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小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

健康ライフ「この1年で話題になった感染症を考える」(岡部信彦Dr.)2017

2017年11月02日 17時18分11秒 | 感染症
 感染症分野の大御所でありご意見番の岡部先生が早くも2017年を総括。

□ 10月30日(月)「マダニ感染症」・・・SFTS(重症熱性血小板減少症)
・マダニが介するウイルス感染症で致死率約20%
・女性が野良ネコに手を噛まれて死亡
・ダニに刺されていないけれど発症した・・・感染ネコからうつった可能性。
・キーワードは「野良ネコ」、自然界のダニに刺される可能性大、ペットでは可能性小(でも具合が悪いペットは要注意)
・本来は野生動物が持っているウイルスであり、人間と野生動物の棲み分けがあやふやになってきたことが要因
・SFTSに根治薬はなく対症療法のみ

□ 10月31日(火)「劇症型溶連菌感染症」
・2017年に某プロ野球コーチが死亡した原因?
・溶連菌感染症は一般に治る細菌感染症
劇症型となる菌が特殊なものかどうかはまだわかっていない(解析中)。重症化しやすい患者側の要因もわかっていない。
・劇症型の徴候は「痛み」であちこち(足腰、指先)が痛くなる。
・毒素で組織が壊死する気配(皮膚のどす黒い変色)があればその部位の切断を考慮する。

□ 11月1日(水)「梅毒」
・梅毒が増えている。
・原因は梅毒トレポネーマという微生物で性行為で感染する。
・症状:始まりは感染した性器の潰瘍(痛みはない)、でも放置で改善する。次は手のひらの皮疹(放置で治る)、脱毛。そして脳の症状、骨が溶けてくる。
・治療:ペニシリンが有効。
・感染がわかったらセックス・パートナーの検査も必要。
・先天梅毒は大きな問題。

□ 11月2日(木)「出血性大腸菌O-157」
・大腸菌の種類はたくさんあり、病原性大腸菌の種類もたくさんある。
・O-157に感染しても症状が出ないことがある一方で、ひどい下痢・血便が出ることもある。
・O-157の毒素が腎臓や脳に悪さして重症化することがある。
・感染源は食品。ウシには常在菌であり、腸の中にいて肉にはいない。しかし、こねる調理方法(ハンバーグなど)で肉に混じり込んでしまうことがある。調理器具や患者さんの手指を介して感染が広がる。
・自然肥料に使われる牛糞にも混じていることがある。
・重症化予防のため強い下痢止めは使わない方がよい。
・抗菌薬使用の可否は現在でも賛否両論状態。

□ 11月3日(金)「RSウイルス」
・本来は冬に流行する風邪ウイルスだが、2017年は夏から流行。なぜかは不明。
・2歳までに100%罹るが、ほとんど軽症で済む。
・中には気管支炎・肺炎を合併しゼコゼコ、呼吸困難を来すことがあるのがやっかい。
・乳児では突然死の可能性もある。
・診断:迅速診断キットがある。
・治療:RSウイルスに対する特効薬はまだない。対症療法(輸液、酸素投与など)のみ。
・感染対策:飛沫感染。ゼコゼコする子がいじったり舐めたりしたおもちゃに付いていることがある。


健康ライフ「感染症を防ぐ」(忽那賢志Dr.)2017

2017年11月02日 07時50分18秒 | 感染症
 NHKラジオ第一放送で平日朝放送している健康ライフから、気になった文言をメモしておきます。


□ 10月23日(月)「感染症の代表、風邪とは何か」
・風邪とはウイルスによる一過性の感染症。ウイルスの種類は複数ある。
・風邪の症状はウイルスの種類によってあまり変わらない(ホント?)。
・鼻水から始まり、数日経つと痰が絡んで咳が始まり、その後咳が残りつつ1〜2週間で治っていく。
・風邪のウイルスはどこにいるか? ・・・人間が持っている。
・感染しても症状が出ない人が一定の割合で存在する(不顕性感染)。症状の出る人と出ない人の違いは現在でも解明されていない。
・風邪薬は症状を和らげる対症療法なので、早く治るわけではない。これは市販薬でも処方薬でも変わらない。
・抗生物質(=抗菌薬)は細菌をやっつける薬でありウイルスには効かない。つまり風邪には抗生物質は効かない。
・ではなぜ抗生物質が処方されるのか? ・・・例えば風邪の合併症である副鼻腔炎の予防として・・・しかしこの場合1万人に処方してやっと1人予防できるレベルであり効率が悪く、デメリット(抗生物質の副作用や耐性菌問題)も考えると正しい医療とは言えない。

□ 10月24日(火)「インフルエンザの診断と薬」
・迅速診断キットの正確性・・・発症して間もなく(1日くらい)は陰性に出やすく、陽性でも疑陽性があるので100%インフルエンザと言い切れない。症状・状況から疑われる例に施行すべき検査であり、医師の判断を補助する検査と位置づけるべき。
・抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に開始しないと効かない。使用すると本来の自然経過より半日〜1日短くなる。内服薬では下痢の副作用が目立つ。これらを天秤にかけて使用の有無を考える。
・流行を抑えるためにはワクチンによる予防が有効である。
・インフルエンザにかかったら被害者であるが、同時に加害者になる可能性があるので広げない努力をすべき(会社はしっかり休む)。

