小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「麻疹流行 → ワクチン推奨 → 品不足」の悪循環

2018-05-16 10:21:26 | 予防接種
 2018年3月、沖縄にはじまる麻疹小流行が全国に飛び火しつつあります。
 案の定、厚生労働省は「ワクチンを接種しましょう」と呼びかけ始めました。

 すると必然的に「ワクチン不足」が発生します。
 これまで何度も繰り返されてきました。

 例えば、日本脳炎ワクチン。

 「自治体の推奨は3歳以降だが、定期接種としては生後6ヶ月から可能、実際に1歳の感染・発症例も出ている」ため、一部の心ある小児科医が「生後6ヶ月になったら日本脳炎ワクチンを接種しましょう」と実行に移したら、早速ワクチン不足が生じ、当院でも半年以上ワクチンの予約を止めざるを得ませんでした。

 東日本大震災の際に、ガソリンを求めてガソリンスタンドに車が殺到してあっという間にガソリン不足になったのと同じ構造ですね。

 当院でも薬品卸業者から「麻疹含有ワクチン(=MRワクチン)出荷調整」の連絡が入りました。
 子どもの定期接種用のワクチンは何とか確保するが、それ以外の希望者に接種するワクチンは手に入らないとのことです。
 地域医師会からも「50歳以上の成人は自然感染による免疫がある可能性が高く、ワクチン接種の優先順位は低い」とのFAXが届きました。

 なお、当院ではスタッフの麻疹罹患歴、ワクチン接種歴、抗体価をチェックし、ワクチン接種が必要な人にはすでに済ませています。
 備えあれば憂いなし、です。

■ はしか感染者150人超す 沖縄や愛知で患者増加
共同通信社:2018年5月15日
 沖縄や愛知を中心に増加している「はしか」の今年に入ってからの患者数が少なくとも153人に上ることが15日、国立感染症研究所などの集計で分かった。
 厚生労働省は2回のワクチン接種を受けるなど予防の徹底を呼び掛けている。
 同研究所が15日午前に発表したデータによると、今年に入ってから5月6日までに感染者が確認されたのは沖縄や愛知、東京、大阪など12都府県。前回9日の発表と比較すると、新たに兵庫県が加わった。
 流行は沖縄で3月、台湾から観光に来た30代男性がはしかを発症したのが発端。県内では11日までに全国で最も多い97人が感染した。
 はしかは非常に感染力が強く、発熱や発疹のほか、せきや目の充血などの症状が出る。
厚労省は11日、特に重症化しやすい妊婦や0歳児の感染を防ぐため、接触することの多い病院や保育園の職員に2回の予防接種を徹底する方針を決定した。

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子宮頸がんワクチン接種をめぐる議論なう(朝日新聞)

2018-02-15 17:27:55 | 予防接種
 HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)に関する賛否の議論が続いています。
 一体どれが真実なのでしょう。
 すべて?

 日本における問題点は、その始め方が拙速だったという点。
 何の準備もなく、その必要性を問う議論・世論がない状態で、有名女優の涙で政治が動かされた印象が私には拭えません。

 本来はイギリスのように、接種を受ける子どもたちにHPV感染症と子宮頸がんについて啓蒙し、それを避ける方法としてワクチンがあることを教えるべきでした。
 子どもたちが自分の問題として理解し、自分の意志で接種する「英スコットランドの接種率は9割」です。
 日本では当事者そっちのけで「将来役に立つから」となだめすかしてワクチン接種を始めてしまいました。
 多感な思春期女子が「よくわからないけど注射される」「ありがた迷惑」「痛いことはイヤ」と反応してもおかしくありません。

 その辺が、問題の根源ような気がするのは私だけでしょうか。

※ 下線は私が引きました。

■ 子宮頸がん 接種めぐる議論なお
2018年02月15日:朝日新聞デジタル
 子宮頸(けい)がんの原因ウイルスの感染を防ぐ「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」の接種について、厚生労働省が積極的な勧奨を中止してから、6月で5年になる。接種の有効性を示す報告がある一方で、接種後に長引く痛みなど様々な症状を訴える例が相次いだ。どちらを重くみるべきか、意見は今も分かれている。

◇ ウイルス感染減少 示す研究報告
 日本産科婦人科学会(日産婦)が主催した公開講座が3日、東京都内で開かれた。産婦人科医や公衆衛生の研究者らが、HPVワクチンの有効性に関して相次いで発表した。
 公開講座では、英スコットランドの接種率が9割に及び、20代女性ではHPVへの感染率は4・5%と、接種していない集団の感染率30%に比べて大幅に低下した、との研究が示された。接種率が高くなると、集団で感染の広がりを抑える効果もある、と指摘された。国内の複数の研究でも、やはり感染などを減らせていると報告された。
 子宮頸がんは性交渉によってHPVに感染することで起きる。国内で年間約1万人がかかり、約2700人が死亡する。30代後半~40代で多く発症するが、最近は若い女性で増える傾向にある。検診で早期発見できれば切除できるが、その後の妊娠で早産のリスクが上がるとの指摘もある。
 子宮頸がん患者の9割からHPVが検出されることから、ワクチンは感染を防いで患者を減らすねらいがある。国内で使われている二つのワクチンは、100種類以上あるHPVのうち、がんの原因の5~7割を占める二つのタイプ(16型、18型)のウイルス感染を防ぐ。
 一方で、ウイルスは感染しても、多くは数年以内に自然に検出されなくなる。持続的に感染し、がんになる前段階の状態(前がん病変)になるのは数%ほどとされる。ワクチン接種が始まって間もないこともあり、がんそのものの発症を減らす効果は、まだ確かではない。だが、豪州などの研究ではワクチン接種で前がん病変を5割減らせた、との報告がある。
 日本大の川名敬主任教授(産婦人科学)は「前がん病変を減らせるなら、その先のがん発症も減らせると考えられる。HPVは成人女性のほとんどが感染する。誰でも子宮頸がんのリスクがある」とワクチンの意義を強調する。
 昨年12月、フィンランドの研究チームは14~19歳の約2万7千人を7年間追跡した速報結果を、専門誌で公表した。子宮頸がんを発症する頻度は、ワクチンを接種しなかった集団は10万人あたり1年間で6・4人だったのに対し、接種した集団は0人だった。
 日産婦は昨年12月、厚労省に対して改めて勧奨の再開を求めた。世界保健機関(WHO)もワクチン接種を推奨し、WHOの諮問委員会は日本の現状を「弱い証拠に基づいた政策決定」と批判している。

◇ 多様な副反応「明らかにリスク」
 HPVワクチンは2013年4月、小学6年~高校1年の女子を対象に原則無料の定期接種となり、厚労省は接種を勧奨し始めた。だが、接種後に健康被害を訴える人が相次ぎ、2カ月後に定期接種にしたまま、勧奨を中止。希望者は無料で接種できるが、接種する人は激減した。
 13年6月の厚労省部会で示された資料によると、HPVワクチンの副反応の頻度(発売後~13年3月末)は他のワクチンよりも高い。接種との因果関係の有無にかかわらず接種後に報告される重篤な副反応の発生数は、二つのHPVワクチンはそれぞれ100万回あたり43・4件と33・2件。これに対し、比較的近い時期に発売されたインフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチンは22・4件、小児用肺炎球菌ワクチン27・5件だった。
 薬害オンブズパースン会議副代表の別府宏圀医師は「HPVワクチンは異常に高い抗体価を長期間にわたり維持するように設計されており、このため複雑な自己免疫反応を引き起こしている可能性がある」と話す。痛みのほかにも、月経異常や記憶力、注意力の低下など多様な症状があるとし、「ほかのワクチンとは明らかに異なり、リスクが大きい。原因がはっきりしない以上、被害者の声に真剣に耳を傾け、勧奨の再開はすべきではない」と言う。
 一方、国立精神・神経医療研究センター病院の佐々木征行小児神経診療部長は「いまのところ副反応とワクチンの因果関係は否定も、証明もされていない」と話す。これまで、接種後に症状を訴えた50人近くを診察。筋肉の組織の検査や、様々な治療を試したが、ワクチンとの関連ははっきりしなかったという。
 厚労省研究班は16年12月、接種後に報告された副反応の症状は「ワクチン接種歴がない子どもにも一定数存在した」とする疫学調査結果を公表。一方で「接種と症状の因果関係には言及できない」と明確な結論は出せなかった。
 佐々木さんは「どのワクチンにも有効性と副反応がある。定期接種のワクチンは『小さいけれどもリスクはある』ということを承知のうえでうけてもらう形になっているが、HPVワクチンは現時点ではそのような共通認識は得られていない」と話す。

◇ 「知見突き詰めても不確実性ある」
 厚労省は今年1月、HPVワクチンのリーフレットを改訂した。その中で、HPVワクチンを10万人に接種すれば、595~859人の子宮頸がんの罹患(りかん)、144~209人の死亡の回避が期待できると推計した。一方、副反応の疑いがあったとの昨年8月末までの報告は、10万人あたり92・1人、重篤なケースは52・5人に上ったとした。
 厚労省はこの間、接種後に症状を訴えた人に対する診療体制を全国に整備。「治療の受け皿ができた」として、勧奨の再開を求める声もある一方、「HPVワクチンは個人のがん予防の色合いが強く、集団防衛的なワクチンと異なる」などとして「(原則有料で個人の希望でうける)任意接種でいいのではないか」との声も出ている。
 森臨太郎・国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部長は「どんなに科学的知見を突き詰めても、必ず不確実性が存在する。研究者や医療者はそれを丁寧に説明し、政策的な意思決定の際は、国民からより見えやすい場所で議論される必要がある。国会に調査委員会をつくって話し合う選択肢もあっていい」と話す。


 先日、NHKで新潟水俣病のドキュメンタリーを視聴しました。
 当初、日本政府は患者認定の3条件を提示して、複数の症状がないと認めないという方針を出しました。
 この条件が厳しすぎるとの批判を受け、それから数十年後に、一つでも満たせば認めるという方針に変わりました。

 この史実を知ると、HPVワクチンの副反応に煮え切らない態度を取る日本政府の考えがよくわかりません。

 HPVワクチンの副反応とされている諸症状には、定型的なものが存在しないのです。
 これとこれを満たせば可能性が高い、という性質が見いだせない。
 副反応を声高に叫ぶ医師は、「HPVワクチン接種後何年経って発症しても副反応である」という基準を設けています。

 効果のあるワクチンには、副反応も必ず存在します。
 しかし、HPVワクチンで提唱されている副反応のような病態は、私の知る限り存在しません。

 朝日新聞には識者4人の意見も掲載されていましたので引用させていただきます。

 私は最後の川名氏の意見に強く同意します(以下に抜粋)。

・HPVワクチンによる重篤と判断された有害事象の報告数は「10万人にあたり52人」、一方、生涯で子宮頸がんになるリスクは「76人に1人」。
・「この数字を比較したとき、どちらを選択しますか? あとはみなさんが決めてください」。うちたくないという人は、うたなくていいと思います。


 ポイントは「有効性と副反応の正しいデータを示し、接種するかどうかは国任せではなく各個人で考えて判断すべし」ということ。
 予防接種を受ける人達は事が起こってから反論するのではなく、“当事者”として自ら考え、判断する思考回路を持つべきです。

