自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

同じ国へ行くのが怖いの巻。

2014年12月30日 03時35分37秒 | 世界自転車探検部


ミャンマー行きが近づいて来た。


2年前に、かなりがっつりロケをしたことがあるだけに、
勝手も分かるし、こんな風景を見つけたら
こんな撮影が出来る、という予想も立ちやすい。


しかし。


私、どうにもそれがイヤな性分なのです。


初めての土地で、初めての道をはしってドキドキしたい。
ヒョウでも飛び出して来そうなジャングルで
(ヒョウがあちらから飛び出すことなんてほとんどあり得ないけど)
神経を120%研ぎ澄ませながら走りたい。
見たこともない景色を撮影したい。


加えて、先日同じNHKで、鶴田真由さんが
ミャンマーを旅しておられた。
90分×2本の大番組だったのですが、
…おや、以前のこのシリーズよりも民家にお邪魔するシーンが増えてるぞ?
なんだか探検部みたいだなあと思いながら観た。




ほかの番組で撮影した場所や、前に行ったことのある場所には
やっぱり行きたくないのですが、
ミャンマーに行ったからには「行かなくてはいけない」場所もあったりする。
(ニューヨークと言えば自由の女神、というような場所は、
 映るとやはり安心するので、見飽きていても撮影します)


前回と今回のはざまを、
どう移ろいながら旅をするか。
今回はそんな悩みが大きく立ちはだかっているのです。


とりあえず、年末年始は上座部仏教の勉強でもします★
みなさま、良いお年をお迎え下さいませ。

さよならアバンテ。

2014年12月27日 01時45分48秒 | おしごと日記



男性の中には、ご存知の方もいるかもしれない。
タミヤのRCカー「アバンテ4WD」。
25年前、私が中学1年生当時、少年たち憧れのラジコンカーだった。


当時出始めだったカーボン素材を使用し、
オフロードを時速60キロで走る。
この国で最高峰のラジコンカー。
後生大事に持ち続けて来たが、手放すことにした。




私の親は、ちょっと変わった教育方針で、
小遣いはなかったし、オモチャやゲームなどといったものは
何一つ買ってもらえなかった。
(ちなみにテレビも「バカになるから」禁止だった)
だから、ラジコンカーなんて買ってもらえる訳なかったし、
欲しいと言えば厳しく叱られた。



ところが、中学一年の冬、
スキーで左足を折って1ヶ月入院したとき、
(その骨折でスポーツマン人生を断たれたのよ…)
兄が「AVANTE 4WD」と書かれた大きな箱を持って
病院にやって来た。
なぜ買って良いことになったのかは、良くわからない。
学校でいじめにあったり、成績が落ちていったり、
いろいろ良くない変化があったから、
母の教育方針が変わったのだろうか?

ともかく、私は小躍りした。
よく雪の降る年で、窓に雪を見ながら、
家にこもって黙々と組み立てた。



あれから25年。
いまでもアバンテは時速60キロで走る。
思い出の品だから、どうしても手放せなかったのだが、
手放すことにした。
身辺の品々を、少しずつ減らしていこうと思ったから。
物がなくても、豊かに生きていけることを知ったし、
そうありたいと思ったから。



次はなにを減らそうかな…☆

ミルクに弱い男。

2014年12月23日 13時44分54秒 | おしごと日記



4年半前、メキシコに行った時に、
太陽輝く海辺の町で、名物のミルク屋さんを取材した。

沸き立つようなにぎわいの店内に、
ボーイさんがキリキリ舞うように歩き回り、
テーブルのグラスに、ホットミルクを高いところからそそいでくれる。
それは勢いがあって、みんな大喜びのミルク店だ。


撮影が終わり、スタッフみんなもミルクを味わった。
味だけを取り出してみれば、特に変わりばえのない素直な牛乳。
それを店の空気がおいしく感じさせてくれる。
もちろん私もゴクゴク飲んだ。



