黒い瞳のジプシー生活

生来のさすらい者と思われた私もまさかの定住。。。

複雑な光秀の心

2011-02-13 23:56:16 | 思索系
大河ドラマ「江 ~姫たちの戦国~」。
このたびは、明智光秀が絶命したところで
ドラマの幕が閉じた。「本能寺の変」から
年が改まったわけではないので、
江の年齢もおよそ9歳のままということになる。
「琵琶湖(=江)を制する者は天下を制す」では
ないが、このたび江はちょっとの間だけ
光秀のところに姿をあらわし、彼女が姿を消すと
同時に明智光秀の天下も終わってしまった。
まぁ現実には、江が光秀に姿をあらわした理由は
(あたかも現代の犯罪被害者の遺族のように)
真実を知りたいと思ったからに違いないが。


史実にはそんなに詳しくはない私であるが、
このたびはドラマを見ていて一つ気になった
ところがあった。
このたびのドラマでは最後のほうに
光秀が竹やりで刺されるシーンがあったのだが、
このとき光秀の横にいた家来が斎藤利三という
武将であれば、そこに史実との相違があると言える。
というのも斎藤利三はさる「山崎の合戦」の最中に
光秀に先んじて絶命したはずだからである。
別冊歴史読本『太閤秀吉と豊臣一族』によると、
「山崎の合戦」では斎藤利三が戦死したことにより
まず明智軍の斎藤隊が崩れ、それが引き金となって
明智軍全体も総崩れになったということである。

それと、これは問題にしても仕方のないこと
かもしれないが、秀吉を演じている俳優さんは
はっきり言って秀吉役は似合わないように感じている。
今のところ理由を聞かれてもうまく答えられない
ところではあるのだが――こう、なんというか、
秀吉役はどんなに打算的でずる賢い言動を見せても
どこか憎めないタイプの人が向いているように思う。
今このドラマで秀吉を演じている俳優さんも
懸命に演じているに違いないので
こんなことを申しては悪い気がするけれど、
あの俳優さんの秀吉が野心的で計算高い面を見せると
演技とはいえ本当に憎たらしく感じられてしまう――
それとも、このドラマの秀吉は「悪役」ということに
なっているのだろうか??


果たしてドラマの光秀は天下をとりたかったから
信長を討ったのか――ドラマの江のこの問いに、
光秀は「自分でも分からない」と答えていた。
まぁ本人が分からないことなど、
私にはなおさら分かりかねるところではある。
ただ少なくともドラマの光秀は、共に世の中の
平和を実現させようとした偉大な同志を
裏切って殺し、せっかく平和になりかけていた
世の中を再び乱すようなことをしてしまった。
世の中を乱すという、光秀が本来志していた事とは
逆の状況を自分でつくってしまった自責の念は
ドラマの光秀の心に起こるかもしれないし、
敬愛してもいた偉大な同志・信長を殺してしまった
苦しみだって起こるかもしれない。
彼が仮に自力で再び平和を築いていこうと
努力するにしても、これらの思いが完全に消える日は
一生来ないかもしれない。

戦争の勝敗すら存在しえないような平和な時代の
構築こそ、光秀の本来の志ではなかったか。
また同志を裏切り殺して、いったい自分一人だけが
栄達できようか。――むろんこれも確信はないけれど、
敗走するドラマの光秀の「もはや勝ちたいとは思わぬ」
という言葉の裏に、私は光秀のこんな声が聞こえてくる
ようであった。


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