goo blog サービス終了のお知らせ 

小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

インフルエンザの死亡率は従来報告よりも高い?

2018年01月20日 07時15分38秒 | 感染症
 昔からインフルエンザは「命の最後の灯火を消す感染症」と呼ばれてきました。
 インフルエンザ関連死の考え方に、「超過死亡率」というものがあります。
 直接の死因にはならなくても、インフルエンザが流行した年に増える死亡を抽出する方法です。
 この用語を聞くと、私は日本で学童にインフルエンザ勇断予防接種をしていた時代を解析した論文を思い出します(次項で扱います)。
 さて、インフルエンザ関連呼吸器疾患の超過死亡率を再評価したら従来より高い数字が出たという Lancet 論文を扱った記事を紹介します;

■ インフルエンザの死亡率は従来報告よりも高い 〜米国CDCによるインフルエンザ超過死亡率の推定研究
2018/1/12:日経メディカル

ネコから感染するのはSFTSだけではない。

2018年01月18日 07時02分29秒 | 感染症
 2017年には「野良猫にかまれた女性がSFTSで死亡」した例が話題になりました。

 そして今回、ネコからヒトへ感染したコリネバクテリウム・ウルセランス(Corynebacterium ulcerans)という細菌による死亡例が報告されました。
 ジフテリア類似症状(重症では呼吸困難で死亡することもあります)を示すとされ、現在小児に行う定期接種の四種混合ワクチンに入っているジフテリア・トキソイドが有効と記事にありますので、接種が済んでいる子どもは安全ですね。

■ 野良猫からウルセランス菌感染で死亡例、国内初 〜ジフテリアに似た症状、マクロライド系抗菌薬が奏効
2018/1/17:日経メディカル

「くしゃみ」を我慢してはいけません。

2018年01月16日 18時31分39秒 | 感染症
 そう言われれば、そうかもしれない・・・。

■ くしゃみ抑制すると脳血管や喉、鼓膜が破裂する恐れ 医師ら警鐘
2018/1/16 AFP=時事
【AFP=時事】くしゃみを抑えると、喉の裂傷や鼓膜の損傷、脳血管の破裂などを引き起こす可能性があると、研究者らが15日、警鐘を鳴らした。
 多くの人は、くしゃみが出そうになると、本質的にくしゃみの爆発力を抑え込もうとして口や鼻などをすべてふさぐ。だがこうした行為が場合によっていかに危険かということが、英レスター(Leicester)にある病院の救急外来を最近受診した34歳の男性の症例で明らかになった。この男性は、首の腫れと激痛を訴えていた。
 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の症例報告データベース「BMJ Case Reports」に掲載された論文によると、担当医師らは、「患者は鼻をつまみ、口を閉じてくしゃみをこらえようとした後、首の辺りで破裂するような感覚を覚えたと話した」として詳細を説明。CAT(コンピューター断層撮影)のスキャン画像を見ると、抑制されたくしゃみの力によって喉の後部が破裂していたことが確認できたと述べている。
 まれな症例ではあるが、くしゃみを抑制したことにより両肺の間に空気がたまってしまった例や、脳血管が膨張した状態にある脳動脈瘤(りゅう)の破裂が起きた例さえあるという。
 医師らは、「鼻孔や口を覆ってくしゃみを抑制するのは危険な行為であり、避けるべきだ」と結論付けている。

「人食いバクテリア」(劇症型溶血性レンサ球菌)患者増

2017年12月26日 06時04分13秒 | 感染症
 おかしな名前で有名になってしまった「劇症型溶血性レンサ球菌」感染症。
 子どもに多い「A群溶血性レンサ球菌性咽頭炎」の菌と同じか違うか、今でもハッキリわかっていないようです。
 「わからない」って、いやですね。

■ 「人食いバクテリア」患者増 発症数十時間で死の危険も
2017年12月25日:朝日新聞
 筋肉の組織を壊死(えし)させることから「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者が増えている。国立感染症研究所によると、今年の患者数は1999年の調査開始以来、初めて500人を超えた。発症すると数時間で重症化して死に至ることもあり、注意が必要だ。
 感染研によると、今年の患者数は10日までで525人。2013年は203人だったが、年々増加している。都道府県別では東京が66人と最も多く、神奈川40人、愛知32人、福岡31人、兵庫28人と続く。
 原因となるのは、主にA群溶血性レンサ球菌。子どもを中心に咽頭(いんとう)炎を起こすことで知られているが、一部が劇症型になる患者の大半は30代以上で、特に高齢者に多い。持病がなくても発症する。傷口に菌が触れて感染すると考えられるが、どこから感染したかわからないことも多い。

インフルエンザ関連呼吸器系死亡の実情は?

