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茶事には様々な決まりがあります。けれどもそれは全て人間関係の上、人と人とが気持ちよくひと時を過ごす為の知恵やノウハウであります。互いに対する気遣いと、秩序、そんな会話の基本があります。「我が仏、隣りの宝、婿姑、天下の軍、人の善悪」という言い回しがありますが、お茶の席では、こういう話題は避けるという戒めです。まず「我が仏」自己主張が過ぎるのは見苦しい、押しつけは迷惑。
「隣の宝」 金銭に関するうわさ話。「婿姑」=夫婦の仲や、婿、嫁、を愚痴る話をする。「天下の軍」=政治の話、人にとっては興ざめであったり、退屈な話。「人の善悪」=人の悪口、一番興味のある話。茶会がお客様を「おもてなし」 の場であればこそ自分にしかできないもてなしをするという前提があります。主体は、相手であると同時に自分自身でもあります。ただ一方的に相手を持ち上げ、相手が要求するサービスを提供するのではなく、相手をもてなすことで自分自身をみつめ、その自分を通じて相手を持て成す。そういういったり来たりがあって始めて、お茶のもてなしになる。本来、お茶に限らずもてなしというものは、そういう相互方向のものなのです。