Damons (1)手塚 治虫,米原 秀幸秋田書店 |
「暴力」-それは,人間の本能に訴えるが故に,
強い嫌悪感を呼びうると同時に
強い吸引力も備えるテーマ。
これをみだりに行使することは社会秩序の破壊そのものであり
表現の世界でも鑑賞者に納得のいく理由を盛り込まなければ
まともに評価される作品にはなり得ないと言えます。
そこで,古くから扱われてきたのが
復讐劇。そして,『必殺仕事人』に代表される
天誅物。
「目には目を」とハンムラビ法典の時代から認められてきたように
対象が,主人公の大切なもの(家族や親友,平穏な生活など)を
卑怯で不条理な手段で奪い破壊する「絶対悪」である場合,
同等あるいは倍返しの残酷さで徹底的に暴力を行使するのも
「あり」な2大舞台設定といえます。
そんな系統の作品群,最近のコミック界において白眉といえるのが
週刊少年チャンピオンで連載されていた『アクメツ』(悪滅)。
怪獣あるいは悪魔の髑髏をかたどったような毒々しい黒い仮面を被った男「アクメツ」が,日本を破綻させ自分は甘い汁を吸い続ける腐敗しきった政財官界の大物たちを公衆の面前で断罪・処刑していくという話で,よくある雑誌や新聞の書評欄では取り上げづらい(というかほとんど無理な)残酷描写のオンパレードで,そういう意味では漫画史に残りづらい作品ですが読者の目を釘付けにし,強烈なインパクトを与えた佳作の1つであることは間違いありません。
その『アクメツ』の連載が終了し,後を受けるような形で始まったのが
本件の本題でありますところの『ダイモンズ(Damons)』。
ロスゴディア社で医療技術の開発を行っていたナノテクノロジーの
スペシャリスト・砌斌兵斗(サイモン・ヘイト)は,社の上層部が
その技術を軍事目的に転用を謀ることから裏切り行為をはたらくが
そのためにかつての仲間たちに妻子と両腕を奪われてしまう。
ベッケル博士の治療を受け奇跡的に一命を取り留めたヘイトは,
博士の訓練のもと,科学を超越した念動力「ゼスモス」を身につけ,
それによって自在に操ることができる「鉄の腕」を武器に,
仲間であった5人の敵に復讐を挑むのであった-
ただ原作とクレジットされている『鉄の旋律』とは全く内容が異なり,「組織の裏切り者として両腕を奪われた主人公が鉄の腕を手に入れ,復讐心から生まれる超能力でその両腕を自由に操れるようになる」という基本設定以外はほぼ完全オリジナルストーリーといえます。
で,この作品の魅力というと…,
言葉にしてしまうと私の力ではその1割も伝わりそうにないのがもどかしい。要するに戦闘シーン満載なんです!復讐劇なんです!
5人の敵はナノテクノロジーにより肉体改造を行って,そこらの武器や兵器では太刀打ちできないような超人的な能力を身につけていてすごいんです。
その1人1人にヘイトが挑む戦闘の迫力や,
それぞれの登場人物の個性…性格や戦い方が際立っていて,
目まぐるしすぎもせず冗漫でもない,適度な緊張感を保ちながら
進んでいく物語の臨場感に,もう読み始めたら目が離せなくなります。
ねぇ,全然面白さが伝わりませんよね。
読んでもらわないと始まりませんわ。
■という超オススメ作品なんですが,
こんな話なんで,日本のドラマじゃ無理ですわ。
(そもそも舞台設定からしてアニメじゃないと無理)
緻密な設定・描写においてミステリー作品として評価の高い『DEATH NOTE』さえ
深夜枠でしか放送できない日本の地上波の現状においてアニメでも無理。
映画でも『デビルマン』みたいな圧倒的な知名度がないと企画通りません。
いくら家族の愛情を前面に出そうとしてもちと厳しいか。
Vシネなら内容的にはOKでしょうが予算をどうするのって問題が。
そうなると,ハリウッドですか。
彼(か)の民族は日本と違ってゲームなんかでも
ゾンビやら人間やら撃ちまくるシューティングが大好きですから
多少その時代ごとに受けるテーマの移り変わりがあるとはいえ