2017年12月26日 05時47分47秒 | 感染症
 「インフルエンザは軽症で済む感染症だからワクチンや抗インフルエンザ薬は必ずしも必要ない」という意見も最近目にするようになりました。
 そういえば、小児のインフルエンザ脳症や老健施設の集団感染・死亡が話題になることが以前より減った印象があります。
 しかし、実感として他の風邪よりは合併症が多く、やはり要注意感染症であることは変わらないと思います。
 呼吸器関連死亡のデータをLancetの論文から。

■ インフルエンザ関連呼吸器系死亡の実情は?/Lancet
ケアネット:2017/12/26
 これまでインフルエンザに関連した呼吸器系死亡推計は、世界で年間25~50万人とされてきた。米国疾病予防管理センターのA Danielle Iuliano氏らは、「この推計値はWHOが2004年頃に公表したものだが、算出方法が不明で、1990年代のデータを用いていると推察され、各国の実状を反映していないと思われる」として、1995~2015年の各国インフルエンザ関連の呼吸器系超過死亡の推計値を用いて、最新の状況を推算した。結果、従来値よりも多い約29万~65万人と算出されたという。インフルエンザ関連死の推計値は、国際的なおよび各国のパブリックヘルスの優先事項を決定する際に重視されている。著者は、「従来数値によって、疾病負荷が過小評価されていたかもしれない」と指摘し、「世界のインフルエンザ関連死亡に占める、呼吸系疾患以外の死因について調査する必要がある」と提言している。Lancet誌オンライン版2017年12月13日号掲載の報告。

モデリング法を用いて世界各国のインフルエンザ死亡リスクの実態に迫る
 検討は、モデリング法を用いて行った。まず、死亡レコードとインフルエンザサーベイランスデータがある33ヵ国について、時系列対数線形モデルを用いて各国のインフルエンザ関連呼吸器系超過死亡率(EMR)を推算。次に、データのない国のために外挿法を用いて推計を行うため、WHO Global Health Estimate(GHE)の呼吸器感染症死亡率を用いて、各国の3つの年齢群(65歳未満、65~74歳、75歳以上)について、3つの分析部門(1~3)に分類した。
 EMR推定値のある国とない国のGHE呼吸器感染症死亡率の比較で全世界におけるインフルエンザ死亡リスクの差を明らかにするため、死亡率比(MRR)を算出。また、各年齢別分析部門内で個々の国の死亡推計を算出するために、無作為に選択した平均年間EMRsと各国MRRおよび母集団を乗算して評価した。
 全体の95%確信区間(CrI)の推定値は、1シーズンまたは1年間のインフルエンザ関連死の可能な値域を示す国別全推計の事後分布から取得した。
 そのほかに、呼吸器感染症による死亡率が高い92ヵ国について、同様の手法を用いて5歳未満児のインフルエンザ関連死を推計した。

季節性インフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年29万1,243~64万5,832例と推計
 EMR推定値の得られた33ヵ国のデータは、全集団の57%を占めた。
 平均年間インフルエンザ関連呼吸器系EMRは、65歳未満群では、10万人当たり0.1~6.4にわたった。65~74歳未満群では、同2.9~44.0であり、75歳以上群では17.9~223.5にわたった
 季節性インフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年29万1,243~64万5,832例(10万人当たり4.0~8.8)発生していると推計された。死亡率比が最も高いのは、サハラ以南のアフリカ(10万人当たり2.8~16.5)、東南アジア(同3.5~9.2)であり、年齢群では75歳以上(同51.3~99.4)で最も高いと推定された。
 92ヵ国の5歳未満児のインフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年9,243~10万5,690例発生していると推計された。


<原著論文>
・Iuliano AD, et al. Lancet. 2017 Dec 13.

