自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

ブルベ400km。

2024年07月01日 02時03分52秒 | 自転車
300km 600km そして先々週の200kmと
なんとかSR取得に向かってコマを進めてきた私
ついに最後となる400km挑戦の日がやってきた


 ※SR=Super Randonnerのこと。
  200km〜600km全てクリアした人がもらえる称号


SR取得にこだわって来たのは
1000kmの出場資格という以外に
実はもう一つ理由がある



ブルベのルールでは
出場者同士の助け合いは認められているが
一般人に助けてもらうと失格となる
例えば出場者がトレインを組んで 風よけになるのはOKだが
一般人に風よけになってもらうのはNGだ


つまり
いつもの撮影ライダーとして一緒に走ると
出演者の前を走ることができない
だが私が出場者となれば
堂々と一緒に走れて助けることもできるのだ



SRを取るためのスケジュールは
今回を逃すとかなり厳しくなる
去年の400kmは 見事に失敗しているし(コンビニ間違い)
今年もギリギリ認定という事態が続いている
数日前から緊張で眠れなくて苦労した
そう 意外とデリケートなのである(笑)





400kmのスタートは練馬区
近場なので楽かと思いきや スタート時間が金曜日の深夜12時
つまり仕事終わりで着替えて出発し
20時間以上走らねばならない

さらに天候はスタート後しばらくは雨予報
厳しい戦いになりそうだ






練馬区から埼玉 群馬を経て
長野県境の渋峠を目指す400km
埼玉の通過が巨大幹線道路なのが心配だ
獲得標高は5900mあるが
距離100kmあたりに換算すると 1500mほど
易しくはないがまあ大丈夫だろう







小雨の中 50人がスタートした


雨を喜んでいるのか
カエルの大合唱を聴きながら
テールライトの列を追いかける



参加者はトレインを組んで走っているが
ふらついたり 合図をせずに進路変更したり
危なくて一緒に走りたくなかったので
早々に離れて一人旅を決め込んだ


心配だった大幹線道路は
深夜なのに大型トラックが多くて怖かった
さらに 参加者が後ろも見ずに駐車車両をよけて右に出るので
危なすぎて見ちゃいられなかった






信号ストップが多くて思いのほか進まず
80km地点 群馬県太田あたりで夜明けを迎える




腰の具合は相変わらず悪いままだ
治り切る前に体を酷使するロケやブルベを走っているので
仕方がない


1〜2時間のトレーニングなら痛くならないのに
ロングを走ると痛くなる
自分はとりわけロングに弱いのかと思って
ブルベの参加者に「痛くならないのか?」と聞くと
口を揃えて「痛いっすよ」と答える


ただ「全く痛くならない」と答える人もたまにいる
痛くならない方法も この世にはあるに違いない






100kmを過ぎ 赤城山のふもとで
山岳エリアへ突入した


ガーミンの「クライムプロ」という機能は
ルートを入れると坂のプロフィールを表示してくれる


最初の坂が13km6%と出て
目が丸くなった
そして来る坂がことごとく 長くて激坂続きなのだ


私は標高図を思い出して
ハッとした





上り坂があるのは
100km地点から220km地点までの区間だけ
つまりこの120kmの区間に 5000m近い上り坂が凝縮している


上り坂の厳しさを考えるとき
100kmに換算して2000mを超えると
かなりキツい山岳コースとなる
あの「坂バカ遠足」が 100kmで獲得2500mほどなのだ


120kmで5000m近いなんて
地獄に決まってるわい





坂が延々と続く中
雨が本降りとなった
レインジャケットを着ようか迷ったが
寒くないのでRaphaの防水ベストにした
これがちょうど良くて 手足にかかる雨が気持ちよかった