派手な戦闘で強力な敵を殲滅する映画ってのは基本的に好きなはずです。
このままの原作に忠実な設定でも『キルビル』のタランティーノ監督とか
『ブラックレイン』(「エイリアン」「ハンニバル」「ブレードランナー」)の
リドリー・スコット監督などの作風で映画作品化可能に思えますし
「復讐というだけでは単なるクレイジーになってしまい
観客に感情移入させるのが難しい」とかいう話になったとしたら
娘は殺されず捕らえられていたという設定に変えればどうにかなるでしょう。
(原作の場合はヘイトがまとう「虚しさ」の空気が作品世界を決定づける
重要なファクターで,「希望」を持たせるような要素は排除されています)
『ガンツ』が映画化されるとかどうとか聞いた記憶がありますが
映画にするならこちらのほうが向いているでしょう。
作品の内容をわかっていただいたという前提で,
今回も「勝手にキャスティング」させていただきます。
■ヘイト(砌斌兵斗)(真田広之)
Hateは憎悪という意味がありますがどっちかというと「嫌う」
意味合いがあるんで,外国で実写化された場合,
ここは意味をかけることにこだわらず普通の名前に変更するでしょうね。
ヘンリーとか,彼の友人アランの名前を持ってくるとか。
キャストは,別に日本人にこだわる必要はないと思いますが,
真田広之さんに。
孤独・愛情・怒りを表現できて小さい子がいる年齢に見合う若さを持ち
非マッチョな体形と裏腹に鋭い身のこなしができる人となると
ほかにイメージできる人がいないんですよね。
【5人の敵】
※プログレスはヘイトの元「心友」でロスゴディア社の幹部。
他の4人は元プログレスのボディガード。
人並み外れた銃の名手で,さらに肉体改造をほどこして両腕が銃に変化する。殺し屋としては非情だが恋人をこよなく愛し,取り巻きたちらの人望も厚い。
原作では白人なんですが,私的には黒人ラッパーのイメージで検索してみたところ,クリス・ブラウンという人がヒット。おいおい『ステップ・アップ』の人じゃ若くて爽やかすぎるでしょ。
じゃあまあいいやってことでハマー氏を指名。
■ラフィン(マコーレー・カルキン)
本職はマジシャンで,肉体改造を施した左目によって
他人を意のままに操ることができる。
純真無垢な少年のような外見をしているが,
ヘイトの才能と人望に対して異常なほどの嫉妬心を抱き
ありとあらゆる手段を使ってヘイトを苦しめ破滅させようとする。
またまた無理めな配役w
『ホームアローン』で有名な天才子役のマコーレー・カルキン君も
今年で28歳,無垢な少年なんて言ってられない現状ではありますが
幼い頃からの家庭・金銭トラブルや飲酒・マリファナスキャンダルなど
波乱続きの半生をこやしに,屈折した役を好演できるのではと。
『AI』のハーレイ・ジョエル・オスメント君(1988年生)でもいいんですが
彼も飲酒運転やマリファナ所持で保護観察状態とか。
アメリカの天才子役(とか若いセレブw)をめぐる環境は厳しいようです。
ナノテクノロジーによって姿を消すことができるコートを身にまとい
あらゆる物を切断できる長刀に変化する両腕を武器に
依頼を100%確実に実行する冷酷な殺し屋。
依頼された対象以外は殺さないという自らに課したルールを厳格に守り
それは「自分が人間であるために」と言うのだが,子どもや善良な一般市民を
含めた,過去に殺害した人々の写真を自室の壁一面に貼り付けるなど
およそ人間らしさとはほど遠いキャラクターといえる。
「非情」「完璧主義者」「ストイックなまでのプロ意識」
といったイメージから海老蔵氏でw。
歌舞伎では「間」を非情に大事にしますが,俊敏な殺陣もこなせるでしょう。
ていうか,CG合成やコマ落とし,ストップモーション処理した
改造人間海老蔵を見てみたい。
『キルビル』のユマ・サーマン,『ニキータ』のアンヌ・パリロー,『チャーリーズ・エンジェル』のルーシー・リュー…
アクション可能な女優さんは数あれど,ここはひとつ,『トゥームレーダー』の大々的なプロモーションで日本でも
