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『食い逃げされてもバイトは雇うな』と「水商売」に人生を学ぶ

2007-07-06 20:49:21 | 本・コミック・かってに配役
食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉
山田 真哉
光文社
キャッチコピーというか,執筆のコンセプトが
「1時間で読めて,効果は一生」だそうです。
なので,35分で読んでやりました。

「相手にプレッシャーをかけて時間を守らせるために
 わざと中途半端な時刻で約束する」
「本のタイトルに数字を入れると売れる」
「1000円のものを500円に割引してもらうのと
 101万円のものを100万円に割引してもらうのとどちらが得か」
など,だいたいどこかの本で読んだ話とか
(「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」のおさらい的な要素もありますので当然ですが),
「『ゲド戦記』をわざわざ「宮崎吾朗第一回監督作品」と銘打った仕掛け
のように,言われなくても気づくような話ばかりなので
かなり斜め読みがききました。
※あのクレジットを読んで「1度しかない“第一回作品”を見届けなければ」
 と思った人より「三鷹の森宮崎駿美術館館長さま(元経営コンサルタント。
 アニメ事業経験ゼロ)に一体どんなレールが敷かれてるんだよw」と
 失笑した人のほうが多いんじゃないかと思います。
 ただ,結果として興業が成功した以上,鈴木敏夫さん(それともイトイさんの
 アイデア?)の勝ちは認めざるを得ません。


ただ,簡単な例で説明されているということは
逆に読んで頭に入りやすいということ。
文章がすっきりと読みやすく,
本全体,そして各章ごとのテーマが明快で,
スムーズに流れるように構成されている著者の筆力は驚嘆の脱帽です。

まずは,イントロダクション「数字のルールはたったの4つ」で
 数字が持つ表現力(順序・意味・価値)やその強さ(変化しない)について語り,
◇第1章「数字がうまくなるための技法」で
 最近のヒット書籍のタイトルを例に,数字を使った表現方法で
 相手にインパクトを与える方法とそのしくみを解説,
◇第2章「ビジネスの数字がうまくなる」で
 ノルマや割引広告,企業の実績などビジネスにまつわる数字について
 印象ががらりと変わる表現の工夫について紹介,
◇第3章「会計の数字がうまくなる」でいよいよ
 経営に関する数字のとらえかたについて。
 利益を出すために重視すべきこと,必要な考え方を伝授。
さらに
◇第4章「決算書の数字がうまくなる」で
 自らの株取引体験から,株で失敗しないために
 決算書で会社の経営状態を掴む方法へと進んでいきます。
 数字がびっしり並ぶ決算書も上から順に見てはダメ,
 売上高の変動や売上利益率から粉飾決算の危険性まで
 察知できてしまう…?!

4章あたりは基礎知識がゼロだとさすがにスイスイ読めない
かもしれませんが,全体として,怒濤のように一気読みできて
わかりやすい,著者のメッセージが明確に伝わってくる分
読んだ後にお得感が残る本だなと感じました。

■で,本のタイトルであり第3章で語られる
「食い逃げされてもバイトは雇うな」の意味ですが,
ここで書いても別にネタバレにはならないでしょう。
オッサン1人でやってるラーメン屋で,出前に出る時など店を留守に
する間によく食い逃げされてしまうというケースについて
食い逃げを防ぐためだけにバイトを雇うなんて,その時給以上
毎日コンスタントに食い逃げされるような無法状態でない限り
差し引きで損だというだけの話。
1人で気楽にやってる店に人を1人雇う手間だけでも相当なコストに
なりますからよほど忙しくて売上げをさらに伸ばしたいという
店でなけりゃバイトを雇うなんて無意味ですよね。

とまあ,扱われている事柄はどれも非常に簡単でクイズとしては
ばかばかしいくらいなのですが,これに乗せて伝えたい
著者のメッセージが明確なので,クイズが簡単に解けたついでに
著者の主張にもすんなり納得してしまうんですね。
「感覚で物を考えると簡単に間違いをしてしまうが
 数字(的思考)で物を考えれば損をしない」


そもそもこのラーメン屋の例,テレビの司会者が
「バイトを雇わないでアホちゃうか」と笑いものにして
会場もそれに乗って皆笑っていたというのです。
ちょっと考えれば小学生にでもわかるような話なのに
会場および全国のお茶の間で大の大人が疑いもせず同調したわけです。
オソロシイですねぇ…。

この著者の記述がノンフィクションだとすると,
飲食業&銭勘定という話の内容,関西弁で人を馬鹿にする口調
からいって,今も『美味紳助(おいしんすけ)』をやってる
島田紳助氏でしょうか。だとすると,あれだけ計算高くて
実際に飲食業や不動産を経営・運営して成功している氏にあるまじき
アンポンタントークのようですが,彼の場合,間違っていると
承知のうえで,そういうトークをやりそうだよな…。

世の中,ろくに考えもしないで雰囲気に乗せられて
見当違いの理由で人をバカにしたり,バッシングしたりしますよね…。
※紳助氏の看板番組の1つ『行列のできる法律相談所』も,
 東野幸治さんが「頭チリチリで嫌われてる」だの
 梨花さんが「つきあう男に不幸をもたらすさげまん女」だの
 何の意味もないトークで時間を使うようになって,もう何年も見てませんわ。
 そりゃ,言われるタレントさんは商売ですからそういうキャラを演じますけど
 そんなマンネリトークで楽しんで視聴率を上げちゃう視聴者ってどうよ?