□ 10月25日(水)「手洗い・マスクの有効性」
・手洗いの効果 ・・・手洗いが風邪の流行を抑制するという科学的なデータはない。病院内で耐性菌の広がりを抑えるデータはある。
・外科医の手術前の手洗いが必要? ・・・強くこすりすぎると皮膚が傷ついて菌が居座る可能性があるので、最近は少しゆるくなった。
・手洗いのコツ:指の間、指先、親指を忘れがち。手首まで洗いましょう。
・マスクの有効性 ・・・感染症にかかった患者さんがすると他の人に広げない。健常者がマスクをすることで風邪をもらわないかどうかはまだ確定的なデータはない(理論的に予想されるが)。
・マスクの正しい付け方:鼻を出していると鼻粘膜から感染するので、鼻からあごまでしっかり覆うよう装着する。
・マスクは毎日取り替えべきか? ・・・医療従事者はインフルエンザの患者さんに接するたびにマスクを交換する(ホント?)。一般の方は、明らかにマスクが汚れたと思われる際には交換すべき。その機会がなければ毎日交換でOK。

□ 10月26日(木)「ワクチンを打つ」
・「ヒトは一度感染症にかかると同じウイルスには感染しない」という免疫システムを利用し、症状が出ない程度に弱毒化したウイルスを接種して感染させて免疫を誘導する医療である。
・定期接種と任意接種の違い:その感染症が社会に与えるインパクトを勘案して国が接種が必要と判断したものが定期接種。
・ワクチンの副反応:接種後の頭痛、皮膚の発赤腫脹、微熱などは免疫反応が起こっている証拠なので仕方がない。まれながら蕁麻疹などのアレルギー、下痢、呼吸困難などが起こることがあるので接種後は医療機関で様子を見ることが必要。
・集団免疫:多くの人がワクチンを接種することによりその感染症の流行が抑えられ撲滅ができる。また、免疫機能の弱いヒトを守ることができる。

□ 10月27日(金)「輸入感染症を防ぐ」
・デング熱、ジカ熱は現時点では日本での流行を認めていない。
・2014年に日本国内の代々木公園でデング熱が流行(患者数160人)。
・エボラ出血熱:2013/14の西アフリカでの流行は制圧された。
・MARS(中東呼吸器症候群):もともとはラクダが持っているウイルスなので無くなることはないだろう。
・感染経路は食べ物(とくに火を通していないサラダやカットフルーツ)。加熱した料理、ミネラルウォーターを利用する。
・海外で蚊に刺されないことが大切。旅行前にはワクチン接種を検討。A型ワクチンや破傷風。
・帰国後に体調が悪いときは医療機関受診の際に「外国へ行ってました」と申告すべし。


「カンピロバクター腸炎」概論

2017年10月27日 08時24分56秒 | 感染症
 下痢便に血が混じったという相談が時々あります。
 発熱もなく全身状態は悪くない・・・こんな患者さんに便培養検査をすると「カンピロバクター(Campylobacter)」が検出されることが多いです。

 インタビュー記事でわかりやすいものを見つけましたので、引用・抜粋させていただきます。

<ポイント>
・鶏肉・豚肉は生で食べない。
・イヌ・ネコなどペットから感染する可能性もある。
・体調・腸内環境を整えると感染しにくい&重症化しにくい。
・重症度はバリエーションがあるが、重症感があるときは積極的に抗菌薬(ニューキノロン系)を使用する。

■ カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?
公開日 2017 年 10 月 16 日:メディカル・ノート
仲瀬 裕志 先生 札幌医科大学医学部消化器内科学講座 教授

カンピロバクター腸炎とは〜下痢・腹痛・嘔吐などを引き起こす感染性腸炎
 カンピロバクター腸炎とは、カンピロバクター属菌の細菌に感染することによって引き起こされる感染性腸炎です。
 主な症状には、下痢、腹痛、発熱、悪心(おしん:吐き気を催す、胸のむかつき)、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などがあります。なかでも下痢や腹痛を訴える方が多いでしょう。発熱するケースでは38度を超える高熱がでるといわれており、筋肉や関節の痛みを訴える方もいます。

カンピロバクター腸炎の原因と感染経路〜カンピロバクター属菌は動物の腸管内に住みつく細菌
 カンピロバクター腸炎を引き起こす原因は、カンピロバクター属の細菌です。このカンピロバクター属菌は、主に牛や羊、豚、犬、猫、野鳥や鶏などの家禽(かきん)類の腸管内に常在菌として保菌されています。しかし、これらの動物や家禽類に腸炎が起こることはなく、細菌に感染し腸炎などの症状が現れるのは人間のみであるといわれています。