しかし。
その晩から数日間、ひどい下痢に悩まされた。
身動きとれず、使い物にならない物体と化した。



なんとか持ち直し、メキシコ→アメリカと1ヶ月続いたロケを終え、帰国。
すると!
あらビックリ、牛乳がまったく飲めなくなってしまった。


飲むと、お腹がグルグルになって、
気持ち悪くなる。
冷たいミルクなどもってのほか。
煮沸したミルクも、グラス一杯飲むと気分が悪くなるのである。



昨日なんて、油断してスターバックスのキャラメルマキアートを一杯飲んだら、
下痢と貧血をおこして会社で倒れた。
気がついたら、大勢に囲まれて「大丈夫ですか!」と言われていた。
しばらく気を失って、けいれんしていたらしい。



生まれてこのかた、ミルクに当たったことなどなかったのに。
これ、何なんでしょうね。


ちなみに、ペルーの山奥でアルコールに当たって以来、
アルコールもお腹を壊すようになりました。
いまではビール一杯で、トイレに駆け込み寺です。
海外に行くたびに、体が弱くなっていく……★

テーブルができあがった話。

2014年12月17日 22時26分53秒 | うまいもの



引っ越しを機に、自作の一枚板テーブルをリメイクに出して2ヶ月。

森のふくろうさんから「できたよ」の連絡を受けて、
仕事前の早朝出発で日光まで往復!
(もちろんクルマ)





ジャーン。


「長さを50センチ短く、高さは28センチ高く。
 やわらかいのにシャープさを残してほしい。
 足はネコ脚風味で」
そんなボンヤリしたオーダーをだしたのに、完璧以上に作り上げてくれました。
すばらしい。まるで板が喜んでいるようです。






同じく日光に住んでる鍛鉄作家のケンちゃんに鉄部品をたのんで、
テーブルの印象を引き締めてもらいました。
この鉄の「叩いたぞ!」という造形が美しい。
このパーツを見ながら酒が飲めそうです。






さらに。
むかし福島の山奥でたまたま見つけた製材所で譲ってもらった
トチの一枚板も、きれいに削ってもらいました。



長さ130センチと小さいためか、使うアテがなく製材所のすみっこに追いやられていたのを
捨て値で譲ってもらったやつです。
それをフクロウさんが削ったら…





それはそれは見事な木目が現れました。

「こう伸びたかった こう伸びざるを得なかった」
そんな枝葉が伸びゆくいきさつが、この木目には遺されているのですね。

このトチの木の心が刻まれた板は、仕事用机の天板にしようかな。






思い描いたものを、誰かに制作するようにたのんで、
予想以上のものが出来て来ることはめったにない。
でも今回は予想を上回るもののオンパレードで、
参ってしまうほど楽しかった。

気になる代金は、テーブル15万。
分かる方には分かると思いますが、破格の安さです。
都内のオーダー家具屋さんで頼んだら50万円でもできないでしょう。
一生大切に使わせていただきます。



帰りしな、勢い余って、つぎの家具も発注。
どんなものが出来るかは、また2ヶ月後のおたのしみ……★



ナカシマデビュー。

2014年12月15日 21時02分08秒 | チャリダー★



古い読者の方はお覚えかもしれません。
自転車探検部インドネシア編を手伝ってくれたADナカシマくんが、
このたびチャリダーのディレクターデビューすることになりました!


私もナカシマくんのデビュー戦の助っ人として、久々にロケ参加。
私は出演者、ナカシマくんと共に自転車移動。
40km弱のコースなのに、私とナカシマは70km以上走りました。
ケツ筋が良い具合に筋肉痛でございます。





演出って生ものなので、
その場の空気をつかまえて「シーン」をつくる力が必要。
たとえば「ここ懐かしいなあ」と出演者が言ったら、
それを「どうして懐かしい?」と聞いて話を膨らませたり、
そこを撮影してもシーンが作れないと判断すれば、ただ「へえ~」と受け流す。
出演者の一言一言に頭をフル回転させながら対応するのです。

チャリダーは、ただのアホ番組のように見えますが、
実際に走って起こった出来事をつかまえてシーンをつくるドキュメンタリー。
ナカシマくんにも、だんだんと融通無碍になっていってほしいです。



さて、年明けには、
これまた久々に大きなロケが。


ミャンマーに行くことになりそうです☆







2年前に行ったミャンマー。
またこんな風景が見られるかしら?







