自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

生きる。

2015年08月29日 00時42分32秒 | 世界の街道をゆく



山あいの小さな真新しい村で、
伝統の絵を受け継ぐ人がいるというので、会いに行った。


現れたとたん、驚いた。
伝統を受け継ぐ人が、これほど若い女性だと思わなかったのだ。
しかし、驚きはそれどころではなかった。
Tシャツの右袖が風に揺れている。
彼女には右手がなかったのだ。

左手一本で、筆を持ち替え、絵の具を変え、
それが当たり前のように絵を描き進めてゆく。
始めて7年ほどだというが、
それにしてはかなりの腕前だ。



ああ、さぞかし苦労をされてきたのだろうと
そのことを聞いてみたかったのだが、
どうにも聞き出せない。
もじもじしていると、彼女の父親がそばに寄ってきて、
おもむろにその理由を話してくれた。



2008年5月12日。
彼女はいつも通り、学校で授業を受けていた。
すると突然、強烈な揺れが襲った。
四川大地震。
村は瓦礫の山と化し、校舎も全壊。
授業を受けていた50人のうち、生き残ったのはたったの2人。
そのうちの1人が彼女だった。
そして、コンクリートの下敷きになった左手を失った。



地震のあと、彼女は一心不乱に絵を学び、7年の時が過ぎた。
穏やかな顔で絵を描き続けている彼女が、
柔らかな笑顔を向けて、こう語ってくれた。
「友人たちのぶんまで、私は頑張らなくてはいけないのです」
私は一生懸命うなずいて答えるのが精一杯だった。



いかに人間が運命を背負う生き物だとしても、
1人の少女の小さな肩には、あまりに重すぎる運命ではなかろうか?
しかし彼女の表情は、曇り一つなく、柔らかい。
私は、この小さな村で、
ほんとうに勇敢な人の顔を見た気がした。

カメラマンとはステキな仕事。

2015年08月28日 01時43分32秒 | 世界の街道をゆく



中国の旅は、だんだんと山岳地帯へ入ってまいりました。


今回の旅では、カメラマンはいい仕事だなあ、と思うことが多い。


仕事の場所は、ロケ現場。
とびきりの冒険心と、画を切り取る才能。
体力と精神力は、修行のたまもの。





一緒に旅してる、写真家の谷口さん。
言葉の通じない人に「1枚撮らせて!」とジェスチャーしながら近づき、
笑ったり、何か話しかけたりしながら
神業のような速さで撮影。
そして「ほら!」と言って写真を見せる。





言葉は通じないのに、一瞬で友達になってしまったみたいだ。


谷口さんは、冒険が大好きで、
いつ連絡しても「いまヒマラヤです」「いまアタカマ砂漠です」と返ってくる。
きっと世界中の過ぎ去る出会いの中で、友達をつくって、
写真以上の思い出を焼き付けてきているのだろう。


もちろん、大変なことだらけなんだろうけど。
やっぱりステキな仕事だ。

中国です。

2015年08月25日 07時45分59秒 | 世界の街道をゆく


中国に来ております!


ひさびさ登板の「世界の街道をゆく」
三国志の旅・パート2は
四川省の成都から、湖北省の武漢まで、
2000kmの道中です。


今回のエリアは、
かなり色濃く1800年前の香りが残っている。
史跡の充実度から、人々の反応まで
三国時代がまるで昨日のことのようです。


しかも、人々は朗らかで優しい。





いろいろお騒がせの中国ですが、
田舎の方では、まだまだ暮らしは貧しい。
労働者や店員さんの収入は、月に4万円ほど。
農民たちはもっと少ない。
それでも、いつもこういう笑顔で、笑い声は快活そのもの、
底抜けに明るい。

いろんな状況を無視して、素直に考えれば、
こんな笑顔の人たちが暮らしている国は
良い国なのかもしれない、と思えてくる。
だって、東京で素敵な笑顔で暮らしている人を
見つける方が大変だもの。



ちなみに、
四川省では、なぜかちょくちょく
一緒に記念写真を求められます。
しかも妙齢の女性ばかりです。
ここらへんでモテる顔でもしているのでしょうか。
そして、私と写真を撮って、
いったい何をするのでしょうか。


旅の間、時間を見つけて
旅で出会った素敵な、切ない話を紹介しますね。
なかなかネットがつながらないので、
帰国まで二度とできないかもしれませんが…★



名古屋ロケ(本編)。

2015年08月11日 00時49分38秒 | チャリダー★



名古屋のロケは、
チャリダーの「乗鞍スペシャル」の取材でした。


イノッチの大一番、
アマチュアサイクリストたちの全日本である
マウンテンサイクリングin乗鞍に向けて、
うちのディレクターたちが、全国のチャリダーを
取材して回っているのです。


名古屋での行き先は、喫茶店。
開店前から行列ができるその店で、目的の人は
パンをつくっています。





チャリダーのみなさまご存知の、筧五郎さん。
通称56さんですね。
去年、NHKで同じレースの王者として特集された
「日本一の坂バカ」森本師匠の師匠です。

写真では真剣な顔してる56さんですが、
しょーもないほど目立ちたがり屋さんだし、
ふつうに話してるだけでは、ただのエッチなお兄ちゃんだ。
でも、こと自転車のことになると、その口からは
ストレートで胸にひびく言葉が生まれてくる。
(なんかどこかの狂言師と似てる気がして来た…)
それは「忘れたいほど」苦しい事が多かった人生の中で、
56さんが見つめ続けて来たものを教えてくれる。

話しながら、ああ、この人は詩人なのだ、と思った。
エッチだけど。





10年前に優勝し、人生を変えてくれた乗鞍で、
もう一度優勝する。
そのために今、走っている。
そんな姿を撮って来たのですが…
この映像がどれくらいのボリュームで世に出るかどうかは、
レースの結果次第。
どうか、悔いの無いレースになりますように。
そう祈るような気持ちで、撮影してきたのでした。












56さんが「乗鞍に走りに行く」といって出発したあと、
私は名古屋から西へ35キロ、あこがれだった「二ノ瀬越」という峠道へ。
関東におけるヤビツ峠のような、
中部圏のチャリダーたちの足試しの峠ですね。


距離5.9km。
平均勾配6%。
56さんは毎週のようにここを走り、
乗鞍前のこの時期、17分で上るらしい。
私も、56さんが見ている景色を見ておかねばなるまい!







