江部康二著、1998年、エー・ジー出版発行.
再び京都の高雄病院の江部先生の著書です.
聞き手に「Reborn」代表の曽我部ゆかりさんがあたり、対話形式となっています.
江部先生はアトピー性皮膚炎の治療で有名な方ですから、題名から「アトピー患者と医師のガチンコ勝負」を期待しましたが、よい意味で肩すかしを食らいました.
話は病気の話にとどまることなく、自分自身の健康とストレス、東洋医学について、物理化学の思想、生活習慣病への西洋医学の限界、日本の保険制度、高齢者医療の国際比較など話題は広範囲にわたります。
その中でも、やはり「高雄病院のアトピー治療」ができあがった経緯を興味深く読みました。
アトピー性皮膚炎患者はドクターショッピングを繰り返します.
その理由は単純で「治らないから」.
長年の経験から、皮膚科医は強いステロイド軟膏を処方するけれど説明不足なので患者さんは十分塗らない、小児科医は良く説明してくれるけどステロイド軟膏は弱めなのでなかなかよくならない傾向があると感じています。
私自身もアレルギーを専門とした小児科医であり、日々アトピー性皮膚炎の患者さんも診療しています。
現在「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」が作成されていますので、それに沿って生活指導、薬物療法を行っていますが、中等症以上はなかなかコントロールできません。
治療ガイドラインは皮膚科医が中心になって作ったものなので、軟膏療法とスキンケアが中心です。
スキンケアとして、毎日1-2回、全身に保湿剤を塗り、湿疹部位にはステロイド軟膏を塗り分ける・・・これだけでも大変な労力を必要とし、すべての患者さんが完璧に行える訳ではありません。
もう少し力を抜いてもそこそこ良い状態が得られる治療法は無いものか・・・漢方医学がその一つになると思います。
アトピー性皮膚炎の原因は何でしょう?
アレルギー?
皮膚のバリア機能低下?
その両方ですが、それだけではありません。
自律神経のアンバランス、食物アレルギー、皮膚の細菌、ストレスなどなど多数の要因があります。
それら一つ一つに対応してきたら、漢方を中心とした統合医療&チーム医療を特徴とする「高雄方式」が出来上がったようです。
本気でアトピー性皮膚炎治療に取り組もうとすれば、ここまでやらなければダメなんだな、と感じました。
でも、一開業医では限界がありますね・・・。
他に印象に残った文章をあげてみます。
「日本人の老人に股関節の骨折が少ないことの一つの説として、和式トイレのうんこ座りがいいと言われている。ヒンズースクワットを毎日やっているわけだから、それで足腰が丈夫になるんじゃないかというのがかなり本気の説。」
「骨粗鬆には牛乳、牛乳なんて言うけど、実際は足腰を動かす方がはるかに重要なんだよね。」
「牛乳をたくさん飲んでいる民族に骨粗鬆症が多いというのに、いきなり予防のために牛乳を飲むなんて変!」
・・・なるほど。
「民間療法家で、一人か二人うまくいったからって、百人うまくいったようなことを言って、ほかの治療法を否定するようなタイプは問題だよね。」
・・・そうそう。
「大阪市大の小児科グループが発表したデータで、解熱剤を使ったグループと使わなかったグループでは、使わなかったグループはだいたい三日で熱が下がったけれども、解熱剤を使ったグループは熱が引くまでに五日間かかっている、という報告があった。」
・・・動物実験データは聞いた事がありますが、ヒトでも同じデータが既に出ていたんですね。
「ステロイドの薬害で問題になっているのは日本だけだからね。」
・・・えっ、そうなんですか?
「アメリカの医療は貧しい人ははっきり死ねと言っているようなもんだからね。日本の医療は、たしかに多くの問題をはらんでいるけど、万人に平等という意味では世界に冠たるものよね。日本の医療費が高いと言われているけど、GNPに占める割合は先進国の中でも意外に最低にランクしているくらいだよ。」
・・・ですから、これ以上医療費を抑制するなら、医療サービスのレベルは低下するしかありませんね。
「病気は遺伝子だけでは決定されない。一卵性双生児の一致率はアトピー性皮膚炎では三割くらいかな。」
・・・確かに環境因子も重要です。
「基本的にいまの病院は刑務所と一緒。収容所だからね。病院の成り立ちそのものが修道院からはじまっているからね。」
・・・そうだったんですか。
「北欧の場合は、一時日本の老人ホームみたいに、手取り足取り介護していたらしいのね。そうしたら、すぐに寝たきりになっちゃう老人が増えたんだって。それで反省して、少しでも動ける人は三十分かかっても自分でトイレに行かせるような方法をとったら、その結果、寝たきり老人がほとんどゼロになったということなんだ。」
「スェーデンでは身内の介護をしても国から給料が出る。例えば、僕が家の父ちゃんのおしめを換えても国から給料がもらえるんだよ。」
「スェーデンでは最終的には老後を家族に見てもらおうという期待を誰も持っていない。」
「子が老いた親を見るのが当たり前や~という儒教的なアジアの国ほど寝たきりが多いの。」
「日本のひどいところは老後は家族が面倒を見るのを政府が当てにしているのよ。最悪はそこなのよ。」
・・・う~ん、そうなんですか。困りましたね。
「治りにくい病気には、必ず背景に心理的なモノが絡んでいる」
・・・御意!
「自分に優しく、他人にも優しい人はハッピーに生きていける。自分にも他人にも厳しいという人はいちばんしんどいね。」
・・・わたしはしんどいタイプかな、でもこの性格はなかなか変えられない(涙)。
「良い子は親にとって都合の良い子」
・・・この呪縛から解き放たれるのは難しい。
以上、頷ける文章がたくさんありました。
再び京都の高雄病院の江部先生の著書です.