カンピロバクター属菌の感染の大半は、鶏肉などの食品から
 カンピロバクター属菌は、食事による感染が最も多いでしょう。鶏肉や豚肉などの食用肉を加工する際に菌が付着することで、感染源になりうるといわれています。
 菌の発育温度域は34〜43度であるため、十分に加熱すれば菌を死滅させることができます。さらに、大気中や乾燥した状態では菌が死滅しやすいといわれています。このため、生肉や半生の肉は、最も感染の危険がある状態といえるでしょう。
 また、食事による感染よりも少ないケースですが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした後には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

カンピロバクター腸炎の感染者数と発症率〜報告よりも多い発生が推測できる
 日本におけるカンピロバクター腸炎の正確な頻度はわかっていません。それは、細菌に感染し腸炎の症状が現れたとしても、必ずしもみんなが病院を受診するとは限らないからです。特に軽症の下痢や腹痛であれば、病院を受診しない方も多いでしょう。
 さらに、食中毒として届け出がされているものは非常に限られた症例であると予想できます。このため、カンピロバクター腸炎は、実際に報告されている症例数よりも多く発生していると考えてもよいでしょう。

カンピロバクター属菌の潜伏期間は2〜5日間
 一般的に、細菌に感染したとしても、すぐに腹痛や下痢など腸炎の症状が現れるわけではありません。カンピロバクター属菌も例外ではなく、感染後、一定の潜伏期間(病原体に感染してから体に症状が出るまでの期間)を経て腸炎を発症します。
 カンピロバクター属菌の潜伏期間は2〜5日間と、ほかの感染型細菌性食中毒と比較するとやや長い点が特徴です。

カンピロバクター属菌に感染すると必ず発症するの?
 カンピロバクター属菌に感染したからといって、必ずしもカンピロバクター腸炎を発症するとは限りません。さらに、発症しても軽症ですむこともありますし、必ずしも重篤化する方ばかりではないでしょう。しかし、特に体調が優れないときには発症しやすく、重篤化しやすいといわれているため注意が必要でしょう。

発症・重症化には腸内環境が関係している
 ではなぜ、体調不良が腸炎の発症や重症化につながってしまうのでしょうか。それは、体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなるからです。
 発症や重症化には、腸内細菌の状態が深く関わっていると考えられています。腸内細菌の状態は人によって異なりますが、腸内細菌の多様性が保たれているほうが、よりバランスがとれ良好な状態ということができます。腸内の防御のバランスがとれており、より腸管が守られている状態ということができるのです。
特 に、乳酸菌の一つであるエンテロコッカス・フェカリスと呼ばれる細菌がいなくなると、カンピロバクター属菌が増えやすくなることがわかっています。
 このため、腸内細菌の多様性が保たれ、エンテロコッカス・フェカリス菌が十分にある状態であれば、感染しても発症しない可能性も高くなると考えられています。

カンピロバクター腸炎の検査方法〜便培養(べんばいよう)検査が有効
 カンピロバクターの確定診断には、便培養(べんばいよう)検査が最も有効でしょう。便培養検査とは、患者さんの便を検体として採取・培養し、細菌の有無や菌の種類・量を調べる検査です。
 この検査を実施する際には、カンピロバクター腸炎の疑いがあることを、医師が検査の担当者に伝えることが重要です。カンピロバクター腸炎の疑いがあることがわかれば、重点的に該当する細菌がいないかどうかを調べることができるからです。

問診で食事内容をきちんと把握する
 そのため、便培養検査の前には患者さんへの問診が非常に重要になります。患者さんの食事の内容をきちんと把握することで、カンピロバクター腸炎の可能性があるか否かを判断することができるからです。
 実際、自身を潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜に連続的に炎症が起こることで、血便・下痢・軟便・腹痛などの症状が現れる疾患)だと思い受診された患者さんがいらっしゃいました。この方は、下痢や下血があったために潰瘍性大腸炎を疑ったのです。
 しかし、腸管にカメラを入れ検査をしたところ、カンピロバクター腸炎の特異的な広がりが認められたため、食事について尋ねました。数日以内に鶏肉を食べたことを話してくださり、そこからカンピロバクター腸炎が判明しました。
 下痢や嘔吐があっても、患者さんが必ずしも食中毒を疑うわけではありません。「まさか自分は食中毒ではないだろう」と思っているケースも少なくないのです。
 そのようなケースであっても、きちんと食事の内容について話を聞くことで適切な診断につながるでしょう。患者さんも、医師に食事内容を聞かれた際には、できる限り正確に伝えるようにしていただきたいと思っています。


■ カンピロバクター腸炎の治療と予防
公開日 2017 年 10 月 17 日:メディカルノート

カンピロバクター腸炎の予防1:食事やペットへの注意〜鶏肉や豚肉などはよく加熱する
 カンピロバクター腸炎は、食事から感染することが最も多いでしょう。たとえば、豚肉や鶏肉などに付着していることが多く、これらの食べ物から感染する可能性があります。
 特に、生肉や半生の状態の肉は感染の可能性が高く危険です。カンピロバクター属菌は、食用肉の表面に存在することが多いといわれているので、表面をよく加熱することが予防につがるでしょう。