船にも乗りたいなあ。
自転車2台、乗せてくれるかなあ。



出発は年あけすぐ。
撮影機材のチェックしとかないと☆




常磐自動車道開通イベント ~おまけ~

2014年12月07日 02時59分46秒 | チャリダー★



さて、参加したみなさんがハッピーに走り終えたイベントだったが、
実は我々のイベントは終わっていなかった。


ADのアキヒロくんが、「東京まで走って帰りたい」と言い出したのだ。


ふたたび降り出した雨。
気温は10度以下。
あと1時間で日没。
全員で「気持ちは分かるけど、やめたほうがいいよ~」と止めたが、
アキヒロくんの決意は固かった。


仕方ないので、ディレクターの木下はゴアテックスのジャケットを貸し、
私は明るいライトと輪行バッグと冬用ジャケットを貸し、
モエちゃんはパンク修理キットを手渡した。


「いいか、霊山峠には人が住んでるから、困ったら助けてもらうんだぞ。
 ちなみにそこの自販機はアタリが出やすいからな!」

と役に立たない情報を吹き込み、アキヒロくんを送り出した。
雨の中、高速道路のゲートをスポッと抜けて行った姿を観て、
なぜかおかしくて、みんなでゲラゲラ笑った。



しかし。



それきり、アキヒロくんの消息が途絶えた。







みんな心配だった。
止めておくべきだったと、悔やむものも続出した。

そうだよな。夜の峠越えなんて、普通の人はやらない。
そんな当たり前のことに、いまさら思い当たる。



2日後。
ひょんなことから、アキヒロくんの居場所が分かった。






(Photo by Suda Coffee)



那須ロケでお世話になった須田コーヒーさんがFacebookに投稿した写真に
見覚えのあるバイクが写っていた。
これは…まぎれもない、私がアキヒロくんに貸したバイクじゃないのさ!



どうやら、この須田コーヒーに寄りたくて、自走で帰ったらしい。
そして、出発して間もなく携帯の電池は切れたが、
充電器を忘れたため、切れたまま旅していたらしい。
ったく、お騒がせな野郎だ。



そして3日後の深夜2時、アキヒロくんは元気に会社に現れた。
450km走り、途中で4度パンクし、
須田コーヒーでおいしいケーキとコーヒーを堪能したようだが、
念願だった「ステキな女性との出会い」は果たせなかったようだ。


スタッフの皆は、やれやれ、という顔をしていたが、
内心は穏やかではなかっただろう。
だって、一番のロードバイク初心者が、これだけのことをやったのだから。


私としても、
アキヒロくんに雨夜の峠越えをカンタンにやられてしまったので、
もうちょっとハードな道を走らないと気が済まなくなってしまった。
…さあ、深夜3時か。いまから峠越えに出かけようかな……★

常磐自動車道開通イベント ~その3~

2014年12月05日 14時41分33秒 | チャリダー★



天気予報は曇りのち雨。
そして、我々を待っていたのは……


ザーザー降りの雨だった。


雨にもかかわらず、イベントには全国から600人が集った。
中には普通のカッパやポンチョの人もいたりして、なかなか風景として楽しい。
意外にも本格派ローディは少なくて、
初心者チャリダーたちがグループで遠足気分で来ている感じがステキだ。


開会式では、偉い人たちが順番こにお話しをなさった。
参加者たちはみんな寒くて震えているのだが、
そんなことじゃあ、ありがたいお話しは決して短くならない。
たぶん雷が落ちてもマイクの電池が切れても、短くならない。
申し訳ないが、寒くて震えが止まらないので、
何を言ってるのかまったく聞き取れなかった。



90kmだったイベントは、雨のためか80kmに短縮。
雨が一向にやまないので、みんなヤケクソ気味に走っているのが面白いし、
妙な連帯感も生まれて来る。
いろんな人と話しながら、楽しく走った。
「乗り慣れてますね!」と言うと「いえいえ!」と嬉しそうに顔がほころぶ。
自転車という共通項での話は、世界中どこへ行っても平和だ。


今回のミッションは、カメラ回しながら走ること!
雨脚が弱まる瞬間をねらって、カメラ片手に走ると、
みなさん「どうせカットでしょ~!」と喜んでくれる。
私は使える映像しか撮らないので、意外とカットにならないかもよ!?