厚生労働省の感染症対策に“改善勧告” by 総務省

2017年12月20日 08時17分38秒 | 感染症
 議論の多い検疫、厚労省に改善勧告を出したのは第三機関ではなく、なんと総務省でした。
 こういう自浄作用があったとは、意外な驚きです。

■ 総務省、感染症対策で厚労省に改善勧告 〜入国時検疫や診療体制、搬送で
2017.12.18:リスク対策.com
 総務省は感染症対策について調査し、厚労省に勧告を行った。
 総務省は15日、「感染症対策に関する行政評価・監視」について発表した。同省が厚生労働省、総務省(消防庁)、国土交通省、防衛省、16都道府県、15市区町村、医療機関や関係団体を調査。入国時の検疫や診療体制、搬送の問題点を、総務大臣から所轄する厚生労働大臣へ勧告を行った。調査は2016年8~11月にかけて行われた。
 エボラ出血熱流行国に滞在歴があったり、MERS(中東呼吸器症候群)流行国でラクダと濃厚接触があったりする者は入国時に申告し、健康監視の対象になる。しかしエボラでは申告が必要と知らず入国し、別の空港から入国した同僚からの情報により発覚したケースが1事例2人あった。MERSでも申告せずに入国し、指定医療機関に直接行ったケースが7事例7人あった。また健康監視になっても健康状態の報告が遅延や中断するケースがエボラで56.1%、MERSで66.6%あったという。
 総務省は調査結果を受け、入国審査と連携し、感染所流行国への渡航歴確認の必要性の周知徹底や、検疫官が確実に確認するための方策を早急に検討する、罰則適用も含め、健康監視対象者が報告を守ることの徹底を厚労省に勧告した。
 診療体制については44指定医療機関のうち、22.7%が指定病床数通り受け入れられない、常勤の感染症専門医が配置されているのが半数の55%にとどまることなどを指摘。実態を把握し、改善や必要に応じて制度の枠組みや指定基準を見直すよう勧告した。さらに搬送手段の点検や改善、検疫所での訓練などを呼びかけている。


■ニュースリリースはこちら

「風邪による咳に効く薬はない」by アメリカ胸部医学会

2017年12月14日 07時56分28秒 | 感染症
 「風邪薬は効かない」ことは当ブログでは何度も取りあげてきましたが、
 今回は、米国の学会の見解が発表されたという記事を紹介します。

■ 「風邪による咳に効く薬はない」米学会が見解
2017年11月25日:medy
(HealthDay News 2017年11月8日)
 市販されているさまざまな咳止めの薬から米国で「風邪に効く」とされているチキンスープといった民間療法まで、あらゆる治療法に関して米国胸部医学会(ACCP)の専門家委員会が文献のシステマティックレビューを行ったところ、効果を裏付ける質の高いエビデンスがある治療法は一つもなかったという。
 これに基づき同委員会は指針をまとめ、「風邪による咳を抑えるために市販の咳止めや風邪薬を飲むことは推奨されない」との見解を示した。
 このシステマティックレビューと指針はACCP専門家委員会の報告書として「Chest」11月号に掲載された。
筆頭著者で米クレイトン大学教授のMark Malesker氏によると、数多くの米国人が風邪による咳に対して市販薬を使用しており、2015年の米国における市販の風邪薬や咳止め薬、抗アレルギー薬の販売額は95億ドル(約1兆700億円)を超えていたという。
 今回、同氏らはさまざまな咳に対する治療法の効果を検証したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施した。
 その結果、抗ヒスタミン薬や鎮痛薬、鼻粘膜の充血を緩和する成分が含まれる風邪薬に効果があることを示す一貫したエビデンスはなかった。
 また、ナプロキセン(ナイキサン®)イブプロフェン(ブルフェン®)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の試験データの分析からも、これらの効果を裏付けるエビデンスはないことが分かった。
 ACCPがこのトピックについてシステマティックレビューを実施したのは2006年に発表した咳ガイドライン以来だが、 「残念ながら2006年以降、風邪が原因の咳に対する治療の選択肢にはほとんど変化がない」と同氏らは説明している。
 では、眠れないほどつらい咳にはどう対処すればよいのだろうか。
 Malesker氏によると、1歳以上の小児に対しては蜂蜜にある程度の効果があることを示した複数の研究があるという。
 ただし、1歳未満の小児に蜂蜜は与えるべきではないとしている。
また、成人の咳には亜鉛トローチが有効であるとの弱いエビデンスがあるが、使用を推奨するには不十分で、亜鉛には副作用もあるため注意が必要だとしている。
 このほか、チキンスープやネティポット(鼻洗浄)といった民間療法についても強いエビデンスはなかった。
ただし、Malesker氏は「お気に入りのお茶やスープを飲んで気分が良くなるなら、そうするべき」と話す。
また、市販の風邪薬を試す場合、医師や薬剤師に相談することが望ましく、特に2歳未満の小児に薬を飲ませる場合にはかかりつけの小児科医に相談すべきだとしている。
 さらに、市販されている風邪薬には眠気などの副作用があることに加え、咳止めのシロップに含まれていることの多いデキストロメトルファン(メジコン®)には乱用リスクがある点についても注意が必要だという。
 米国立ユダヤ医療研究センターのDavid Beuther氏は「咳を止める効果的な手段がいまだに見つかっていないことにいら立ちを感じている。
 風邪による咳は睡眠やQOL(生活の質)に影響することもある」とした上で、「そんな時は手っ取り早い方法を求めがちだが、休暇を取って安静にすることも必要だ」と助言している。
 水分摂取も咳の原因となる粘液を洗い流すのに有効だという。
 なお、頻繁に風邪をひく場合や咳が長引く場合は軽度の喘息や慢性副鼻腔炎などの疾患が隠れている可能性もあるため、医師に相談した方がよいとしている。


