自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

旅人はね。

2015年01月31日 11時36分40秒 | 世界自転車探検部

写真にはチラチラ写ってましたからね。
今さら感アリアリですが。

今回の旅人は、神田山陽さんです。






初めて出会ったのは2003年。
山陽さんは真打ち昇進された直後に
NHKスタジオパークのゲストでいらした。
私は番組ADでした。

当時、山陽さん38歳。
ADの私にもポンポンアイデアを投げて来て、
苦しかったAD時代のなかで一番楽しい仕事でした。
ディレクターになったら、いつか仕事をしたいと思ったものでした。






その山陽さん、ことし49歳。
20代だって、撮影をしながらマウンテンバイクで
1日100キロ以上走り続けられる人は、なかなかいません。
アラフィフの山陽さん、恐るべし。





ミャンマーの旅は、複雑な国の歴史、宗教など
テーマのハードルが高い。
若い俳優さんでは、そのテーマを理解するだけで手一杯だろうし、
「すごいなあ」「キレイだなあ」「優しいなあ」といった感想だけでは
この国を紹介することは難しい。
なので、旅人は山陽さん以外に考えられなかったのです。






船に乗って、風に吹かれている間。
自転車で走っている膨大な時間。
山陽さんと私は、時間があれば常に
ミャンマーの人たちが何をどう考えているのか?
という話をしました。

「あの人がああ言ってくれたのは、どうしてなんだろうね?」
「あの子はなぜ母親のために祈ってたと思う? この国の仏教と関係あるのかな?」
「あの子たちは、見えない将来のことなんて考えてないんじゃないかな?
 だからあんなに明るいんじゃないかな?」

十数日間、そんな話ばかりをし続けて、
ひたすらこの国のことを考え抜いて、
旅のゴールでの最後のコメントにたどり着く。


今回の旅は、誰と出会い、何を感じて、
どんなコメントにたどり着くのか……どうぞお楽しみに☆



愛と無関心。

2015年01月28日 19時07分46秒 | 世界自転車探検部



美しい野山、一年中青々と育つ農作物、
道をゆったり歩く牛たちと、牛飼いの笑顔。
常夏の国ミャンマーの農村は、絵に描いた以上に美しい。


自転車で走ると、ついつい景色に見とれてしまうし、
カメラを持っていれば、ずっと撮っていたくなる。


すると、突然天地がひっくり返って、
気がついた時には転んでいる。
ミャンマーの道は、トラップが山盛りなのだ。


ダートには雨期に流れた水の跡が
50センチほどの窪みを作っている。
これはマウンテンバイクでも厳しい。
アスファルトの道にも、突然ボッコリ穴があいている。
牛の糞にも要注意だ。





なぜか道路に作られた線路。
これも強敵。太めの27Cタイヤでも、ズルリと持って行かれて
転んじゃった。
なぜか転ぶ瞬間の写真が写っていた。
タイヤがレールに沿って縦スベリしております。
たぶん焦ってシャッターを押したんでしょうね。。





ある夜、真っ暗な道をホテル探して走っていたら、
アスファルトに突然10センチもある段差が現れて、
気がついた時にはハンドルがバウンドし、
押さえることができなかった。
いっしょに走っていた旅人さんによれば、
「人が地面に当たった」鈍い音がしたらしい。
私はカメラを守るために、左半身で受け身をとったので、
左の腕と膝を強打した。



すると、暗闇から湧き出るように、
あっという間に村人が集まって来た。
「大丈夫か? 大丈夫か?」と言われていたのだと思う。
みんなで私を抱き起こし、私のケガを見る人、
自転車の調子をチェックする人、
はずれたチェーンを直してくれる人。
モノを落としていないか、暗闇の道をチェックしてくれる人。
気がつけば20人くらいに囲まれて、介抱されていた。


私だったら。
果たしてこんな勢いで駆け寄って助けるだろうか?
油で手が汚れるのを躊躇せずにチェーンを直してあげられるだろうか?


「愛」の反対が「無関心」だとすれば、
私は普段、愛とは最も遠い場所に生きているのかもしれない。
そう考えたら、かなしくて、ありがたくて、
泣けて来た。



ある日のできごと…。

2015年01月27日 19時54分43秒 | 世界自転車探検部



撮影中、道を走っているときは、
旅人(自転車)+ロケ車(通訳&AD)+私(自転車)
という体制で走っていることが多い。

旅人をロケ車の車載カメラでADアキヒロくんが撮影し(RECボタンを押すだけ)、
自転車から撮りたい場合は、そのロケ車の前に私がスッと入って行って
旅人に並走して撮影しているのだ。


その日は、まずスタートから車載カメラで撮影していたので、
私はロケ車の後ろをぴったりくっついて、カメラを背負って走っていた。


道はアスファルトのガタガタ道。
常時電気アンマ状態。
背負ったカメラが暴れて背骨が痛い。


すると!

