中島たい子 講談社文庫 2010年(2007年単行本)
独身女の長田真里が、家を建てたくなってしまった。一人暮らしの家を「建てる」ってあり?ひょんなことから、でも確実に、真里の家づくりが進んでゆく…
「彼の宅急便」併録。
「漢方小説」以来の中島たい子2冊目。
「漢方小説」もそうだったけど、ルポな感じのテーマを「小説」に仕上げるんだね、この人は。
いや、時として、「小説な感じ」に仕上げたルポなのか?と錯覚してしまう。。。
だから建築家の福島氏の語るこんな言葉も、
小説の登場人物のことばというよりも、取材した相手のそのまんま語りに思えてしまうわけですが。
「一人の人間が住むというシンプルなライフスタイルを考えたときに、複数人数の家では見えない、家の原点みたいなものが見えてくる…最後に何が一番大切か、みたいなことかな」…
雑談なんかしてる方が、その人の真の姿が見えるという。その人自身が気づいていない面白いところも。「スリーサイズを採寸すれば大まかにその人が見えますが、もっと変なところ、足の薬指が妙に長いとか、そういうところを僕たちは測ります」…
たまたま土地があって、たまたま建築家の人と知り合って…みたいな恵まれた夢物語かもしれないけれど、
しかし、
土地を前に家族・親族が集まった時に、皆が皆「自分の家」に想いを馳せる場面、
「玄関入るとすぐお風呂!」などと議論交わしながらも仮想の家空間を浮遊するような場面、
おままごと遊びのゴザの上が無限の空間だった頃の幸せな記憶がよみがえる場面、
「住む」ことを、ていねいに、いとしく感じたくなる一冊です。
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