私もこのブログでブッシュ(息子)大統領のバカっぷりが話題になってた時期
「わが国の輸入品の多くは海外から入ってくる」という言葉を
何も考えずに迷言として挙げたりしましたし。
※アメリカには加・墨という「海外」以外の外国があるので変ではない。
 結局なぜこの言葉が迷言だと言われだしたのか確認せずじまい。


『つっこみ力』にも書かれているように,
「理性は雰囲気に勝てない」のが現実なんですよね。
詭弁・妄言・科学的に誤りだらけのトンデモ本『買ってはいけない』があれだけ売れたのに,それに対抗して出された数々の批判本が,理論的には数段上のはずなのに売上げ部数では束になってもかなわなかったり(その成り立ちからいって内容がどうあれ勝てるわけないと思いますが)「水を入れた容器に『ありがとう』と書いた紙を貼って凍らせるときれいな結晶ができ『ばかやろう』と書いた紙を貼ると不格好な氷になるといった笑止千万のファンタジー本がバカ売れして,この科学大国日本で道徳の授業にも取り上げられたり。
「食い逃げ防止にバイト」と同じで「シンプル」で「道徳的に正しい」ことにはコロッとひっかかってしまいがちなので注意しなければなりません。

つっこみ力 ちくま新書 645

パオロ・マッツァリーノ
筑摩書房

「買ってはいけない」は嘘である

日垣 隆
文藝春秋

自分を愛するということ―水からの伝言 Vol.3

江本 勝, IHM総合研究所, 八井 晶世
波動教育社

水はなんにも知らないよ

左巻 健男
ディスカヴァー・トゥエンティワン

大阪大学の菊池誠先生や同志社女子大学の左巻健男先生ら「ニセ科学」バスターの先生方が指摘されていますが,世の中すべてにおいて「良い」「悪い」は程度の問題であり,条件次第で変わるものなのですから「絶対に良い(無害)」「何にでも効く(万能)」といううたい文句で売り出されているものがあったらまずはウソだと考えてかかるほうがよいです。
※「野菜は体に良い・肉は体に悪い」といった二元論は単純でわかりやすいですが,現実的ではない。どんな物質や食品でも多すぎれば体に毒だし,メリットがあれば必ずデメリットも合わせ持つので,何かを選ぶ際にはその程度を比較して考える必要がある。

それでは最後にこの言葉を聞いてお別れとしましょう。

「簡単に理解できて
 道徳的に正しくて
 受け入れやすい答えを聞ければ
 人は安心するんだ」

<『七時間目のUFO研究』藤野恵美(講談社)>




僕もあなたも雰囲気に流されないように
気をつけましょうということで。


公認会計士 山田真哉工房 ~『女子大生会計士の事件簿』公式サイト~
  『食い逃げされてもバイトは雇うな』(山田真哉工房>お知らせ)

■関連?記事
紳助,満点の謝罪会見…かと思ったが(2004-10-30)
紳助会見,和田秀樹先生も同じ見解(2004-11-21)
アマ野球の話題-欽ちゃんと紳助氏(12/15)(2004-12-15)
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『食い逃げされても~』の中で,「あの大手牛丼チェーンが食券機を使わない理由」としていろいろ興味深い話を展開していますが,外食チェーンが店に食券機を置くというのは,前払いにして食い逃げを予防するという意味以上に,店員・店主が売上げをごまかすのを防ぐという意味が大きいんですよね…。そこが全くのスルーでしたのでちょっと物足りなかったですが,山田真哉センセイのことですから,話の筋が散らばって読みにくくならないよう,流れ上必要なこと以外はそぎ落として書いたのでしょう。思いついたこと・書きたいことを何でも詰め込んでちゃ売れる本は書けないってことでしょうね。

七時間目のUFO研究 講談社青い鳥文庫 245-3
藤野 恵美, HACCAN
講談社
ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する―絶対に失敗しないビジネス経営哲学
島田 紳助
幻冬舎

※紳助氏,熱く語ってるー!!「客単価が上がるとヤバイと思う」→「満足度を高められるか客と店の心理戦」なるほど…。
コメント (2)
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