聞き手に「Reborn」代表の曽我部ゆかりさんがあたり、対話形式となっています.
江部先生はアトピー性皮膚炎の治療で有名な方ですから、題名から「アトピー患者と医師のガチンコ勝負」を期待しましたが、よい意味で肩すかしを食らいました.
話は病気の話にとどまることなく、自分自身の健康とストレス、東洋医学について、物理化学の思想、生活習慣病への西洋医学の限界、日本の保険制度、高齢者医療の国際比較など話題は広範囲にわたります。
その中でも、やはり「高雄病院のアトピー治療」ができあがった経緯を興味深く読みました。
アトピー性皮膚炎患者はドクターショッピングを繰り返します.
その理由は単純で「治らないから」.
長年の経験から、皮膚科医は強いステロイド軟膏を処方するけれど説明不足なので患者さんは十分塗らない、小児科医は良く説明してくれるけどステロイド軟膏は弱めなのでなかなかよくならない傾向があると感じています。
私自身もアレルギーを専門とした小児科医であり、日々アトピー性皮膚炎の患者さんも診療しています。
現在「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」が作成されていますので、それに沿って生活指導、薬物療法を行っていますが、中等症以上はなかなかコントロールできません。
治療ガイドラインは皮膚科医が中心になって作ったものなので、軟膏療法とスキンケアが中心です。
スキンケアとして、毎日1-2回、全身に保湿剤を塗り、湿疹部位にはステロイド軟膏を塗り分ける・・・これだけでも大変な労力を必要とし、すべての患者さんが完璧に行える訳ではありません。
もう少し力を抜いてもそこそこ良い状態が得られる治療法は無いものか・・・漢方医学がその一つになると思います。
アトピー性皮膚炎の原因は何でしょう?
アレルギー?
皮膚のバリア機能低下?
その両方ですが、それだけではありません。
自律神経のアンバランス、食物アレルギー、皮膚の細菌、ストレスなどなど多数の要因があります。
それら一つ一つに対応してきたら、漢方を中心とした統合医療&チーム医療を特徴とする「高雄方式」が出来上がったようです。
本気でアトピー性皮膚炎治療に取り組もうとすれば、ここまでやらなければダメなんだな、と感じました。
でも、一開業医では限界がありますね・・・。
他に印象に残った文章をあげてみます。
「日本人の老人に股関節の骨折が少ないことの一つの説として、和式トイレのうんこ座りがいいと言われている。ヒンズースクワットを毎日やっているわけだから、それで足腰が丈夫になるんじゃないかというのがかなり本気の説。」
「骨粗鬆には牛乳、牛乳なんて言うけど、実際は足腰を動かす方がはるかに重要なんだよね。」
「牛乳をたくさん飲んでいる民族に骨粗鬆症が多いというのに、いきなり予防のために牛乳を飲むなんて変!」
・・・なるほど。
「民間療法家で、一人か二人うまくいったからって、百人うまくいったようなことを言って、ほかの治療法を否定するようなタイプは問題だよね。」
・・・そうそう。
「大阪市大の小児科グループが発表したデータで、解熱剤を使ったグループと使わなかったグループでは、使わなかったグループはだいたい三日で熱が下がったけれども、解熱剤を使ったグループは熱が引くまでに五日間かかっている、という報告があった。」
・・・動物実験データは聞いた事がありますが、ヒトでも同じデータが既に出ていたんですね。
「ステロイドの薬害で問題になっているのは日本だけだからね。」
・・・えっ、そうなんですか?
「アメリカの医療は貧しい人ははっきり死ねと言っているようなもんだからね。日本の医療は、たしかに多くの問題をはらんでいるけど、万人に平等という意味では世界に冠たるものよね。日本の医療費が高いと言われているけど、GNPに占める割合は先進国の中でも意外に最低にランクしているくらいだよ。」
・・・ですから、これ以上医療費を抑制するなら、医療サービスのレベルは低下するしかありませんね。
「病気は遺伝子だけでは決定されない。一卵性双生児の一致率はアトピー性皮膚炎では三割くらいかな。」
・・・確かに環境因子も重要です。
「基本的にいまの病院は刑務所と一緒。収容所だからね。病院の成り立ちそのものが修道院からはじまっているからね。」
・・・そうだったんですか。
「北欧の場合は、一時日本の老人ホームみたいに、手取り足取り介護していたらしいのね。そうしたら、すぐに寝たきりになっちゃう老人が増えたんだって。それで反省して、少しでも動ける人は三十分かかっても自分でトイレに行かせるような方法をとったら、その結果、寝たきり老人がほとんどゼロになったということなんだ。」
「スェーデンでは身内の介護をしても国から給料が出る。例えば、僕が家の父ちゃんのおしめを換えても国から給料がもらえるんだよ。」
「スェーデンでは最終的には老後を家族に見てもらおうという期待を誰も持っていない。」
「子が老いた親を見るのが当たり前や~という儒教的なアジアの国ほど寝たきりが多いの。」
「日本のひどいところは老後は家族が面倒を見るのを政府が当てにしているのよ。最悪はそこなのよ。」
・・・う~ん、そうなんですか。困りましたね。
「治りにくい病気には、必ず背景に心理的なモノが絡んでいる」
・・・御意!
「自分に優しく、他人にも優しい人はハッピーに生きていける。自分にも他人にも厳しいという人はいちばんしんどいね。」
・・・わたしはしんどいタイプかな、でもこの性格はなかなか変えられない(涙)。
「良い子は親にとって都合の良い子」
・・・この呪縛から解き放たれるのは難しい。
以上、頷ける文章がたくさんありました。