何かが落ちて、ホイールに激しく当たり、飛んでいった。
(振動でライトが落ちたのだと後で判明&紛失)
そしてホイールは曲がり、走行不能。
あたふたしながら、助けを求めてロケ車を見ると、そんな私には気付かず
ブ~ン………と走って行ってしまった。


「後ろに私の姿が見えなくなったら、トラブルだから停まるように!」
と言っておいたので、
そのうち気付いて停まるだろう。
とりあえずホイールを直しにかかる。
スポークが曲がってしまったので、かなりのフレが出てしまった。
曲がったスポークを押し戻したり、反対側のスポークを曲げてみたり、
いろいろやったら、どうにか走れるくらいになったので、
やれやれ、と思いつつ、ロケ隊を追いかける。



しかし。



行けども行けども、ロケ車が見えてこない。
気温35度の乾燥地帯。ボトルを持っていなかったので、水分ゼロ。
所持金は…小銭程度。
携帯…電波なし。
このままはぐれたら大変だ。
ひょっとしたら何十キロも
補給無しで走ることになるかもしれない。
なるべく汗をかかないように、省エネモードに切り替える。






電気アンマはおさまること無く、手と尻がかな~りツラい。
なぜか道路のど真ん中だけはアスファルトの油分が多く、滑らかなので、
真ん中のテカテカした部分に沿って走る。
そして車が来るたび、電気アンマに退避し、
またセンターに戻って走る。
…バカ野郎、いったいどこまで行きやがったんだ?






15km走って、ようやく村を発見。
ロケ車の姿は……ナシ。
途方に暮れていると、村人たちがわらわらと集まって来た。

外国人なんて絶対来ない村。
みんな珍しそうに私を眺める。
笑顔を向けると、はじける笑顔がかえって来る。
お店に駆け込み「水ある? コーラある?」と言うと、
水ならあるよ、と村人たちが全員で、
ワッショイワッショイ盛り上がりながら、汚れたペットボトルを洗って
水瓶の水を入れようとしてくれる。


嬉しいけど、その水を飲んだら一発でアウトだ。
なんとかジェスチャーで「その水飲んだらお腹グルグル~」を伝える。
みんなすぐに分かったみたいで、笑いが起こる。
そして全員で、ワッショイワッショイ、私が来た方向を指し示した。
「ひとつ前の村になら飲み物売ってるよ」と言ってるらしい。


普通は次の村を目指すのだけれど、
こうなっちまったら、彼らの親切をムダには出来ない。
彼らに全力でお礼を言って、前の村に戻ることにした。






5kmほど戻った村の一角で、無事ジュースをゲット。
400チャット(40円)。
ミャンマーの物価は日本の10分の1。高級ドリンクだ。
ここでも村人たちが大注目している。
できるかぎり旨そうに飲んで見せる。
それだけでワッと盛り上がる。
ほんとうは2本飲みたかったが、
高級ドリンクをガバガバ飲むのも嫌味な気がしたので、
1本でガマン。
大丈夫、これであと20kmは走れそうだ。


お店にいた犬が、私に優しげな視線を投げかけて、
尻尾を振ってくれた。
そうだよね、走らないと始まらない。
ふたたび省エネモードで走り出す。






20km。
カーブを曲がるごとに、
小さな村を過ぎるごとに、
ロケ車が停まっているのではないかと淡い期待を膨らませるのだが、
影も形もない。
そのたびに怒りが湧き出て来るのだけれど、
沿道の村人たちの笑顔の応援が、すべてを忘れさせてくれる。
笑顔とは、すごいエネルギーだ。
こちらも、全力の笑顔で手を振りかえす。





27km。
何かの収穫に沸き立つ女性たちがいた。
形からすると、胡麻の収穫だろうか。
枯れ枝の先についている実を、女性たちが笑いながら
バサバサ振るい落としている。
ここに旅人がいたら、すばらしい取材が出来るのに!
私1人しかいな無力さを噛み締めながら通り過ぎると、
女性たちがワーッと手を振ってくれた。
このままここで暮らして行こうかと、錯覚するじゃないのさ☆





34km。
梅の実を売っている女性が、まぶしいくらいの笑顔で
走る私を追いかけて駆け寄り、実を手渡してくれた。
車載カメラでもそんな瞬間が撮れていることを願いながら、
女性に山ほどの投げキッスをする。
遠ざかる後方から男女の沸き立つ声が聞こえた。



トラブルから1時間半。
41km地点(走行は51km)でロケ車を発見した。
みんな昼食をすっかり済ませて、まったりしていた。


おかしいなあ、と思いつつ、
大丈夫だろう、と思って来ちゃったらしい。


大丈夫にしても、40キロもディレクターを放ったらかして先に行くもんかいな??


