小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

健康ライフ「この1年で話題になった感染症を考える」(岡部信彦Dr.)2017

2017年11月02日 17時18分11秒 | 感染症
 感染症分野の大御所でありご意見番の岡部先生が早くも2017年を総括。

□ 10月30日(月)「マダニ感染症」・・・SFTS(重症熱性血小板減少症)
・マダニが介するウイルス感染症で致死率約20%
・女性が野良ネコに手を噛まれて死亡
・ダニに刺されていないけれど発症した・・・感染ネコからうつった可能性。
・キーワードは「野良ネコ」、自然界のダニに刺される可能性大、ペットでは可能性小(でも具合が悪いペットは要注意)
・本来は野生動物が持っているウイルスであり、人間と野生動物の棲み分けがあやふやになってきたことが要因
・SFTSに根治薬はなく対症療法のみ

□ 10月31日(火)「劇症型溶連菌感染症」
・2017年に某プロ野球コーチが死亡した原因?
・溶連菌感染症は一般に治る細菌感染症
劇症型となる菌が特殊なものかどうかはまだわかっていない(解析中)。重症化しやすい患者側の要因もわかっていない。
・劇症型の徴候は「痛み」であちこち(足腰、指先)が痛くなる。
・毒素で組織が壊死する気配(皮膚のどす黒い変色)があればその部位の切断を考慮する。

□ 11月1日(水)「梅毒」
・梅毒が増えている。
・原因は梅毒トレポネーマという微生物で性行為で感染する。
・症状:始まりは感染した性器の潰瘍(痛みはない)、でも放置で改善する。次は手のひらの皮疹(放置で治る)、脱毛。そして脳の症状、骨が溶けてくる。
・治療:ペニシリンが有効。
・感染がわかったらセックス・パートナーの検査も必要。
・先天梅毒は大きな問題。

□ 11月2日(木)「出血性大腸菌O-157」
・大腸菌の種類はたくさんあり、病原性大腸菌の種類もたくさんある。
・O-157に感染しても症状が出ないことがある一方で、ひどい下痢・血便が出ることもある。
・O-157の毒素が腎臓や脳に悪さして重症化することがある。
・感染源は食品。ウシには常在菌であり、腸の中にいて肉にはいない。しかし、こねる調理方法(ハンバーグなど)で肉に混じり込んでしまうことがある。調理器具や患者さんの手指を介して感染が広がる。
・自然肥料に使われる牛糞にも混じていることがある。
・重症化予防のため強い下痢止めは使わない方がよい。
・抗菌薬使用の可否は現在でも賛否両論状態。

□ 11月3日(金)「RSウイルス」
・本来は冬に流行する風邪ウイルスだが、2017年は夏から流行。なぜかは不明。
・2歳までに100%罹るが、ほとんど軽症で済む。
・中には気管支炎・肺炎を合併しゼコゼコ、呼吸困難を来すことがあるのがやっかい。
・乳児では突然死の可能性もある。
・診断:迅速診断キットがある。
・治療:RSウイルスに対する特効薬はまだない。対症療法(輸液、酸素投与など)のみ。
・感染対策:飛沫感染。ゼコゼコする子がいじったり舐めたりしたおもちゃに付いていることがある。

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