50年以上前に登場したステロイド外用薬。
抜群の効果を示すものの、長期使用で副作用が出ることが判明し、
次世代の外用薬の登場が待たれました。
そしてとうとうタクロリムスが登場。
しかし刺激感や発がんリスク(※)のため普及しませんでした。
※ 当初動物実験で報告され、ただ実際の使用より大幅に高濃度のデータであり、
その後ふつうの使用レベルでは問題ないことが判明し、
添付文書からも注意喚起が消えました。
2020年代に入り、新薬ラッシュ。
デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)(2020年)とジファミラスト(商品名:モイゼルト)(2021年)の登場です。
私は従来、ステロイド外用薬によるプロアクティブ療法(漸減法)をしてきましたが、最近は、
ステロイド外用薬で寛解導入
ジファミラストで寛解維持
とシンプルな手法になってきました。
ようやく、小児アトピー性皮膚炎診療のスタンダードが形成されてきた感があります。
デルゴシチニブ、ジファミラスト、タクロリムスを文献上で比較した論文の記事が目に留まりましたので紹介します。
結論から申し上げると、
ジファミラストが一歩リード、という印象ですね。
ただ実際に患者さんに使ってもらう立場から言うと、
今あるひどい湿疹を治す力はステロイドが最強です。
デルゴシチニブとジファミラストは一旦よくなった湿疹を、
再度悪化させない程度の力です。
私がジファミラストを選択している理由は、
副作用はデルゴシチニブ>ジファミラストという点です。
▢ アトピー性皮膚炎への新規外用薬、既存薬と比較~メタ解析
(2025/05/16:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
アトピー性皮膚炎に対する治療薬として、2020年1月にデルゴシチニブ、2021年9月にジファミラストが新たに承認された。長崎大学の室田浩之氏らは、これらの薬剤と既存の標準的な外用薬について、臨床的有効性および安全性を評価するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施し、結果をDermatology and Therapy誌2025年5月号で報告した。
Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。
固定効果モデルを用いたベイジアン多重処理ネットワークメタ解析が実施され、アトピー性皮膚炎に対する各種外用薬(プラセボを含む)の転帰を比較するために、オッズ比(OR)および95%信用区間(CrI)が用いられた。
主な結果は以下のとおり。
・アトピー性皮膚炎の成人患者(重症度は異なる)を対象とした、11件の無作為化比較試験がネットワークメタ解析に組み入れられた。
Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。
固定効果モデルを用いたベイジアン多重処理ネットワークメタ解析が実施され、アトピー性皮膚炎に対する各種外用薬(プラセボを含む)の転帰を比較するために、オッズ比(OR)および95%信用区間(CrI)が用いられた。
主な結果は以下のとおり。
・アトピー性皮膚炎の成人患者(重症度は異なる)を対象とした、11件の無作為化比較試験がネットワークメタ解析に組み入れられた。
・システマティックレビューの結果、
ジファミラスト0.3%および1%
タクロリムス0.1%
ーにおいてEASIスコアの改善が認められた。
ジファミラスト1%
デルゴシチニブ3%
タクロリムス0.1%
ーでIGAスコアの改善が認められた。
・ネットワークメタ解析の結果、4週時点において、
ジファミラスト1%(1日2回投与、BID)はプラセボと比較してIGAスコアおよびベースラインからのEASIスコア変化率のいずれにおいても有意な改善を示した。
一方で、ほかの治療薬との比較においては、点推定値は数値的にはジファミラスト1%に有利であったものの、統計学的な有意差は認められなかった。
・ジファミラスト1%(BID)はデルゴシチニブ0.3%(BID)と比較して、ざ瘡の発生率が有意に低かった。
・重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症の発生率において、プラセボやほかの治療薬との間で統計学的に有意な差は認められなかった。
<原著論文>