広告代理店はイヌと同じだ!【表】

現役広告営業マンの日乗
~表題は某社宣伝部長の金言から(3/19参照)~

週刊誌がネットに勝つには!?

2009-02-11 09:05:59 | 出版ビジネス
今回の「週刊新潮」のスクープ連載は凄い!と思っている。


このスクープ連載は

(内容の是否、真偽はともかくとして)

雑誌のノウハウと強みを体現しているものだと思うからだ。

そしてここから

これからの雑誌ビジネスモデルのあり方が見えてくると思うからだ。


というワケで

今回は、この連載を読んでから考えたことを書きたいと思う。






■「せっかく凄いネタを持ってきても、ネットに食いつぶされる」


前も書いたが、

ここ数年こんなセリフが

出版業界の方々から、

聞こえてくるようになった。


これは

週刊誌をはじめとする雑誌のことを言っているのは明らか。



でも、ちょっと待って!である。


そもそも

ニュースは足が速いコンテンツである。

周知されれば、その後の価値は急落する。



ネットが無料で誰にも見られる今の時代に、

もし週刊誌の立場で

「特ダネ、情報の鮮度にポイントを置いて勝負しよう」

と考えているのだとしたら

その発想自体に無理があるのだと思う。



特ダネが特ダネでありえるのは、

ネットや新聞に取り上げられるまでの僅かな期間である。

特ダネの引力で雑誌を毎週売っていこうとするのは

誰が考えても苦しいのは目に見えている。



確かに

週刊誌が特ダネ(ニュース)を報じる、世に問題提起をする、

ということは大事なことだと思し、

その志も(ネタによるが)素晴らしいことだと思う。

しかし

ビジネスとしての成功を目指すのなら

その提供方法を

よくよく考えなくてはならなくてが「今」なのだと思う。



そしてその提供の仕方を

今回の「週刊新潮」は教えてくれている。






■週刊誌が新聞やネットに勝つポイント。



それは、

ニュースを「読み物」にまで昇華してから

提供することなのだと思う。




・ニュースは

肝である事実だけが読者の関心事だが、

「読み物」は

事実を知っている人にも別の価値を提供できる。



・ニュースは消費されるコンテンツだが

「読み物」は消費されない。



・ニュースは原作にならないが、「読み物」は原作になる。

(つまりマルチユース/著作権ビジネスの資源となる)



・ニュースは、ネットや新聞も生産できるが

読み物は彼らには生産できない。



つまり、

この「読み物」に昇華するという点こそ、

雑誌だけの持つ強み(ノウハウ)であり、

ビジネスを成功させていく上での重要ということ、なのだ。




ひところ「週刊現代」がスクープを連発していたが、

部数において「週刊文春」「週刊新潮」を抜き去るところまでは

いかなかった。


これは

特ダネの発信にばかり力が入り、

「読み物」に昇華するという作業が

両誌に比べて軽視されていたからではないか、と思う。


(「サンデー毎日」「週刊朝日」「「Yomiuri Weekly(休刊済)」など

新聞系の週刊誌が出版社系週刊誌より軒並み低調なのも、

同様の理由からだと思う)





私は今回、「週刊新潮」に

雑誌の強みの活かし方とビジネスの可能性について

上記のようなことを勉強させてもらった。



ご覧になった方はおわかりだと思うが

こうした観点で

今回のスクープ記事を読んでみると

「読み物=コンテンツ」に昇華させるために

凄い工夫をしたことが分かる。




編集部は、最初にネタをつかんでから、

掲載に踏み切るまで1年余りの準備期間をかけている。

そして「手記」という形での連載に踏み切った。

この「手記」と言うところがミソである。


今回の記事は「手記」にしたことで

特ダネ=ニュースとしての価値に加えて

「読み物」として普遍の価値が生まれた。



読んですぐ感じたのは

「来週はどうなるのだろう?」

に加えて

「これは後で本になるのだろうな」

「映画化やテレビ化のオファーが来ているだろうな」

だった。



まさに

この記事こそ

「ニュースを読み物に昇華させる」という

週刊誌のノウハウの見本だと思った次第である。

(繰り返すが内容の是否、真偽を言っているのではない。

実際、既に誤報との噂も出ているようである。

あくまでテクニカルな話として読んで頂ければと思う)




では、

こうした「読み物=コンテンツ」の生産と提供方法を

他媒体がマネできない

雑誌独自の強みと規定したら

出版のビジネスモデルはどうなるのだろう?


次項に続く。


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※The reason why the title is“広告代理店はイヌと同じだ”
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