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山口県光市の母子殺害事件 三者三様

2006-06-21 19:33:55 | ニュース
昨日,最高裁から1・2審の無期懲役破棄差し戻し判決が出た
山口県光市の母子殺害事件ですが,
そしてこの日本の法体系にさまざまな不備や矛盾があることを見せつけた
この事件の最高裁判決。
当然の判決として淡々とコメントした遺族の本村洋さん,
「反省しないわけがない」と顔伏せコメントを出した被告の父,
「不当」とコメントした弁護人,
三者三様の言葉が出ましたが,本当にこの世の中に完璧な人間はいない,
そんな中でいろいろなことを考えさせられました。

■例によって日テレが,秋田の畑山鈴香(現容疑者)姉弟に続き
渦中の人物のインタビューをとりつけたわけですが,
その人・被告の元少年の父親のコメントは…
同じ日テレでも番組によって彼のしゃべったどの部分を切り取って放送するかが
異なり,バージョンによってニュアンスが若干違ってくるのですが,
特に,最高裁判決当夜に放送された部分は,普通といえば普通の人なのですが,
言葉のはしばしに「この親にして被告ありか」と思わせる態度がにじみ出てました。
(テレ朝『報道ステーション』ではこれに輪をかけて無責任な発言を連発していたようで…)

・座ってインタビューを受けていたが,終始腕組み
 …わずかにふんぞり返って見える姿勢からは,
  遺族に対して申し訳なく思う気持ちが感じられない。

・「しょうがない」を連発
 …死刑でもしょうがないという意味もあるのだろうが,
  軽々しい言葉の使い方に「やったものはしかたがない」と
  いう本音が漏れているようにも聞こえる。

・(知人に出した手紙の内容が「反省していない」根拠とされることに)
 「6年もたって反省しないわけがない」
 …全く根拠の伴わない身勝手な理屈。

・被害者家族とは同じアパートに住んでいた。
 犯行当日は事件を被告から聞かされた。
 「おまえじゃないだろうな」と冗談を言ったら「違う」と言って
 自分の部屋に入っていった。
 …近所で残酷な事件が起こったとき家族で「犯人じゃないだろうな」
  と冗談でも口に出せる家庭って,どのくらいの割合でいるのでしょうか?
  僕の場合は高校まで同居してた弟か…言うかなぁ…?
  どっちかというと加害者より被害者の立場で考える人が多いかなと思うんですが
  普通なのかな…?

・「ひょうきんで普通の子だった」
・「顔は映さなくても,現場検証の映像でスリッパ履きの足を見ただけで
  自分の子とわかる。辛くて見ていられなかった」
・「(面会で)“覚悟はできてる”と冷静だった。犯行前にこういう心境だったら
  こんなことは起こらなかったのだろうなと思った。
  息子が涙をこぼすと,自分も涙をこらえきれなくなった」
 …そういう状況に立たされた場合,そのように思う気持ちは当然なのだけれど
  彼の語りはあくまでも自分たちのことが中心なんですよね…
  被害者・遺族に対して詫びる言葉とか悔やむ気持ちの現れた姿は
  日テレが故意にカットしたのでしょうか?

■そんな被告の父親が,「後で悔いることにならないよう
適切な判断を」と言うのに対して,
「少しでも多くの回数を被告と面会して,人間らしい心を取り戻せるよう
 父親として最後のつとめを果たしてほしい」
と言い放った,被害者の夫であり父親である本村洋さん。

・「残念だというのが正直な気持ちです。最高裁で死刑判決を下してほしかった。
 無期懲役にならなかったことに感謝はしている。しかし、ここまで7年かかった」

・(被告が反省の心境を語っていると伝え聞き)「自分の命を取られることを
 初めて実感したときに、自分の犯した罪の重さを知る。
 それこそ死刑という刑罰の意味だと思う」

・「被告は18歳以上。刑法でも死刑を認めている。
 何とか人間の心を取り戻して死刑を受けてほしい
 悔い改めてもなお、命を落とさなければ償えない罪がある。
 その残酷さを知って、犯罪が起こらぬようにする方法を社会は考えなければならない」。

事件後,殺された2人を追って自殺も考えたという哀しみは
とうてい他人の想像の及ぶ程度のものではないでしょう。
また,加害者の人権は尊重するのに被害者に対する配慮が著しく欠けている司法制度,
「死刑が認められないのなら早く刑務所から出してもらって
自分が殺す」と発言したことに対して心ない小市民たちからのバッシング,
絶対死刑にならないと高をくくって司法や自分自身までをバカにした
態度を取る被告本人,荒唐無稽な理屈や卑怯な訴訟戦術を展開して
死刑を回避しようとする弁護人と,
彼を取り巻くすべてのものが彼を「戦い」に駆り立ててきたのは否定のしようがありません。

