CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

医局制度を考える その4

2005-12-07 05:29:23 | 医局制度
「大学医局」という法人は存在しません。「医局」とは単に医師が集まる部屋を意味するのみです。そして、医学部教授の「人事権」は、大学病院や分院に限られ、市中病院は公式には全く無関係です。

ところが、一般的には以下のように理解されています。

医学部教授は、医局という大企業の社長。大学スタッフが本社勤務。「関連病院」は(公立病院であっても)医局の支店にあたり、多数の支店社員の人事を含めて、医学部教授や医局長(人事部長にあたる?)が決定する。したがって、支店毎に別法人の責任者(院長や理事長、市長、県知事等)がいても、責任者の意志とは全く無関係に、社員の人事が決められる。大学病院に戻ることは「本社勤務」であり、社長に気に入られなければ、遠隔地の病院(地方支店)に「飛ばされる」ことも・・・。それだけ強い結びつきがあっても、支店勤務中に、本社から支給される報酬がないどころか、大学研究生となるために「授業料」を払い、将来の「学位」取得の意志や、医局への忠誠を試される・・・。

私はこの制度について、社会科学の対象として興味がありますが、当事者である医者にとっても国民にとっても問題の多い制度だと思っています。良い点はあります。だからこそ残っています。しかし、医者だけでなく国民も「白い巨塔」の権力闘争の世界を面白がっていては、いつまでも閉鎖的な体質は改善されないでしょう。

私も、埼玉県に勤務し、子供が2歳と0歳だったときに、「次は小松だから。」という医局長からの電話一本で、埼玉県から高速道路で550km先の石川県に「飛ばされ」ました。抵抗しましたが「人事命令」は絶対でした。そもそも、そんな遠隔地の病院を「関連病院」にすることについて、社員である「医局員」の了解など得ていません。教授と医局長など一握りの幹部と、病院経営者の「決定」があるのみ。とりあえず、最初に「派遣」される医師1名だけが、「行きます」と言えば、永続的に「公式」の人事派遣先として、医局員全員が派遣の「リスク」にさらされます。

そんなひどい人事だったら、関連病院にすることを医局員全員で拒否すれば良い、と思われるところですが、結局、貧乏くじの「被害者」は1名だけなので、それ以外の医局員は「ラッキー」という心境なわけです。何年に1回、引くか引かないかの「はずれくじ」のために、医局長や教授に睨まれるより、ラッキーな人事のうちに学位研究を仕上げた方が良い、と思う人が大半でしょう。もちろん、教授など医局幹部が「関連病院」とした決定を、医局員が覆すことなど「前代未聞」のありえない話です。

しかし、私達は「関連病院」を決めるのは、教授ではなく、実際に仕事をする人(つまり医局員全員)でなければならないと思います。したがって、私のところにご挨拶に来られる病院経営者には、私にではなく、メンバーの医師達に、働きたいと思ってもらえるような情報を提供して下さい、とお願いしています。その上で、メンバー全員によるアンケートの病院ランキングが上がるように、リハビリの理念などの改善をお願いしています。

また、勤務条件について、例えばある人が半額の報酬でもある病院で働きたい、と言ったとしても、私達のプロジェクトのメンバーは全員がそれを認めないでしょう。なぜなら、「君の先輩もこの待遇で働いたのだから、君も我慢しなさい。」と言われるからです。ポストは一人のものではなく、メンバーの共有ポストである、という意識付けをもってもらっています。そういう視点で希望病院調査のアンケートもすっかり定着しました。

人事異動はないにこしたことはありませんが、すぐれた臨床医になるためには、特徴が異なるいくつかの病院でも臨床経験が必要です。したがって、旧来の医局とは違うやり方で、必要最小限の人事異動は行っています。

別の医局に移るときも、驚くべきしきたりが存在するようです。
次回をお楽しみに。



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