■ 「HPV政策、国民に見える議論を」森臨太郎氏に聞く
2018年02月15日:朝日新聞
 子宮頸(けい)がんの原因となるウイルスの感染を防ぐ「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」の有効性と安全性をめぐる評価や、接種の積極的勧奨を再開すべきかどうかは、専門家の間でも様々な意見があります。4人の専門家に聞きました。

◇ 森臨太郎・国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部長
 どんな薬、ワクチンにも効果がある一方で、副作用や副反応もあります。有効性と安全性をめぐって意見が対立するとき、どのように合意形成し、政策を決定していけばいいのでしょうか。世界の臨床試験の結果を再検証し、科学的根拠に基づく医療の普及につなげる「コクラン」の日本代表を務める、森臨太郎・国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部長に聞きました。

〈もり・りんたろう〉 1970年生まれ。岡山大卒業。日英両国の小児科専門医資格を持つ。大阪府立母子保健総合医療センター、世界保健機関(WHO)、東京大などを経て、2012年から国立成育医療研究センターで現職。14年、コクランジャパンを立ち上げた。著書に「持続可能な医療を創る」(岩波書店)など

◇ 意思決定されない状況、大きな問題
 ある薬品について、行政レベルで大きな問題があったとき、「まず止めましょう」というのは正しい判断だったと思います。ただし、その際、止めてどうするのか。止めたまま放っておくのではなく、では、どうやって意思決定をするのか。そのあたりの整理がちょっと弱かった、と感じています。
 このワクチンをどう考えたらいいのか。市民の皆さんが判断できるように助言する必要がありますが、それについて、適切な意思決定がくだされない状況が、こんなに長く続いていることは、とても大きな問題だと考えます。科学的根拠に基づく有効性と、安全に対する不確実性。ワクチンにはその両方が存在し、意見も対立している。この場合、多少は玉虫色になるかもしれないけれど、両方の立場からバランスのいいところで政策を決めなければならない。でも、現時点での政府の意思決定はそこから少し逃げているように感じます。「定期接種のままだが、勧奨していない」というのは矛盾しているし、一般市民に方向性を示していないという意味では少し不親切です。

◇ 任意で、接種を勧奨する選択肢
 ワクチンの有効性はあるだろう、と思っています。HPV感染を防ぎ、前がん病変(がんになる前の状態)を減らすのだから、その先のがんも減らすだろう。それが科学的根拠に対する素直なとらえ方だろうと思います。
 一方、副反応についての評価は、正直わからないと思っています。指摘されている副反応は、起きる可能性がそんなに高いものではないと思いますが、人間の体は分からない部分があるので、科学的にはありうると思っています。
 ただし、国全体として集団として考えたときには、がんを減らすメリットのほうが大きいだろうと考えます。そのうえで、社会全体の価値に基づく考え方と、個人の意思決定が異なることはありえるし、あっていいと思います。
 個人的には、定期接種を外して任意接種にし、国として勧奨はしたらいいと思います。「個人の意思決定に基づいて予防するもの」と位置づけたうえで、「科学的根拠に基づけば接種のメリットが上回る」とのメッセージを発する、という考え方です。
 感染症疫学というのは「集団を守るもの」です。たとえばある人口のなかの80%の人が抵抗力を持つようになれば、集団としてその感染症を防げるケースがあったとします。はしかなどはそうしたワクチンで、定期でやるべきものだと思います。
 一方、HPVについては、ワクチンの接種率が上がることで集団として感染の広がりを抑える効果も指摘されていますが、当面はそこまでの接種率をめざすのは難しいと思います。現時点では、HPVワクチンは有効性と安全性に様々な情報があるなかで、個人と医師の話し合いのなかで接種するかしないかを決めていくべきものではないか、と思います。こうしたワクチンは任意、というのが、ワクチンを接種してきた小児科医の1人としての私のイメージです。
 集団の意思決定か、個人の意思決定か。もし、HPVワクチンを「個人の意思決定」とするならば、公衆衛生というより、医療に位置づけるという選択肢もありえると思います。そうなると、税金の枠組みではなく、医療保険の枠組みでいく、という選択肢も、予防と治療が融合し、境界線があいまいな現在の医療では、ありえると思います。

◇ 勧奨再開の場合は、登録・追跡調査の仕組みを
 有効性は高いとみられる。一方で、安全性によくわからない部分もある。このワクチンにはこの両面の性格があります。
 今後、積極的な勧奨を再開する場合は、セーフティーネットをかけつつ、進めていく必要があると思います。ひとつには、かなり厳密に、接種された人を登録し、経過を追っていくような追跡調査の仕組みをつくる。
 二つ目は、過失の有無にかかわらず被害者に補償する「無過失補償」の仕組みです。現状をみると、副反応と指摘されている症状が、ワクチンによる過失であるかどうかの証明はほとんど不可能に近いと思います。安全性に関しても、ある程度担保されたうえで進めていく必要があると思います。

不透明だった導入時の議論
 HPVワクチンは2010年、政府が150億円の予算を確保し、導入を決めました。ただ、その意思決定の過程では、科学的な検証が十分にされたとは言いがたいところがありました。製薬企業のロビー活動をバックに政治主導で導入され、あまりに前のめりでした。
 科学的根拠は未熟な部分があるけれど、その効果は非常に有望なワクチンや薬があったとき、どのように意思決定するのか。「非常に優れている可能性があるから」と前のめりになってしまったのが、今回の反省点でもあると思います。
 そういう意味では、今後、新しいワクチンが登場したとき、あまりに保守的になってもいけないが、どういう政策オプションをつけて政策にできるのか、という知見にはなると思います。
 有効性は非常に高いけど、安全面で不確実性もあるならば、モニターをし、研究も同時に走らせながら導入する。無過失補償もつける。こうした政策オプションがあれば、市民の側も、そのワクチンの有効性と安全性を評価する材料、接種するかどうかの判断材料にもなると思います。

◇ 国会に調査委員会を設け、政策決定
 どんなに科学的知見を突きつめても、必ず不確実性が存在します。研究者や医療者は「いま、こういう現状の科学的根拠ですよ。それにはこれだけの不確実性が存在するし、一方で、この程度の確実性をもってこれぐらいのことが言えますよ」というのは情報として提供できるはずです。ただ、それだけで政策を決めるのは難しい。広く社会の状況をみたうえで、適切に判断される必要があります。国民一般の不安などが拾い上げられなければ、その意思決定は受け入れられないからです。
 こうした意見が大きく対立する案件については、厚労省の部会や委員会ではなく、たとえば国会に特別の調査委員会、第三者委員会をつくって、話し合う選択肢があっていいと思います。
 現在は厚労省の部会で議論されているわけですが、国民から見れば、自分たちの意思がそこに反映されるとは感じないのが現状だと思います。一般の人が部会を聴きに行くかといったら、行かないと思う。もっと国民の目から見える場所で議論してもいいのではないでしょうか。各地でタウンミーティングをしてもいいと思います。
 国会の権限で有効性や安全性を調査したり、海外の状況について情報収集したりし、「こういう経緯で決まったんだな」とわかるような、透明性の高いところでやることに意味があると考えます。
 また、こうした政策決定の枠組みは、もう少しグローバルに、各国政府が連携してもいいと思います。たとえば、有効性と安全性の調査は、グローバルレベルでしてもいい。そうすれば、数も集まります。製薬企業に必要な情報を求める際も、相手は外国に本拠地を置くグローバルな製薬企業なわけですから、日本だけでなく各国で連携したほうがいい。
 意思決定するときも、もう少し情報共有する。もちろん、最終的には、各国それぞれに意思決定すればいいと思うのですが、少なくともその手前の(追跡調査や無過失補償などの)政策オプションとか、「この国ではこうしている、あの国ではこうだ」という情報は持ち寄ってもいい。グローバルな連携が、もう少し効果的なものとしてとらえられていいのかなと考えています。



■ 「有害事象の多さ、見過ごせない」別府宏圀氏に聞く
2018年02月15日:朝日新聞
◇ 別府宏圀・薬害オンブズパースン会議副代表
 HPVワクチンの接種後に、様々な症状に苦しむ人たちがいます。ワクチンの有効性を評価する声がある一方、安全性を懸念する声もあります。長年、医薬品情報誌の国際連絡組織の活動に携わるなど、医師の立場から薬の安全性について問題提起を続ける、神経内科医で薬害オンブズパースン会議副代表の別府宏圀さんに、HPVワクチンの問題について聞きました。

〈べっぷ・ひろくに〉 1938年生まれ。神経内科医。東京都立府中病院、都立神経病院などを経て、現在は薬害オンブズパースン会議副代表。ネットを通して患者の体験や気持ちを動画などで伝える、NPO法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」理事長も務める。著書に「医者が薬を疑うとき」(亜紀書房)など

◇ ワクチンの安全性に懸念
 このワクチンは2010年11月から、定期接種されるのに先だって、公費負担で接種が始まりました。その後、重篤な有害事象の報告数が急増しました。長く使われてきたワクチンに比べると、新たに導入されるワクチンは有害事象の報告が多くなる傾向がありますが、それを考慮に入れたとしても、今回の報告数は格段に多い。これは見過ごすことはできません。
 さらに問題なのは、有害事象として報告されたその症状が多様で長期間にわたり、重層的にあらわれていることです。このワクチンの副反応として、まず注目されたのは全身の痛みや、失神でした。その後、不調を訴える少女たちの症状を詳しく診ていくと、運動障害(脱力、まひ、不随意運動、けいれんなど)、呼吸機能障害、消化器障害、月経異常などの内分泌障害、自律神経障害、睡眠障害、光過敏・音過敏、高次脳機能障害(記憶障害、判断力低下、集中力低下)など様々な症状があらわれることがわかりました。
 これらの特徴は、これまでのほかのワクチンとは明らかに異なります。ワクチンとの因果関係を疑問視する声もありますが、海外でHPVワクチン接種後の被害を訴えている少女たちの症状とも共通している点を考えれば、安易に「心因性」と片付けるべきではないでしょう

◇ 新タイプのワクチン、不十分な検証
 HPVは女性なら誰でも生涯に一度は以上は感染するような、ごくありふれたウイルスです。皮膚や粘膜のわずかな傷から侵入し、扁平上皮基底部(子宮頸部の粘膜の一番深い部分)の細胞に感染しますが、通常は70%が1年以内に、90%が2年以内に消失します。しかし、がんを誘発しやすいタイプのウイルスに持続感染すると、その一部が、がんの前段階の状態(前がん病変)、さらには浸潤がんに発展します。
 ウイルスは通常、子宮頸部の粘膜にとどまり、自然に感染しただけでは、体内に十分な免疫はできません。これに対抗するために、HPVワクチンは、高い抗体価を長期間にわたって持続させるように設計されています。ワクチン接種後、通常の自然感染では達することのない、非常に高い抗体価を実現させるのです。
 このように、従来とは異なった設計思想でつくられた、新しいタイプのワクチンを導入するのであれば、その安全性についても、より入念な検証が必要であったはずです。
 また、このワクチンは、ウイルス遺伝子(DNA)を持たない「ウイルス様粒子」(VLP)を抗原(目印となるたんぱく質)とし、抗体ができるようにつくられています。ウイルス遺伝子を含まないからと、安全性を過信したことも問題でした。実際には、VLPの外側にある「殻」のほうに、人の細胞と共通し、生理機能にも深くかかわる成分(ペプチド)が含まれています。これが免疫学的に様々な交差反応を引き起こす可能性は十分にあり、それだけ多様な副反応が生じる恐れがあります

