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映画音楽史(269) 『幸福』 1966年公開

2014-10-28 07:27:17 | 映画音楽



『幸福』 Le Bonheur (仏) 1965年制作
監督 アニュエス・ヴァルダ
音楽 (モーツアルト)
主演 フランソワ … ジャン・クロード・ドルオー
    テレーズ … クレール・ドルオー
    エミリー … マリー・フランス・ボワイエ
主題歌 『幸福のテーマ』 ( Le Bonheur ) 演奏・サウンド・トラック

日常生活にしのび込んできた波紋の中に真の幸福の姿を追求した作品で、見事な色彩感覚による映像で描いた傑作。
真面目な働き者のフランソワは日曜日には妻のテレーズや二人の子供とピクニックに出かけるのが楽しみであった。
ある日、フランソワは郵便局で窓口のエミリーと出会いお互いに愛し合うようになるが、彼に罪悪感は全くなかった。
フランソワにとっては家庭にいる時は妻子を愛していたし、逆に愛する女性が二人になったことに幸せを感じていた。
そんな中、家族でピクニックに出かけたとき、フランソワは何の罪の意識もなく妻にエミリーのことを告白し、テレーズも
それを受け止めたように見えたが、フランソワが昼寝から目覚めた時にはテレーズは池で溺死していた。そして季節は
夏から秋に移り、エミリーがフランソワの家族として溶け込み、何事もなかったかのように新しい幸福が始まっていた。

映画の冒頭、ひまわりの映像のタイトルバックに使われたのはモーツァルトの「アダージョとフーガ・ハ短調K.426」を短く
まとめたもので、引き続いてのピクニックのシーンでは同じく「クラリネット五重奏曲イ長調 K.581 第1楽章」が使われて
いて、この「クラリネット五重奏曲」が映画主題歌『幸福のテーマ』としてリリースされています。

↓はサウンド・トラックによる『幸福のテーマ』 YOYTUBEより



余談になりますが
アニュエス・ヴァルダは『シェルブールの雨傘』を監督したジャック・ドミと夫婦であり、共にヌーヴェル・ヴァーグのセーヌ
左岸派に属しています。ジャック・ドミが『シェルブールの雨傘』において、「雨に始まり雪で終わる」という映画文法を
踏襲していましたが、ヴァルダも「ピクニックで始まりピクニックで終わる」という映画文法の基本を守っています。
自由奔放なヌーヴェル・ヴァーグであるにもかかわらず夫婦共々きっちりと文法を守っているのはさすがです。
また、劇中のテレビがジャン・ルノワールの『草の上の朝食』を放映しているシーンがありますが、ヌーヴェル・ヴァーグ
の作家たちがジャン・ルノワールに特別の敬意を持っているという「証し」のように見えます。
ラストシーンのピクニックに出かけたワゴン車のテールランプの片方が光らないという演出も心憎いですね。




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