直虎が出てこざるを得なくなった――といった
話。以前に私は浜松を訪れ、中野直由と新野左馬助が
命を落とす戦いの舞台となった引馬城を当ブログで
紹介した。ドラマでも少しはこの城の戦いのシーンが
出てくるかなと期待していたのだが、ナレーションで
戦いがあったことを語られるだけで終わってしまった。
時代は、彼らが討ち死にした時点で1564年9月、家康
22歳、今川氏真27歳である。ドラマでは、井伊家を
愛し守ってきた男たちと入れ替わるようにして漆黒の
小野但馬守たちが舞い戻ってきたわけだが、そうして
「いいひと」路線を捨てた小野但馬守はいざしらず、
彼が新たに引き連れてきた三人は、井伊家にとって
必ずしも悪い連中であったとは言い切れないのでは
ないだろうか。彼らの来歴についても分からないこと
だらけであるが(私に限らず専門家たちにとっても)、
『この一冊でよくわかる! 女城主・井伊直虎』では
彼らのうち、菅沼忠久と鈴木重時という家臣は直親の
家臣だったという。また、『歴史REAL おんな城主
井伊直虎の生涯』では、彼らのことを「必ずしも
井伊家への忠誠心が強かったわけではないようだが」
と評してはいるものの、なにより、三人とも井伊家の
菩提寺・龍潭寺で今も眠ることができているくらい
だから、少なくとも最終的には井伊家にとってそれ
ほど悪い家臣ともならなかったのだろうと想像できる。
彼らは「井伊谷三人衆」と呼ばれ、少なくとも史実
としては悪役のようにして終わる小野但馬守とは
違う動きを見せる人たちのようなので、個人的には
彼らの今後の動向にも注目したいところである。
ところで、このたび命を落とした直親の一粒種・
虎松はどのようにして保護されていたのだろうか。
ドラマの終盤では誰がその子の後見になるかで
さっそく火花が散っていたが、肝心のその子の姿は
その場にない。その子の命は、やはり今川家から守る
必要があった。どこで保護されていたのかという
点もはっきりしないらしいが、虎松は主に生母と
ともに新野左馬助の保護下に置かれたとされる場合が
ほとんどという。しかしながら、その新野左馬助も
近いうちに亡くなるので、それからは新野左馬助の
伯父が住職をしていた浄土寺にかくまわれていた
という。
私はいつか、姓名判断の一種『姓名の暗号』という
本を読んだことがある。残念ながら、ある程度、
姓名判断を勉強した人でないと呑み込めない内容に
なっているが、それでも人の世の栄枯盛衰について
色々と考えさせられるキッカケにはなるものだった。
人一人の人生に良いことと悪いことが半分あり、
一見、いま自分より良い思いをしているように
見える人でも、その裏側や過去あるいは未来に辛い
こともあったりするものだが、これはもっと長い
スパンの、一族の興亡についても当てはまるという。
一つの家だけがいつまでも栄えていくことを自然界は
許さず、例えばだいたい三代くらいで本家の栄光が
終わると、代わって分家が栄え始めたりするのだ
という。このたび、井伊直平や中野直由と新野
左馬助までが短期間のうちに死なねばならなかった
のは、謀反を起こそうとした井伊家が今川家から
誠意を示すことを求められ、そのため、年を取ろうが
自前の兵が少人数になろうが、戦場の最前線にたって
戦わねばならなくなったせいだろうと推察する。
おんなの大河ドラマであるせいかあまり詳細には
描かれないが、それでも、直親を失った直平たちの
明るさには、まさに中小豪族の悲哀を感じさせられる。
――ただ、このように女が出てこざるを得ないような、
御家滅亡の一歩手前の時代と引き換えのようにして、
直政の大出世がもたらされたような気がしてならない。
むろんその幸運は直政の努力なくしては無かった
だろうし、現時点での井伊家では誰も予想だにしない
事のはずであるが。
――ともあれ、このドラマの男たちの常套手段だった
「死ぬ」という方法論では、その場限りでしか家を
守ることができない。戦って死ぬ以外の方法論を
用いた女性ならではの闘いが、これから始まる
ということだろう。
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