 上記報告では「蜂蜜」がよいと記されていますが、近年この作用メカニズムも中枢性鎮咳薬と同じではないかとの研究発表もあり、今後の解析が臨まれます。

 当院ではふつうの風邪薬で治りの悪い患者さんに漢方薬をお勧めしています。
 例えば鼻水止め。
 西洋薬では抗ヒスタミン薬しかありません。
 しかし漢方薬では複数の方剤を使い分けます。
・風邪の初期のくしゃみ・鼻水には小青竜湯
・数日後、鼻水が濁ってきて奥にたまってつらそうなら葛根湯加川芎辛夷
・慢性化し、青っ洟がたくさん出続けるとき(蓄膿症・副鼻腔炎)は辛夷清肺湯
 等々。
 西洋薬の風邪薬を処方後「あの薬が効いたので同じものをください」という方は滅多にいませんが、
 漢方薬を処方後「あの薬が効いたので同じものをください」という方は少なからず存在して、皆さんリピーターになります。

抗菌薬は上気道感染症後の細菌合併症を減らせるのか?

2017年11月29日 11時09分11秒 | 感染症
 「抗菌薬(=抗生物質)の適正使用」の啓蒙・普及が進んでいます。
 「適正使用」とは、「必要なときは使用し、不必要なときは使用しない」という単純明快なルールです。
 しかし、この言葉をよく耳にするということは「現状は適正使用されていない」ことの証明でもあります。

 スウェーデンからの報告を紹介します。
 約10年間に抗菌薬の使用が22%減少しても、風邪に伴う合併症頻度は増えなかった、という内容です。

■ 抗菌薬は上気道感染症後の細菌合併症を減らせるのか
ケアネット:2017/11/29
 抗菌薬使用と上気道感染症(URTI)後細菌合併症との関連を検討した前向きコホート研究で、URTI後の細菌合併症はまれであり、また抗菌薬は細菌合併症予防における保護効果がない可能性が示唆された。スウェーデン・ストックホルム県ランスティング公衆衛生局のThomas Cars氏らが報告した。BMJ open誌2017年11月15日号に掲載。
 本研究では、ストックホルム県のプライマリケア、専門医の外来クリニック、入院加療施設における、2006年1月~2016年1月の診察・診断・調剤抗菌薬に関する行政医療データを基に検討した。主要アウトカムは、生態学的時間傾向分析における、URTI・細菌感染/合併症・呼吸器系抗菌薬使用の頻度の10年間の傾向分析、前向きコホート研究における、抗菌薬投与あり患者と投与なし患者のURTI後の細菌合併症発症率とした。
 主な結果は以下のとおり。

・2006年から2015年までに呼吸器系抗菌薬の使用は22%減少したが、乳様突起炎(p=0.0933)、扁桃周囲膿瘍(p=0.0544)、A群溶血性レンサ球菌感染症(p=0.3991)、眼窩内膿瘍(p=0.9637)、硬膜内および硬膜下膿瘍(p=0.4790)、汎副鼻腔炎(p=0.3971)での増加傾向はみられなかった。また、髄膜炎および急性篩骨蜂巣炎は減少し(それぞれp=0.0038、p=0.0003)、咽後膿瘍および咽頭周囲膿瘍は増加した(p=0.0214)。

・URTI後の細菌合併症は、扁桃炎後の扁桃周囲膿瘍(10,000発症当たり、抗菌薬投与あり患者41.1、投与なし患者32.4)を除き、投与あり患者・投与なし患者ともまれであった(10,000発症当たり、投与あり患者1.5未満、投与なし患者1.3未満)。

 著者らは、「定期的に収集された行政医療データの分析により、患者・処方医師・政策立案者に対して、URTI・抗菌薬使用・細菌合併症の数に関する貴重な情報を提供できる」としている。


<原著論文>
Cars T, et al. BMJ Open. 2017;7:e016221.