◇ もっと患者の声に耳を傾けるべきだ
 それなのに、厚生労働省の部会は2014年、こうした症状を「心身の反応」とする意見をまとめました。この結論に科学的根拠があるとは思えません。実際に、私は症状を訴える少女たちの話も聞きましたが、みんな接種前は元気で健康な、明るい子たちばかりでした。
 いまの医学は科学的根拠を重視し、科学的に説明できないという理由ですぐに患者を切り捨てる傾向があると危惧しています。「何かが起きているのではないか」と様々な可能性を考え、もっと患者ひとりひとりの声に謙虚に耳を傾けるべきだと思います。
 私は薬害スモン裁判にもかかわり、医薬品の情報収集を30年間続けてきました。こうした活動を通し、私は製薬企業の情報がいかに偏っているか、を痛感してきました。有効性は強調されても、安全性は軽んじられる傾向があります。
 もちろん、私は医師なので、薬がないと困るし、薬の力もわかっています。しかし、常に視線はエンドユーザーである患者に向けられなければいけません。ワクチンの接種後に、説明のつかない症状が起きている人がこんなにたくさんいる事実は非常に重い。そして、その症状は誰に起きるかわからない。ワクチンは健康な人に接種するものであり、それによって得られる利益と危険性を見比べながら、慎重に判断される必要があります。

◇ がんの予防効果、不確実
 接種をすすめたい人たちは、子宮頸(けい)がんの重大性を強調します。でも、子宮頸がんの原因となるウイルス(HPV)は、感染してもほとんどは自然に排除され、子宮頸がんを発症するのは発がん性のあるHPV感染者の0.15%程度と考えられています。万一がんを発症しても、定期的な検診を受けていれば適切な治療を受けることで、多くの人は救命可能です。そもそも、がんを予防する効果も証明されていません。
 こうしたことを考えれば、安全性が不確実なHPVワクチンを定期接種にするよりも、その費用と労力をがん検診に向けるほうがはるかに大きな意味があるのではないでしょうか。検診受診率は諸外国に比べて低いと指摘されていますが、検診する医療者を女性にするなどして、検診を受ける女性の心理的なストレスを減らすなど、できることはまだあるはずです。
 そもそも、HPVワクチンは、がんを予防する「個人防衛」の性格をもったワクチンであり、接種するかどうかは個人が決めるべきであり、任意接種に分類されるべきだと考えます。
 HPVの勧奨再開に反対すると、すぐに「反ワクチン」と非難する声があがりますが、非常に一面的な考え方だと思います。私はすべてのワクチンに反対しているわけでなく、はしかなど、公衆衛生の観点から定期接種にすべきワクチンはあると考えています。
 ただ、最近は、ワクチンの種類が急激に増えました。なかには、製薬企業のロビー活動を背景に、有効性と安全性が十分に議論されないまま拙速に導入されたものが含まれている。HPVワクチンはその最たるものだと思います。私はもう一度、すべてのワクチンについて、定期接種にすべきものと、任意接種にすべきものについて再考すべきではないかと思います。そしてその議論の過程には、市民が参加できる仕組みをつくるべきだと思います。
 科学は本来、患者や公衆の衛生を守るためにあったはずですが、最近は製薬産業の利益を守るために使われ、薬と有害事象の因果関係を否定するために使われている、と感じます。医師と製薬企業の利益相反の問題も深刻です。医師はもっと謙虚で誠実であるべきです。HPVワクチンの問題でいえば、接種後に症状を訴える患者の診察もきちんとしないまま、心因反応と簡単に退けることは、非常に無責任なことだと思います。


 
■ 「因果関係、否定も証明もされず」佐々木征行氏に聞く
2018年02月15日:朝日新聞
 子宮頸(けい)がんの原因となるウイルスの感染を防ぐ「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」の有効性と安全性をめぐる評価や、接種の積極的勧奨を再開すべきかどうかは、専門家の間でも様々な意見があります。4人の専門家に聞きました。

◇ 佐々木征行・国立精神・神経医療研究センター病院小児神経診療部長
 HPVワクチンをめぐっては、持続する痛みや、手足の動かしにくさ、記憶力や注意力の低下など、接種後に多様な症状が報告されたことが、一つの特徴です。ワクチンとの関連をどう考えたらいいのでしょうか。接種後に症状を訴える患者を診療した経験をもつ、国立精神・神経医療研究センター病院の佐々木征行・小児神経診療部長に聞きました。

〈ささき・まさゆき〉 1957年生まれ。日本小児神経学会専門医。新潟大卒業。新潟大学病院小児科などで研修後、2002年から現職

◇ 副反応との関連、証明も否定もされていない
 これまで50人近く、HPVワクチンの接種後に症状を訴える患者さんを診察しました。接種後、激しい痛みが起き、腕が上にあがらないほどになる人や、頭痛や倦怠(けんたい)感などを伴う人もいました。痛みが注射した部位だけでなく全身に広がるケースや、震え、記憶力や集中力が低下するケースもありました。こうした多様な症状が、様々な組み合わせで、長い期間継続している人もいて、症状の経過の長さ、症状が移り変わることも、従来のワクチンではあまり見られなかったものだと思います。
 私たちは数人の患者さんに入院していただき、頭部MRIや筋肉の検査(MRIや筋生検)をしました。筋肉注射をした部位や体内に過剰な免疫反応が現れていないかを確認するためです。また、鎮痛剤による治療のほかに、過剰な免疫反応が起きている可能性を想定し、それを抑えるために、免疫グロブリンを静脈注射する「免疫グロブリン静注療法」、あるいは、大量のステロイドを投与する「ステロイドパルス療法」も試しました
 しかし、筋生検などの検査では特別な異常を見いだせず、薬物療法でもはっきりした効果はありませんでした。ほかの病院から特別な検査所見が確認されたとか、目覚ましい治療があったとかの話も聞いていません。
 ワクチンを接種されたときに感じた強い痛みが、その後の体調不良を引き起こしている可能性はあると思います。全身に痛みが広がる「線維筋痛症」や、頭痛や疲労感が前面に出る「慢性疲労症候群」などと病態が似ているケースもあります。二つとも原因不明の病気ですが、何らかのウイルスに感染した後に発症が多いことも知られていて、共通するメカニズムが発症に関わっている可能性も否定はできません。
 しかし、いまのところ、こうした多様な症状を説明できる客観的な検査上の所見は乏しいのが実態だと思います。ワクチンの接種で強い免疫反応が起き、こうした症状につながっているのではないか、という説もありますが、いまのところ、免疫学的な異常を示す明確な証拠はないと思います。
 こうした実情を踏まえると、報告されている副反応とワクチンとの因果関係については、いまの時点では「証明されてもいないし、否定されてもいない」としか言いようがありません。

◇ 認知行動療法でよくなる場合も
 ただ、こうした症状を訴えて受診してくる人は、このワクチンが導入される前からいました。また、ワクチンの積極的勧奨が差し控えられ、ほとんど接種されなくなった後でも、います。やはり明確な原因がわからないケースがほとんどです。
 こうした患者さんに対しては、じっくりと話を聴いたうえで、原因を追及することをいったん脇に置き、「改善するためにはどうしたらいいか」を一緒に話し合います。原因がはっきりしないので、薬を使ってもなかなか治りづらい。最近は、考え方のくせや偏りに着目し、医師らとの面談を通して改善をめざす「認知行動療法」につなげることが多いです。この治療を通じ、改善していくケースは珍しくありません。
 結局、ワクチンが原因でもそうでなくても、こうした症状に苦しむ患者さんは常に存在する。原因にこだわるよりも、本人や家族を支えるような治療が何よりも大切だと、私は思います。

◇ 希望する人が接種、「任意」でも
 このワクチンは、子宮頸がんの原因となる特定のウイルスへの感染を防ぐとされています。がんになる前の状態(前がん病変)が減ったという報告が複数あるということなので、有効性はきっとあるのだろう、と考えています。理論的には、その先にあるがんの発症も減ると期待されると考えます。一方、接種後に報告されている多様な症状との因果関係は、証明もされていないけど、否定もされていない。
 この場合、ワクチンを接種すべきかどうかは、なかなか言いづらいと思います。接種したほうがいい、とも、しないほうがいい、とも私自身は言えません。
 どのワクチンにも有効性とともに、副反応はあります。それでも、いま定期接種されているほかのワクチンは、非常に高い効果が期待できる一方、「小さいけれどもリスクはある」ということを承知のうえで、受けてもらっている形になっています。これに対し、HPVワクチンはいまの時点では、それが承知された状況にはなっているとは言えません。
 そういう意味では、基本的に希望する人が接種するワクチン、つまり、「任意接種」の扱いでもいいのでは、とも思います。とはいえ、任意接種になれば、原則無料の定期接種と異なり、自己負担になってしまう、という問題も残るのが難しいところです。

◇ 誰にでも起きうる 治療体制の整備を
 HPVワクチンの接種後の症状で苦しんでいる人がいる以上、きちんと向きあっていくべきだと思います。米国や英国では、こうした訴えをする患者さんに対する治療体制など、医療的な配慮が行き届いていると言われています。日本でも、これまで以上に、こうした患者さんにどんな医療が提供できるのか、を考えていかないといけないでしょう。個々の医師の活動だけでは治療は難しく、専門的な治療チームで、体制の充実を図っていく必要があります。
 接種後に症状を訴え、私のところを受診した患者さんは、ワクチンの接種前は学校をほとんど休むこともなく、部活動にも積極的に参加し、元気な子が多かったと聞いています。頻度が非常に低いとはいえ、誰にでも起きうるものだと思います。
 治療体制の充実に加え、今後、新たに同様の症状に苦しむ人をなるべく出ないようにするためには、ワクチンを受けない選択が尊重されることも必要だと思います。接種後の痛みが軽減されるようなワクチンの改良にも期待しています。また、子宮頸がんの予防には、検診も重要です。若い女性の検診受診率を上げるためには、検診をする側の医療者を、可能ならば女性にする。それだけでも、少しは変わるのではないかと思います。



■ 「予防はワクチンと検診の両輪で」川名敬氏に聞く
2018年02月15日: 朝日新聞

◇ 川名敬・日本大主任教授(産婦人科学)
 日本産科婦人科学会は、HPVワクチンの有効性を高く評価し、厚生労働省に対して積極的勧奨を再開するよう求めています。子宮頸(けい)がんの患者を日常的に診察する立場から、この問題をどうとらえているのか。ウイルス学にも詳しい、川名敬・日本大主任教授(産婦人科学)に聞きました。

〈かわな・けい〉 1967年生まれ。東北大卒業。産婦人科専門医、性感染症認定医。米ハーバード大産婦人科リサーチフェロー、東京大産婦人科学講座准教授などを経て、2016年9月より現職