この峠道のすばらしいところは、
「景色の抜け」が良いところ。
木々に囲まれたりしていないので、
遠くを見晴らせるのです。


…つまり、ず~っと先の、
これから上ることになる道まで見えちゃうんですけど。
まあ覚悟が決まって心地よい。






前半は勾配1%ぐらいから始まり、
2km地点を過ぎると5~6%に。
その後、ヘアピン部分でぐっと勾配がキツくなったりもするが、
それでも最大で11%ほどだったと思う。
割と一定ペースで走れるので、練習にはもってこいの峠かもしれない。





前半3km地点で8分ほど。
後半の勾配のキツさを考えると、21分がいいとこかな?
…と思っていたら、思いのほか暑くて
オーバーヒート。
ペースを落とさざるを得ない。





さすが中部圏の名所。
何人もチャリダーさんを追い越す。





あとで写真を見たら、けっこう本気な顔をされてた。






トライアスリートっぽいおっちゃんを追い越す。
この方は、上りきったらすぐに下りて、
何本も上ってた。
う~ん、お強い。






最後はフォームもベロベロで、県境の峠へゴール。
タイムは22分ちょっと。
初めての峠なので、次はもう少し良くなるとは思うけど……
いや~、ここを17分なんて、バケモンだわ。
やっぱり、ただのエッチなお兄さんではなかった。



ちなみに、この56さん、
今月22日放送のチャリダー★にも出演いただいてます。
イノッチと2人で、ある場所で「体力測定」してもらったのですが…
めっちゃ面白いので、ぜひ見て下さい。
演出が冴えてますよ☆



↑名古屋みやげ、56さんサイン入りの本。
 56さん人生初のサインだったらしいです。

よいチームとは。

2015年08月05日 17時10分35秒 | チャリダー★


以前「チャリダー★」でも特集させてもらった
宮澤さんのチームと合宿してきました!


世界のトップを走り続けて来た宮澤さんが引退されて、
日本のプロチームの監督になったのです。
そこに、坂バカさんを放り込んだ、というわけです。


いやはや、プロはすごかった。
山岳150kmを猛烈なスピードで走りながら
宮澤さんの細かな指示が飛ぶ。
イノッチも相当速いのに、それをプロたちは
あっという間に追い抜いていく。
圧巻は、トレイン組んでの時速55km巡航。
普通は風よけ役の先頭を交代しながら走るんだけど、
このときは才田プロがひとりでガンガンに引っ張ってた。
しかもそのラストは大迫力のスプリント勝負。
あまりに速くて、撮影しながら、ため息が出た。
(それにしっかり付いてったイノッチもすごいけど)


しかし。
何より驚いたのは、全員が「楽しそう」だったこと。
ふつう、プロに話を聞くと、
「走ることは、好きとか嫌いとかじゃない」という言葉が返って来る。
走ることが仕事だから、もはや好き嫌いじゃない。
やるしかないのだ、と。
ところがこのチームは、全員が、輝く笑顔で走っていた。
いったい何が違うのだろうか?




プロチームと言っても、金銭や機材など、
満足な環境ではないだろう。
(このチームのコンポは105だ)
しかし、ここには走る喜びがあり、
速くなることへの希望に満ちている。
実際、日本のプロサイクリストのなかでは無名と言って良い選手たちが、
今年のレースでは名だたる日本の上位選手たちに食い込み、
チーム総合では5位につけている。



撮影しながら、ずっとその秘訣がどこにあるのか、考えていた。


それは、宮澤さんの走り方、生き方に
あるのではないかという気がする。
何より、監督である宮澤さん自身が、楽しんでいる。
それは撮影していると「輝いて見える」ほど。
会話を聞いていると、チームの若者たちが
「自分にも勝てる可能性がある」と思えるような会話をしている。
しかも、全員が紳士で、きちんとしている。
コンビニで地べたに座るようなことは絶対にしない。



いろいろ考えさせられてしまった。
こういうチームには、未来がある。
うちの制作チームも、未来があるチームにしていかなくちゃ。
それは、やはり、監督次第なんでしょうね…☆

ひさびさの海外は…

2015年08月02日 20時46分28秒 | 世界の街道をゆく
いや~、久しぶりです。
ミャンマー以来の海外ロケの行き先は、中国です~!

「世界の街道をゆく」三国志編の第二弾。
ちなみに第一弾は2011年でしたので…
ずいぶん長い間、あの国との間にいろいろあったわけですね。




前回は、洛陽から許昌、荊州を経て赤壁までの旅でしたが、
今回は四川省成都あたりを旅します。
劉備たちが蜀の国をつくり、死んでいくまでの道をたどるというわけです。




↑前回撮影した許昌。曹操が悪役であるため、最近まで三国志関係の遺跡は人気がなかったらしい。




↑呂布の城跡では、崖をよじのぼって撮影したなあ。今回はどうなるかしら?




さあ、ただいまバリバリ三国志の勉強中。
1800年前に、どこで何が行われていたのかを覚えて、
それを地形とあてはめて考えておきます。
いろいろ頭に叩き込んでおかなくちゃ☆