イエメンではコレラ、マダガスカルではペストが流行

2017年11月15日 12時01分43秒 | 感染症
 世界を見渡す後、日本では馴染みのない感染症が猛威を振るっている国・地域があります。
 今年話題になっているのは、アラビア半島のイエメンにおけるコレラ流行と、アフリカ東部に浮かぶマダガスカル島におけるペスト流行。
 とくにペストは中世ヨーロッパで流行し多数の死者が出たため「黒死病」として恐れられた感染症です。私が医師になってから30年弱、話題になった記憶がありません。このように一度忘れられた感染症が再度蘇って流行する現象を「再興感染症」と呼びます。

■ コレラ感染、100万人到達の恐れ 内戦下のイエメン
2017.09.30:CNN
(CNN) 国際赤十字は30日までに、内戦下にある中東イエメンでコレラの感染が今年末までに100万人に達する恐れがあると警告した。
 赤十字国際委員会のイエメン事務所代表は29日、過去に例がないコレラまん延との危機感を表明。感染が疑われる患者は現在約75万人。今年7月5日の時点では約27万6000人だった。この増加基調が続けば年末までには最大100万人に達するとした。
 世界保健機関(WHO)は今年7月、イエメンのコレラ感染について世界で最悪の流行と指摘。2015年3月に始まった内戦で医療保健体制がほころび、社会基盤の崩壊や飢餓の状態に近い食糧不足などがコレラ拡大の元凶となっている。
 WHOによると、今年9月13日段階で報告などされたコレラ感染の犠牲者はイエメン全土で2074人。以前の報告書では、住民5000人が毎日、感染しているとも推定していた。
 赤十字国際委員会のイエメン担当責任者は、同国の医療保健体制は限界水域にあると説明。今後、新たな感染拡大が発生した場合の対応策に懸念が生じているとした。


<参考>
■ 「コレラとは」(国立感染症研究所)


■ マダガスカルのペスト流行、死者124人に 1192人感染
2017.10.27:CNN
(CNN) アフリカのマダガスカルで猛威を振るっているペストの流行について、国連人道問題調整事務所と地元のリスク管理対策部門は27日までに、今年8月以降1192人が感染し、124人が死亡したと明らかにした。
 感染者の67%は、人から人へと感染する肺ペストに罹患(りかん)。ペストはペスト菌によって引き起こされ、ネズミなどが運ぶノミがかむことで感染が拡大する。症状は、痛みやリンパ節の腫れ、発熱、寒気、咳(せき)など。
 マダガスカル国内の114地区のうち、肺ペストの感染が報告されたのは40地区。人口の多い大都市を含む少なくとも10都市でも感染が伝えられている。他人との接触で一段の感染拡大が起こる恐れがあるものの、国連によれば所在のつかめている感染者は全体の3割に満たない。
 一方で23日の国連の報告では、8月1日以来、780人の感染者が治癒したとしている。また感染が伝えられた地区のうち6地区については、過去15日間で新たな感染例の報告はないという。
 世界保健機関(WHO)は直近の報告の中で、国内での感染がさらに拡大するリスクは依然として極めて高いと指摘。ただ近隣の島やアフリカ南部・東部といった周辺地域へ感染が広がるリスクはそれほどでもないとの見方を示した。
 WHOのマダガスカルの代表者は「国境を越えて感染するリスクは低い。一般的に感染者は体調不良が著しく、旅行に出られる状態ではなくなるからだ」と説明した。現在WHOはマダガスカルの空港当局と連携し、空港や港湾に医療スタッフを配備するなどして国外への感染者の流出阻止に取り組んでいるという。


<参考>
■ 「ペストとは」(国立感染症研究所)