◇ 立ち止まる。大事なステップだった
 このワクチンの安全性に問題があるかもしれない、との指摘が2013年に出てきたとき、それに対して国としていったん立ち止まって検証するという作業は、結果的に必要だったと考えています。その作業がなされなければ、国民は納得しないでしょう。
 ワクチンは2007年に初めて人に接種され、日本ではそこから2年ほどで承認されました。従来のワクチンに比べ、非常に早かった。つまり、長く広く使われるという歴史を経たワクチンではありませんでした。ですから「安全性をもう一度チェックしよう」となったことは、大事なステップだったと思います。
 問題は、そのまま積極的勧奨が止まり続けていることです。厚生労働省研究班で調査もし、接種後に問題とされた症状が、接種しない人にも起きる、という結果も出ました。もうさすがに、ワクチンの必要性を認めてほしいというのが、産婦人科医としての率直な意見です。

◇ 安全性評価には、データが不完全
 接種後に起きている有害事象の報告は、確かにほかのワクチンよりも多いです。ただ、そのなかには因果関係のはっきりしない、「紛れ込み」も含まれています。また、その記録をみると、接種日が「不明」とされているものが数多く含まれています。正確に安全性を評価するには、あまりにも不完全なデータです。可能なら、厚労省はこの「不明」を調べて、明らかにしてほしい。そのうえで、議論されるべきだと思います。
 接種後の長引く痛みなど、厚労省が「機能性身体症状」(何らかの身体症状があり、その身体症状に合致する検査上の異常や身体所見が見つからず、原因が特定できない状態)と呼んでいる症状は、HPVワクチンに限らず、ワクチンには一般的に起きるものと、考えられています。そして、それは思春期には顕在化しやすい
 「ワクチンを接種して何も起きないか?」と尋ねられれば、ほかのどのワクチンも同様ですが、「絶対に安全」と断言することはできません。しかし、「副反応の疑い」として報告された人たちのその後を追跡調査した結果では、9割の人は回復したことが判明しています。でも、その事実はきちんと伝わっていないのではないかと思います。この5年近くで、接種後の症状の診療にかかわる医療機関も全国に設置されました。

◇ 積み重ねられているワクチンの有効性
 一方、ワクチンの有効性は国際的にも科学的根拠(エビデンス)が積み重ねられています。
 HPVは100種類以上あり、性交渉を通じて感染します。このうち、子宮頸がんも含む複数のがんの原因となる「ハイリスクHPV」と呼ばれるものは13種類。HPVワクチンは、このなかの「16型」「18型」の2種類の感染を予防するものです。海外の研究では、ワクチンによってこの2種類の感染を約9割防ぐことが明らかになっています。
 「ワクチンが、がんそのものを防ぐ効果は確認されていない」と指摘されます。しかし、オーストラリアなどの研究では、ワクチン接種した人では、していない人に比べ、がんの前段階の状態(前がん病変)を5割減らす効果が確認されています。まだ導入されて間もないワクチンでもあり、がんそのものへの予防効果は、もう少し時間をかけてみないとわかりませんが、そもそもがんに進行するようならば治療されてしまうため、がんの予防効果を立証することは難しいのが実情です。でも、前がん病変を減らすのですから、その先のがんになることもない、と考えられます。そして、ごく最近、海外の専門誌「International Journal of Cancer」に掲載された速報として、フィンランドからがんそのものが減少した、との報告も出ました。14~19歳の女性(計約2万7千人)を7年間追跡した結果、子宮頸がんを発症する頻度は、ワクチン非接種群は10万人あたり年間6・4人であったのに対し、ワクチン接種群では同0人でした。
 成人女性の大部分がHPVに感染します。女性の誰もが子宮頸がんになるリスクがありますが、ワクチンでこのリスクを減らせるのです。

◇ ワクチンと検診、子宮頸がん予防の両輪
 「がん検診を受け、進行するようならば手術すれば治る。だからワクチンは必要ない」という人もいますが、私はそうは思いません。検診はもちろん重要です。でも、手術は子宮にメスを入れることを意味します。しかも発症年齢のピークは30代です。ちょうど、妊娠・出産の時期にあたります。子宮の一部がなくなり、その結果、早産のリスクが2・6倍高まることがわかっています
 子宮頸がん予防は、ワクチンと検診の両輪が必要で、どちらか一方でいい、ということはないのです。
 1月に、東京都内の女子高の3年生(約200人)に対し、子宮頸がんについて授業をしました。厚労省の資料によれば、「10万人にあたり52人」が重篤と判断された有害事象の報告数です。これをこの高校にあてはめると、「2千人に1人ほど」。1学年200人なので、10学年に1人ぐらいにしか健康被害は出ません。
 一方、生涯で子宮頸がんになるリスクは「76人に1人」とされています。1学年200人の女子がいれば、うち3人ぐらいが生涯のうちに子宮頸がんになる計算です。「この数字を比較したとき、どちらを選択しますか? あとはみなさんが決めてください」。私はそう問いかけました。最終的にはそれぞれの判断ですが、おのずと答えは出るのではないかと、思います。
 もちろん、怖いし、うちたくないという人は、うたなくていいと思います。定期接種は接種する「努力義務」はありますが、強制ではありません。
 今後、積極的勧奨を再開すると判断することがあれば、厚労省に対して注文があります。この間、接種を見送り、定期接種の対象を過ぎてしまった人への接種は、無料でできるようにサポートする必要があります。このワクチンは3回接種で5万円ほどかかります。それが出せない家庭はいくらでもある。希望したのにお金がなかったからうてなかった、ということはないようにしてほしい。ぜひ、国の責任で不平等が生じないようにしてほしいと考えています。
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腸チフス/パラチフスとワクチンの現況

2018-02-12 07:49:21 | 予防接種
 現在の日本で「腸チフス」と聞いても、一定年齢以上の方でないとピンとこないと思われます。
 私も病気としての腸チフスには縁がありませんが、予防接種に関して少し記憶があります。

 私が子どもの頃は予防接種は学校での集団接種が当たり前でした。
 親に書いてもらった予診票を学校へ持参するのですが、そこにはいつも「腸パラの予防接種で具合が悪くなったことがある」と書いてあるのが気になっていました。
 「腸パラ」とは「腸パラチフス」の略だということは、自分が小児科医になってから知りました。

 それから、「チフスタイプのサルモネラ菌感染症」は医師として経験しました。
 原因不明の発熱が続く患者さんが立て続けに入院してきて、その患者さん達の一部から血液培養でサルモネラ菌の仲間が検出されました。
 サルモネラ菌といえば、食中毒を起こす菌として有名です。
 しかし当の患者さん達に胃腸症状はないか、あっても軽度だったのでピンときませんでした。
 調べてみると、検出菌はチフスタイプ、つまり全身症状としての発熱が主症状だったのです。
 そして多発した理由は、子ども用の駄菓子(イカ菓子)が感染源であることがあとで判明しました。

 さて、国立感染症研究所のHPに腸チフス・パラチフス混合ワクチンの解説を見つけました。

□ 「腸チフスワクチンについて」より抜粋;
 腸チフス・パラチフス混合ワクチンは、1970年代前半までは日本でも接種されていたが、日本国内での腸チフス患者の減少、ワクチン接種後の強い副作用のため中止された。
 ・・・全菌体不活化ワクチン(加熱フェノール不活化)は、日本でも使用されていたものである。効果は2~3年持続するが、発熱、頭痛、全身倦怠感、局所の腫脹、接種部位の疼痛・硬結などの副作用が非常に強い。


 なるほど、なるほど。
 さて、近年でも腸チフス/パラチフスという感染症がなくなったわけではありません。
 腸チフスのワクチン接種は、現在日本では行われていませんが、世界的な多発地域あるいは海外旅行者のためにワクチン開発が続けられています。現在、世界では3種類のワクチン(弱毒生菌ワクチン、Vi多糖体ワクチン、全菌体不活化ワクチン)が使用されていますが、わが国では未承認です。

 さて、腸チフスワクチンに関するイギリスの報告を見つけました。
 日本で使用していた副反応の多い「全菌体不活化ワクチン」ではなく、「Vi多糖体ワクチン」を使用した検討です。
 が、驚いたのは血中抗体価の評価だけではなく、実際にチフス菌を経口投与して感染症状が出るかどうかを観察した、日本では考えにくいラジカルな手法。

※ 下線は私が引きました。

■ 腸チフス予防、ワクチンは有効か/Lancet
2017/10/12:ケアネット
 Vi-破傷風トキソイド結合型(Vi-TT)ワクチン接種は、18~60歳の腸チフスの疾病負荷を軽減し健康格差を減らす可能性が示された。英国・オックスフォード大学のCelina Jin氏らが、健康なボランティア成人を対象に行った初となるヒト対象の第IIb相単一施設無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月28日号で発表した。世界の貧困地域では毎年、チフス菌亜型(S Typhi)に約2,000万人が感染し、20万人が死亡している。莢膜Vi多糖体蛋白結合型ワクチン(Vi結合型ワクチン)は免疫原性があり乳児期から使用できるが、接種普及のための主要ワクチン候補とするには有効性に関するデータが乏しく、そのギャップを埋めるため、研究グループは、S Typhiの感染確立モデルを使ってVi-TTワクチンの有効性を評価した。

◇ ワクチン接種1ヵ月後にチフス菌を経口投与
 研究グループは2015年8月18日~2016年11月4日の間に、腸チフスのワクチン接種歴および感染症歴なし、または腸チフス流行地域の長期滞在歴がない18~60歳の健康なボランティアを集めて、試験を行った。
 被験者を無作為に3群に分け、Vi-TTワクチン、Vi多糖体蛋白結合型(Vi-PS)ワクチン、髄膜炎ワクチン(対照群)をそれぞれ単回投与した。被験者と試験担当医は接種割り付けについてマスキングされたが、ワクチン接種を担当した看護師は認識していた。
 被験者は、ワクチン接種の約1ヵ月後にチフス菌の経口投与(チャレンジ試験)を受け、その後2週間にわたり毎日血液検査を受け、腸チフス感染症罹患(38℃以上、12時間以上の持続的発熱またはチフス菌血症)の診断を受けた。
 主要エンドポイントは、腸チフス感染症者の割合(罹患率)であった。

◇ 腸チフス罹患率、対照群77%、Vi-TT群とVi-PS群は35%
 被験者は112例(Vi-TT群41例、Vi-PS群37例、対照群34例)で、そのうち、チャレンジ試験を完了した103例を対象に分析を行った。
 腸チフス感染基準を満たし罹患したと診断された割合は、対照群77%(24/31例)だったのに対し、Vi-TT群(13/37例)、Vi-PS群(13/35例)はいずれも35%で、ワクチン有効率は、Vi-TT群54.6%(95%信頼区間:26.8~71.8)とVi-PS群52.0%(同:23.2~70.0)だった。
 セロコンバージョンは、Vi-TT群が100%、Vi-PS群が88.6%で達成が認められ、ワクチン投与後1ヵ月の幾何平均抗体価はVi-TT群で有意に高率だった。
 試験期間中、重篤な有害事象が4件(Vi-TT群1件、Vi-PS群3件)報告されたが、いずれもワクチンとの関連は認められなかった。