高い知名度を確立したもののその後はランクA女優の肩書にふさわしい作品も特にない(←無茶苦茶失礼)アンジェリーナ・ジョリー様を。(その場合,ヘイト役にはブラッド・ピット様で)
『オーシャンズ11』『12』『13』…じゃあるまいし主役級は…ということでしたらヴィクトリア・ベッカム様でもw。
■ランパート(アーノルド・シュワルツェネッガー)
ロゴスディア社の統治する城塞都市「キープディープ」の長。難病に冒された自分の娘を救うため都市の子供達を定期的にさらっては人体実験を行っている。普段は紳士的な性格だが,自分に従わない者への態度は残虐そのもので,娘に対して意見の対立した妻を殺してしまうほど。
肉体改造を施した腕はセンサー内蔵で弾丸をも防ぐことができ,攻撃の際には高速回転したり胴体と同じくらい巨大化して腕による跳躍から強力な一撃を相手に与えることができる。
カリフォルニア州知事・シュワルツネッガー氏。絶対無理www
あと,理知的なキャラなので訛りのあるシュワちゃんの喋りだとちょっとやぼったく見えてしまうおそれも。
しかし,温厚な顔をして拉致した子どもたちにナノカプセル入りのごちそうを食べさせたり,戦闘場面でトランスフォームしていく姿などは想像しても非常に違和感がなく,はまりまくっていると思います。
■プログレス(トム・ハンクス)
本作品のラスボス。現時点ではプログレス(進歩)という名が
ヒントとなっている以外は,その生い立ちや武器など明らかになっていません。
でもまぁ配役するぶんには,「温厚なエリート然として実は
悪魔のような冷酷さをもつ男」といったイメージ,
一番ラスボスのイメージから遠い人を選べばいいって感じでハンクス氏に。
※日本の俳優さんでいくと
「プログレス=谷原章介さん」って感じですかね。
この場合「ヘイト=北村一輝さん」で(演技の幅の広い方ですから
『龍が如く』になっちゃうなんてことはないでしょう)。
【その他】
◆ベッケル博士(クリストファー・ロイド)
ヘイトの命を救い,新しい両腕を与えてくれた恩人だが
ゼスモスの研究対象としてヘイトを利用しているところもあって
研究への執着心は,助手が死んでもデータが得られたしOKみたいなマッドな域に達している。
って,ドクかよ。もうちょっと毒々しい俳優さんのほうがいいでしょうかね?
日本人なら寺田農さんに,はじけてもらいたい。
◆スワロウ(秋山成勲)
ヘイトの後,ベッケル博士に鉄の脚をもらった男。
育ての父と信じた男に殺されかけたことから,自分も他人を騙し,
利用し尽くすことを生き甲斐とし,その結果相手が死んでも何とも思わない。
ヘイトをつけ狙いアールダーを挑発し,ゼスモスの力が負ければ
ナノテクノロジーも身につけようと暗躍する。
いや,どの人種でもかまわないんですが,とりあえずアジア系の俳優さんで
いい人いないかなと思って考えてみたんですけど思いつかなかったので…。
◆ヨシコ(菊池凛子)
ヘイトのロスゴディア社時代の部下。社のある秘密を知ってしまったため
命を狙われたり,ならず者に拉致されて人質にされたり。
ここは『バベル』から「オオカミ男なのね」まで何でもこなせる菊池さんに。
◆アラン(キーファー・サザーランド)
城塞都市「キープディープ」の警備隊長。ヘイトの中学時代の親友だが
ランパートの命を狙い潜入してきたヘイトとは敵対する立場のため対立。
しかし実は彼自身もランパートに兄を殺された復讐を果たすべく
機会を狙っていたのだった。
原作では本名は「阿蘭 修次」で日本人なのですが,今回は日本人にこだわらなくても
いいかなと。で,なんとなく『浦安鉄筋家族』にパロディキャラが出ている人を
選びたくなったので『24』の人を。
うむ,錚々たるメンバー!
ほとんど実現不可能!w
『ダイモンズ』愛読者の方,あなたならどんな配役を考えますか?
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