■ ペストに気を付けろッ! その1
(2017/11/14:ケアネット)
忽那 賢志 ( くつな さとし ) 、国立国際医療研究センター 感染症内科/国際感染症センター
人類とペストの歴史
 人類とペストの歴史は古く、ヨーロッパでは西暦542~543年にかけて東ローマ帝国で流行したそうです。さらにさかのぼれば、2,800~5,000年前のアジアとヨーロッパのヒトの歯の化石から、ペストのDNAが検出されたという報告もあります1)。人間とペストとの戦いは少なくとも5,000年以上は続いているのですッ! 
 最大の流行は14世紀で、アジアから始まった流行はヨーロッパまで波及し、何とこのとき世界の人口の3割がペストで亡くなったと言われています。世界人口の3割…ペスト、恐るべしです。
 フランスのルーブル美術館にある『ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン、1799年3月11日』は、その名の通り1799年にペスト患者を見舞うナポレオンの様子を描いた絵ですが、中央の患者は腺ペストの患者で、腋窩リンパ節が腫れているのが分かります。ナポレオンは、じかに触ろうとしていますね。
 腺ペストは、ノミに刺されることによって感染します。また、腺ペストの患者の体液に曝露すると、ヒト-ヒト感染が成立しますし、肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染します。
 そんなわけで、有史以来人類はペストと戦ってきたわけですが、日本も例外ではありません。1896年以降、ペスト患者が日本でも報告されています。『明治の避病院-駒込病院医局日誌抄』(磯貝元 編)という本には、当時の駒込病院の医師であった横田 利三郎氏が、「ペスト患者のリンパ節を切開し、血液が顔にかかったことで自身もペストに罹患し、亡くなった」と書かれています。このように日本でもペストはかつて被害をもたらした感染症なのです。
 と、ペストと人類の歴史を語ってきましたが、何だかこんな風に説明するとペストは過去の感染症のように思われるかもしれませんが、そうではありませんッ!
 ペストは今も局所的に流行しているのですッ!
現在進行形のペストの流行
図2は、世界保健機関が発表したペストの流行地域(2016年3月時点)を示した世界地図です。今でもペストに感染するリスクがある地域の存在が、お分かりいただけるかと思います。何とあのアメリカ合衆国でも、いまだにペスト患者が報告されているのです。とくにニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部で症例が多く報告されています。アジアやアフリカでも流行していますね。



 そして、この世界地図でも赤く塗られているように、マダガスカルでもペストは流行地域に指定されているのですが、今年はとくに大規模なアウトブレイクが起こっています(図3)。すでに1,800例以上のヒト感染例が報告されており、さらにチャバイことに、症例の大半が「肺ペスト」なのですッ!(図4)2)





 通常ペストは、ノミの刺咬によって起こる「腺ペスト」の病型が一般的であり、肺ペストの病型はまれだと言われています。しかし、今回のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペストの症例が7割以上を占めているのです。この意味するところは、患者からのエアロゾル吸入による「ヒト-ヒト感染」が持続的に起こっているということなのですッ! マダガスカルでの死者は、すでに120例を超えているようです(致死率7%)。日本に住む我々も決して他人事ではない状況になってきています。


<参考文献>
1)Rasmussen S, et al. Cell.2015;163:571-582.
2)Madagascar Plague Outbreak:External Situation Report #7: 31 October 2017.


<追記>
2017.11.29
マダガスカルのペストに関する続報です。
北海道大学のチームが調査に入っているのですね。

■ 海外への拡大心配なし アフリカのペストで北大
共同通信社2017年11月28日
 アフリカ南東部の島国マダガスカルで起こっている今世紀最大規模とみられる肺ペストの流行について、国外に広がる可能性は極めて低いとする分析結果を、北海道大の西浦博(にしうら・ひろし)教授らの研究チームが28日までにまとめ、欧州医学誌電子版に発表した。
 ペストはエボラ出血熱と同じ感染症法の1類に分類される重大な感染症で、中でもせきなどによって人から人に感染する肺ペストは最も危険な種類とされる。
チームによると、ペスト全体で11月中旬までに2千人を超える患者が報告された。
 チームは、フランスのパスツール研究所などがまとめた8~10月の感染者数や、マダガスカルの出入国者数のデータを使って、マダガスカル国外にペストが広がる可能性を分析した。
 その結果、マダガスカルとの関係が深いフランスを含め、入国可能性がある肺ペスト患者の人数はどの国でも0・1人未満で、国外流行のリスクは非常に低いことが分かった。
 また、患者1人から他の人に感染する人数も従来と大きな違いはなかったという。