<原著論文>
・Jin C, et al. Lancet. 2017 Sep 28. [Epub ahead of print]



 この論文に対する専門家のコメントもありました。
 腸チフスおよびそのワクチンの現況も解説されていて、役に立ちます。

<問題点>
・日本で承認されている腸チフスワクチンは現時点で存在しない。輸入ワクチンに頼っている。
・2歳未満の小児に対して使用可能なワクチンがこれまで存在しなかった(報告ワクチンに期待)。


■ 腸チフスにおける蛋白結合型ワクチンの有効性-細菌摂取による感染モデルでの検討(解説:板倉 泰朋 氏)
臨床研究適正評価教育機構:2017/11/09:ケアネット
コメンテーター:板倉 泰朋 氏(東京女子医科大学感染症科助教)

 腸チフスは南アジアやサハラ以南アフリカなど、上下水道の設備が不十分な途上国を中心に流行を認めている疾患である。世界では小児を中心に年間2,000万人以上が罹患し、死亡者は20万人に及んでいる。日本においてここ数年は年間40~60例ほどの届け出がなされ、輸入例が多くを占めている。
 現在、米国などで承認されている腸チフスワクチンとしては、経口弱毒生ワクチンであるTy21aVi抗原に対する莢膜多糖体ワクチンの2つがある。ただし、いずれのワクチンも疾患感受性の高い2歳未満の小児への利用ができないことが問題だった。その理由は、生ワクチンはカプセル状で5歳未満の小児は内服が難しいためであり、莢膜多糖体ワクチンは2歳以下の小児での免疫原性が十分でなく、推奨できないためである。
 2歳未満の小児への免疫原性を高めた蛋白結合型ワクチンとして、2001年にVi-rEPA(Vi-recombinant Pseudomonas aeruginosa exotoxin)の報告がなされ、2~5歳の小児に89%の有効性を示した。その後、蛋白結合型ワクチンの大規模試験がWHOの承認を得るべく計画されたものの、報告がない状況であった。
 本研究は、英国在住の健常成人において、腸チフスに対する蛋白結合型ワクチンの安全性と有効性を調査した第IIb相のランダム化比較試験である。T細胞依存性の蛋白結合型ワクチン(Vi-tetanus toxoid:Vi-TT)群、莢膜多糖体ワクチン(Vi-polysaccharide:Vi-PS)群、コントロール群の3群に分け、ワクチン接種後、腸チフス菌の経口摂取を行い、ワクチンの予防効果を発症群と非発症群で比較した。
 結果として、腸チフスの発症を菌血症または12時間以上の遷延する発熱と定義した場合、コントロール群での発症率は77%であった。Vi-TT群、Vi-PS群の発症率はともに35%であり、効果はVi-TT群54.6%(95%CI:26.8~71.8)、Vi-PS群52.0%(95%CI:23.2~70.0)とほぼ同等であった。SeroconversionはVi-TT群で100%、Vi-PS群で88.6%であり、抗体価もVi-TT群で高く、臨床的にもVi-TT群でより軽症となる傾向がみられた。重大な有害事象とワクチン接種との関連はなく、Vi-TTは今までのワクチンと同程度で安全に使用できると考えられた。
 薬剤耐性への取り組みは世界的な課題となっているが、市販で抗菌薬を入手できる国々での過剰使用が、耐性菌発生の重要な要因となっている。実際、腸チフスでも、フルオロキノロン系抗菌薬への耐性が進んでいる。ワクチンによる予防で抗菌薬使用量を削減することは、薬剤耐性への取り組みの一環としても期待が大きい。
 国内では、腸チフスワクチンの接種は流行地への渡航に際し推奨されているが、認可されたワクチン製剤はないため、輸入ワクチンを用いている。国内での使用機会は限られているが、世界的な普及に伴い流行地での罹患率の減少、ひいては薬剤耐性菌減少につながる。回りまわってその恩恵は国境を越えて全世界で享受されるだろう。さらなる蛋白結合型ワクチンに関する大規模試験での報告と今後の実地での利用拡大に期待したい。


■参考(記事が古い!)
・海外渡航と腸チフスワクチン(IASR、Vol. 30 p. 95-96: 2009年4月号
・本邦における腸チフスワクチンの安全性と有効性(Vol. 30 p. 96-97: 2009年4月号
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BCGの副反応(総説)

2018-02-11 09:02:02 | 予防接種
 BCGは唯一、「生きた細菌」を注射する予防接種です。
 ですから、副反応も他のワクチンとはちょっと異なります。
 とくに、免疫不全症という基礎疾患がある場合は、BCG菌が増殖して「発症」してしまうリスクがあります。
 わかりやすく、かつ詳細に解説してくれている記事「小児科診療 UP-to-DATE」から引用・抜粋させていただきます。

※ 下線は私が引きました。

■ BCG 接種による副反応について
2018年1月17日:ラジオNIKKEI
 東京都立小児総合医療センター 呼吸器科・結核科 医長 宮川 知士

 BCG は生きた菌を接種するという点で他のワクチンとは異なっています。接種された BCG 菌は接種部位の皮下において拡散して、リンパを介して腋下やその他のリンパ節を通っていきます。一部は接種した際に針痕の出血があることからも判るように、血管内に入り、血液に混じって全身へと運ばれます。さらには、接種部位に留まっているものもあると思われます。接種された BCG 菌は数年を経てから副反応を認める場合も知られているので、年単位で生存し続けると考えられています。
 BCG の副反応は、必ずしも菌を検出することができないので、本当にそれが BCG によるものであったのか、結局判らない場合も結構あります。しかし、これからお話しする副反応は、以前から良く知られているもので、自然に軽快するものから、放置できない重大事象まであります。
 代表的な BCG の副反応を頻度が高い順に挙げますと、まず腋下の リンパ節腫脹、以下、接種部位の過剰反応、全身に見られる発疹がこれに続きます。これらは比較的よく見られ、ほとんどが比較的軽症で自然に治癒するため、経過観察で十分なも のが多いとされます。一方、骨関節炎は、外科的介入も含めて長い経過の治療観察を必要とするので、重大な副反応です。更に、免疫不全を有するお子さんにおける全身性の BCG 感染症は、時として命にかかわるものです。
 それでは、代表的な副反応について、それぞれ解説します。

【リンパ節腫脹】
 接種されたBCG菌は、リンパを経て、まず接種部位の所属リンパ節の腋下リンパ節に到達します。左上腕に接種されるので、左腋下のやや前胸部にかかる位置のリンパ節が腫脹することが多 く、また鎖骨上窩のリンパ節が腫脹することもよくあります。多くは、接種から 4 ヶ月内外で認められるとされますが、それ以降に気付かれる場合もあります。
 腫脹したリンパ節の自然経過は、腫れ方の程度によって異なります。
・直径2cm以下の場合:月単位で次第に縮小し、1 年もすると腫れが気にならない位に改善します。
・直径2cmを超える場合:大きさにもよりますが、早くて 1 週間ないし 2 ヶ月位経ってから、内容物が軟らかくなり、表皮が発赤し、更に表皮が赤紫色となる頃には、黄色い乾酪性物質が透けて見え、数日以内に内容物が排出されます。排出された内容を培養すると、約半数の割合で抗酸菌が検出され、更に特殊な PCR 検査を行うことにより、BCG 菌であると同定されます。処置としては、局所の清潔を心がけ、二次感染を防止することで十分です。

【局所の過剰反応】
 局所の過剰反応は、BCG 接種の 1 ヶ月頃に見られる正常針痕反応に続発して、接種部位に分厚い黄色い「かさぶた」ができたり、接種部位の周囲に粟粒大の発疹が集簇して発生するものです。 また、接種部位における皮下の硬結や、接種部位周囲にリンパ節様のしこりが見られることもあります。多くは、経過観察によって、数ヶ月の経過で消退しますが、局所の反応が極めて強いと考えられる場合に、最長 2 ヶ月をめどにイソニアジド内服を行うこともありますが、 必ずしも著効しないので、生きた菌による副反応ではないものも含まれると考えられます。
 これらの過剰反応や先に述べたリンパ節腫脹は、BCG 接種後、半年以上経過してから気付かれることもあり、ウイルス感染症による発熱や予防接種など、免疫状態を変化させる要因が引き金になっている可能性も考えられます。リンパ節が自壊して採取された検体の培養結果で、 抗酸菌がピラジナミドのみ耐性である場合には、わが国で用いられている東京株の BCG 菌ではないかと疑うことが診断上有効です。

【発疹】
 発疹は BCG 接種後 1 ヶ月から 3 ヶ月位の間にみられることが多いようです。BCG によるものでないかと紹介されてくるお子さんが、本当に BCG による発疹かどうかを鑑別するのは結構難しいと思います。第1に、その発疹が BCG 菌そのものによるものなのか、それとも BCG の死菌の成分や、また BCG ワクチンに含まれる菌以外の成分によるものなのかというのも判らない上、乳児においては発疹を伴うウイルス感染症が多いことや、あせもをはじめとする発疹も多いからです。
 しかし、発疹が全身性、つまり体幹に加えて四肢にも分布していて、これに加えて接種部位やその周囲の過剰反応が伴っていれば、まずBCGによる発疹を疑います。皮膚症状だけであれば、 まず 1 週間経過観察して、発疹が消退傾向にあれば、そのまま無治療で観察とします。2 か月程度で、ごく軽度の色素沈着を残して消退することが多いようです。
 これに対して、発疹が結節性の丘疹として認められる場合には、菌そのものが組織反応の原因であるとして、イソニアジドによる治療を開始します。治療開始後、1~2 週間で明らかな縮小・ 痂皮化が認められることが多いです。なお、顔面特に眼瞼周囲に小丘疹が多発する場合にも初期から治療を開始しています。

【骨炎・関節炎】
 骨炎・関節炎は BCG 菌の副反応のうちで最近問題となっているものです。接種後 1 年位してから発生することが多いようです。主に長管骨の骨端に発生することが多く、膝関節や肩関節な どの関節炎を伴いますが、長管骨以外の骨にも発生することがあります。乳幼児が急に歩かなく なったり、関節が腫れているなどの症状を見た場合に、以前は結核性の骨関節炎として外科的掻爬を受けたりすることもあったようですが、BCG 菌が同定可能な PCR 法が可能になって以来、 2000 年頃から BCG 骨関節炎の報告例が増加しました。
 発生頻度は、全国調査で年間 10 例未満ですが、抗結核薬による化学療法のほかに掻爬など外科的介入を必要とすることも多いので、見逃してはならない副反応です。関節液や骨の生検で抗酸菌が検出された場合、先に述べたピラジナミド耐性の特性や、最近はインターフェロンγ遊離試験が行えるので、それが陰性であることが判ればBCG菌であるという診断に近づけます。免疫異常がない発症例も多く見られますが、慢性肉芽腫症インターフェロンγレセプター1 異常症による抗酸菌への免疫異常を有する児が骨炎をきっかけに発見されることもあるの で、免疫系の検査は必須です。
 BCG の直接接種により、接種時期が 3~6 ヶ月と早くなったことが、BCG 骨関節炎の増加と関連しているのではないかという意見もありましたが、発生頻度が低い副反応であることもあり、今後の動向を観察する必要があり ます。