ただ,「死刑が当然であり,それ以外はあり得ない」
という彼の態度は,申し訳ないけれど,
この期に及んで傲慢さがないとはいえません。

事件の衝撃の大きさや,積極的にマスコミに露出してきちんと話ができる存在であることから
「悲劇の主人公」としてアンタッチャブルな存在になってやしないか
かすかに危ういものを感じます。
本村さんは法律についてもきちんとした知識を持っていて
その問題点を的確に指摘するなどしていますが
基本的に,死刑を求める根拠は彼本人の感情に尽きるんですよね。
死刑だって人殺しには違いがなく,執行されれば永久に取り返しがつかない。
そんな量刑を決めるに裁判において,
被害者感情はあくまでも判決を決定する情状の1つにすぎない。

勿論,これまで被害者感情があまりにも軽視されすぎていて,
犯行の深刻さに比べて軽すぎる量刑が社会不安を引き起こすまでになっている
現状があるからこそ,彼もここまで頑張り続けざるを得なかったわけで,
「死刑が当然」と世の中にも自分自身にも言い聞かせ続けなければ
やってられなかっただろうというのは当然理解できます。
前回書いたように,彼が(天に)選ばれてこのような使命を与えられた
のだと思わずにいられない,どこをどうどんな角度で考えても
悲しすぎて辛すぎる境遇…。

■では,この判決に対して,「死刑が不当」と真逆の
主張をしてきた弁護人はどうか。
「永山判決以降,最高裁が自ら示した基準を大きく逸脱して
 積極的に死刑の適用を認めようとするもので不当だ」


確かにもっともな話ではあります。
けど,永山判決で示された基準ってやつに今回の事件をあてはめると
死刑にならないのか?
永山則夫事件というのは短銃で4人を連続殺傷した事件で,
無期と死刑の間を行ったり来たりした挙げ句,83年に無期判決破棄
90年に上告棄却で死刑が確定した事件。
それ以降,「殺人事件は1人殺害なら無期・3人以上なら死刑」
というのが“相場”になっているようなのですが,
別に今回の母子殺害事件で死刑を適用したところで“基準を逸脱”とは
言いようがないと思います(ただ,下級審で極力死刑を回避する傾向が
現実として変わるであろうことは否めません。またそれを
遺族も世間の多くも望んでいるわけですし)。
最高裁判所判例集 S58.07.08永山事件判決
・犯行の罪質
・動機
・態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性
・結果の重大性ことに殺害された被害者の数
・遺族の被害感情
・社会的影響
・犯人の年齢
・前科
・犯行後の情状
等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、
罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえない
と認められる場合には、死刑の選択も許される。


極刑は選択しないのが基本,これは間違いないと思います。

しかし,上記の要件にあてはめて考えても,
被害者の数(2人),年齢(18歳1ヶ月),前科の3項目が微妙にひっかかる以外は
どうにも救いようがない犯罪ですから,「例外」として死刑を認めざるを得ないでしょう。
特に「反省していない・更正の余地なし」という心証を払拭するどころか
7年がかりで固めてしまっていては…。

で,今回の最高裁判決に対する前述コメントと同時に
弁護人が言っていたのが
「殺人および強姦致死は成立せず
 著しく正義に反する事実誤認があり判決は不当」
(毎日新聞)

…。
1審2審では犯罪事実については争わず,ただ更正の余地の有無1点で
死刑回避を争っていたのが,この安田好弘ら弁護士チームになって
いきなり「蝶結びにしたら首が絞まってしまった」
 「口をふさごうとしてあてた手がのどに入って窒息してしまった」
などの妄想としか言えないような死刑回避の主張を展開し,
今年3月には悪名高いドタキャン事件を起こして
最高裁から「出頭在廷命令」を命ぜられる始末。

オウム真理教・麻原こと松本智津夫の一次弁護団長をするなど
世間の注目を浴びる凶悪犯の弁護にいちいちしゃしゃり出てくる安田弁護士ですが
はっきり言って,被告のイメージ悪化に拍車をかけるために
弁護活動をやっている
のも同然の,ただの道化にしか見えません。
ことにオウムの場合には,警察庁長官狙撃事件や村井幹部殺害,
薬物の流入ルートや資金の流れ,ロシアでの活動など
背後関係を洗うとことごとく海外に行き着き,
すべて捜査が断ち切られてしまっている。
政治が絡んでいることは容易に想像が付くのだけれど,
結局,麻原の異常性を際だたせることで問題をうやむやにしようとする
その片棒を担いでいたんではないかと思えます。

まぁ本人は真面目におかしなこと考えているだけなんだろうけどね。

死刑がなくなるなら世の中に凶悪犯罪がはびこってもいいってんでしょうね。

光市母子殺害事件の差し戻し審が始まったわけですが(2007-06-27)

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