ブログみてます、と声をかけてくれる方もちらほら。
蛍光ピンクのバーテープで分かったらしい★
GOKISOに興味ある、と言うので
ジョカトーレを臨時試乗車に。
GOKISOはいいですよ! 決戦ホイールなのに頑丈なので、普段から履きっぱなしで大丈夫ですから。



……………



ロケの終わり、国道6号線を通って帰京する。
点々とあった人家の光が、突然消えた。
浪江。双葉。人が住んでいない地域は、真の闇だった。
「歩行者 自転車 進入禁止」とある。
家々の門は、鉄格子で封鎖されている。
ここに人の暮らしが戻って来るのは、いつになるだろうか?
少なくとも、私が命あるうちではないだろう。
大きな代償を支払って、私たちは便利な生活を得ていたのだと
重いエネルギーをもらって、今回のイベントは幕を閉じた。

常磐自動車道開通イベント ~その2~

2014年12月04日 10時05分17秒 | チャリダー★



相馬駅に到着したとたん、お腹がグウと鳴った。
うまそうな店を求めて、ネオンが輝く方向へ歩く。

へべれけになったオジサンたちが、すれ違いざま、ワッと何かで盛り上がる。
相馬の夜は、思った以上に元気なようだ。


きらびやかに見えたネオン街は、スナック街だった。
「ココナッツ」「あじさい」といった、懐かしい感じの店名看板がずらっと並ぶ。
残念ながら、普通にメシを食えるような場所ではなさそうだ。
ただ素通りするだけなのに、こういう道を歩くと緊張するのはなぜだろう。
勝手に緊張する私だが、お店の女性たちは誰も声をかけて来ない。



唯一開いていたのは、駅前のラーメン店(上の写真)。
引き戸を開けると、湯気とともに笑い声があふれ出て来た。
どうやらスナック帰りのおっちゃんたちが〆に立ち寄る店のようだ。
後ろの座敷のグループは、ひたすらゲラゲラ笑い合ってチャーハンをほおばり、
となりに座った二人組は、先輩が後輩に何かを教えている。
土木関係の労働者のようだ。「シマ」という単語が何度も出て来た。
つかみ所のない話を、何度も何度も繰り返し、
後輩はそのたびに「そうっすね~」を繰り返していた。


ラーメンは、普通においしかった。



ふと、私は、ある疑問にとらわれた。
おっちゃん達は、スナックで金を落とし、ラーメン屋で金を落とし、
楽しそうに飲んでいる。
ずいぶん景気の良い町に来た感じがする。
しかし、家族はいるのだろうか?
家族がいたら、そんなに自由にお金を落としているわけにもいくまい。
地元で家庭を持つ人ではなく、出稼ぎの方達なのかもしれない。



そんな事を考えていると、あることを思い出した。
原発から数十キロ圏内の住民たちが移住して来たことで、
相馬市などは人口が1.5倍になっているという。
土木工事は絶えることなく、町外れには「除染作業員募集!」という広告が出ていた。
復興のための仕事を求めて、
全国から人が集まっているのかもしれない。
そして、仕送りしながら、こうして夜な夜な、
気晴らしをしているのかもしれない。




ホテルへの帰り道、ふたたびスナック街を通ると、
お客を見送るスナックの女性たちに出くわした。
アジア系の外国人だった。
「気をつけてネー」「またネー」
笑顔でおっちゃんたちを送り出す。
ああ、おっちゃんたちの落とした金は、
最終的には彼女たちの手によって外国へ送られて行くのかな、
と思ったりした。



12時、チャリダーのオンエアを観て、就寝。
明日は本番当日、天気予報は曇りのち晴れ!
5時起きで現場に向かった私たちを待っていたのは……

続きはまた次回★





常磐自動車道開通イベントへ ~その1~

2014年12月01日 21時07分02秒 | チャリダー★


夜の福島駅へ降り立った。

常磐自動車道の開通記念サイクリングイベント撮影のためである。


今回開通するのは、福島県の北東、宮城県境近く。
相馬、南相馬、浪江を通って、来年には常磐道は仙台までつながるという。
その新設部分を90km、自転車で走ろうというイベント。
高速道路を走れるレアなチャンスに、全国から応募が殺到したらしい。