【全身性感染症】
 全身感染症としての BCG 副反応は、血行性に多臓器に播種して胸部 CT で見るとヒト型結核菌による粟粒結核のような様相を呈します。慢性肉芽腫症重症複合型免疫不全症など、先天性の免疫不全症だけでなく、ステロイド治療による免疫不全症でも同様の症状が見られたという報告があります。抗結核薬による治療が必要で、時に致命的となることもあります。
 日本においてBCG 接種を生後3ヶ月以降としているのは、この重篤な副反応を回避するためであり、そのために 2005 年以降の BCG 直接接種によってコッホ現象の診療が必要となっているのです。
 以上、BCG 接種による副反応についてお話しました。一般的に経過観察や治療を行う上で、抗酸菌による病巣の変化は数ヶ月から数年にわたる期間を必要とすることが多いので、対処に難渋する場合には専門家に相談するのが良いと思われます。
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HPVワクチン情報アップデート(2018年2月10日)

2018-02-10 08:16:32 | 予防接種
 昨日、HPVワクチンの真実を追究し、最高峰の科学雑誌「ネイチャー」から表彰された村中医師の著作が出版されました。

□ 「10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」 2018/2/9 村中 璃子 (著)

 反対派の“非科学的”な所作が検証された内容です。
 真剣に考えている方にはお勧めの本です。

 そんなタイミングで、HPVワクチンの現況を扱った記事を見つけましたので紹介します。
 微妙な問題なので、コメントは避けます。
 各自、読んで考えてみてください。

※ 下線は私が引きました。

■ 今、子宮頸がんワクチン問題ってどうなっているの?
2018/01/17:QLife
 2017年11月30日、医師でジャーナリストの村中璃子さんがジョン・マドックス賞を受賞しました。ジョン・マドックス賞とは、イギリスの科学誌「ネイチャー」元編集長であるジョン・マドックス氏の功績を称え、設立されたもの。健全な科学とエビデンスを広めるために、障害や敵意にさらされながらも貢献した個人に与えられる国際的な賞として、2012年に始まりました。
 村中さんは、HPVワクチンの安全性を検証する情報を発信し続けてきたことが評価され、2017年の受賞者となりました。今回のニュースな言葉では、そもそも子宮頸がんとはどんな病気で、何が問題となっているのか、まとめます。

◇ 子宮頸がんとは
 子宮頸がんは女性の子宮の出口付近、膣との接続部にできるがんのことを指します。このがんは、主に性行為によりヒト乳頭腫(パピローマ)ウイルス(HPV)に感染することで発生します。国立がん研究センターによる予測値1)では2017年に子宮頸がんに罹った人は1万1,300人、死亡者は3,000人となっています。

グラフ:子宮頸がん死亡者数(1958-2016)

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

 女性特有のがんである子宮頸がんは乳がん、卵巣がん、子宮体がんと比較して原因が明確であるため予防も含め対策が可能ながんといえます。

◇ 子宮頸がんの検診と予防(ワクチン)
 ただ、欧米では子宮頸がん検診の受診率が7割以上といわれているなかで、日本では検診の受診率は4割弱に過ぎませんでした。2)
 一番効率的な対策はHPVへの感染そのものを防ぐことです。現在、HPVは100種類以上の型あり、これらはまず感染する部位によって皮膚感染型と粘膜感染型に分けられます。子宮頸がんは粘膜感染型のHPVによって起こります。
 そうしたなかで2006年にアメリカで初めて登場したのがHPVの感染を防ぐHPVワクチンです。日本でも2009年10月にサーバリックス、2011年7月にガーダシルの2種類のワクチンが承認され、その後発売されました。
 ちなみにこの2種類のワクチンはサーバリックスがHPVの16型、18型、ガーダシルが6型、11型、16型、18型の感染を予防する効果があるとされています。このうちHPVの16型、18型は発がんの高リスクタイプのウイルスであることが分かっています。
 現在HPVワクチンは世界100か国以上で使用されています。

◇ 子宮頸がんワクチンの助成制度と推奨の中止
 厚生労働省では2010年からこのワクチンの接種を行う市町村に助成を開始しました。この結果、接種対象となった小学校高学年から高校生の女性は低額あるいは無料で接種できるようになりました。2013年4月には、HPVワクチンは予防接種法に基づく定期接種の対象となりました。
 定期接種ワクチンにはA類疾病とB類疾病があり、集団予防に重点を置き、接種者本人の努力義務や国による推奨があるのがA類疾病です。HPV感染症はこのA類疾病となっています。
 しかし、2013年、6月14日に開催された第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議で、HPVワクチン接種後にワクチンとの因果関係を否定できない持続的な痛みなどを訴える人が発生したことが報告されました。
 合同会議では定期接種を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでしたが、発生頻度などがより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に推奨すべきではないとの結論に達しました。

画像:厚労省 子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ (平成25年6月版)キャプチャ


 現在でもHPVワクチンは予防接種法に定める定期接種対象のワクチンで、小学校6年生から高校1年生までは無料で接種が可能です。ただ、国は予防接種法に定めている責務である啓発や知識普及活動をHPVワクチンに関しては当面積極的には行わないというものです。

◇ 国内での副反応報告と専門家の見解
 それから4年が経過し、現時点まで推奨の中止は続いています。この間、専門家による一定の見解の合意は得られています。
 まず問題となった持続的な痛みや運動障害などの副反応(ワクチンの場合、副作用を医学的には副反応と表記します)は2013年9月末時点で130例にのぼりました。これを発生頻度に換算すると、接種回数10万回当たり約1.5件という計算になります。3)
 翌2014年1月20日と7月4日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の第7回と第10回の副反応検討部会ではこれらの副作用を審議しました。
 その結果、発症時期や症状、その経過などに統一性がなく、神経疾患、中毒、過剰な免疫反応などワクチンを原因とすることでは説明がつかず、「機能性身体症状」と考えられると出席委員の合意が得られました。つまりワクチン接種後に発生したと報告されている持続的な痛みは、ワクチンとの因果関係は薄いとの評価を下しています。
 この機能性身体症状とは、より平たく説明すると、痛みなどの何らかの症状がありながら、病院で検査をしてもその症状に一致する何らかの検査値の異常などが見つからない原因不明の症状というものです。

主な症状は、

1.痛み、感覚が鈍い、しびれる等の知覚に関するもの
2.力が入らない、安定して歩けない、手足や体が勝手に動く、けいれんする等の運動に関するもの
3.動悸、下痢など自律神経に関するもの
の3つです。

 また検討会では機能性身体症状のケースについて「接種後1か月以上経過してから発症している症例は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい」、「機能性身体症状が慢性に経過する場合は、接種以外の要因が関与している」とも判断しています。

◇ 海外での副反応報告と各国・専門機関の見解
 厚生労働省では、この後も海外でのワクチンの副作用発生状況なども調査しています。アメリカ、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの事例が報告されましたが、機能性身体症状と似通っている神経症状などの発生頻度はHPVワクチンの接種で増加したという報告はありませんでした。4)
 また、欧州医薬品庁5)、イギリス医薬品庁6)、フランス医薬品・保健製品安全庁7)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)8)、世界保健機関(WHO)9)などもHPVワクチンの安全性に問題はないとの報告書を公表しています。
 イギリス医薬品庁の報告では、HPVワクチン接種後の機能性身体症状と同様の症状の発生頻度は、むしろワクチンを接種していない人よりも低いと結論付けています。
 さらに、健康問題を扱う国連の専門機関であるWHOの「ワクチンの安全性に関する諮問委員会」は2015年の声明9)で、日本での接種の推奨中止について「若い女性達は(ワクチン接種によって)予防しうるHPV関連のがんに対して無防備になっている。ワクチンの安全性に関する諮問委員会が以前指摘したように、弱いエビデンスに基づく政策決定は、安全かつ有効なワクチンを使用しないことにつながり、実害をもたらしうる」と非難めいた調子の指摘を行っています。
 一方、日本国内では2016年4月に日本小児科学会をはじめとする学術団体17団体がHPVワクチンの積極的な接種推奨を求める見解を公表10)しています。

画像:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解(予防接種推進専門協議会)


◇ 子宮頸がんワクチンはこれからどうなるのか
 さて、最近の状況ですが、2017年12月22日、第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第10回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議が開催されました。
 そこではHPVワクチンに関して接種対象者やその保護者向けの一般的な情報提供パンフレットと接種対象者に接種を受ける直前に情報提供パンフレット、医療従事者向け情報提供パンフレットを改定するための素案が提出されました。
 改定素案では、3種類のパンフレットとも国内でのワクチンによる効果推計、副反応疑い報告の実態、副反応時の救済制度の実際とその利用状況などの詳細な情報が新たに付け加えられました。
 推奨中止の原因となった接種後の疼痛、しびれなどの慢性的な症状について、改定素案でも「機能性身体症状であると考えられています」と記述し、因果関係については「『接種後1か月以上経過してから発症している人は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい』と専門家によって評価されています。またHPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を有する方が一定数存在したこと、が明らかとなっています」と否定的な表現を新たに盛り込みました。
 委員からは素案を肯定的に評価する声が多数を占めましたが、「接種を受ける人はおおよそ中学生であり、保護者との理解能力には差があることから、両者を分けたパンフレット作成が必要ではないか」「接種者・保護者向けパンフレット素案は、一般の方がより理解しやすい工夫が必要」などの意見もあり、委員からの追加意見などを年内中に収集し、新たな素案を作成することになりました。
 また、これらの情報提供について関連学会、文部科学省を通じた学校養護教諭、各地医師会会員など幅広い情報提供を進めるべきとの意見が相次ぎました。厚生労働省はこの点も今後検討する見通しです。
 ただ、焦点となっている推奨の中止を解除するかについては、合同会議の審議では触れられませんでした。また、改定素案では問題が起きてから記載されている国としては中止に関する文言が継続して掲載されていることから、まだ先は見えていません。

※ 編集部追記:厚労省は2018年1月18日付けで、新たなパンフレットを公表しました。
 ⇒ ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種に関するリーフレットについて

1) 国立がん研究センター「2017年のがん統計予測
2) OECD,OECD Health Data 2013,June 2013
3) 厚生労働省「ワクチン接種後の副反応と疑われる疾患の発生状況等について
4) 厚生労働省「子宮頸がん予防ワクチンの安全性に関する海外の状況
5) the EMA communication that the CHMP confirms that HPV vaccines do not cause CRPS or POTS
6) MHRA (Medicines and Healthcare products Regulatory Agency) PUBLIC ASSESSMENT REPORT
7) http://ansm.sante.fr/S-informer/Actualite/Vaccination-contre-les-infections-a-HPV-et-risque-de-maladies-auto-immunes-une-etude-Cnamts-ANSM-rassurante-Point-d-information
8) Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)Summary Report
9) Global Advisory Committee on Vaccine safety Statement on Safety of HPV vaccines
10) http://vaccine-kyogikai.umin.jp/pdf/20160418_HPV-vaccine-opinion.pdf

