CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

『全人医療』はお題目ではない

2005-12-15 06:40:14 | リハビリ
『全人医療』『全人的医療』・・・昔では考えられないほど多くの病院や診療科で、この言葉が訴えられ、看板やパンフレットに書かれるようになりました。

ようやく、臓器だけでなく人間をみつめる医療が実現する時代到来の前触れとして、喜ばしい限りです。ただし、それが実践される限りにおいて・・・・。

『全人医療』というのは、文字どおりその人全てを見つめる医療で、古くから生活やQOLを重視しているリハビリテーション医療は、『全人医療』の必須条件の一つです。(もちろん、決して十分条件ではありません。)

ただただ『時間をかけて患者さんの話を傾聴し、手を握って優しい言葉をかけること』=『全人医療』と勘違いしている病院も少なくありません。もちろん、そういう医療人の態度は大切なことで、立派だと思いますが、それは『全人医療』ではありません。

十分な傾聴の次に、『少し一緒に歩いてみませんか』とか『今のご病気をもちながら、ご家庭に帰れるように一緒に考えましょう』とか『どういう生活スタイルで病気とお付き合いしたら良いでしょうね。』という内容に到達してはじめて、『全人医療』が少しずつ見えて来ます。

あくまでも『医療』ですから、お題目だけでは駄目。もちろん疾患の予後や治療を忘れては駄目。医療が『全人的』であるために、具体的にプロとして何をするべきか? ---それが重要です。

『1日30分、必ず患者様のお話を傾聴します』という病院は立派ですが、『1日15分お話をお伺いし、それをもとにQOLを高めるために必要なこと、例えばトイレ動作のリハビリなどをして頂いています』という病院の方が、『全人医療』を実践していると言えます。

『痛いならスポーツはもうあきらめなさい』という医療と『痛みをコントロールしながら、何とか来年の大会に参加できるように一緒に考えましょう』という医療・・・・もうおわかりですね。

『全人医療』の看板がある病院を見たら、その病院のリハビリテーションがどうなっているか、その病院に全人的にお話を聞いてくれるリハビリ科医がいるかどうか、是非、調べてみて下さい。


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