で、福島駅へ。
ご存知の方も多いと思うが、福島県の浜通りは電車が復旧していない区間も多く、
福島からバスで行くか、仙台から電車とバスを乗り継がなくては行けない。
それなら自転車の方が早いし、楽しい。
というわけで、福島駅に降り立ったわけだ。


夜なのは、例によって出発が遅れたためだ。
他のスタッフたちはすでに車で現地入りしている。
天気予報は晴れだというし、距離60km、峠を2つ越えるくらいなら
2時間ちょいの軽い足慣らしだろう。
さあ、防寒対策をして東へ向かおう。




…………。
出発してすぐ、雨が降り出した。
出ていたお月様も、すぐに雲で見えなくなった。
でも、走るしかないのである。
ロケ車に助けを求めれば、迎えに来てくれるだろうけど、
そんなのつまらない。



福島から相馬へは、国道115号が一直線に伸びている。
最大の難所は霊山峠。標高は500mほど。
だらだらと緩い坂道が15kmほど続くようだ。
それほど困難ではない……はずだったのだが、
雨脚は強まる一方で、地面からの水ハネで体はずぶ濡れ。
天気予報を信じたあまり、レインジャケットは薄手一枚。
ハードシェルジャケットにするんだった…。






レインジャケットは防水性に優れているが、
汗を逃がすことはできない。
よって、ジャケットの中も汗でずぶ濡れ。
止まれば一気に体が冷えるので、止まれない。
おかげで一気に30km地点の霊山峠に到着。
気温を示す電光掲示は5度。さすがに寒い。


と、そこに輝いていたのは……自販機!
何キロぶりの自販機だろうか?
ああ、この世に神様は存在するのだ!
持って来たドリンクは、ボトルがハネた泥で汚れて飲めず、
のどカラカラだったのである。
駆け寄って、エナジードリンクを購入。


すると!!









……当たった。




私、自販機で当たりが出たの、人生初。
これは写真におさめなきゃ!
ずぶ濡れのウェアから携帯を取り出す!
なかなか取り出せない!
「5555」の文字がピーピー点滅している。
もたもたしてたら、時間切れとかあるのだろうか!?
でも、証拠を残さなくてはいけない!


焦れば焦るほど、携帯は手から滑り落ちるし、
暗証番号は間違えるし、
なんとか写真におさめて、急いでもう一本のボタンを押したら、
飲みたくもないドリンクのボタンを押してしまった。


……荷物が増えた。





ああ、と思って、ふと見上げると、
月が出ていた。
レインジャケットの雫を払って、気合いを入れる。
残りの下り坂30kmへ漕ぎ出す。



天国であるはずの下り坂は、夜になると地獄と化す。
街灯がなくて暗闇なので、ライトのか細い光だけが頼りだ。
私のライトは、「点灯」させると2時間。
「点滅」なら8時間。
当然、ここからすべて点灯させると電池切れの可能性大。
それだけは避けたいので、「点滅」で行く。
目は疲れるが、何とかなる。



そこに、第2の救いの神が登場!
そう、「車」だ。
車に付いて行けば、前の路面をずっと照らし続けてくれるので、
スピードを出すことができるというわけだ。

しかし車は当然、躊躇なく飛ばす。
時速50キロ。
急カーブで何度か置いて行かれそうになるが、ガン漕ぎでなんとか追いつく。
さすが国道は走りやすいし、これなら麓近くまで一気に行けそうだ!



……と思ったら。



道路の左側を、工事中の看板が過ぎ去る。
50m先、とあった気がした。
まずい!
と思った瞬間、道はバツンと砂利道に。
ハンドルを一気に取られる。
振動。
滑る。
ハンドルが手からこぼれそうになる。
適度にペダリングして、持ちこたえる。


あぶなかった。
なんとか持ちこたえたが、
当然、前の車はさっさと行ってしまった。






相馬に到着したのは、福島を出てからちょうど2時間半。
腹ぺこの私は、一軒だけ開いてたラーメン屋に飛び込んだ。
そこでは、なんとまあ面白い風景が展開されていたのだが……
きょうは文章が長くなり過ぎたので、続きはまた次回★