<参考リンク>
QLife家庭の医学 子宮頸がん
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 (HPVワクチン副反応被害判定調査会)
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「化血研事件」の化血研という会社がなくなります。

2018-01-18 06:36:43 | 予防接種
 日本脳炎ワクチンは、現在でも不足しており、当院では予約再開に至っていません。
 その裏にはこんな事情があります;

■ 化血研が日本脳炎ワクチンの自主回収を決定
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201801/554472.html?n_cid=nbpnmo_mled_html-new-arrivals)

 もう一つ、「化血研事件」を扱った記事を紹介します。
 いろいろ話題になった「化血研」という会社、名前が消えてなくなるようですね。
 
 この記事を読んで、ちょっと違和感を覚えました。
 記事を書いた弁護医師は少し調査が足りないのではないかと思います。
 「化血研事件」の本質は、「製剤方法を勝手に変更して届け出ていなかった」ことであり、「被害が出たかどうか」ではありません。

 実は、この事件には伏線があるのです。
 その昔、MMR(麻疹-ムンプス-風疹)ワクチンが認可され、使用された際に、製薬会社がワクチン株を規定のものから別の株へ変更したため、無菌性髄膜炎の副反応が想定外数発生し、ワクチンは中止に追い込まれたことがありました。

 それがトラウマになって、日本のワクチン行政は及び腰になり、世界標準から20年遅れてしまいました。
 そのため、ムンプス(おたふくかぜ)の流行がコントロールできず、1000人に1人の割合で難聴患者が発生する事態となりました。
 「行うべきワクチンをしなかったために発生した病気」の責任は製薬会社にあります。

 厚生労働省は、このような事件を回避するため、一見必要以上に見える行政指導をしているのだと思います。

■ 化血研事件にみる日本の行政規制
2017/12/20
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欧州委員会、予防接種に関する国民の意見の聴取を開始

2018-01-04 08:10:12 | 予防接種
 予防接種では日本の先を行っていると思われる欧州でも、反対派の攪乱に振り回され、予防可能な麻疹が流行して子どもの死亡例が後を絶ちません。
 欧州委員会が対策に立ち上がりました。

■ 欧州委員会、予防接種に関する国民の意見の聴取を開始
Univadis Medical News:2018.01.024
 予防接種に消極的な風潮への取組み、持続可能なワクチン政策、予防接種に関するEU間協調などのトピックに関する意見が募集されている。
 ワクチンで予防可能な疾患は大きな健康弊害であり、その国境を越えた発生や国家予防接種プログラムににおける課題を理由に、EUでの共同行動、そして流行/越境性疾患の広がりを抑えるための協力体制の強化が必要であると認識されている。
 欧州では現在、避けることが可能であった麻疹の大流行に多くの国が直面しており、また、EUにポリオウイルスが再渡来または移入されるリスクに対する懸念が存在し、ポリオ根絶宣言が出ているEUの現況を脅かすとともに世界のポリオ撲滅イニシアチブを弱めている。
 今年後半、欧州委員会はワクチンで予防可能な疾患に対する協力強化に関する理事会勧告案を採択する予定である。これに先立ち、欧州委員会は ワクチンで予防可能な疾患に対する協力強化に関する国民の意見の聴取 を開始した。聴取は、個人・団体の見解や意見を収集して理事会勧告案の草案過程に取り入れるよう考案されたものである。
 予防接種に消極的な風潮への取組み、EUでの持続可能なワクチン政策、予防接種に関するEU間協調を含む分野に関する見解がアンケート形式で募集されている。意見の聴取は2018年3月5日まで行われる予定である。


<原著>
European Commission. Open Public Consultation on “Strengthened cooperation against vaccine preventable diseases”. [Cited 21 December 2017]

 同時にEUは、国境をまたいでの患者データの共有も始めるようです。

■ EU加盟国、今年から患者データの交換を開始
Univadis Medical News;2018.01.031
 新しい計画の下では、市民が国境を越えて予定外に医療機関に来院する場合、患者のデータにアクセスすることが可能となる。
 欧州連合(EU)の加盟国12カ国は、今後数カ月の間に定期的な患者データの交換を開始する予定である。
 EU市民の多くが他の加盟国に旅行したり勤務したりする一方で、彼らの医療情報は治療が必要となる加盟国で必ずしも利用できるわけではない。今まで、欧州各国の医療制度はプロジェクトに基づき、また限られた規模で、患者のデジタルデータを交換していたにすぎない。しかしこの状況が変わろうとしている。欧州での eHealthデジタル・サービス・インフラストラクチャ が間もなく稼働開始し、国境を越えた患者情報の安全な共有が実現するようになる。
 コミュニケーション・インフラは、欧州委員会と各国の医療制度が共同で提供する。新しい計画の下では、市民が国境を越えて予定外に医療機関に来院する場合、この患者の 患者概要(EUガイドライン) にアクセスすることが可能となる。
 早期段階で参加を採択し2018年の稼働開始を決めた12カ国の大半が、電子版の患者概要を交換するようになる。EU加盟国5カ国(スウェーデン、フィンランド、ポルトガル、クロアチア、エストニア)は電子処方の共有も行う予定である。さらに別の5カ国が2019年に参加する予定であり、2020年にも参加国がさらに増える予定である。


European Commission. Cross-border digital prescription and patient data exchange are taking off. 21 December 2017.
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インフルエンザワクチンを打つ人、打たない人

2018-01-01 08:28:17 | 予防接種
 インフルエンザワクチンを打つ人と打たない人を比較・分析した中国発の報告の紹介記事です。

 中国の予防接種状況は、「北京では2007年以後、60歳以上の人と小中学生はインフルエンザワクチンを無料で打てる」そうです。
 アンケート調査(18歳以上の7106人)の中で、接種した人は20.6%と、日本より少ないようですね。

■ 中等教育も関係?インフルエンザワクチンを打つ人と打たない人〜中国7,106人のアンケート
2017.10.05 from BMJ open:MEDLEY
 インフルエンザワクチンの効果はたくさんのデータから示されていますが、打ちたくない人もいます。アンケート調査から、ワクチンの副作用が怖いと思う人は打っている割合が低いなどの結果が報告されました。

打った人・打たなかった人の背景は?
 中国の研究班が、インフルエンザワクチンについての聞き取り調査の結果を専門誌『BMJ Open』に報告しました。
 この調査は、2014/15年シーズンのインフルエンザワクチンを打ったかどうかを、学歴やワクチンについての考えなどとともに質問したものです。調査は北京で2015年の5月から6か月にかけて行われ、18歳以上の人7,106人が対象となりました。
 中国の多くの地域では、インフルエンザワクチンがあまり使われていません。北京では2007年以後、60歳以上の人と小中学生はインフルエンザワクチンを無料で打てます。

専門家の勧め、副作用
 回答者のうち2014/15年シーズンのインフルエンザワクチンを打っていた人は全体で20.6%でした。
 59歳以下では5,726人のうちワクチンを打っていた人は933人でした。60歳以上では1,362人のうち672人がワクチンを打っていました。
 統計解析の結果、年齢によらず以下のいずれかに当てはまる人では当てはまらない人よりもインフルエンザワクチンを打っていた割合が高くなっていました。

・最終学歴が小学校以下
・慢性の病気にかかっている
・医療従事者から打つよう勧められた
・ワクチンの副作用は怖いと思わない

 「ワクチンはインフルエンザ感染症を防げると思うか」という質問に対して、18歳から59歳の人では防げると思う人のほうが多くワクチンを打っていましたが、60歳以上の人では統計的に差が確かめられませんでした。
 教育水準が低い人のほうが多くワクチンを打っていた点について、研究班は考察の中で、逆の方向の報告が多いことを前提に、最近の放送メディアやインターネットがワクチンの副作用を強調して伝えていることなどを指摘しています。
 結論として研究班は「将来の予防接種キャンペーンは専門家が勧めることと市民の認識の向上を狙って実行されるべきである」と記しています。

副作用情報の影響とは?
 インフルエンザワクチンを打ったかどうかとその背景についての調査を紹介しました。
 副作用が気になって予防接種をためらっている人は日本でも多いかもしれません。もし考察のようにメディアが影響しているなら、感染症予防の中でメディアが担う役割は無視できません。副作用の報道が人の行動に影響することに対して責任のある情報発信が求められます。

(執筆者:大脇 幸志郎)


<参考文献>
・Factors associated with the uptake of seasonal influenza vaccination in older and younger adults: a large, population-based survey in Beijing, China. BMJ Open. 2017 Sep 25.[PMID: 28951412]


 もう一つ、2016年の記事を。
 鍼治療やカイロプラクティックなどを利用したことがある子どもでインフルエンザワクチン接種率が低く、マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもではインフルエンザワクチン接種率が高い傾向が認められたという内容です。

■ インフルエンザワクチンを打つ人と打たない人の違いとは? 〜代替医療の経験で違った接種率
2016.10.23:from Pediatrics:MEDLEY
 今年のインフルエンザワクチンは打ちましたか?「効果は何%」と数字で言われても、なんとなくイメージで考えてしまいますよね。子どものワクチン接種率についての研究から、代替医療を利用した経験と接種率に関連があったことが報告されました。

代替医療とワクチン接種率の関係
 アメリカのペンシルバニア州立大学の研究班が小児科専門誌『Pediatrics』に報告した研究を紹介します。
 この研究は、アメリカ全国で行われた調査データを解析することで、代替医療(だいたいいりょう)とワクチン接種率の関係を調べています。調査では4歳から17歳の子どもが対象とされました。
 研究対象とされた代替医療は次のように分類されました。

・鍼治療など
・ハーブなど(マルチビタミンとマルチミネラルは除く)
・マルチビタミンとマルチミネラル
・体に手で加える治療(カイロプラクティックなど)
・体と精神に着目する治療(ヨガなど)

 データが得られた9,879人の子どもについて、統計解析により、それぞれの種類の代替医療を利用したことがあるかどうかで、インフルエンザワクチン接種率に違いがあるかを調べました。

鍼・カイロ利用者は接種が少ない
 次の結果が得られました。
 インフルエンザワクチン接種率は、代替医療システムを利用したことのある子どもで低く(利用したことがない子どもと比べて33% vs 43%, P=0.008)、徒手的身体療法を利用したことのある子どもでも低かった(35% vs 43%, P=0.002)が、マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもでは高かった(45% vs 39%、P<0.001)。
 鍼治療など、またはカイロプラクティックなどを利用したことがある子どもでインフルエンザワクチン接種率が低くなっていました。
 マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもではインフルエンザワクチン接種率が高くなっていました。

インフルエンザワクチンにどんなイメージがありますか?
 インフルエンザワクチンでインフルエンザを予防できることは、実際に打った人を調べた多くのデータから示されています。しかし、人は数字では動きません。効果があるといくら告知されていても、現実にはすべての人がワクチンを打っているわけではありません。
 この研究で、体に人工物を入れない鍼やカイロプラクティックの利用者と、人工物であるビタミンやミネラルを飲む人で反対の傾向が出たことは面白い結果です。インフルエンザワクチンに対するイメージが関係しているのかもしれません。
 薬やワクチンは体によさそうだと思いますか?

