夜の福島駅へ降り立った。
常磐自動車道の開通記念サイクリングイベント撮影のためである。
今回開通するのは、福島県の北東、宮城県境近く。
相馬、南相馬、浪江を通って、来年には常磐道は仙台までつながるという。
その新設部分を90km、自転車で走ろうというイベント。
高速道路を走れるレアなチャンスに、全国から応募が殺到したらしい。
で、福島駅へ。
ご存知の方も多いと思うが、福島県の浜通りは電車が復旧していない区間も多く、
福島からバスで行くか、仙台から電車とバスを乗り継がなくては行けない。
それなら自転車の方が早いし、楽しい。
というわけで、福島駅に降り立ったわけだ。
夜なのは、例によって出発が遅れたためだ。
他のスタッフたちはすでに車で現地入りしている。
天気予報は晴れだというし、距離60km、峠を2つ越えるくらいなら
2時間ちょいの軽い足慣らしだろう。
さあ、防寒対策をして東へ向かおう。
…………。
出発してすぐ、雨が降り出した。
出ていたお月様も、すぐに雲で見えなくなった。
でも、走るしかないのである。
ロケ車に助けを求めれば、迎えに来てくれるだろうけど、
そんなのつまらない。
福島から相馬へは、国道115号が一直線に伸びている。
最大の難所は霊山峠。標高は500mほど。
だらだらと緩い坂道が15kmほど続くようだ。
それほど困難ではない……はずだったのだが、
雨脚は強まる一方で、地面からの水ハネで体はずぶ濡れ。
天気予報を信じたあまり、レインジャケットは薄手一枚。
ハードシェルジャケットにするんだった…。
レインジャケットは防水性に優れているが、
汗を逃がすことはできない。
よって、ジャケットの中も汗でずぶ濡れ。
止まれば一気に体が冷えるので、止まれない。
おかげで一気に30km地点の霊山峠に到着。
気温を示す電光掲示は5度。さすがに寒い。
と、そこに輝いていたのは……自販機!
何キロぶりの自販機だろうか?
ああ、この世に神様は存在するのだ!
持って来たドリンクは、ボトルがハネた泥で汚れて飲めず、
のどカラカラだったのである。
駆け寄って、エナジードリンクを購入。
すると!!
……当たった。
私、自販機で当たりが出たの、人生初。
これは写真におさめなきゃ!
ずぶ濡れのウェアから携帯を取り出す!
なかなか取り出せない!
「5555」の文字がピーピー点滅している。
もたもたしてたら、時間切れとかあるのだろうか!?
でも、証拠を残さなくてはいけない!
焦れば焦るほど、携帯は手から滑り落ちるし、
暗証番号は間違えるし、
なんとか写真におさめて、急いでもう一本のボタンを押したら、
飲みたくもないドリンクのボタンを押してしまった。
……荷物が増えた。
ああ、と思って、ふと見上げると、
月が出ていた。
レインジャケットの雫を払って、気合いを入れる。
残りの下り坂30kmへ漕ぎ出す。
天国であるはずの下り坂は、夜になると地獄と化す。
街灯がなくて暗闇なので、ライトのか細い光だけが頼りだ。
私のライトは、「点灯」させると2時間。
「点滅」なら8時間。
当然、ここからすべて点灯させると電池切れの可能性大。
それだけは避けたいので、「点滅」で行く。
目は疲れるが、何とかなる。
そこに、第2の救いの神が登場!
そう、「車」だ。
車に付いて行けば、前の路面をずっと照らし続けてくれるので、
スピードを出すことができるというわけだ。
しかし車は当然、躊躇なく飛ばす。
時速50キロ。
急カーブで何度か置いて行かれそうになるが、ガン漕ぎでなんとか追いつく。
さすが国道は走りやすいし、これなら麓近くまで一気に行けそうだ!
……と思ったら。
道路の左側を、工事中の看板が過ぎ去る。
50m先、とあった気がした。
まずい!
と思った瞬間、道はバツンと砂利道に。
ハンドルを一気に取られる。
振動。
滑る。
ハンドルが手からこぼれそうになる。
適度にペダリングして、持ちこたえる。
あぶなかった。
なんとか持ちこたえたが、
当然、前の車はさっさと行ってしまった。
相馬に到着したのは、福島を出てからちょうど2時間半。
腹ぺこの私は、一軒だけ開いてたラーメン屋に飛び込んだ。
そこでは、なんとまあ面白い風景が展開されていたのだが……
きょうは文章が長くなり過ぎたので、続きはまた次回★