ブルベが面白いのは
不測の事態に対処できるかどうか
自分を試せるからだ


どんなことにも対処できるようにしながら
荷物を極力少なくする
その駆け引きが楽しい





赤城山






遠くに榛名山が見える頃には
雨が止んだ





そして気温30度の炎天下となった





コンビニで 珍しいバイクに乗っている参加者に話しかけた縁で
しばらくご一緒することになった





関根さん
職業は薬剤師
スポーツ経験はゼロだけど 去年ブルベを始めてSRを取ったらしい





走っていると「若山牧水」の文字が目に飛び込んできた


牧水と群馬は あまり繋がらなかったが
牧水がこの辺りを旅して 名作を遺した縁で
文化財的な建物に牧水会館と名付けたらしい



すると
関根パイセンが落ち着いた声でこう言った

「落ちましたよ」



ハッと見ると
サドルの上に置いたボトルの蓋が





崖の下に落ちていた(笑)



私はかなりショックを受けたが
関根パイセンは全く動じてなかった


これがパイセンの強さの秘訣か…






ボトルの蓋はどうにか救出成功したが






ボトルを失ってリタイヤした方が良かったと思うぐらい
激坂は凄まじかった(笑)





最後の難関 渋峠への上りの前で
すでに獲得標高3500m
脚はスカスカ



そんな私にガーミン先生がダメ押しを喰らわせる





上り28km
獲得標高2000m…


マジかよ
気が遠くなった(笑)





上る道が見えるのを喜べるのは
ネジが何本か無い人だけだと思う






渋峠には 撮影で何度も来ているが
自転車で上るのは初めてだったりする





記憶の中の景色と比べながら
ゆっくり上る
出せるパワーは150Wが精いっぱい
気が遠くなるのをこらえながら
「いつか辿り着く」と言い聞かせる










そしてスタートから14時間
やっとこさ折り返し地点の渋峠に着いた






峠は雲の中かと覚悟していたが
標高2100mは 雲の上だった





ブルベの認定に必要な通過証明を購入(100円)






折り返しでTSS360って
キツすぎだろ(笑)



渋峠からの下りは最高だった
そのまま空の彼方に消えてしまっても良いと思った






観光客の多い草津をパスし
関根パイセンとお別れして
長野原町にある温泉&キャンプ施設へお立ち寄り






温泉に2分浸かって回復を図る


とても素敵な施設だし
すぐ近くの草津温泉は激混みなのに
客は私1人だった





軽食ぐらいあるだろうと思ったら
残念ながらジュースのみ
少しでもお金を落として帰りたいので
生搾りのリンゴジュースを頼んだら
店員さんは どこのリンゴを使っているか知らなかった


「うちの町でとれた とびきりのリンゴですよ」
私ならそう言いたいし
そう言うためにとびきりのリンゴを手に入れるだろう



観光を考えるときに
食べ物ってとても大事だと思う
どんなに素敵な街並みが遺っていても
そこにとびきり美味しいカフェやレストランがなければ
なかなか足が向かない


観光客がほしい町や村は
景観の整備と同時に
腕の立つ料理人を雇うべきだと思う





30km上ったので 下り坂も30km





夕暮れの群馬の山々は美しかった





4月の600kmで 後半胃腸が悲鳴をあげたので
今回は胃に負担の少ないドリンク系で走ろうと思っていたら
「カルピスRICH」を飲んだ途端に 胃が悲鳴をあげた


そういえば600kmの時も
オムライスと一緒にカルピスRICHを飲んだことを思い出した


高カロリードリンクの中でも 調子が出るものと出ないものがあって
自分の場合「トロピカーナ」「梅よろし」はアウトだ
カルピスRICHと合わせて調べれば 何か共通点が見つかるかもしれない…




ラスト100kmは
首の後ろ
左の肩甲骨
ひざ
大腰筋
中臀筋
内転筋
そして足の親指が ずっと痛かった


身体中の痛みと戦っていたら
途中 たまたま合流した関根パイセンが
前を引いて助けてくれた
ありがとうございました



そしてスタートから24時間26分
痛みをひたすらガマンしながら
ゴールのコンビニにたどり着いた





1000kmはこれを3日連続で走るのかと思ったら
軽く絶望した(笑)


自分はロングに自信がまったく無いんですと
関根パイセンに相談すると
「あの…林さん十分ロングに向いてると思いますよ」
と言ってくれた






とりあえずこれで 人生初のSR
まさか自分がSRになれるとは思っていなかったので
ちょっとうれしい
そしてしばらくはレースにも出ないので
体を休めることができるのもうれしいのだった(笑)