(執筆者:大脇 幸志郎)


<参考文献>
・Complementary and Alternative Medicine and Influenza Vaccine Uptake in US Children.
Pediatrics, 2016 Oct 3.
(http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2016/09/30/peds.2015-4664.)
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「卵アレルギーでもインフル予防接種は安全」

2018-01-01 08:20:15 | 予防接種
 昔から繰り返し話題になる「卵アレルギー患者に対するインフルエンザワクチンの可否」。
 徐々に「接種しても問題ない」方向へシフトしてきています。
 今回紹介するアメリカ初の記事は“解禁”とも言うべき内容です。

■ 「卵アレルギーでもインフル予防接種は安全」米学会が見解
HealthDayNews:2017年12月31日:medy
 米国アレルギー・喘息・免疫学会(ACAAI)は12月19日、「卵アレルギーのある人でもインフルエンザワクチンの接種は安全であり、医療従事者が接種前に卵アレルギーの有無を確認する必要もない」とする診療指針(practice parameter)を発表した。
 指針の全文は「Annals of Allergy, Asthma and Immunology」2018年1月号に掲載されている。
ACAAI食物アレルギー委員会の委員長で、今回の指針の筆頭著者である米コロラド大学アレルギー・免疫部門のMatthew Greenhawt氏は「インフルエンザワクチンの接種前に医療従事者が卵アレルギーの有無を確認することは多いが、今後はそのような必要はないことを医療従事者や一般の人たちに認識してもらいたい」と話す。
 また同氏によると、卵アレルギーがある人がインフルエンザワクチンを接種する場合も特別な対応は必要ないという。
 インフルエンザワクチンの多くは鶏卵で培養したインフルエンザウイルスを使用しているため、わずかに卵由来のタンパク質が含まれている。
 しかし、2011年以降に発表された研究データでは、卵アレルギーがある人ではインフルエンザワクチンの接種によるリスクがアレルギーのない人を上回ることはないという明確なエビデンスがあるという。
 ACAAIは、今回の指針に関するプレスリリースで「これまでに、卵アレルギーの人でもアレルギー反応を起こさずにインフルエンザワクチンを接種できることを示した研究結果が数多く報告されている。
 これは、インフルエンザワクチンに含まれている卵由来のタンパク質の量が、たとえ重度の卵アレルギー患者であってもアレルギー反応を引き起こすほどではないためだ」と説明している。
 なお、これまでのACAAIの指針では、卵アレルギーがある人へのインフルエンザワクチン接種は安全のためにアレルギー専門医がいる医療施設で行うことが推奨されていた
 しかし、今回発表された新指針ではその必要はないとしているほか、卵アレルギー患者に対して卵由来の物質が含まれていないワクチンを特別に用意したり、接種後の観察期間を通常よりも延長したりする必要はないとの見解が示されている。
 また、接種前に卵アレルギーの有無を確認することさえ不要だとしている。
 ACAAIによると、この新指針は米疾病対策センター(CDC)や米国小児科学会(AAP)の勧告と同じ方針だという。
 「米国では毎年インフルエンザによって数多くの人々が入院し、死亡している。
 その多くはワクチンによって予防できるはずだ」と今回の指針の共著者である米スクリプス・クリニックのJohn Kelso氏は強調する。
 また、同氏は「卵アレルギーは小児に多くみられ、小児はインフルエンザにも罹患しやすい」と指摘。
 「卵アレルギーがある小児を含むあらゆる人々に対してインフルエンザワクチンの接種を奨励することが極めて重要だ」としている。
HealthDay News 2017年12月19日
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注射の痛みを消す医療用シール「エムラパッチ」発売

2017-12-18 06:54:01 | 予防接種
 以前から表面麻酔薬のリドカインテープをいう製品がありましたが、新顔登場です。
 でもこの「エムラパッチ®」もリドカインを含有しており、この麻酔薬の副作用によるショックのリスクを背負うことになります。
 薬の副作用と注射の痛み予防の重さを天秤にかけて使用することになりますね。

★「エムラパッチ®」の添付文書より「重大な副作用」;
(1)ショック、アナフィラキシー
 ショック、アナフィラキシーをおこすことがあるので、 不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴、発汗、 全身潮紅、呼吸困難、血管浮腫(顔面浮腫、喉頭浮腫等)、 血圧低下、顔面蒼白、脈拍の異常、意識障害等の症状が 認められた場合には本剤の投与を直ちに中止し、適切な 処置を行うこと。
(2)意識障害、振戦、痙攣
 意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状があらわれることが あるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には 本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
(3)メトヘモグロビン血症
 メトヘモグロビン血症があらわれることがあるので、チ アノーゼ等の症状が認められた場合には本剤の投与を直 ちに中止し、メチレンブルーを投与する等、適切な処置 を行うこと。


 エムラパッチ(魔法のパッチ?)の紹介記事です;

■ 魔法のパッチで子供の注射の怖さを軽減
ケアネット:2017/12/15
 2017年12月5日、佐藤製薬株式会社は、外用局所麻酔剤のリドカイン・プロピトカイン配合貼付剤(商品名:エムラパッチ)の発売を前に、「注射の痛みに我慢は必要ですか?」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。
 セミナーでは、「痛み」の概要と小児の痛みのケアについてディスカッションが行われた。なお、同貼付剤は12月13日に発売された(薬価251.60円/1枚)。

子供のころの痛みは記憶として大きくなる
 はじめに同社代表取締役社長の佐藤 誠一氏があいさつし、医薬マーケティング部による製品説明の後、基調講演が行われた。
 基調講演では、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が、「その『医療の痛み』は本当に必要ですか?~痛みが無くなっても痛みの影響は終わらない~」をテーマに、主に小児における「痛み」の診療について現状や課題を語った。
 痛みとは、組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験と定義される。それは主観的な体験であり、患者本人にしかわからない。しかし痛みは、たとえば手術前の麻酔のように、予防することもできる。それにもかかわらず、1980年代までは新生児や小児への痛みの対応はなおざりだったという。
 それは、新生児は痛みを感じにくいと思われていたからであり、1980年代後半に報告された論文以降、大きく変化した。すなわち新生児は、痛みの抑制系が未発達ゆえに痛みを感じやすく、新生児の外科的処置時には、成人同様、局所麻酔薬や全身麻酔薬を使用し、減量および中止も成人と同じ基準で行うべきという考えに変化した1)。
 さらに小児期での痛みの体験は、一時的なものではなく成長後にも影響を与え、中枢性感作、不安・恐怖など記憶を介した認知を獲得する。たとえば、小児期の機能的な腹痛は、成人後の慢性痛リスクを増加させるという報告もあるという2)。局所麻酔を行い、痛みを中枢神経に伝えないようにすることは、痛みや恐怖から脳を守ることにつながると同氏は説明する。

小児の痛みをマネジメントする時代へ
 小児の痛みの予防について、まず小児が怖がる痛みの代表に、予防接種、採血、点滴などの注射が挙げられる。現在わが国では、こうした痛みを医療者も患者も「仕方がない」「一時的」「我慢できる」などの理由で、まだ看過しているのが現状だと、加藤氏は問題を指摘する。
 一方、欧米では、先述の理由から積極的に痛みのマネジメントについて取り組みが行われ、たとえばカナダでは「小児のためのワクチン摂取の痛みのマネジメント(Pain Management During Immunizations for Children)」が作成され、ガイドラインによって痛みの軽減が図られている3)。また、世界保健機関(WHO)も「ワクチン接種時の痛みの軽減についての提言」を2015年に発表するなど、世界的な動きが示されている。
 加藤氏は講演のまとめとして、「小児の医療における痛みへの対応が向上するには時間がかかるかもしれないが、防げる痛みを防ぎ、子供を痛みから守る医療を一緒に目指そう」と、小児医療に関わる人々へ向け抱負を述べた。

痛みの軽減だけではない患児へのメリット
 引き続き、「子どもたちが怖がらずに済む医療へ」をテーマに、先の演者の加藤氏に加え、富澤 大輔氏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科 医長)、平田 美佳氏(聖路加国際病院 小児総合医療センター 小児看護専門看護師)によるディスカッションが行われた。
 「小児期の疼痛対策の必要性」について、医療者だけでなく患児の親も持つ「痛みは仕方がない」という思い込みから、ケアがされていない現状であるという。わが国は我慢の文化であり、薬も使わない、痛みの弊害に目が向けられない状態が続いている。海外(英国)を例に平田氏は、「10年以上前から子供の痛みのケアが行われ、エムラクリームのような局所麻酔クリームを日常的に使用し、子供たちの間では『マジック・クリーム』の愛称で親しまれ、注射などの処置の前に塗布する習慣ができていた」と説明した。また、「病院での工夫」としては、「患児の疑問に答え、希望に沿うようにしているほか、事前におもちゃの注射器を見せて、準備をさせることも不安軽減に大事だと考えている。注射などの際は、患児の集中力を分散させる環境作りや処置後のフォローを行い、ケースによっては、エムラクリームなどの情報提供をしている」と同氏は付け加えた。
 次に、「小児がんの治療の現場」を富澤氏が語った。「診療の中で、患児に痛みを伴う検査や治療が多いのが現状。痛みへのケアがないと、患児は診療に消極的になってしまうので、親を良いサポーターにする努力が医療者側には必要であり、同時に痛みに対する親の意識を変える必要性もある。注射への配慮としては、不必要な検査は避け、患児に痛みを除く方法もあることを説明しておく必要がある。急性リンパ性白血病(ALL)でのエムラクリームを使用したコントロール研究では、局所麻酔下だと患児の動きがなく、心拍数も変わらないという報告もある4)。これは大事な点で、ALL治療の予後にも影響することなので、治療時の患児の動きを抑えることは重要だと考える」と、同氏は実臨床をもとに説明した。

患児の痛みのケアには医療者と社会の認知が必要
 最後に、各演者が医療者へのメッセージを述べた。平田氏は「血友病の患児がエムラクリームのおかげで、治療を在宅で行えるようになり、表情が明るくなった。患児の感じる痛みを今後もマネジメントしていきたい」と事例を挙げて語り、富澤氏は「小児科は比較的患児の痛みケアが進んでいる分野だが、一般的に多くの医療者は患児の痛みのケアやこうした製剤を知らない。患児の親が医療者に適用を依頼するケースもあり、わが国も欧米並みに知識の普及と診療使用を考え、実践する必要がある」と見解を述べた。
 最後に加藤氏は、「痛みをなくすには、体と心の両方の治療が必要で、エムラクリームのように痛みを軽減するツールがあるのに使われていないのが問題。医師への啓発だけではなく、いかに一般社会に広く浸透させるかが今後の課題」と問題を提起し、ディスカッションを終えた。


■参考
佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「エムラパッチ」新発売のご案内(PDF)

<原著論文>
1)American Academy of Pediatrics: Neonatal anesthesia. Pediatrics. 1987;80:446.
2)Walker LS, et al. Pain.2010;150:568-572.
3)Taddio A, et al. CMAJ.2010;182:E843-855.
4)Whitlow PG, et al. Pediatr Blood Cancer.2015;62:85-90.
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