ペットと触れ合ったら手を洗う
 また、食事による感染よりは頻度が少ないと考えられますが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした際には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

カンピロバクター腸炎の予防2:腸内環境の整備〜体調管理・食事の管理をして、腸内環境を整える
 ストレスや疲れが蓄積され体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなります。このように腸内環境が乱れた状態であると菌に感染しやすく、腸炎を発症し重症化しやすいといわれています。
 このため、ストレスや疲れをなるべくためず、体調を整えることが重要になります。さらに、体調が優れないときには生肉は避けるなどの工夫も予防につながるでしょう。
 また、近年の研究では、一週間食事の内容を変えるだけで、その人の腸内細菌を変化させることができるということが明らかになっています。たとえば、一週間、野菜を多く摂取することで、腸内環境は大きく改善されるでしょう。
 私は、腸内環境をよくするために、食物繊維を1日につき18グラム以上摂取するよう指導しています。これは、腸内細菌叢を良好に保つことに加え、狭心症などさまざまな疾患の予防にもつながるでしょう。 食物繊維は、ひじきやブロッコリー、ごぼう、おからなどに豊富に含まれています。食物繊維を気にしつつ、バランスのよい食事を心がけ腸内環境を整えることは、カンピロバクター腸炎の予防にも有効でしょう。

カンピロバクター腸炎の治療方法〜自然治癒が可能
 カンピロバクター腸炎の多くは、自然治癒するといわれています。基本的に、菌が体の外にすべて出てしまえば治癒する疾患なのです。しかし、なかには敗血症(全身症状を伴う感染症)など重篤な疾患を呈する方もいます。その場合には、抗菌剤による治療が必要です。

抗生剤が早期治癒につながる
 カンピロバクター腸炎の治療法は、すでに確立されています。多くのケースは、抗生剤(細菌を死滅させ感染を防ぐ抗生物質からつくられた薬剤)を服用することで改善されるでしょう。なかでも、ニューキノロンと呼ばれる薬剤が適応されることが多くあります。

カンピロバクター腸炎とギラン・バレー症候群との関連
 カンピロバクター腸炎による死亡例はほとんどなく、予後は良好であるといわれています。しかし、近年、カンピロバクター属菌に感染した方のなかには、ギラン・バレー症候群(GBS)を発症するケースが報告されています。
 グラン・バレー症候群とは、主に筋肉を動かす運動神経が障害されることで発生する神経疾患の一つです。力が入りにくい、しびれる、などの症状が全身に現れる点が特徴です。
 私たち消化器内科からみると、カンピロバクター腸炎は、胃腸炎でおわるのですが、神経内科では、「カンピロバクター腸炎をみたら、ギラン・バレー症候群を疑え」といわれているのです。

ギラン・バレー症候群を発症するメカニズムとは?
 これは、カンピロバクター属菌の成分に対して生じた抗体が、ギラン・バレー症候群の発症に関連する神経組織のガングリオシドに対して免疫反応を生じるためであるといわれています。体のなかでカンピロバクター属菌に対する抗体反応ができれば、ガングリオシドに対しても、敵とみなし攻撃することになります。
 このように、近年では、カンピロバクター腸炎の発症をきっかけにギラン・バレー症候群を発症するケースがあるのです。
 我々消化器内科医も、カンピロバクター腸炎の診断後には、何週間か後に神経症状が現れる可能性があることを伝える必要があるかもしれません。もちろん100%ではありませんが、もしも神経症状が現れたら病院を受診するよう伝えることが重要になっていくでしょう。

体調が優れないときには十分に予防を
 カンピロバクター腸炎の多くは、治癒が可能であり予後も良好です。しかし、ギラン・バレー症候群など重篤な疾患につながる可能性はゼロではありません。
 体調が優れないときには生肉を避ける、十分に加熱するなど、十分な注意が必要でしょう。
 また、私は、カンピロバクター腸炎の予防には、普段の食事が重要になると考えています。和食は日本人にあった食事であり、世界が認めるヘルシーな料理法です。普段の食事を和食中心にして、食物繊維をとるように心がけるだけで腸内環境の整備につながります。腸内環境が良好な状態になれば、カンピロバクター腸炎の発症のみならず、あらゆる疾患の予防につながるでしょう。


小児期C型肝炎は「重症化せず肝硬変や肝がんになる可能性はほぼない」

2017年10月26日 08時06分02秒 | 感染症
 小児B型慢性肝炎は将来癌化する可能性があることが有名ですが、C型肝炎については不明でした。
 紹介する記事の調査では、そのリスクは低いという結果です。

