サブタイトル「ドキュメント・水木しげる」
足立倫行 新潮文庫 2010年(1994年単行本)
ませガキだったあの頃。
叔父の部屋に忍び込んではこっそり読んでた、「COM」と「ガロ」。
手塚治虫「火の鳥」が柱だった「COM」の方は、ガキが読んでも、まあわからないではない、どこか明快さがありましたが、
「ガロ」の方は、暗いわ、怖いわ、よくわかんないわ。。。
でも、それでもどこか惹かれるもの有り。
今にして、手塚と水木の確執を本書で知ったり、
ご存じ連ドラ「ゲゲゲの女房」で「ガロ」(劇中では「ゼタ」)創刊の経緯を知ったりしてみれば、
ガキの感じた二誌比較も、あながちズレてはいなかったのですねぇ。
妖怪よりも強烈なキャラをもつ水木氏を前にして、
「はたしてどこまでこの人を書けるのか…」と悩み逡巡しながらも、とにかく見つめ続け、書き続けてきた後に、著者の感じたこの感覚が、まさに水木とこの本の魅力を表しています。
…そして、水木のいるあたりから聞こえてくるのは強烈な生命力の叫びだった。食欲と性欲と睡眠欲と排泄欲に基づいた根源的な生命肯定のメッセージである。人の「死」や「不幸」をも取り込んで栄養素としてしまう、貪欲なまでの生の賛歌である……
執筆から15年を経ての文庫化に際して補記された「まえがき」と「あとがき」が、
米寿にいたってこの大妖怪が、少し変性している様も映して興を添えます。
new106冊目(全112冊目)