だっふんだ。
脱力。
ステキな体験をさせていただいたことに、ただ感謝することにしよう……。




番組には絶対出て来ない(そりゃそうだ、撮ってないんだもん)、
ある日のできごとでした★






道。

2015年01月22日 21時54分11秒 | 世界自転車探検部


ミャンマーの道は難易度高いです。
交通ぐちゃぐちゃな国はたくさん行きましたが、
間違いなくトップの座はミャンマーです。





きれいなアスファルトだと思うでしょう?
しかし! 細かなでこぼこが全面にあって、
常時電気アンマ状態。
中腰じゃないとお尻が大変なことになるし、
ハンドルを持つと手がしびれて来る。
慣れてないと20km走るのが大変でしょう。
何より、地面から目が離せないのがイタい。





探検部のお約束、ダート。
雨期のある国だけあって、深~い轍が無数にあり、
ハマると自転車ではぜったい出られません。
ムリに轍を出ようとすると、タイヤがだだスベリになります。
しかも今回は夜間走行が多かっただけあって、3度落車しました。
体中が擦り傷だらけ&バイクはボロボロになっちゃいました。





おまけに、交通がすさまじい。
ぐちゃぐちゃなんてもんじゃない。
ハッと気付くと、すぐそばまで車が迫ってたりする。
何度も「右、左、右、左、……」と確認し続けないといけません。
神経がすり減ります。



それでも、この国を走るのは楽しい。
そのぐちゃぐちゃなバイクや車たちとコンタクトをとるのが楽しくなって来るし、
何より沿道の声援がすごい。
子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、
鮮烈な笑顔で手を振ってくれる。
「無関心」という単語は、この国には無いのかと思うくらいです。




さあ、明日も気を緩めないで参りましょうか!



まなざし。

2015年01月18日 00時00分07秒 | 世界自転車探検部
旅も中盤。
今回も楽しい悪路に悪戦苦闘しています。
スタッフ車両が一度通ったら木の橋がポッキリ折れて
二度と戻れなくなり、
仕方なくデコボコの砂利道を50キロ走ることになったり。
(ロードの私はウルトラしんどかった。後輪スベりっぱなしで落車…)



出会いは素敵に重ねています。
出会った人たちのまなざしが、心に刺さります。





少年僧の誇り高いまなざし。





自転車タクシーのおっちゃんの優しいまなざし。





幼い尼僧の祈りのまなざし。





とても貧しい村で出会った子どもたちのまなざし。



旅は続きます。

ミャンマー探検中☆

2015年01月13日 23時28分47秒 | 世界自転車探検部


ミンガラ~バ~。
常夏の国ミャンマーも、ただいま真冬を迎えております。
おかげで気温は30度くらいまでしか上がりませんし、
乾期のため雨がまったく降りません。
自転車で走るには最高の気候の中、旅が始まりました。





今回は、これまでよりも番組を楽しくするために、
いろいろ考えて撮影しています。
さっそく効果が現れたのか、私、ロケ隊とはぐれてしまいました。
さいきんの自転車探検部は行程が長すぎて(今回は初の1000kmオーバー…)
ほぼ毎日夜遅くまで走っているのですが、
ミャンマーの夜道があまりに暗すぎて、はぐれてしまったのですね。

あまりに真っ暗闇すぎる上に
ミャンマーのアスファルトは穴だらけ。
目を皿のようにしないと突然穴にはまって大変なことになります。
そして車が来たら、天の助け。
そのライトの力を借りて走るために、
ガンガンに踏んで後をついて行きます。
おかげで45km/h巡航で20km走りました。
やれば出来るもんですね。自分で自分を見直しました。


結局ロケ隊ともうまく合流できたし、
目的地にも早く到着。
なのでこうしてブログを書けたりしてます。
良い事ずくめなので、明日はきっと
もっと楽しいことが起こるでしょう。


それじゃあ、明日の機材の準備でもしましょうかね☆



↑スーチーさんちの前にて。

ハードルが上がる幸せ。

2015年01月07日 03時03分29秒 | おしごと日記



あけましておめでとうございます!

新たな気持ちで……と行きたいところではございますが、
気持ちの切り替えって、思い立った瞬間にするのがベストなので、
あまり暦そのものには興味がなかったりします。

プレゼントとかも、お誕生日にあげたことがなくて、
あげたいものが見つかった時にあげます。
女心がつかめないのは、このせいかも知れません。


さてそのお正月。
ひさにさに2日間もの休みがあって、
よく寝ました。
寝ながらふと考えたのは、
「ハードルが上がるって、めちゃくちゃ楽しいことだなあ」
ということ。

予算がない。
撮影時間がない。
カメラマンが下手だ。
天気が悪い。
演出プランに全NGを喰らった。

そんなアウトな状況なのに、
それでも何かを考えなくちゃいけない。
そんなギリギリな時が、実はいちばん楽しかったりするのです。


自転車探検部が楽しいのも、そんな状況の連続だからですね。
それでは、ミャンマーに行って来ます~☆