■ 小児期C型肝炎「重症化せず」 久留米大助教ら疫学調査 350人対象国内最大規模 [福岡県]
2017年10月25日:西日本新聞
 小児期のC型肝炎ウイルス感染者は重症化せず、肝硬変や肝がんになる可能性はほぼない、との疫学調査結果を久留米大医学部の水落建輝助教(小児科)などの研究グループがまとめた。調査は過去30年、約350人を対象とした国内最大規模の調査で、日本消化器病学会の英文誌(電子版)に発表している。
 C型肝炎は、ウイルス感染が原因で発症し、国内の感染者は150万~200万人と推定されている。自覚症状がなく、肝硬変や肝がんに進行して感染が分かることも多いとされる。
 調査は1986~2015年に出生し、17歳未満でC型肝炎に感染しているとの診断を受けた348人(診断時の平均年齢3・1歳)を対象に実施。その後の病状の変化などについて、国内65の医療機関からデータの提供を受けて調査した。
 水落助教によると、348人の中で肝硬変や肝がんの診断を受けた人はおらず、肝臓の組織や細胞を調べる検査を実施した147人についても、病変なしと軽度が9割を占め、重度の人はいなかった。
 近年、C型肝炎の治療を巡っては、治療効果の高い新薬が開発され、成人では公的医療保険の適用も受けている。小児では安全性が確立しておらず未承認だが、水落助教は「(今回の調査で)小児期に重症化しにくいことが分かり、治療方法を慎重に検討できるようになった」と話している。
 また、疫学調査では近年、感染経路のうち9割超を母子感染が占めていることも明らかになった。
 出生年別で10年ごとに3群に分け、感染経路を調査したところ、母子感染の割合が、86~95年生まれで61%だったのが、96~2005年生まれで92%、06~15年生まれでは99%となっていた。
 C型肝炎の母から子への感染率自体は1割程度で、実数は増えていない。1992年以降、献血時の検査が適切に行われるようになったことで、輸血感染の割合が86~95年には35%だったのが、96年以降ゼロになったのが影響したと考えられる。
 水落助教は「通常の妊婦健診にC型肝炎の血液検査は組み込まれており、感染者を把握し、治療を続けることでいずれ撲滅できるとはっきりした」と語る。


 文中で気になったのは母子感染。
 輸血による感染がゼロになったことで目立つのですが、無視はできません。
 私が昔調べたときは、「母親がC型肝炎ウイルスに感染していても母乳栄養は可能」と本に書かれていましたが、現在はどうなのでしょう。


ポリオ感染、2016年は37人のみ 「根絶に期待」

2017年10月26日 08時03分14秒 | 感染症
 ヒトがワクチンという武器を使って撲滅に成功した感染症は、今のところ天然痘のみ。
 ポリオは2番目になれるでしょうか?

■ ポリオ感染、昨年37人のみ 「根絶に期待」とWHO
共同通信社2017年10月25日
【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)は24日、かつて日本でも大流行したポリオ(小児まひ)について、予防接種の普及により2016年の感染者は37人まで減少したと発表した。
史上最も少ない年間感染者数で「根絶に向けて期待できる兆候」(WHO当局者)として予防接種の徹底を呼び掛けている。
 WHOによると、1988年には感染者が推定35万人いたが、16年に感染が確認されたのは37人。17年もこれまでにパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアの3カ国の計12人という。
 ポリオは口から感染するポリオウイルスが神経を侵し、手足などがまひする病気で、5歳未満の乳幼児がかかることが多い。
 日本では60年に患者が5千人を超える流行があった。
 病原性を弱めたウイルスを使う生ワクチンの接種が広がったことで感染者が激減。14年には多くの感染者がいたインドを含む南東アジア地域で制圧が宣言された。

子どもの風邪予防にはビタミン?サプリ?

2017年09月04日 08時07分16秒 | 感染症
 子どもの風邪予防に関する記事を2つ紹介します。

 まずはビタミンD。
 残念ながら「無効」との評価。

■ 幼児へのビタミンDはかぜ予防に有用か?/JAMA
ケアネット:2017/07/31
 健康な1~5歳児に、毎日のビタミンDサプリメントを2,000IU投与しても、同400IUの投与と比較して、冬期の上気道感染症は減らないことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のMary Aglipay氏らによる無作為化試験の結果、示された。これまでの疫学的研究で、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とウイルス性上気道感染症の高リスクとの関連を支持するデータが示されていたが、冬期のビタミンD補給が小児のリスクを軽減するかについては明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は「ウイルス性上気道感染症予防を目的とした、小児における日常的な高用量ビタミンD補給は支持されない」とまとめている。JAMA誌2017年7月18日号掲載の報告。
冬期の最低4ヵ月間、高用量(2,000IU) vs.標準用量(400IU)投与で評価
 検討は、オンタリオ州トロント市(北緯43度に位置)で、複数のプライマリケアが参加する研究ネットワーク「TARGet Kids!」に登録された1~5歳児を対象とし、2011年9月13日~2015年6月30日に行われた。
 研究グループは参加児703例を、2,000IU/日のビタミンDサプリメントを受ける群(高用量群349例)または同400IU/日を受ける群(標準用量群354例)に無作為に割り付けて追跡した。サプリメントの投与は保護者の管理の下、登録(9~11月)からフォローアップ(翌年4~5月)の間、冬期(9月~翌年5月)の最低4ヵ月間に行われた。
 主要アウトカムは、冬期の間に、保護者によって採取された鼻腔用スワブ検体によりラボで確認されたウイルス性上気道感染症例とした。副次アウトカムは、インフルエンザ感染症、非インフルエンザ感染症、保護者報告による上気道疾患、初回上気道感染症までの期間、試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値であった。
上気道感染症発症に有意差なし、初回発症までの期間も有意差みられず
 無作為化を受けた703例(平均年齢2.7歳、男児57.7%)のうち、試験を完遂したのは699例(99.4%)であった。
 小児1例当たりに確認された上気道感染症の報告数は、高用量群1.05回(95%信頼区間[CI]:0.91~1.19)、標準用量群1.03回(同:0.90~1.16)で、両群間に統計的有意差はみられなかった(発症率比[RR]:0.97、95%CI:0.80~1.16)。
 初回上気道感染症までの期間についても、統計的有意差は示されなかった。具体的な同期間は、高用量群は3.95ヵ月(95%CI:3.02~5.95)、標準用量群3.29ヵ月(同:2.66~4.14)。また、保護者報告による上気道疾患についても有意差はなかった(高用量群625件 vs.標準用量群600件、発症RR:1.01、95%CI:0.88~1.16)。
 試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値は、高用量群48.7ng/mL(95%CI:46.9~50.5)、標準用量群は36.8ng/mL(同:35.4~38.2)であった。

