アリソン・アトリー作/石井桃子・訳 中川宗弥・画 童心社 1967年初版
吉四六さんの次に手にした「本」が、チム・ラビット。
オヤジのおみやげだったんだな、これが。
読むとしたら推理小説か歴史モノってオヤジが、よくぞこれを選んでくれたものよ。
イギリスの児童文学が、石井桃子の名訳と、中川宗弥の美しきペン画により、どこか「日本」なうさぎのオハナシという、原作とはまた別の世界が生み出されています。
原作読んでないけど。
&この独特の世界をつくりだすのに貢献しているのが、活字。
今、手元にあるのは2004年の53刷版ですが、装丁も、挿絵も、何より活字が当時のまま。頑固にチムの世界を守ろうとしている童心社の良心よ。
ワープロやパソコンのフォントではとうていお目にかからなくなった、ハネやトメやテンがしっかりと滲まんばかりに紙に打ち込まれているような、「お」や「も」や「を」の美しさ。
だんだん老眼キビしき折りから、文庫の活字が大きくなるのはありがたいけど、新潮ですら講談社のよなまるまるとした活字になっちゃっちゃあ…と、つねづね「活字」ひとつでモノガタリ感がズレてしまうことに憤っていたこの身(目?)には、まったくもって宝石のごとくの「THE・本」であります。
今になってみれば、ものがたりそのものもさることながら、「紙」と「活字」という「本」ならではのマテリアルに魅せられていくことになった一冊だったのだなー、とつくづく思われるのでした。
そしてまた、上におさとうのついている、ぱりっとやけた、きいろいほっとけーきや、大きなほしぶどうけーきや、きのこのふらいという、食べたことはないけど、なんかおいしそうな食べ物の表現を、うっとりと、何度も何度も読み返すようになった事始めの一冊だったのだなー、とも思われるのでした。
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