食卓

赤潮で死にきれなかった魚が
今日食卓に出てきた
とても誰かに似すぎていて
箸を付けることができない

それを見かねて
仏様は成仏の仕方を
そっと教えてくれた

最初と最後に
手を合わせて
それから箸を持ち上げた私は
ちっとも不幸せなんかじゃなかった

証

住民票
保険証
運転免許証
ポイントカード
銀行の口座
卒業した学校
仕事の実績
今まで減らした体重
出会った人たちとの写真
愛する人と永遠の愛を誓った言葉
作品

意識が無くなったら
心臓が止まったら

証は
ただのデータになって
私が居ない世界の一部になる

データじゃない
確実たる証

記憶？お墓？

一番確実たる証
それは子供を生むことだろうな

生きた証を残すこと
それが女の本能なのか

声 ＃2

声が嫌い
この声が

届かないほうが
良いのです
誰にも知られず
ずっと温めてきたものを
そっと引き出してもらう方が
良いのです

誰かを好きだと言えば
それは嘘だし
誰かに好きと言ってもらえれば
それは疑うし
目に見えるものなんか
耳で聞こえるものなんか
本当のことの
ほんの少し

それでも誰かを傷つけ
不快にしてしまうのが
この声

この声が嫌い

歌うことは気持ちがいいし
気持ちが伝わることは嬉しいし
だけど
それはそれで独りよがり

人間は支えあって生きてきた
それを忘れそうになる
満足すると

おなかをすかしている
全ての人が
もらいたいのは決して
声などではない

捨ててしまえば
どうにかなるわけでもない
誰かが捨てようとしたら
拾って
これはあんたのものだって
言うだろう

今日から
心で聞く声を
話したい

そして私も
あなたたちの声を
心で聞きます

嫌いなこの声が
どうか耳に届きませんように

満月

やる気の潮が
満ち満ちて
満面の笑み
今日は満月
夜空も明るい

因数分解

ほとばしる因数分解
生きる事への方法論

人は強くなっていくのではない
弱いという事を知っていくのだ