<原著論文>
・Aglipay M, et al. JAMA. 2017;318:245-254.


 次にサプリ。
 最近話題のプロバイオティクスの効果は如何に?

■ プロバイオティクスのサプリ、保育園児の感染予防には効果なし?
HealthDay News:2017/07/26
 1歳前後の保育園児にプロバイオティクスのサプリメントを使用しても、風邪や感染性胃腸炎といった感染症を予防する効果は認められなかったとする研究結果が「Pediatrics」7月3日オンライン版に掲載された。
 この研究は、コペンハーゲン大学(デンマーク)栄養・運動・スポーツ学のRikke Pilmann Laursen氏らが実施したもの。同国の保育園に通う健康な生後8~14カ月の子ども290人を対象として、そのうち144人を6カ月間にわたって1日1回パウダー状のプロバイオティクスを食事や飲み物に混ぜて摂取してもらう群(プロバイオティクス群)に、146人をプラセボを混ぜて摂取してもらう群(プラセボ群)にランダムに割り付けた。
 その結果、保育園を休んだ日数や風邪の症状、下痢、発熱、嘔吐などの発生頻度がプロバイオティクス群で減少することはなく、プロバイオティクス群とプラセボ群との間に差は認められなかった。また、プロバイオティクス使用による副作用の報告もなかった。
 これまでに報告されている研究では、プロバイオティクスによる感染性胃腸炎の予防効果が示されているにもかかわらず、今回は同様の結果が得られなかった。この点について、同研究の論文に関する論評の著者の1人である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児科学のMichael Cabana氏は、「今回の研究の対象となった子どものほぼ半数で研究期間中も母乳育児が続けられており、全般的に健康状態が良好であったため、プロバイオティクスによる効果が現れにくかったのではないか」と考察。母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖は乳児の消化管に固有の細菌の成長を促進するため、母乳は腸内細菌の健康的なバランスを保つ最良の方法かもしれないとしている。
 また、今回の研究ではプロバイオティクスの副作用は認められず、安全であることは示されたが、同氏は「プロバイオティクスにはさまざまな製品があるため、もし試したいなら、まずは小児科医に相談し、適切な菌株を含み厳格な臨床試験で評価された製品を選ぶとよい」と助言している。

<原著論文>
・Laursen RP, et al. Pediatrics. 2017 Jul 3.


 プロバイオティクスも子どもの風邪予防に効果がなかったと。
 ただ、上記を読んでも「プロバイオティクス」の具体的内容が不明ですね。
 

砂場の細菌汚染状態は「塩素消毒していないスイミングプール」のようなもの。

2017年07月30日 08時09分51秒 | 感染症
 砂場に関しては、その功罪、メリットとデメリットがよく議論されます。。
 砂場は「塩素消毒市営ないスイミングプール」のようなもの、と表現したダークサイドの記事を紹介します。

 細菌検出の調査によるとクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)という菌が50%以上の砂場から検出されたとのこと。
 この細菌は偽膜性腸炎を引き起こすことで有名です。
 健康な腸では腸内細菌叢で守られていますが、抗菌薬使用中で腸内細菌叢が乱れた状態では感染症を引き起こす可能性があります。

