名言暴言直滑降

自作の詩や、いろんな人の名言暴言を紹介。

未来の恐竜

2011-03-26 21:04:35 | ま行 (自作の詩)
今朝、時計を止めて
いつものようにトイレに向かう
途中で
おじいちゃんの声がしたから
振り返った

そこにいたのは
恐竜
涎を垂らし
曲がった背中はゴツゴツで
裸の肌色が剥がれて
おぅ、おぅ、おぅ、と鳴く
右の目玉が私を見ていたけど
左の目玉は遠くを眺めていた

ペタペタと
恐竜が近づいてきて
人とは別のものに
脅えて
逃げられもせず
じっと震えながら
笑いかける

お先にどうぞ

恐竜は、
おぅ、おぅ、と鳴いて
私が行くはずだったトイレに行く
その背中をよく見ると
昔遠くまで飛んだであろう翼があった
ドアノブにかけた手には
数知らずの敵や自然と戦った傷跡があった
だけどその手は
私よりも震えていた

かつてこの世には
恐竜がいて
彼らが支配した世界があったという

人とは別のもの
それは特別でしょうか
差別でしょうか

恐竜の足跡を辿って
夢を追いかける
私にはもう
おじいちゃんはいない

だってもうすでに
時計を止めた私の手は
しわしわだから