 紹介論文では、砂場の厳重な管理が必要であることが述べられています。ペットは連れ込まず、掃除し、乾燥後に蓋をしておく・・・できるかなあ。

■ 公園の砂場は細菌の温床
提供元:HealthDay News、2017/07/25:ケアネット
 子どもが大好きな砂場遊びは、運動技能や社会的技能の発達にも役立つ。しかし、動物にトイレとして使われたり、複数の子どもが接触する場になったりすることで、砂場は細菌や寄生虫などの感染性の病原菌の温床となっている可能性があることが、「Zoonoses and Public Health」7月7日オンライン版に掲載の研究で明らかにされた。
 今回、マドリード・コンプルテンセ大学(スペイン)のJose Blanco氏らの調査で、52.5%の砂場からクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)という細菌が見つかった。C. difficile感染症の症状は軽度の下痢から命に関わる腸炎までさまざまだが、腸内環境も変えてしまうため治療が難しいことで知られる。
 Blanco氏らは、同国のマドリード地域にある子ども用の砂場20カ所とイヌ用の砂場20カ所から砂を採取し分析した。その結果、子ども用の砂場9カ所、イヌ用の砂場12カ所からC. difficileが検出され、その中には毒素を多く産生する型や抗菌薬に対する耐性を示す型も認められた。
 砂場に潜む病原菌はC. difficileだけではない。米疾病対策センター(CDC)によると、米国の調査ではトキソプラズマや回虫、ギョウ虫などの寄生虫が砂場にいることが示されている。イヌやネコに由来するトキソカラ(Toxocara)という回虫の感染症による失明は米国で年間約70症例にも達し、その多くは小児だという。
 Blanco氏は、「身の回りには多数の病原菌が存在しており、私たちはその中で生きていく方法を学ばなければならない。今回、C. difficileが環境中に広く存在していることが示されたが、地域社会における実態を明らかにするには追加の研究が必要だ」と話している。また、別の専門家は、砂場は“塩素消毒をしていないスイミングプールのようなもの”だと評している。
 米国小児科学会(AAP)は、砂場遊びで病気になることを防ぐための注意点を挙げている。

・砂場を使わないときは蓋をして、昆虫や動物を近づけない。
・砂が湿っていると細菌が繁殖しやすくなるため、乾燥させてから蓋をする。
・定期的に熊手を使い、破片や砂のかたまりなどの異物を取り除く。
・砂場をトイレと勘違いする可能性があるため、ペットには砂場で遊ばせない。

<原著論文>
・Orden C, et al. Zoonoses Public Health. 2017 Jul 7.



オウム病の感染源は、オウムではなくインコが最多、ハトが次点

2017年07月30日 07時34分46秒 | 感染症
 「オウム病」はクラミジア(Chlamydia psittaci 以下C. psittaci)による人獣共通感染症です。
 名前からしてオウムが危険と考えがちですが、実際の感染源はインコが最多、ハトが次点だったという記事を紹介します。
 稀な感染症ですが重症化することもあり、あなどれない感染症です。また、抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系)が有効であり、忘れてはいけない感染症でもあります。

■ オウム病の感染源、インコが最多-感染研が解析、妊婦死亡で注意喚起も
CBnews:2017/07/19
 国立感染症研究所は10日、ハトやインコなどのふんを介して感染する「オウム病」の解析結果を公表した。感染源とされた鳥類はインコが最多で、特に女性の症例で多かった。死亡は3例あり、このうち1例は妊婦だった。同研究所は「妊婦は感染源となりうる鳥類等への接触を避けるよう配慮するべき」としている。
 オウム病の主な感染源はインコやハト、オウムなどで、ペットショップや公園、飼育場所の自宅で病原体が入った排泄物を吸い込むことで感染する。潜伏期間は1-2週間で、せきや急激な発熱を伴い発症。肺炎や気管支炎などを引き起こし、多臓器障害などで死亡するケースもある。感染症法上は4類感染症に分類されており、診断した医師が最寄りの保健所に届け出る義務がある。
 同研究所は、2006年4月から17年3月までに、感染症法に基づいて報告された症例のうち、病原体や遺伝子の検出、抗体の検出が確認できた129例を分析した。都道府県別では、東京と神奈川が共に12例で最も多く、以下は大阪(8例)、宮城と愛知(共に7例)、栃木と香川(共に6例)、埼玉、広島、福岡(いずれも5例)などの順だった。
 症状(重複あり)は発熱(125例)、咳嗽(71例)、呼吸困難(35例)、頭痛(32例)、筋肉痛(24例)、意識障害(17例)などで、所見は肺炎が92例あった。届け出時の死亡症例は3例あり、このうち1例は20歳代の妊婦(妊娠20週)だった。この3例の発症から死亡までの日数は4-6日だった。
 感染経路も調べた。動物などからの感染が確定(推計を含む)した症例は110例(男性63例、女性47例)で、3例がペットショップに勤務していた。110例のうち101例が鳥類から感染したとみられ、インコが56例(男性21例、女性35例)、ハトが27例(男性26例、女性1例)あった。
 同研究所は「妊婦等においてオウム病が疑われた場合には、検査用の検体を採取後、速やかに抗菌薬による治療を行うことが肝要」と指摘。また、推定感染源を特定し、感染拡大を防止する必要性も挙げている。

先天性CMV感染児は慢性感染状態の妊婦から多く発生していた。

2017年07月26日 15時41分24秒 | 感染症
 母体が妊娠中に感染することにより、胎児に異常が発生するTORCH症候群の一つである先天性サイトメガロウイルス感染症。
 急性感染より慢性感染の報がリスクが高いという報告を紹介します。
 しかし、この二つを鑑別する方法はあるんだろうか?
 記事を読むと、新しい検査法の導入が必要なようです。

■ 先天性CMV感染児、慢性感染状態の妊婦から多く発生-神戸大
2017年07月25日:QLifePro
◇ CMV感染症の妊婦スクリーニング法の問題点が判明
 神戸大学は7月21日、これまでは妊娠中に初感染した母体から多く生じると考えられていた先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染児が、妊娠中に初感染を起こした妊婦よりも慢性感染状態の妊婦から多く発生していることがわかったと発表した。この研究は、同大医学研究科産科婦人科学分野の山田秀人教授ら、愛泉会日南病院疾病制御研究所の研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載された。
 CMVは胎児感染を起こし、乳幼児に難聴、精神や運動の発達障害などの後遺症を残す原因となる病原体。日本では、年間1,000人の先天性感染症児が生まれていると推定される。しかし、現在、有効なワクチンや胎児・新生児に対する治療法がないことから、全妊婦対象の血液検査などによる先天性CMV感染のスクリーニングは、世界的にみても推奨されていない。一方で近年、先天性CMV感染による症候性感染症児に対し、早期に抗ウイルス薬で治療を行うことで、難聴や精神発達の遅れが改善できることが明らかになってきた。
◇ 世界で初めて、CMV IgGアビディティー検査を全妊婦に実施
 今回の研究では、神戸大学を受診した妊婦のうち、もともと先天性CMV感染発生のハイリスクであるCMV IgM抗体陽性を理由とした紹介例や他施設で分娩した妊婦を除く2,193人を解析対象とした。一般的に用いられている抗CMV免疫グロブリン(Ig)M抗体検査よりも初感染の診断精度が高いとされるIgGアビディティー検査を用いたスクリーニング法を、全妊婦を対象に世界で初めて実施。先天性感染の発生予測の有用性を検証したが、従来のIgM検査を用いたスクリーニング法と予測効率は同等であったという。
 また、妊娠中に初感染を起こした妊婦よりも、慢性感染状態の妊婦から先天性CMV感染児が多く発生していることが判明。この結果から、妊娠中に初感染を起こした妊婦を見つけ出そうとする今までの血清学検査では、罹患児の見落としが多く出てしまう危険性があると考えられるという。
 今回の結果をもとに、見落としの無い先天性CMV感染のスクリーニング法を開発・導入することで、罹患児を早期に発見・治療することが可能となる、と研究グループは述べている。


米小児のインフル関連死101例 〜CDC・2016/17年シーズン

2017年07月25日 09時05分51秒 | 感染症
 先シーズンの米国における小児のインフルエンザ関連死の報告を紹介します。
 要点は、

・101名が死亡
・A香港型(H3N2)が優勢
・ワクチン接種が重症化予防に有効
・米国におけるインフルワクチン接種率は約60%で推移

 といったところです。

■ 米小児のインフル関連死101例 〜CDC・2016/17年シーズン
2017年07月24日:メディカル・トリビューン
 米疾病対策センター(CDC)は6月23日、2016~17年シーズンに報告された小児のインフルエンザ関連死亡101例について調査結果を発表した。死亡例が100例を超えたのは2014~15年シーズン以来。今シーズンは、小児および高齢者で重篤化しやすいインフルエンザA型(H3N2)ウイルスが優勢となっていた。
◇ ワクチン接種で小児死亡リスクが51~65%減少
 米国では2004年からインフルエンザによる小児死亡例の報告が義務化され、シーズンごとの症例数は37例(2011~12年)~171例(2012~13年)で推移している。今シーズンと同様、2012~13年および2014~15年シーズンは、インフルエンザA型(H3N2)ウイルスが優勢であった。
 最新のCDC研究〔Pediatrics 2017 ;139(5)〕によると、2010~14年の調査結果において、小児へのインフルエンザワクチン接種は、インフルエンザ関連死亡リスクを高リスク小児で51%(95%CI 31~67%)、健康な小児で65%(95%CI 47~78%)減少させた。ワクチンの予防効果発現まで2週間かかるため、この研究では発症前14日以内にワクチン接種を受けた小児を除外した。予防接種対象で発症14日以上前に予防接種を受けることが可能だった小児死亡例のうち、接種を受けていたのは4人に1人にすぎなかった。
 CDCは、生後6カ月以上の全ての人にインフルエンザワクチン接種を推奨、小児では特にインフルエンザ合併症が重症化しやすい5歳以下、喘息や肺疾患、心疾患、神経または神経発達障害などの慢性疾患を有する場合に推奨している。過去数シーズンでは生後6カ月~17歳のインフルエンザワクチン接種率は約60%としている。2016~17年シーズンでは、インフルエンザ様疾患は17週連続ベースライン以上で、2月に全米でピークに達した。過去15シーズンでは、インフルエンザシーズン期間は平均13週(1~20週)となっている。